定量調査とは?定性調査との違いを分かりやすく解説!数字でユーザー行動を捉える基礎手法と活用のポイント

定量調査(Quantitative Research)は、数値データの収集と分析を通じて、特定の仮説や質問に対する結果を統計的に検証する調査手法を指しますアンケート、オンラインサーベイ、実験、観察など、さまざまな方法を用いてサンプル数を確保し、得られたデータを統計的手法(クロス集計回帰分析など)で分析して結論を導きます。対比される方法としては、少人数に深く話を聞く定性調査デプスインタビューグループインタビューなど)が挙げられます。

企業のマーケティング施策において、定量調査は広告費の最適化やSNS広告、検索連動型広告の効果検証、ブランドイメージの調査など多岐にわたる用途に使われます。たとえばCVR(コンバージョン率)の向上を目指す際には、ABテストと組み合わせてランディングページのデザインやテキストを変え、その結果得られるクリック数や購入数を定量的に評価する、ブランドイメージや態度変容を調査する際は、「プレポス(Pre-Pos)調査」と言ってキャンペーンの実施前・実施後で対象群の持つイメージが変化したかどうかを計測します。また、ES(従業員満足度調査)CS(顧客満足度調査)でも定量的手法が主役となり、それぞれ従業員とのエンゲージ、顧客とのエンゲージを科学するためのエビデンスを構築します。

DX(デジタルトランスフォーメーション)が進む中、定量調査はオンラインアンケートやトラッキングツールで得られるデータを活用できるため、組織がデータドリブンな意思決定を行う基盤として注目されています。ただ、数字だけでは捉えきれないユーザーの深層心理を補完するには、定性的なデプスインタビューとの併用が望ましいケースも多々あるため注意が必要です。

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定量調査の歴史と発展

定量調査の起源は、社会学や心理学の黎明期にまでさかのぼります。たとえば、1930年代の米国における世論調査から始まり、テレビや新聞などマスメディアの発展とともに、調査技術や統計分析が高度化してきました。当時は大量の紙アンケートや訪問面接調査が主流で、データ集計にも膨大な時間とコストがかかっていたのが特徴です。

一方、コンピュータの普及とともにオンラインアンケートの仕組みが整備され、Cookieを使ったユーザートラッキングが一般的になると、大規模なデータ収集が容易になり、SNS広告や検索連動型広告の効果測定にも活かされるようになりました。Cookie規制が強化されている現在も、ファーストパーティデータを中心としたログ解析や、統計学的検定によるCVR向上へのアプローチは企業にとって重要な手段となっています。

日本国内では、高度成長期からバブル期にかけて市場調査の需要が高まり、定量調査による全国規模のアンケートが頻繁に実施されるようになりました。製造業をはじめとする各業界で、コモディティ化を避けるために数値データを元にした競争戦略が取り入れられ、DX時代を迎えた現在に至るまで、PDCAサイクルやABテスト、EFOなどの手法と結びつきながら進化を遂げています。

社会が複雑化し、市場形成がますます困難になる中で、定量調査はマーケティングリサーチの基礎としてだけでなく、UI/UX改善やブランドロイヤリティの評価、ひいては大規模言語モデルの学習データの一部としても応用されるようになりました。こうした背景には、長年にわたる調査手法の蓄積と、IT技術の融合があるといえます。

定量調査の手法と種類

定量調査には多彩な手法が存在し、目的や対象、リソースに応じて選択が行われます。代表的なものを以下に整理します。

1. アンケート調査(サーベイ)

最も一般的な定量調査として、質問項目をあらかじめ設定し、多くの回答者(サンプル)に回答を求める方法です。オンラインアンケートや紙ベース、電話調査など手段は様々ですが、Cookie規制が進む中でもファーストパーティデータを用いればユーザーの基本属性や購買履歴と紐づけられ、深い分析が可能となります。

2. 実験調査(フィールド実験・ラボ実験)

シナリオや条件を制御した状態で被験者の行動や反応を観察し、主に因果関係を探る際に用いられます。たとえば、ECサイトのUI/UXを変更したときのCVR変化を測るABテストも、広義の実験調査の一種です。

3. 定量的観察調査(エスノグラフィ)

ユーザーが自然環境下でどのように製品やサービスを使っているかを数値で記録する手法です。コミュニティ運営では、メンバーの投稿頻度やSNS広告クリック率を定点観測する方法が該当する場合があります。

4. パネル調査

同じ対象者(パネル)に継続的にアンケートやログを提供してもらい、長期的変化を追う手法。新商品の認知拡大やロイヤリティ向上のプロセスを時系列で分析するのに有効です。

これらの手法を組み合わせることで、調査対象の規模や精度を調整しながらPDCAサイクルを回し、マーケティングやUI/UX設計など多彩な分野へ成果を転用できます。SNS広告や検索連動型広告の効果測定でも定量調査は欠かせず、ユーザーの反応を数値的に把握したうえで広告費を最適化しつつコミュニティやDX施策と連携するのが理想的です。

定量調査の設計プロセスとポイント

定量調査を計画・実施する際には以下のプロセスが重要です。

1. 目的と調査仮説の設定

まず「何を明らかにしたいのか」を具体的に定めることが不可欠です。たとえば、SNS広告のクリック率を高めるにはどの要素が影響しているかを把握したい、あるいはキャンペーン前後のブランドイメージや態度変容を捉えたい、など、明確な仮説がなければ収集するデータや分析方法が曖昧になってしまいます。

2. 調査手法とサンプル設計

オンラインアンケートであれば、自社会員向けか調査会社の専用パネル向けか、サンプル数はどの程度にするかなどを決めます。母集団の代表性を確保しつつ、コミュニティメンバーなど特定層にフォーカスする際はスクリーニング基準を設けます。

3. 質問項目の作成

質問内容と回答形式(選択式、自由記述など)を決めます。ユーザーが離脱しないよう、UI/UXに配慮した回答画面デザインが重要です。

4. 実施と回収、集計・分析

アンケートやログ取得を開始し、定量データを回収します。分析では、クロス集計や多変量解析で仮説検証を行い、レポーティングを実施します。

5. レポーティングと施策検討

最後に、結果を視覚化し、グラフやインフォグラフィックなどを使って社内外のステークホルダーへ共有します。Cookie規制などの外部要因やコミュニティでの反応を踏まえ、どの施策を打つかを決める段階で、定性調査(デプスインタビュー等)の結果を組み合わせると、ロイヤリティとCVRを同時に狙う施策が設計しやすくなります。

定量調査が果たす役割—例としてのDXやPDCA

DX(デジタルトランスフォーメーション)が広がる中、企業はデータを駆使してユーザー体験を最適化しようとしています。その一端として、定量調査を活用する場面は増加傾向にあります。たとえば、UI/UXの改善を行う際、ユーザーの行動ログを数値化して把握することで、離脱率やフォーム入力率などを綿密に追跡できます。

こうした指標を週次・月次でレビューし、ABテストやEFOの施策を加えつつCVR向上を図るのがPDCAサイクルの基本です。定量調査によって得られた数値データが、次のPlan(計画)段階で施策の優先順位を決める根拠となり、コミュニティでの定性フィードバックと合わせて「どの機能が最も改善効果をもたらすか」を絞り込みやすくなります。

定量調査の限界と定性調査との補完

定量調査は消費者行動を数値で捉えることに優れる一方で、なぜその行動をとるのか、どのような感情が背景にあるのかを深く理解することは苦手とされます。選択式のアンケートでは、回答パターンの枠が限られるため、被験者が持つ個別の動機や状況を十分に言語化できない場合があります。そうした部分を把握するには、デプスインタビューのような定性調査が不可欠です。

また、数値データだけでは見えにくい分野(たとえばフェムテックやBtoBソリューションのごく小規模ターゲットなど)においては、サンプル数を確保するのが難しかったり、希少なユーザー層から十分な情報を引き出せないこともあります。このときは、フォーカスグループインタビューや観察研究などの手法と組み合わせることで、より多面的な市場理解が可能となるでしょう。

さらに、定量調査の結果が何らかのイノベーションや差別化につながるかは、企業の意図的な分析とPDCAが大きく影響します。数字の評価にばかり目が向くと、コモディティ化した市場での価格競争に陥る恐れがあり、先端技術や独自のブランドストーリーを軽視してしまう場合もあります。そのため、DX戦略やコミュニティ形成とセットで、定量調査の結果をどう施策に落とし込むかが成功の分かれ目です。

さらに、定量調査の結果が何らかのイノベーションや差別化につながるかは、企業の意図的な分析とPDCAが大きく影響します。数字の評価にばかり目が向くと、コモディティ化した市場での価格競争に陥る恐れがあり、先端技術や独自のブランドストーリーを軽視してしまう場合もあります。そのため、DX戦略やコミュニティ形成とセットで、定量調査の結果をどう施策に落とし込むかが成功の分かれ目です。

具体的事例—定量調査の実践

事例1:化粧品ブランドのCVR向上策
ある化粧品ブランドは、ウェブサイトのランディングページに対しABテストを実施し、各バージョンでの購入率や滞在時間などを定量的に評価しました。Cookie規制によるサードパーティトラッキングの制限を受けつつも、自社ログをファーストパーティデータとして活用し、週次でCVRの変動をモニタリング。さらにEFOを組み合わせ、フォーム項目を減らしたバージョンと、ステップメールで追加情報を提供するバージョンを比較分析した結果、離脱率が大幅に減少し、ブランドロイヤリティの向上も確認できたというレポートが残っています。

事例2:サブスクサービスのNPS向上調査
サブスク型のクラウドサービス企業は、リテンション率改善を目的にNPS®(顧客推奨度)を軸にした定量調査を展開しました。ユーザーをコミュニティへ誘導し、アンケートで「推奨度」を数値的に集計しつつ、さらに追加質問で満足度の細かい要素(機能、価格、サポートなど)を特定。オンラインアンケートと顧客データベースを連動してPDCAを回し、週次の施策検証でサポートレスポンスを改善したところ、NPS®が顕著に上昇。広告費を追加投入することなく、ユーザー間での口コミ(WOM)が増えたという報告があります。

いずれの事例も定量調査を核としながら、SNS広告やコミュニティの意見、デプスインタビューを組み合わせて仮説を検証した点が成功の秘訣となっています。

定量調査のこれから—マルチモーダル解析やAIとの融合

DXが深まるにつれて、大規模言語モデル(LLM)やマルチモーダル解析が進化し、企業は文字だけでなく画像や音声データからもユーザーの反応を拾う環境を手に入れつつあります。こうしたテクノロジーの進歩が、定量調査の領域にも新たな可能性をもたらすでしょう。

たとえば、写真や動画をAIが解析して笑顔度や注視時間などを数値化することで、従来のアンケートや行動ログだけでは得られなかったデータを定量化できるようになるかもしれません。SNS広告に対してユーザーがどう反応するかをリアルタイムに測定し、Cookieなしでも広告費の最適化を行う企業も出てくると考えられます。AIエージェントと組み合わせることで、インタラクションの中から自動的に要因を抽出し、PDCAを回す工程が自動化される未来もあり得るでしょう。

一方で、プライバシー保護や誤情報のリスク、コミュニティへの丁寧な対応など社会的・倫理的な課題も増すと考えられます。定量調査そのものが悪用される可能性もあり、Cookie規制やプライバシー規制の強化とどう共存するかは、企業や調査機関が継続的に考えていくべきテーマとなるでしょう。総じて、デジタル技術と定量調査の融合は、これからのリサーチ分野を大きく形作る鍵になると期待されています。

まとめ

定量調査(Quantitative Research)とは、数値データを収集・分析して仮説を検証する調査手法であり、アンケートや実験、観察などを通じて統計的な裏付けを得る点が大きな特徴です。企業がCookie規制や広告費の高騰、SNS広告の激化といった状況に対応しながら、PDCAサイクルやABテストでCVR向上やNPS®改善を行うには、行動ログやコミュニティの声を定量的に捉えられるかが重要となります。

一方、数値化された情報だけではユーザーの深層心理や潜在的ニーズを掴みきれず、コモディティ化の脅威から抜け出しにくい場合もあるため、定性調査との相互補完が推奨されています。デプスインタビューやフォーカスグループなどの定性手法で「なぜそうなのか」を把握し、定量調査で「どのくらいの規模で」「どのセグメントに特徴があるか」を明らかにするのが、総合的な戦略構築にとって効果的です。

AIエージェントや大規模言語モデル、マルチモーダル解析といった技術の進歩に伴い、定量調査はより大きなデータセットと多様なメディアを扱う余地が出てきました。しかし、プライバシーや倫理面への配慮が求められる中で、ファーストパーティデータやコミュニティへのアプローチを強化しながら、定量・定性双方の利点を活かす柔軟な姿勢が成功の鍵となるでしょう。こうした取り組みを通じて、企業はDX時代の混迷する市場でも、ユーザー理解に基づく確固たる競争力を確立できる可能性を高めるのです。

注:NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、NICE Systems, Inc.の登録商標又はサービスマークです。

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