Web-AHP
AHPとは、アメリカのトーマス・サーティが開発した階層分析法のことで、Analytic Hierarchy Processの略。生活者自身に複数の評価基準の重要度と、それらの評価基準における各商品の評価を質問し、 商品・ブランド・クリエイティブ案の総合評価を行うものです。それをWeb調査上で行う手法について、Web-AHPとして解説します。
Web-AHPの活用シーン
- 現行商品の評価構造が知りたい
- コンセプトを決定したい
- クリエイティブを決定したいが、何を基準に決定すべきかわからない
Web-AHPの特長
-
1.課題を階層的に整理
商品やブランドの評価・選択といった生活者の課題を「目的」「評価基準」「代替案(商品やブランド)」という3つの階層に整理します。
そして、評価基準ごとの重要度と、代替案が各評価基準でどう評価されているかを測定し、生活者の評価構造を把握します。 -
2.重要度シェアの算出
回答者がそれぞれの評価基準をどの程度重視しているのかを、重要度シェアで表現します。
例えば、「ブランド選択をする際にデザインをナンパ―セント重視しているのか」などが産出できます。
調査画面(設問)イメージ
AHPを行うにあたって最も効果的なデータ収集方法は一対比較法であり、図1のように商品・ブランド・クリエイティブ案などを1対1で、さまざまな評価基準について評価します。ただし、比較する商品・ブランド・クリエイティブ案の数が多い場合には、一対比較の組み合わせ数が多くなってしまいます。そのため、複数の回答者間で比較を分担したり、評定尺度法を用いたりといった工夫をします。また、評価基準の選択・決定が調査の精度に大きな影響を与えるため、グループインタビューなどの定性調査や、事前調査でFA(自由回答)形式を用いて評価基準を抽出することをおすすめします。
図1 画面イメージ
活用事例
事例 生活者が「何を」「どのくらい」重視しているのかを把握し、商品のコンセプトやクリエイティブを決めたい。
調査テーマ
インターネット通信事業を手掛けるA社は、MVNO(仮想移動体通信事業者)として格安スマホ市場への進出を検討している。ただし、MVNOとしては後発であるため、代表的なMVNOとのブランド比較を行い、仮に格安スマホ市場に進出した場合のプランド案を検討したい。
この調査での代替案・評価基準はそれぞれ以下の通りです。
- ■代替案
- ブランドA(今回の調査対象)、ブランドB、ブランドC、ブランドD
- ■評価基準
- 革新的である/将来性がある/安定性がある/技術力がある/親近感がある/スケール感がある/かっこいい感じがする
アウトプット例
■重要度シェア
ともに20%を超える安定性・技術力が特に重視されており、その次に将来性(17%)が重視されているということがわかります。
■各MVNOのイメージ評価(左・重み付け前/右・重み付け後)
ここで注意しなければならないのは、重要度シェアが高い評価基準は「安定性」と「技術力」であるという点です。 「革新的」「かっこいい」という評価基準ではブランドCが勝っているものの、「安定性」「技術力」「スケール感」ではブランドAが評価されており、ブランドAはMVNOとして重要な要素を備えたブランドであると言えます。
■重み付け後の総合評価
重要な評価基準において高い評価を備えるブランドAが、総合的にも高い評価を受けているということがわかりました。 ブランドAが持つイメージはMVNOが持つべきイメージに合っているといえそうです。