
マーケティングリサーチは、データに基づいた客観的な意思決定を行うために欠かせないプロセスです。単なる情報の収集に留まらず、顧客の深層心理や行動原理を解き明かすことで、ビジネスの意思決定に必要な情報を提供する役割を担います。
しかしその重要性を理解していても、市場調査(マーケットリサーチ)との定義の違いが明確でなかったり、自社の課題に適した手法の選択に迷ったりするケースもあります。
本記事では、マーケティングリサーチの基本概念から、主要な8つの調査手法、実施の進め方について解説します。
自社の課題解決に向けて効果的なマーケティング戦略を立案したい方は、ぜひ参考にしてください。
- マーケティングリサーチとは
- 市場調査(マーケットリサーチ)との違い
- マーケティングリサーチの目的
- マーケティングリサーチの主な種類
- マーケティングリサーチの進め方
- マーケティングリサーチでよくある失敗3つ
- 内製・外注の判断基準
- マーケティングリサーチは調査目的に適した手法を選ぼう

マーケティングリサーチとは
マーケティングリサーチは、アンケートやインタビューなどを実施し、消費者の本音や行動を読み解くプロセスを指します。
データ収集だけでなく、集まった数字の裏側に「顧客にどんな感情があるのか」「なぜその行動に至ったのか」という理由を突き止めることに本質があります。
企業の主観や思い込みで判断するのではなく、顧客の声をデータとして収集し、顧客の視点から市場を分析するための手法の一つです。

市場調査(マーケットリサーチ)との違い
マーケティングリサーチと似た言葉として、市場調査(マーケットリサーチ)があります。この二つは以下のとおり役割が分かれています。
| マーケティングリサーチ | 市場調査(Market Research) | |
|---|---|---|
| 定義 | 「マーケティング活動」を最適化する。現状把握に加え、消費者の心理を探り、未来の戦略を立てるためのもの。 | 「市場」という特定の場の現状を把握する。数値や事実に基づき、市場の「今」を知るためのもの。 |
| 目的 | 「なぜ起きているか」の解明し、課題を解決する | 「今、何が起きているか」を客観視する |
| 対象 | ・消費者インサイト ・ブランドイメージ ・広告効果 など | ・市場規模 ・競合シェア ・顧客属性 ・景気動向 など |
| 時間軸 | 現在 ~ 未来(戦略・予測) | 過去 ~ 現在 |
市場調査は、いま市場がどうなっているかという現状把握が主な目的です。市場規模や競合のシェアを数値化し、現在地点を確認する作業といえます。
対してマーケティングリサーチは、これから何をすべきかという意思決定に重きを置きます。現状を把握したうえで、どうすれば売れるのか、どの層を狙うべきかといった未来の戦略を練るための材料を集める活動です。
市場調査の定義や具体的な手法については、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
>市場調査とは?マーケティングリサーチとの違いやメリット、代表的な9つの方法を解説

マーケティングリサーチの目的
マーケティングリサーチは、顧客のニーズを調査・分析し、勘や経験に頼った経営を避けるために行います。具体的には、主に以下2つの目的が考えられます。
- 新規事業・商品開発:市場のニーズを見極める
- 既存ビジネス:停滞の原因を可視化し改善する
新規事業・商品開発:市場のニーズを見極める
新しい事業を始めるときに最も怖いのは、市場ニーズに合わない商品を開発してしまうことです。作り手の情熱が強すぎると、客観的な視点が抜け落ちてしまいます。
マーケティングリサーチで顧客のリアルな声を把握し、ターゲット層の不満や期待を浮き彫りにすれば、自社や競合がまだ応えられていないニーズが見えてきます。商品開発を検討する際には、顧客自身がまだ気づいていない潜在的な欲求(インサイト)を見抜き、先回りして応えることが重要です。
既存ビジネス:停滞の原因を可視化し改善する
ビジネスが停滞しているとき、その原因を現場の感覚だけで判断するのは危険です。売れない理由が価格にあるのか、それとも機能やイメージにあるのかを明確にする必要があります。
マーケティングリサーチによって顧客が離脱した原因を特定できれば、対策を検討するための材料になります。現状の行き詰まりを打破するには、マーケティングリサーチによって市場のニーズを把握することが重要です。

マーケティングリサーチの主な種類
マーケティングリサーチの手法を間違えてしまうと、有効なデータが得られない可能性があります。ここでは主な手法を8つ紹介します。
- アンケート調査:定量データを効率よく集める
- インタビュー調査:顧客の本音を深掘りする
- 会場調査:指定場所で製品・サービスを体験してもらい評価を得る
- 観察調査:行動データをそのまま記録する
- ホームユーステスト:実際の使用環境で検証する
- デスクリサーチ:公開データから仮説を立てる
- SNS・口コミ分析:リアルな声を拾う
- A/Bテスト:施策の効果を数値で比較する
アンケート調査:定量データを効率よく集める
市場全体の傾向を数量データとして把握する際に用いられる手法です。
特にオンラインアンケートは、ウェブ上で数百人から数千人規模の回答を短期間で集められるため、商品・サービスの認知度や満足度の測定に向いています。
ただし、設問の作り方によっては回答が誘導され、正確なニーズを把握できないこともあるので注意が必要です。客観的な指標を得るには、先入観を排除した選択肢の設計が欠かせません。
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インタビュー調査:顧客の本音を深掘りする
インタビュー調査では、アンケートでは見えてこない「なぜそう思うのか」という深層心理を把握することが可能です。
一対一の対面、あるいは数人のグループで実施し、相手の表情や声のトーンから言葉以上の情報を読み取ります。1000人の「なんとなく」の意見より、1人の「本当に困っていること」のなかにこそ、新しい商品開発の示唆が得られる場合があります。
会場調査:指定場所で製品・サービスを体験してもらい評価を得る
会場調査は、発売前の試作品やパッケージを特定の会場で実際に手に取ってもらう手法です。その場でリアルな反応を観察できるため、使用感や第一印象を精度高く検証できます。
会場に調査対象者を集めることで、機密情報を守りながら短期間で集中的にデータを回収できるのが強みです。
観察調査:行動データをそのまま記録する
観察調査では、店頭などで顧客がどう動いているかや商品の選び方などを見ます。言葉による回答を求めず、対象者の行動をありのままに記録するのが特徴です。店舗内での歩き方や棚の前での視線の動きなど、無意識の行動を観察できる場合があります。
「普段は健康に気をつけている」と答える人が、実際にどの菓子パンを手に取ったのかを把握すると、マーケティングのヒントを得られるでしょう。
ホームユーステスト:実際の使用環境で検証する
ホームユーステストは、日用品や食品、家電などの商品を自宅に送り、数日から数週間、普段の生活で使ってもらう調査です。
会場調査のような非日常的な空間ではなく、自宅のキッチンや風呂場といった「現実の環境」での評価が得られるのが特徴です。
数回使って飽きられないか、生活の導線を邪魔しないかといった、長期的な継続利用の可能性を見極めるのに適しています。
デスクリサーチ:公開データから仮説を立てる
デスクリサーチは、独自に調査を始める前に官公庁の統計やシンクタンクのレポート、競合の決算資料などを分析する調査です。すでに世の中にある情報を整理することで、市場の全体像や大まかなトレンドは掴めるでしょう。
実際に顧客へのリサーチを始める前に、まずはデスクの上で徹底的に仮説を研ぎ澄ませることも重要です。
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SNS・口コミ分析:リアルな声を拾う
Twitter(X)やInstagram、掲示板などに投稿された、企業側がコントロールできない顧客の「生の感情」を分析します。
アンケートのような「用意された場」では出てこない、辛辣な批判や意外な活用方法が見つかることも珍しくありません。今この瞬間に何が話題になっているのかなど、熱量の高い声をリアルタイムで拾い上げるのに最適な手段です。
A/Bテスト:施策の効果を数値で比較する
バナー広告のデザインやサイトのキャッチコピーを2パターン用意し、どちらがより反応を得られるか、実際のユーザーで検証します。
会議室での議論によって決定するのではなく市場の反応を直接確認する方法の一つです。直感だけに頼るのではなく、客観的なデータをもとに改善していきます。

マーケティングリサーチの進め方
マーケティングリサーチを実施する際には、正しい手順を踏むことが大切です。場当たり的にアンケートをするのではなく、以下の流れで実施することで、より精度の高い回答を得られるでしょう。
1. リサーチクエスチョン(何を明らかにしたいか)を1文で定義する
マーケティングリサーチの実施にあたっては、事前の準備段階で調査目的を明確化します。まずは「何を明らかにしたいのか」を、曖昧な言葉を使わず1文に落とし込む作業から始めましょう。
ここが揺らいでいると、どれだけ大量のデータを集めても、何を明らかにしたかったのか分からなくなり、迷走することになります。関係者間でこの1文を共有し、共通認識を整理しておく必要があります。
2. 調査手法とサンプル数を決める
市場のニーズを数値で捉えるのか、消費者の深層心理を言葉で引き出すのかなど、導き出したい答えの性質に応じて、最適な調査手法を選びます。例えば、顧客の深い悩みを探るならインタビュー調査、市場のボリュームを見たいならインターネットでのアンケート調査が適しています。
また、サンプル数も重要です。少なすぎればデータに偏りが出てしまい、多すぎればコストが無駄に膨らむでしょう。サンプル数が少ないほど、調査結果と母集団全体の実態との間に生じる誤差(標本誤差)は大きくなります。この誤差をどの程度まで許容するかを、予算との兼ね合いで判断し、現実的なサンプル数を設定することが大切です。
3. データを収集する
実際にマーケティングリサーチを実行します。アンケート調査であれば設問の順序や言い回しが回答を左右するため、慎重に言葉を選ぶことが重要です。
自社で実施する場合は、対象者の属性を選定しましょう。調査会社に外注する場合は、こちらの意図が正しく伝わっているか、実務レベルで細かくすり合わせておく必要があります。
4. 収集したデータをクリーニングする
集めたデータには、ノイズが含まれる場合があります。設問を読み飛ばした適当な回答や、論理的に矛盾する数値を取り除く作業も欠かせません。
不純物が混ざったまま分析を始めれば、誤った結論を導き出すリスクが高まります。地味で時間のかかる工程ですが、データの純度を高める作業を飛ばさないようにしましょう。
データクリーニングについては、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
>データクリーニングとは?マーケティング施策での活用ポイントや注意点を解説
5. 事実と解釈を分けて分析する
分析で最も陥りやすいのが、自分の仮説に都合のいい解釈を「事実」だと思い込むことです。数字という揺るぎない事実と、そこから読み取れる個人の見解は、明確に切り分ける必要があります。
まずは客観的な傾向を整理したうえで、「なぜそうなったのか」の仮説を立てましょう。
6. 意思決定につながるレポートにまとめる
報告書は、調査結果を要約するだけのものではありません。経営陣や担当者が「明日から何をすべきか」を即座に判断できる内容に仕上げることが重要です。
分厚いレポートを用意しても、具体的なアクションが書かれていなければ活用されずに終わります。分析の結果、施策を進めるのか、見送るのか、リサーチの最後は必ず次の行動への提言で締めくくると有効です。

マーケティングリサーチでよくある失敗3つ
マーケティングリサーチはやり方を一つ間違えると、費用と時間をムダに浪費してしまうことになります。ここでは、マーケティングリサーチでよくある失敗3つを紹介します。
- サンプルバイアスに気づかず意思決定してしまう
- 確証バイアスで「見たい結果だけ」を読み取ってしまう
- 調査に時間をかけすぎて意思決定の機会を逃してしまう
サンプルバイアスに気づかず意思決定してしまう
調査対象が偏ると、結論がズレてしまうリスクがあります。例えば、新機能の評価を既存のロイヤルカスタマーだけに聞いて「高評価」と判断するのは危険です。その機能が新規顧客の獲得に繋がるかどうかは、今のファンに聞いても分かりません。
誰に聞くかという入り口を間違えれば、その後の分析がどれだけ緻密でも、導き出される答えは的外れなものになります。実施前に自分たちが本当に声を聴くべき相手は誰なのか、その属性を深堀して定義する時間を確保しましょう。
確証バイアスで「見たい結果だけ」を読み取ってしまう
誰しも仮説を肯定するデータばかりに目が行きがちです。企画を通したいという思いが強いほど、否定的な意見を無視し、好意的な回答だけをピックアップしてレポートに盛り込んでしまいます。
マーケティングリサーチは自分の考えを正当化するためのものではありません。むしろ、自分たちの思い込みに頼らず、リアルな顧客の声を可視化するために行うものです。耳の痛いデータにこそ、事業を失敗から救うヒントが隠されていると認識する必要があります。
調査に時間をかけすぎて意思決定の機会を逃してしまう
情報の精度を求めすぎるあまり、分析に数ヶ月を費やすのは適切とはいえません。市場の変化が激しい現代では、3ヶ月前のデータに基づいた決定はすでに手遅れである可能性があります。
完璧主義に陥ると、リサーチの結果が出る頃には競合に先行される可能性があります。

内製・外注の判断基準
自社でやるべき(内製)か、外注すべきかの判断は「客観性の必要度」と「専門スキル」で切り分けます。内製と外注の特徴は、以下のとおりです。
| 比較項目 | 内製(自社で実施) | 外注(調査会社へ依頼) |
|---|---|---|
| 向いている調査 | ・すぐに動向を知りたい ・予算が限られている ・社内向けの日常的な確認 | ・大規模な調査 ・高度な分析が必要なもの ・公平な第三者視点が必要なもの |
| コスト | 低い(実費のみ、人件費は別) | 高い(専門スキルへの報酬含む) |
| スピード | 早い(思い立ったらすぐ動ける) | 時間がかかる(調整や準備が必要) |
| 専門性・精度 | 担当者のスキルに依存する | 高い(プロのノウハウを活用できる) |
| 客観性 | 低い(自社有利のバイアスが出やすい) | 高い(公平・中立なデータが得られる) |
| ノウハウの蓄積 | 自社に知見が溜まる | 溜まりにくい(結果のみの受領になりがち) |
| 主な手法例 | ・簡易的なオンラインアンケート ・既存客インタビュー など | ・大規模なオンラインアンケート ・新規顧客インタビュー ・会場テスト(CLT) ・SNS分析 ・店舗観察 ・世論調査 ・多変量解析 など |
SNSの反応を追ったり、既存顧客に簡易的なアンケートを取ったりする場合は、スピード感のある内製が向いています。現場の担当者が直接顧客の声に触れることで、数字以上の肌感覚を得られるメリットも大きいです。
一方で、数千万単位の投資判断が伴う戦略立案や、自社のブランドイメージ調査などは外注を検討するのがおすすめです。自社でリサーチを行うと、どうしても身内びいきのバイアスが入り込んでしまう可能性があります。第三者の視点が必要なときや、統計学的な高度な分析が求められる場面では、専門会社に依頼すると効果的に実施できる場合があります。

マーケティングリサーチは調査目的に適した手法を選ぼう
マーケティングリサーチは経験や勘に頼らず、根拠に基づいた意思決定を行うためのプロセスの一つです。
本記事で解説したとおり、マーケティングリサーチを成功させるには、まず「何を明らかにしたいのか」を明確に定義し、目的に合った調査手法を選ぶことが重要です。リサーチクエスチョンが曖昧なまま調査を始めたり、手法の選定を誤ったりすると、コストばかりかかって意思決定に使えないデータが残るだけの結果になりかねません。
一方で、「社内にリソースがない」「調査設計や分析のノウハウが不足している」といった理由から、実施に踏み切れない担当者も多いのではないでしょうか。その場合は、調査会社の活用も選択肢の一つです。
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