アンケート調査結果を活用する分析方法と調査報告書のまとめ方を解説

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リサーチャーコラム

2025/4/18(金)

アンケート調査結果は、適切に分析・活用することで価値を最大限に引き出せます。この記事では、アンケート調査の結果を効果的に分析する手法から、わかりやすい報告書の作成方法、実際のビジネス成功事例まで解説します。アンケート調査結果をビジネスの成長に役立てたい人は、参考にしてください。

アンケート調査結果の分析と活用の方法

アンケート調査結果のデータを効果的に活用するための分析方法について、解説します。

主な分析方法

効果的なアンケート分析には、さまざまな手法があります。次の主な6つの分析方法から、目的に応じた選択をしましょう。

アソシエーション分析

データ間の関連性を探り、パターンを見出す手法です。「商品Aを購入した人は商品Bも購入する傾向がある」といった関係性を分析します。ECサイトのレコメンデーション機能や商品陳列の最適化、クロスセル戦略の立案に活用できます。

クラスター分析

類似した特性をもつグループに分類する手法です。顧客の購買行動や価値観に基づき「デザイン重視層」「機能重視層」などのセグメントを特定できます。ターゲット層の特徴把握やブランドポジショニング、顧客ペルソナ作成に役立ちます。

時系列分析

データの時間的変化を追跡し、傾向を把握する手法です。日別・週別・月別などの推移から変化の要因を探ります。ブランド認知度や顧客満足度の変化測定、売上予測、季節要因の特定などに活用できます。

決定木分析

結果に影響する要因を樹形図で視覚化する手法です。顧客の属性を段階的に分析し、購買行動に影響する要素を構造的に把握できます。ターゲット層の特定や、サービス満足度を高める要素の発見に役立ちます。

主成分分析

多変数のデータを少数の合成変数に縮約する手法です。複数の評価項目から「総合満足度」といった主成分を導き出します。顧客満足度分析やブランドイメージ把握、商品ポジショニングに活用できます。

自由記述の分析

数値回答は、平均値だけでなく中央値や標準偏差も確認が必要です。テキスト回答は、アフターコーディングでグループ化したり、テキストマイニングで単語の出現頻度を分析したりします。定性データから定量的な洞察を得られますが、細かなニュアンスの把握には注意しましょう。

アンケート調査結果を分析する際の注意点

アンケート調査結果の分析を成功させるカギは、明確な目的設定です。何を知りたいのか具体化せずに分析すると、有用な情報を得られません。仮説立案も重要ですが、過度に固執すると予想外の発見を見逃す恐れがあります。

アンケート調査では、分析手法を見据えた質問設計が必要です。「想起バイアス」「直近バイアス」など、回答者の心理的傾向も考慮しましょう。専門知識が必要な場合は、外部の専門家への依頼も検討します。

アンケート調査結果のビジネス活用法・事例

アンケート調査結果の実践的な活用方法と、実際にビジネスに活用して成功した事例を紹介します。

データに基づいた改善策の提案

アンケート調査では、まず目的と対象を明確にし、データを整理・分析することで改善施策の基盤を構築できます。顧客満足度調査からは不満点や購買理由が明らかになり、売上向上や接客指針の設定にも活用できるでしょう。

従業員満足度調査では職場環境の数値化することで、離職率改善や適切な人事配置が可能です。認知度・ブランドイメージ調査は、マーケティング施策の効果測定やポジショニング戦略に役立ちます。適切に分析されたデータは、具体的なアクションにつながる貴重な経営資源となります。

アンケート結果を活用した企業の成功事例

星野リゾート様は、「OMO」ブランド拡大に伴うブランド定点調査を実施し、「認知」と「知覚品質」を軸に各ブランドの関係性を分析しました。調査結果に基づき、マスターブランドに近づける戦略判断をし、全スタッフの判断基準として共有しました。結果、戦術の方向性が統一され、スムーズな意思決定が可能になっています。

セイコーエプソン株式会社様は、「オリエントスター」の海外展開強化のため、5か国対象のセグメンテーション調査を実施しました。顧客情報を可視化し、潜在クラス分析でブランドとの親和性の高いセグメントを特定しました。ペルソナ作成にも用い、企画からデザイン、販売まで一貫したターゲット設定に成功しています。

※参照:星野リゾート様 – サブブランド戦略本格化とブランド定点調査データ活用
※参照:セイコーエプソン株式会社様 – ブランド親和性とコンセプト受容性の高いセグメントの抽出

アンケート結果を新規事業の参考にした事例

アサヒビール株式会社様の「生ジョッキ缶」開発では、15回の調査を実施し、特に実際に商品を体験してもらうデプスインタビューを実施しました。消費者から情緒的反応を得て成功を確信する一方、改良点も明確になりました。大きな設備投資が必要だったため、消費者ニーズの確実な把握が不可欠です。綿密な調査設計と分析が、大ヒット商品につながった好例です。

仙台市と観光協会は、観光戦略に用いるデータ収集のためアンケート調査を実施しました。認知度と魅力度の二軸データをもとに、観光事業者向けセミナーや満足度指標の改善サイクルを構築しました。データが共通言語となり、関係者間の認識が統一され、市長との政策議論でもデータ重視の文化が浸透しました。現在はさらなるデータ活用が模索されています。

※参照:【調査活用事例ー開発から販売まで一括支援】前例のない『アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶』の調査は、“マクロミルだから”一緒にできた
※参照:仙台市様 – 定点把握調査により観光KPIを策定。データに基づいたマーケティングを意識づけ、施策立案に活用

アンケート調査報告書とは

アンケート調査結果報告書は、実施した調査結果をまとめた文書です。単なる数値の羅列ではなく、データに基づいた結果と改善案を含む、第三者にもわかりやすく整理された重要な資料となります。企業の意思決定や施策立案の基盤となるため、読み手が求める情報を的確に伝える必要があります。

調査報告書を作成する目的と必要性

アンケート調査結果報告書の作成目的は、アンケート調査で得られたデータを分析し、明確な根拠に基づく意思決定を可能にすることです。報告書があれば、調査プロセスや結果を関係者間で共有でき、施策の有効性を検証できます。さらに、定期的な報告書の作成・比較により、施策の効果測定や経時変化の把握も可能です。

調査報告書の項目と構成

調査報告書は複数の要素から構成され、論理的に情報を伝える構造が重要です。それぞれの項目について解説します。

表紙

タイトル、調査実施日、担当者名などを明記し、視覚的に見やすいデザインを心がけます。

目次

各セクションとページ番号を示した目次を設けます。

タイトル

報告書の内容を端的に表現します。

調査の背景・目的

調査を実施した理由や、解決したい課題を簡潔に説明します。「◯◯の実態把握」「△△の改善案検討」など明確な目的を示すことで、報告書の価値が高まります。

調査概要(対象・方法・期間・回収状況)

対象者の属性や人数、調査方法、実施機関、回収数と有効回答率を明記します。

調査結果(要約・要旨)

報告書の核心部分を簡潔にまとめます。3行程度で要点を抑えた概要を提示します。

調査結果(詳細)

要約で示した内容を詳細に解説します。グラフや表を使い、視覚的にわかりやすく情報を伝えます。

所感

調査担当者の考察や分析を記述します。単なる感想ではなく、データに基づいた客観的な見解と、結果から導き出される示唆や活用法を提案します。

結論と提案

調査結果を踏まえた具体的な改善案や今後の方向性を示します。実行可能な施策を優先順位付けして提案します。

調査報告書の公開範囲

アンケート調査結果報告書の公開範囲は、目的と内容に応じて適切に設定する必要があります。社内限定の場合は、詳細データや改善案を含めた包括的な内容にできますが、外部公開では企業イメージや機密情報に配慮した編集が必要です。共有の仕方は、紙媒体での直接提出、電子ファイルのメール添付、Web上での公開など、目的や対象者に合わせて選択します。

視覚的にわかりやすい報告書の書き方

アンケート調査結果のデータを見やすく伝えるための、報告書作成のテクニックを解説します。

Excelなどのツールによるグラフ・表で可視化する

アンケート結果をグラフや表で視覚化すると、読み手の理解が深まります。単一回答には円グラフや帯グラフ、複数回答には棒グラフ、時系列データには折れ線グラフを選びましょう。

棒グラフは数値を降順に並べると傾向が掴みやすく、折れ線グラフは適切な縦軸設定が重要です。グラフの色は同系色で統一し、凡例やデータラベルはグラフ内に配置すると、視認性が向上します。フォントや色調の統一、単位の明記など、細部への配慮が読み手の理解をスムーズにします。

無料テンプレートを活用する

アンケート調査結果報告書の作成を効率化するためには、Web上でいくつも公開されている無料のテンプレートの使用が便利です。ExcelやWordのテンプレートは社内向け報告に最適で、必要項目を埋めるだけで、専門的な報告書が完成します。PowerPointのテンプレートはプレゼン用途にも活用できます。

まとめ

アンケート調査結果は、アソシエーション分析からクラスター分析、時系列分析まで、目的に応じた分析手法を選んだり、視覚的にわかりやすいようグラフや図を用いたりすることで、効果的なデータとなります。

株式会社マクロミルでは、マーケティング活動と連動するソリューションまで一気通貫で提供できる総合マーケティング支援企業です。クライアント企業に的確な消費者インサイトを提供するほか、顧客の保有データとマクロミルのデータを融合させ、その利活用を支援するサービスも行っています。アンケート調査結果をビジネスの成長に活用したいと考えている人は、ぜひマクロミルの専門サービスをご検討ください。

監修

Macromill News 事務局

監修:株式会社マクロミル マーケティングユニット

20万人以上が登録するマーケティングメディア「Macromill News」を起点に、マーケティング知見や消費者インサイトに関わる情報を発信。

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