
データが語るインドネシアの6年!「ラマダン」明けの消費心理から特有のポジティブ気質まで読み解く| Macromill Weekly Index Asiaで振り返る消費者マインド【インドネシア編】
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公開日:2026/8/26(水)
世界で4番目、ASEANでは最多の人口を有する国・インドネシア。人口の9割近くがイスラム教徒であり、マレーシアと共にASEANの中でイスラム文化圏に属する地域としても知られています。
本記事では、マクロミルが定点観測を続ける「Macromill Weekly Index Asia」のデータをもとに、約6年間にわたるインドネシア消費者のリアルなマインド変化を紐解きます。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の状況や国内・海外の政治経済情勢などが、人々の現状認識や消費心理にどのような影響を与えたのかを振り返っていきます。具体的には、「景況感」「物価変動感」「消費者気分」という3つの指標を軸に、短期的な感情の揺れ動きから中長期的なトレンドまでを詳しく分析しています。
インドネシア消費者の近年の姿や社会全体のムードを、データを通じてぜひ体感してみてください。
- 【1】 アジア消費者の生活観測定点調査「Macromill Weekly Index Asia」
- 【2】 日本とインドネシアの関わり
- 【3】 景況感の変化
- 【4】 景況感のデータ比較
- 【5】 物価変動感の変化
- 【6】 消費者気分(センチメント)の変化
- まとめ
【1】 アジア消費者の生活観測定点調査「Macromill Weekly Index Asia」
本シリーズでは、マクロミルがアジアの主要地域で実施している消費者の生活観測定点調査「Macromill Weekly Index Asia」(注1)を振り返ります。
シリーズ4回目の今回は、「インドネシア」をレビューします。
消費者定点観測調査は、消費者の「今」を即時性をもってとらえたり、季節変動や中長期的なトレンド変化を確認したりすることができます。近年注目が高まる「オルタナティブデータ」(公的統計を補完するデータ)としての役割も果たしています(注2)。
【2】 日本とインドネシアの関わり
日本との貿易を見ると、インドネシアへの輸出額は15位で英国とほぼ同額、インドネシアからの輸入額は10位で同じASEANのベトナムやタイに近い金額です(図表1)。
【図表1】 日本の主要貿易相手国・地域(2025年、上位15ヶ国・地域)

日本貿易振興機構「ドル建て貿易概況」(日本の貿易相手国 TOP 50)より作成。
訪日旅行者(インバウンド旅行者)数を見ると、2025年ではインドネシアからは約64万人が日本を訪れており、ベトナムやマレーシアからの訪日旅行者数とほぼ同数でした(図表2)。
【図表2】 訪日旅行者数(インバウンド旅行者数) 国・地域別割合(2025年、上位15ヶ国・地域)

日本政府観光局(JNTO)「訪日外客統計」(国籍/月別 訪日外客数(2003年~2026年))より作成。
これらを前提に、「Macromill Weekly Index Asia」のインドネシア(ジャカルタ首都圏)での消費者動向を振り返っていきましょう。
※インドネシア調査はグレーター・ジャカルタ地域(ジャカルタ首都圏(ジャボデタベック))を対象としていますので、以下の本記事内でのデータ動向は、主としてジャカルタ首都圏を指すものとご理解ください。また、インドネシアは2020年4月末から調査を開始したので、本記事では2026年5月までの約6年間のデータを振り返ります。
【3】 景況感の変化
まず、「景況感」(消費者から見た、身の回りの景気の認識)から見ていきましょう(図表3)。
景況感は、以下の2つの指標を測定しています。
●現況指数=現在の身の回りの景気について、「1.よい」~「5.悪い」で評価。
●先行指数=2~3カ月先の身の回りの景気見通しについて、「1.よくなる」~「5.悪くなる」で評価。
※いずれも、5段階に100、75、50、25、0点を与えてインデックス化。
【図表3】 景況感の変化(2020年4月末~2026年5月)

データ:「Macromill Weekly Index Asia」より。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が深刻だった時期を除き、「現況指数」は55~60ポイントを超える週が多く、また「先行指数」は65ポイントを超える週が多いなど、全般には高い景況感の数字が出ています。
実際、インドネシア経済は「コロナ禍」による一時的な落ち込みの後、2022年以降は再び年5%台の成長率を維持しています(注3)。
しかし図表3を見ると、消費者の感じる景況感には、時期による変動も見られます。より詳細に結果を検討していきましょう。
<コロナ禍で景況感は大きな上下を繰り返す(2020年4月~21年)>
インドネシアでの調査開始時期は、新型コロナが世界的な拡大を始めた直後の2020年4月末です。インドネシアでも既に国内感染者が現れていたため、景況感は非常に低い状態でした。
その後、景況感は持ち直したものの、経済成長の悪化や20年9月の大規模な行動制限などによる景気・雇用面の悪化認識が広まり、9~10月には景況感も大きく低下しました。
2021年前半まで景況感は再び回復基調となりましたが、21年6月頃からデルタ株流行によって感染者数が激増し、7月には緊急活動制限措置もとられ、3カ月ほど景況感が落ち込みました。その後は輸出が好調になったこともあり、景況感は再度大きく上昇に転じました。
<コロナ禍からの脱却、高い景況感を維持(2022~23年)>
2022年前半は、2月頃からオミクロン株が大流行し、前年のデルタ株流行時を上回るほどの感染者数が出た一方、死者数は以前より非常に低い水準にとどまりました(注4)。また、同時期にロシアによるウクライナ侵攻も始まり、世界的な物価上昇の動きも強まりましたが、インドネシアでは石炭やLNG等の資源輸出が好調となりました。
こうしたことから、景況感は前年までのコロナの「波」の時ほどの大きな低下には至らず、一定の高さを維持しました。
その後もインフレ抑制のための燃料代引き上げなどはありましたが、行動制限や移動制限も緩和が進み、2023年まで景況感は総じて高い水準を維持したことがわかります。
<成長は続くが景況感はやや鈍化(2024年~)>
2024年2月の大統領選挙の結果を受け、プラボウォ氏がジョコ氏に代わって10月から大統領に就任しました。24年から25年前半にかけては、消費者の景況感には徐々に低下が見られます。コロナ禍からの回復が一段落したことや、インフレの継続など、いくつかの要因によって徐々に消費に対する引き締め気分が出てきたためかと推測されます。
また、2026年の米国によるイラン攻撃開始直後にも景況感は下がり、その後の週も「先行指数」は65ポイント未満にとどまっています。絶対水準としては依然として高いものの、それまでに比べるとやや先行きにも懸念が出てきていると言えるでしょう。
このように、ジャカルタ首都圏の消費者の景況感は、国内外の社会経済状況の影響を受けて刻々と変化していることがわかります。
【4】 景況感のデータ比較
ここで「Macromill Weekly Index Asia」のデータと、インドネシア銀行が実施・発表している統計調査データを比較してみましょう(図表4)。
1つは「CECI」(現在の経済状況指数)で、「Macromill Weekly Index Asia」でいえば「現況指数」に近いものと言えるでしょう。もう1つは「CEI」(消費者期待指数、6カ月後の経済状況の見込み)で、「Macromill Weekly Index Asia」でいえば「先行指数(2~3カ月後の景気予想)」に近いものです。
指数の基準値は「Macromill Weekly Index Asia」の現況指数・先行指数(50が基準)とは異なり、CECI・CEIでは100となります。
ここで用いるインドネシア銀行データは、都市別データの「ジャカルタ」の値を用いました。また、CECIおよびCEIは月ごとの指標のため、毎週の「Macromill Weekly Index Asia」データも、各月の平均値に計算し直して比較を行いました。
【図表4】 景況感についての「Macromill Weekly Index Asia」(=左軸)と、「CECI(現在経済状況指数)」・「CEI(消費者期待指数)」(=右軸)の比較

CECI・CEIはインドネシア銀行のデータをもとに作成(ジャカルタ)。
「Macromill Weekly Index Asia」は各月の平均値を算出。
マクロミルデータとインドネシア銀行データは、指標の単位や評価内容、調査方法などが同じではないため単純比較は難しいですが、ここでは両者のデータの上下の動き(変動)に着目します。
全般的には、両者のデータとも2022年くらいまでのコロナ禍の状況変化による景況感の大きな上下や、23~24年頃の比較的安定した景況感の高さなど、動きには共通性が高いことがわかります。一方で、2025年頃には、前節で見たようにマクロミルデータでは景況感がやや低下傾向でしたが、インドネシア銀行データではそのような傾向はあまり出ていないといった違いも見られました(注5)。
【5】 物価変動感の変化
次に、各国の消費者にとっては重要な問題である「物価」に対する認識です(図表5)。
「物価変動」は、以下の2つの指標を測定しています。
●物価変動指数(対前月)=先月と比べた物価について、「1.とても上がった」~「5.とても下がった」で評価。
●予想物価指数(2~3カ月先)=2~3カ月先の物価見通しについて、「1.とても上がる」~「5.とても下がる」で評価。
※いずれも、5段階に120、110、100、90、80点を与えてインデックス化。
あわせて、図表5には世界銀行データに基づく各年の「消費者物価上昇率」(インフレ率)も掲載しました(ここで掲載しているデータは、インドネシア全国のもの)。
【図表5】 物価変動感の変化(2020年4月末~2026年5月)と消費者物価指数

「物価変動指数(対前月)」および「予想物価指数(2~3カ月先)」は「Macromill Weekly Index Asia」より。
「消費者物価上昇率」は世界銀行データより。
ここでもいくつかの時期別に、動きを見ていきましょう。
なお、インドネシアでは、例年「ラマダン」(イスラム教の断食月、日没後に豪華な食事をする機会が増える)と、その後の大祭である「レバラン」の時期には消費が増えるため、食料品などの価格が上昇する現象が見られます。このため、年によってラマダン・レバランの時期は少しずつ異なりますが、例年3~4月頃は「物価変動指数(対前月)」が上昇する傾向にあることがわかります。
以下では、それ以外の大きな要因について見ていきます。
<コロナ禍で抑制された物価上昇感覚(2020年~21年)>
2020~21年は、新型コロナの影響で実際の物価上昇率は各年とも2%未満と低めでした(「コロナ前」の2016~19年は、各年とも3%台)。
調査結果の「物価変動指数(対前月)」で消費者の感じていた物価の動きを見ると、新型コロナの状況などによって上下が見られますが、全体として106~108ポイント前後の週が多い結果でした。一定の物価上昇感覚は維持されていましたが、その後の時期のスコアと比べるとやや低めです。
ただし2021年9月頃からは、物価上昇を感じる(または見込む)回答者が増え、10月には「物価変動指数(対前月)」「予想物価指数(2~3カ月先)」ともに110ポイントを超える週が出てきました。
<物価上昇に対する実感が高まる(2022年)>
2022年は、上述したラマダン・レバランの時期でも、他の年よりさらに大きな物価上昇感が調査結果に表れています。これは3~4月に、ロシアのウクライナ侵攻による穀物価格上昇や、エネルギー価格の上昇もあったためと考えられます。
その後も7月頃には悪天候による野菜価格の高騰、9月には政府による燃料補助金削減の影響などで、体感物価が大きく上昇する時期がありました。
この年の実際の物価上昇率も前年+4.2%と、調査期間中では最も高い年となりました。
<物価上昇感に一定の落ち着き(2023年~24年)>
物価上昇感は徐々に落ち着き始めました。なお、2024年3月頃は、ラマダン・レバランに加え、コメ価格の高騰などもあったため、前後の年よりも大きな「物価変動指数(対前月)」の上昇が見られました。
しかし、それ以外の時期では「物価変動指数(対前月)」も「予想物価指数(2~3カ月先)」も、108~110ポイント前後で推移した週が多くなりました。物価上昇率も2023年は前年+3.7%、2024年は前年+2.2%と徐々に低下しています。
<物価上昇感は低めになったが、イラン攻撃等の海外情勢の影響(2025~26年)>
2025年も、ラマダン・レバラン時期の後は大きな変動はなく、一定の範囲内での物価上昇感が継続しました。
なお、2026年に入ると、米国のイラン攻撃に伴う燃料費などへの影響で、4月以降も「物価変動指数(対前月)」が110ポイントを超える週が多く、前年よりも高めに推移しています。加えて、食料品などの価格上昇も要因にあるようです。
このように、回答結果と実際の消費者物価の動きには整合的な関係が強く、インドネシア(ジャカルタ首都圏)の消費者も、物価に対して敏感に反応して回答していることがデータからうかがえます。
【6】 消費者気分(センチメント)の変化
最後に、回答者の「1週間の気分」を尋ねた質問の結果を振り返ります(図表6)。
●1週間の気分=「うれしかった」「悲しかった」「楽しかった」「腹が立った」「落ち着いた」「憂鬱だった」「わくわくした」「不安だった」から選択(複数回答)。
【図表6】 消費者気分(センチメント)の変化(2020年4月末~2026年5月)

データ:「Macromill Weekly Index Asia」より。
<新型コロナウイルス感染症との関連>
特に2020~21年頃にはコロナ禍の影響が強く見られます。既に述べたように調査開始直後の20年5月頃には、インドネシア国内でも感染者が発生しており、コロナ禍という未曾有の事態に対して「不安だった」が50%近くに上り、「悲しかった」のスコアも約30%と高い水準でした。
その後も「不安だった」は30%以上となる週が続き、21年7月をピークとしたデルタ株流行期には再度大きく上昇しました。「悲しかった」も21年半ば頃までは20%を超える週が多い状況でした。
しかし、2021年後半になると「不安だった」のスコアも低下していきます。「不安だった」「悲しかった」は、オミクロン株の流行となった22年2~3月頃には再び若干上昇しましたが(ロシアのウクライナ侵攻開始時期とも重なっています)、それも短期間で低下しました。
<総じてポジティブ気分が強く、レバラン時期には特に上昇>
上述のようにコロナ禍の深刻な時期には異なる傾向もありましたが、総じて「うれしかった」「楽しかった」「落ち着いた」「わくわくした」といった、ポジティブ気分が高いことがインドネシア消費者の特徴です。
その中でも、先ほども触れた「レバラン」(ラマダン明けの大祭)の時期にはポジティブ気分の上昇、または「不安だった」「悲しかった」などのネガティブ気分の低下傾向も確認できます。
ただし、2024年後半以降は、景況感の鈍化などと共に、これらのポジティブ気分も少しずつ低下し、一方で「不安だった」が再度少し上昇している傾向も見られます。
まとめ
この記事では、「Macromill Weekly Index Asia」という消費者定点観測調査で得られるデータのメリットを活用して、インドネシア(ジャカルタ首都圏)の6年間にわたる結果を、(1)景況感、(2)物価変動感、(3)消費者気分(センチメント)という3点から振り返りました。
次回は、ベトナムについて結果を振り返っていきたいと思います。
(注1)「Macromill Weekly Index Asia」の詳細は下記よりご覧いただけます(毎週の結果速報など)。
https://www.macromill.com/service/weeklyindex/asia/
(注2) オルタナティブデータとしての活用例として、例えば日本の「Macromill Weekly Index」は、内閣府の「月例経済報告等に関する関係閣僚会議資料」などでも活用されている。
https://www.macromill.com/press/info/20201222.html
(注3) 参照:インドネシア中央統計庁
https://www.bps.go.id/en/pressrelease/2026/02/05/2546/ekonomi-indonesia-tahun-2025-tumbuh-5-11-persen.html
(注4) 参照:ジョン・ホプキンス大学コロナウイルス・リソースセンター
https://coronavirus.jhu.edu/region/indonesia
(注5) 2025年前半の状況を加味すると、高級品目を対象とした付加価値税(PPN)の引き上げや、トランプ関税交渉の影響などがあり、一定の収入水準層以上が多いマクロミルデータでは、嗜好品への影響や輸出ビジネスなどに対する懸念などがより強めに出やすかった可能性などが考えられる。
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著者の紹介
株式会社マクロミル マクロミル・グローバルリサーチ・インスティテュート シニアフェロー
熊谷 信司
東京大学大学院教育学研究科修了。総合調査会社勤務を経て、マクロミル入社後はリサーチャーとして国内外の数々の調査プロジェクトを担当し、現在は海外調査の知見創出・情報発信、海外消費者定点調査、産学連携による研究・教育の取り組み、業界団体委員など多岐に活動。専門社会調査士。主著『グローバル・マーケティング・リサーチの考え方 -海外展開する企業のための調査の基本』(白桃書房、2025年)。
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