
ビジネスにおいて「戦略」と「戦術」の定義を混同すると、組織内の認識にずれが生じ、目標達成に影響する可能性があります。この記事では、戦略と戦術の根本的な違いやピラミッド構造による関係性をわかりやすく解説します。さらに、フレームワークを用いた具体的な立て方や企業のデータ活用事例も紹介し、現場で活用する際の考え方を解説します。
- 戦略と戦術の違いとは?まず押さえたい基本の定義
- 戦略と戦術の関係性をわかりやすく解説
- ビジネスにおける戦略と戦術の具体例
- 効果的な戦略の立て方
- 戦術の立て方
- 戦略・戦術の立案で活用したいフレームワーク
- 企業に学ぶ戦略と戦術の活用事例
- 戦略と戦術を検討する際のポイント
- まとめ
戦略と戦術の違いとは?まず押さえたい基本の定義
戦略とは中長期的な方針であり、戦術とはそれを実現する具体的な手段です。それぞれを詳しく解説します。
戦略とは
戦略とは、企業が目指す長期的な目標を達成するために立てる、大局的なシナリオや基本方針のことです。限られた経営資源である「ヒト・モノ・カネ・情報」を、どこにどれだけ投資するかの選択と集中を指します。何をやるかだけでなく、何をやらないかを決める判断であり、将来的な方向性を定める土台となります。
戦術とは
戦術とは、戦略によって定められた基本方針やシナリオを、具体的に実現するための実践的な手段や実行策のことです。市場の状況や競合の動きに合わせ、現場レベルで展開する短期的な施策を指します。戦術は、戦略との整合性があることで機能しやすくなり、業務プロセスやアクションプランへ落とし込まれます。
【表】戦略と戦術の違いを4つの視点で整理
戦略と戦術の主な違いを4つの視点から整理し、以下の表にまとめました。
| 視点 | 戦略 | 戦術 |
|---|---|---|
| 目的・役割 | 長期的な目標を達成するシナリオ | 戦略を実現する具体的な手段 |
| 期間 | 長期的・持続的 | 短期的・一時的 |
| 判断の主体 | 経営層・トップマネジメント | 現場の責任者・担当者 |
| 変更の可否 | 中長期的に運用されるが、環境変化に応じて見直す | 状況に応じて柔軟に変更する |
戦略が「何を達成するか」を描くのに対し、戦術は「どのように実行するか」を担います。
戦略・戦術・戦法の違い
戦略と戦術に加えて「戦法」という概念が存在します。戦法とは、戦術をさらに細分化した、個々の局面における具体的な手法やアクションのことです。戦略が「全体の計画」、戦術が「個別の施策」であるならば、戦法は「現場での実践技術」といえます。この3つを連動させることで、組織目標の達成に近づきます。
戦略と戦術の関係性をわかりやすく解説
戦略と戦術のどちらかが欠けると、施策の一貫性や実行力が損なわれる可能性があります。ここでは、両者の関係を解説します。
戦略・戦術・作戦のピラミッド構造
ビジネスの目的を果たすための構造は、上位から「目的・目標」「戦略」「作戦」「戦術」「戦法」というピラミッド型に分類されます。
最上位にある目標を達成するため、中長期的な方針である戦略が定められ、それを実現するために具体的な作戦や戦術へと細分化される仕組みです。各階層が上下で緊密に連動することにより、組織全体が一貫性を持って動くことが可能となります。
戦略だけ・戦術だけでは目標が達成できない理由
戦略だけが存在しても、現場が実行する具体的な戦術がなければ目標の実現が難しくなります。一方で、戦略のないまま戦術だけを乱発しても、場当たり的な行動となり一貫した成果につながりにくくなります。
優れた方針と実行手段が組み合わさることで成果が生まれるため、両者を切り離さず、連動させて展開することが重要です。
ビジネスにおける戦略と戦術の具体例
経営では「特定市場への集中」が戦略となり、「専用商品の開発」や「限定営業」が具体的な戦術に該当します。
経営・事業における戦略と戦術
経営や事業における戦略とは、たとえば「特定のニッチ市場へ経営資源を集中させ、シェアを拡大する」という中長期の方針です。
この方針を実現するための戦術として、「競合が少ない領域に絞った新製品開発」や「特定の地域に限定した営業活動」などの具体的な施策を展開します。戦略と戦術を一致させることで、事業成長につながる可能性があります。
マーケティングにおける戦略と戦術
マーケティングにおける戦略とは、「オンライン市場における自社ブランドの認知度を高める」といった大局的な目標です。この戦略に紐づく戦術として、「SNSを活用した動画広告の配信」や「オウンドメディアを通じた記事コンテンツの定期発信」などを実行します。
手段である戦術を先行させず、戦略に沿って選択することが重要です。
人事・デジタルマーケティングにおける戦略と戦術
人事の戦略では「DXを推進するIT人材の確保」を掲げ、戦術として「専門の採用ルート開拓」や「社内育成プログラムの構築」を動かします。
デジタルマーケティングの戦略でECサイトの売上向上を目標に、リピート購入を増やす方針を立てる場合は、戦術として「アクセス解析に基づく動線改善」や「リターゲティング広告の最適化」を実践し、成果へつなげます。
効果的な戦略の立て方
自社の強みや市場環境などの現状を客観的なデータで把握し、経営資源を集中させる基本方針を決定します。
自社の現状を把握して目標を設定する
戦略を構築する第一歩は、自社の経営資源や市場における立ち位置を把握することです。強みや弱みを客観的に分析した上で、目指すべき中長期の目標を数値や状態として設定しましょう。
現在地と目的地を正しく認識することが、現実的な方針を導き出すための土台として機能します。
データを基に課題を抽出し戦略の基本方針を決定する
現状の把握後は、目標達成を阻む要因をデータから特定し、解決すべき課題を抽出します。感覚に頼らず市場調査や顧客データなどの客観的な根拠を用いることで、経営資源を集中させる領域が明確になります。
この課題解決に向けた道筋こそが、組織が進むべき戦略の基本方針となります。
戦術の立て方
定まった戦略の方針に沿って戦略に合う手段を選択し、現場が日々実行できる具体的なタスクへ細分化します。
戦略に沿って具体的な手段を選択する
戦術を立てる際は、上位概念である戦略の方針から逸脱しない手段の選択が重要です。たとえば、特定のニッチ市場を狙う戦略であれば、広範囲への広告ではなくターゲットに絞った施策を選びます。
戦略という目的に対して、効率性やで費用対効果を検証し、具体的な実行プランを確定します。
短期目標を実行可能なアクションに分解する
選択した手段は、日々の業務として実行できる具体的なアクションまで細分化します。数か月単位の短期目標を、週次や日次のタスクに落とし込むことで、現場の担当者が迷わずに動ける状態を作ります。誰が、いつまでに、何を、どこまで行うかを明確にすることが、戦術を確実に遂行するためのポイントです。
戦略・戦術の立案で活用したいフレームワーク
戦略には3C分析やSWOT分析、戦術の具体化にはKPIツリーやWBSなどのフレームワークが活用されます。
戦略立案に役立つフレームワーク(SWOT分析・3C・PEST・STP・4P)
戦略立案には、マクロ環境を捉えるPESTや自社・競合・顧客を分析する3Cが有効です。さらに内部環境と外部環境を掛け合わせるSWOT分析により、自社の強みを生かす方針を検討しやすくなります。
ターゲットを定めるSTPによって戦略の基本方針が固まり、その方針を製品・価格・流通・プロモーションの4Pへ落とし込むことで、戦略を実行する戦術が形になります。STPで描いた方針に沿って4Pを設計することが、一貫性のある展開の土台となります。
戦術立案に役立つフレームワーク(KPIツリー・SMART・WBS)
戦術を具体化する際は、目標を細分化して可視化するKPIツリーが役立ちます。設定する目標は、明確性や測定可能性などを定めた「SMARTの法則」に準拠することで、現場での実行を後押しします。
さらに、業務の工程を網羅的に分解するWBS(作業分解構成図)を用いることで、担当者が行動しやすい計画へと落とし込めます。
これらのフレームワークを組み合わせることで、戦略として掲げた抽象的な方針が、日々の業務で実行可能なレベルのアクションへと変換しやすくなります。結果として、進捗の管理や軌道修正にも活用可能です。
企業に学ぶ戦略と戦術の活用事例
株式会社星野リゾートや株式会社池田模範堂の事例では、顧客データや調査データを活用した取り組みが紹介されています。
ブランド戦略をデータで支える|株式会社星野リゾート
株式会社星野リゾートでは、顧客の声を反映したブランド戦略を展開しています。アンケートなどの顧客データを分析し、各施設の強みや改善点を明確に把握する仕組みを構築しています。
蓄積したデータを基に、ターゲット層のニーズを踏まえたサービス施策を現場で実行し、顧客満足度の向上を目指しています。このように、大局的なブランド方針と、データに基づいた現場の細かな施策が密接に連動しています。
これが、競合との差別化を図る仕組みといえます。
※参照:星野リゾート様 – サブブランド戦略本格化とブランド定点調査データ活用
新商品開発を調査データで加速する|株式会社池田模範堂
株式会社池田模範堂は、市場調査や消費者動向のデータを基にした新商品開発に取り組んでいます。顧客の悩みやニーズを調査をデータから把握し開発戦略の基本方針を定め、それに応じた具体的な製品設計やプロモーション(戦術)を展開しています。
データという客観的根拠の活用により、市場ニーズを踏まえた商品展開に活用しています。確かなデータ分析に基づく方針決定が、施策検討や実行判断の支援につながっています。戦略と戦術の連携を考えるうえで参考になる事例です。
※参照:新商品開発を2カ月短縮。仮説作りのプロセス化で市場にない商品作りを大きく加速へ。
戦略と戦術を検討する際のポイント
大企業と中小企業では資源の配分方法が異なり、チーム内で方針を正確に共有して連動させることが重要です。
大企業と中小企業で重視すべき点は異なる
戦略や戦術の検討において、企業の規模に応じた視点の切り替えが必要です。豊富な経営資源を持つ大企業では、資源配分の方針を検討することが重要となります。一方で、資源が限られる中小企業では、限られた資源を特定領域へ集中させる戦略が有効な場合があります。自社の立ち位置を客観的に見極め、適切な方針を選ぶ必要があります。
チームで成果を上げるにも注意点がある
チームとして成果を目指すには、戦略や戦術を組織内で共有することが重要です。方針が曖昧なままでは、現場の行動にばらつきが生じて組織の力が分散します。全体の目標と個人の役割を明確に紐づけ、各メンバーが納得感を持って動ける環境を整えることで、戦略に沿った戦術を実行しやすくなります。
まとめ
戦略と戦術は、企業の目標達成を考えるうえで重要な概念です。大局的な方針である戦略を定め、それを具現化する具体的な手段として戦術を落とし込むことで、組織は一貫性を持って動くことができます。両者は役割こそ異なりますが、連動させることで成果につながりやすくなります。
戦略立案と戦術の実行を支える要素の1つが、客観的なデータです。株式会社マクロミルは、マーケティングリサーチを通じて消費者インサイトを提供し、データ利活用支援から広告配信やCRMなどの施策支援までを一気通貫で行う総合マーケティング支援企業です。データを起点とした戦略と戦術の設計にお悩みの際は、ぜひご相談ください。
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