ベトナム消費者の6年にみる、高い景況感と旧正月「テト」で動く消費者心理とは?| Macromill Weekly Index Asiaで振り返る消費者マインド【ベトナム編】

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リサーチャーコラム

公開日:2026/10/6(火)

ベトナムといえば、料理をはじめ、自然やリゾート、また史跡や都市巡りなどの観光を楽しめるイメージの一方、経済発展著しいアジア諸国の中でも急速な成長を続けている国としても知られています。

本記事では、マクロミルが定点観測を続ける「Macromill Weekly Index Asia」のデータをもとに、約6年間にわたるベトナム消費者のリアルなマインド変化を紐解きます。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の状況や国内・海外の政治経済情勢などが、人々の現状認識や消費心理にどのような影響を与えたのかを振り返っていきます。

具体的には、「景況感」「物価変動感」「消費者気分」という3つの指標を軸に、短期的な感情の揺れ動きから中長期的なトレンドまでを詳しく分析しています。

ベトナム消費者の近年の姿や社会全体のムードを、データを通じてぜひ体感してみてください。

監修

Macromill News 事務局

監修:株式会社マクロミル マーケティングユニット

20万人以上が登録するマーケティングメディア「Macromill News」を起点に、マーケティング知見や消費者インサイトに関わる情報を発信。

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【1】アジア消費者の生活観測定点調査「Macromill Weekly Index Asia」

本シリーズでは、マクロミルがアジアの主要地域で実施している消費者の生活観測定点調査「Macromill Weekly Index Asia」(注1)を振り返ります。
今回はシリーズ5回目で、「ベトナム」の2020年代を振り返ります。
消費者定点観測調査は、消費者の「今」を即時性をもってとらえたり、季節変動や中長期的なトレンド変化を確認したりすることができます。近年注目が高まる「オルタナティブデータ」(公的統計を補完するデータ)としての役割も果たしています(注2)。

【2】日本とベトナムの関わり ~日本の貿易相手国としての重要性が急上昇

1975年にベトナム戦争が終結し、翌1976年に南北統一がなされてから2026年で50年になります。1986年にはドイモイ政策を採択し、1990年代以降は経済発展も大きく進みました。
日本との経済的な関わりを見ても、2008年までは日本の貿易輸出相手国としてベトナムは20位以降でしたが、その後2010年代半ばにかけて一気に順位が上昇し、この10年ほどは9~10位前後に位置しています(図表1)。日本にとっても、ベトナム市場の重要性が非常に高まった結果と言えるでしょう。

【図表1】日本の貿易輸出国ランキングにおけるベトナムの順位(1999~2025年)

【図表1】日本の貿易輸出国ランキングにおけるベトナムの順位(1999~2025年)

日本貿易振興機構「ドル建て貿易概況」(日本の貿易相手国 TOP 50)より作成。

訪日旅行者(インバウンド旅行者)数を見ると、2025年にはベトナムからは約68万人が日本を訪れました(図表2)。これは訪日旅行者ランキングで世界11位です。

【図表2】訪日旅行者数(インバウンド旅行者数)国・地域別割合(2025年、上位15カ国・地域)

【図表2】訪日旅行者数(インバウンド旅行者数) 国・地域別割合(2025年、上位15カ国・地域)

日本政府観光局(JNTO)「訪日外客統計」(国籍/月別 訪日外客数(2003年~2026年))より作成。

これらを前提に、「Macromill Weekly Index Asia」のベトナム調査結果の主要指標をもとに、6年間のベトナム消費者の動向を振り返っていきましょう。

※なお、ベトナム調査はグレーター・ハノイ地域(ハノイ首都圏)およびグレーター・ホーチミン地域(ホーチミン都市圏)を対象としていますので、以下の本記事内でのデータ動向は主として両都市圏を指すものとご理解ください。回答者は両都市圏で半数ずつとなっており、ここでは全体値をもとに分析します。また、ベトナムは2020年4月末から調査を開始したので、本記事では2026年6月までの約6年間のデータを振り返ります。

【3】景況感の変化

まず、「景況感」(消費者から見た、身の回りの景気の認識)から見ていきましょう(図表3)。
景況感は、以下の2つの指標を測定しています。

●現況指数=現在の身の回りの景気について、「1.よい」~「5.悪い」で評価。
●先行指数=2~3カ月先の身の回りの景気見通しについて、「1.よくなる」~「5.悪くなる」で評価。
※いずれも、5段階に100、75、50、25、0点を与えてインデックス化。

【図表3】景況感の変化(2020年4月末~2026年6月)

【図表3】景況感の変化(2020年4月末~2026年6月)

データ:「Macromill Weekly Index Asia」より。

この数年間を通じて「現況指数」は55ポイントを超える週が多く、また「先行指数」は60ポイントを超える週が多い結果となっており、全般には景況感は高く推移しています。
実際、ベトナムでは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が特に強かった2020~21年でもGDPは年間3%近い成長を遂げ、その後22年には8.5%、23年は5.1%、24年は7.1%など高い経済成長が続いています(注3)。
ただし、時期による変動も見られます。より詳細に結果を検討していきましょう。

<コロナ禍の影響(2020~21年)>
2020年は新型コロナの感染者数が1日平均10人未満の時期も多く、ベトナムでは初期の封じ込めに成功しました。しかし同年8月には、初の死者が出るなど大きな混乱があり(注4)、7~8月頃は景況感も著しく低下しました。
また、21年5月頃からはデルタ株流行による感染者が急増し、7月にはホーチミン市でロックダウン措置が開始されました。感染の波のピークとなった同年8月頃には「現況指数」が45を下回るなど、ベトナム調査の中では最も低い景況感を記録しました。
その後、政府が「ウィズコロナ」政策をとったことやワクチン接種の開始などにより、景況感は回復に向かいました。

<年間を通じて高い景況感(2022年)>
2022年は、「現況指数」が60ポイント以上の週や、「先行指数」が65を超える週も多くあり、景況感の高い年でした。
同年2~3月にはオミクロン株流行による感染者数の急増や、ロシアのウクライナ侵攻前後からのガソリンや諸費用の高騰を受け、一時的に景況感が低下しましたが、4月頃から再び上昇に向かっています。

<若干の停滞と回復(2023~24年)>
その後、2023年は徐々に景況感が低下してきました。この時期の背景としては、世界的な物価上昇がベトナムの輸出産業に影響を及ぼしたことや、国内では大手不動産会社の資金難に端を発する不動産・金融市場の混乱などがあり、それが回答結果に現れていると言えるでしょう。
しかし2024年には、ベトナム政府が中期の半導体戦略を打ち出し、米国との連携も強化されるといった動きがあり、景況感が再度持ち直す傾向が見られました。特に24年前半を中心に「先行指数」が「現況指数」より比較的高い水準にあったのは、消費者の回復への期待や予想が現れていた結果と言えるでしょう。

<さらに高い景況感維持と、イラン攻撃の影響(2025~26年)>
2025年も前年からの好調さは続き、「現況指数」が60ポイントを超えた週が多くなりました。
しかし、26年2月の米国のイラン攻撃によるホルムズ海峡封鎖状態などにより、ベトナム消費者の景況感も近年の中では比較的大きな低下となったことがわかります。

【4】物価変動感の変化

次に、各国の消費者にとっては重要な問題である「物価」に対する認識です(図表4)。
「物価変動」は、以下の2つの指標を測定しています。

●物価変動指数(対前月)=先月と比べた物価について、「1.とても上がった」~「5.とても下がった」で評価。
●予想物価指数(2~3カ月先)=2~3カ月先の物価見通しについて、「1.とても上がる」~「5.とても下がる」で評価。
※いずれも、5段階に120、110、100、90、80点を与えてインデックス化。

【図表4】物価変動感の変化(2020年4月末~2026年6月)

【図表4】物価変動感の変化(2020年4月末~2026年6月)

データ:「Macromill Weekly Index Asia」より。

<季節変動要因>
周期的な変動として、各年とも年末頃から体感物価が上昇していき、1~2月を過ぎるとその水準が大きく下がるサイクルが見られます。
ベトナムでは、他のいくつかのアジア諸国でも見られるように「旧正月」を祝います。旧暦のため日付は年によって異なりますが、元日に当たる「テト」はおおむね1月下旬から2月中旬となり、テトの前後は大型連休となります。
この時期は消費が活発になったり、祝祭用の消費ニーズが発生したりすることもあり、消費者心理としてはインフレ傾向が強まるように感じられるようです。

<他の経済・社会要因>
季節変動以外では、経済要因や社会要因と考えられる動きも見られます。
まずは、2020~22年頃は「コロナ禍」の影響が強く見られます。例えば21年7月以降は、デルタ株流行に伴うホーチミン市のロックダウン(都市封鎖)などで供給の混乱もあり、一時的な価格の混乱も見られたようで、消費者から見た「物価指数(対前月)」も大きく上昇しました。
その後も22年前半頃までは、経済活動の再開に加え、ロシア・ウクライナ情勢によるエネルギー費用などの高騰の影響で、比較的短期間に体感物価が急上昇する時期も見られました。
また直近では、2026年の旧正月後の落ち着きの後、米国のイラン攻撃による影響から、3月頃には再び指数が急上昇しました。しかし、4月には上昇幅が収まりつつある傾向もうかがえます。

【5】 消費者気分(センチメント)の変化

最後に、回答者の「1週間の気分」を尋ねた質問の結果を振り返ります(図表5)。

●1週間の気分=「うれしかった」「悲しかった」「楽しかった」「腹が立った」「落ち着いた」「憂鬱だった」「わくわくした」「不安だった」から選択(複数回答)。

【図表5】消費者気分(センチメント)の変化(2020年4月末~2026年6月)

 【図表5】消費者気分(センチメント)の変化(2020年4月末~2026年6月)

データ:「Macromill Weekly Index Asia」より。

<特にポジティブ気分が高まる旧正月時期>
ベトナム調査では全体にポジティブ選択肢のスコアが高く、例えば「楽しかった」はほとんどの週で50%以上、「うれしかった」「落ち着いた」も40%前後の週が多く、反対に「憂鬱だった」「悲しかった」などネガティブ選択肢は低い週が大半です。
その中でも、毎年「テト」(旧正月の元日)を含む休暇時期(1月後半から2月中旬頃。年によって変動)には、もともと高い「楽しかった」「落ち着いた」などのポジティブ気分がさらに上昇し、ネガティブ気分は低下する傾向が強まります。
例えば2022年のテトは2月1日で、同年の2月第1週調査では「楽しかった」が59%、「落ち着いた」が50%まで上昇し、前後の時期と比べてもさらに高くなっていることがわかります。一方、「不安だった」は18%と低くなりました。

<強いネガティブ気分をもたらしたパンデミックや災害などの事象>
その他に、社会的な出来事も消費者の気分に大きな影響を与えることがあります。
最たる例は新型コロナの影響です。既に述べたようにベトナム国内では初期は感染者数の抑制に成功していましたが、数度の感染の波が発生した際には消費者のネガティブな気持ちが強まりました。最初の死者が出た2020年8月には「不安だった」が初めて30%に達しました。
デルタ株が流行した2021年5月以降には「不安だった」はさらに大きく高まりました。ホーチミン市では7月から厳しいロックダウンも実施され、同年8月には「不安だった」は全体値で40%を超えた週もありました。これらの時期には、反対に「楽しかった」「わくわくした」などは大きく低下していることも確認できます。
2022年3月頃のオミクロン株流行の時期にも同様の傾向は見られましたが、重症化するケースが減少したこともあり、短期間でネガティブ気分は低下していきました。
その他にも、例えば2024年9月にはハノイを含む北部を中心に、台風による甚大な被害が発生したため、ネガティブ気分の上昇とポジティブ気分の低下が大きく見られました。

まとめ

この記事では、「Macromill Weekly Index Asia」という消費者定点観測調査で得られるデータのメリットを活用して、ベトナム(ハノイ首都圏およびホーチミン都市圏)の6年間にわたる結果を、(1)景況感、(2)物価変動感、(3)消費者気分(センチメント)という3点から振り返りました。
次回は、中国について結果を振り返っていきたいと思います。


(注1)「Macromill Weekly Index Asia」の詳細は下記よりご覧いただけます(毎週の結果速報など)。
https://www.macromill.com/service/weeklyindex/asia/

(注2)オルタナティブデータとしての活用例として、例えば日本の「Macromill Weekly Index」は、内閣府の「月例経済報告等に関する関係閣僚会議資料」などでも活用されている。
https://www.macromill.com/press/info/20201222.html

(注3)世界銀行データによる。
https://data.worldbank.org/indicator/NY.GDP.MKTP.KD.ZG?locations=VN

(注4)ジョン・ホプキンス大学コロナウイルス・リソースセンターのデータによる。
https://coronavirus.jhu.edu/region/vietnam

監修

Macromill News 事務局

監修:株式会社マクロミル マーケティングユニット

20万人以上が登録するマーケティングメディア「Macromill News」を起点に、マーケティング知見や消費者インサイトに関わる情報を発信。

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著者の紹介

熊谷信司

株式会社マクロミル マクロミル・グローバルリサーチ・インスティテュート シニアフェロー

熊谷 信司

東京大学大学院教育学研究科修了。総合調査会社勤務を経て、マクロミル入社後はリサーチャーとして国内外の数々の調査プロジェクトを担当し、現在は海外調査の知見創出・情報発信、海外消費者定点調査、産学連携による研究・教育の取り組み、業界団体委員など多岐に活動。専門社会調査士。主著『グローバル・マーケティング・リサーチの考え方 -海外展開する企業のための調査の基本』(白桃書房、2025年)。

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