ウェビナーとは?意味・メリット・開催方法・成功の秘訣まで徹底解説

「セミナーをやりたいが、会場を押さえるのが大変だ」
「全国の顧客に一度に情報を届けたい」
「イベントをもっと気軽に開催できたら…」

こうした悩みに応える形で、近年ますます活用されているのが「ウェビナー」です。聞き慣れてきた言葉ではありますが、「実際に何を指すのか?」「どう活用すべきか?」については、まだ十分に理解されていない部分もあります。

ウェビナーとは、Webとセミナーを掛け合わせた言葉で、「インターネット上で実施されるオンラインセミナー」のことを指します。リアルな会場を使わず、パソコンやスマートフォンの画面越しに、講師と参加者がつながるスタイルのセミナーです。コロナ禍で急速に普及したこの形式は、今やBtoBマーケティングの王道施策のひとつとなり、営業活動や顧客教育、ナーチャリングブランディングまで、さまざまな目的で活用されています。

本コラムでは、ウェビナーの意味や目的から、具体的な開催手順、集客のコツ、失敗を避けるポイント、成功事例、そして今後の展望まで、マーケティング視点での活用方法を体系的に解説していきます。

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ウェビナーの定義と語源

ウェビナー(Webinar)とは、「Web(インターネット)」と「Seminar(セミナー)」を組み合わせた造語です。もともとはアメリカのIT業界から広まり、Web会議やeラーニングの一環として使われていましたが、現在では企業のマーケティング施策や営業支援、社内研修、顧客教育の場として幅広く活用されています。

リアルなセミナーと異なり、以下のような特徴があります。

  • 参加者は全国・全世界どこからでも参加可能(移動不要)
  • 録画すればアーカイブとして再活用可能
  • 参加履歴やアンケート結果などの“データ”が残る
  • チャット機能やQ&Aで参加者とインタラクションが取れる

つまり、ウェビナーは“ただの配信”ではなく、「企業と見込み客の関係性を深めるための設計可能なコミュニケーション手段」なのです。

ウェビナーが注目される理由

コロナ禍を機に爆発的に普及したウェビナーですが、流行に乗った一過性の施策ではありません。いまやBtoBマーケティングの中核を担う手法として、企業の中で定着しつつあります。その背景には、時代の変化と企業活動の構造的なニーズが重なっています。

非対面時代でも“人に会う”手段が求められた

感染症拡大により対面営業やイベントが制限される中、企業は「人に会わずに価値を伝える方法」を模索しました。その中で、リアルな表情や声を通じて情報を届けられるウェビナーは、単なる“動画コンテンツ”とは一線を画する手法として注目されました

営業活動の効率化ニーズと親和性が高い

ウェビナーは、1対1の営業に比べて、1回の開催で複数の見込み客に同時にアプローチできます。また、参加者の職種や関心テーマを事前に把握することで、その後の営業活動の精度を高めることができます。少人数体制で多数の商談機会を創出できる点で、営業効率化の強力な武器となるのです。

顧客が“学びたい”時代に合っている

情報過多の時代において、ユーザーは「何を選べばいいかわからない」状況に置かれています。そんな中、ウェビナーは“学びの場”として機能します。広告では伝えきれない文脈や裏話、事例など、より深い情報提供が可能であり、信頼の構築にもつながります

リアルセミナーとの違い:メリットとデメリット

ウェビナーには数多くの利点がありますが、当然ながらリアルセミナーとは異なる課題も存在します。ここでは、両者の特徴を整理し、自社の目的に応じてどちらを選ぶべきかを考える視点を提供します。

【メリット】

移動・会場費が不要でコストが低い

物理的な移動や設営の手間が省け、予算をかけずに何度も開催できる。

参加者の幅が広がる

地理的制限がなくなるため、全国・海外からの参加も可能になる。

行動履歴をデータで取得できる

参加者のログイン時間、資料ダウンロード、アンケート結果などが可視化され、ナーチャリングや営業連携に活用しやすい。

コンテンツの再利用ができる

録画アーカイブをオンデマンド配信することで、長期的に見込み客と接点を持てる。

【デメリット】

集中力の持続が難しい

参加者が画面越しに情報を受け取るため、環境によっては離脱しやすい。

温度感がつかみにくい

会場の空気感や反応が見えづらく、講師が「盛り上がっているか」を感じづらい。

通信トラブルのリスク

視聴環境や配信側のネットワークによって、音声や映像が乱れる可能性がある。

これらの特性を踏まえ、「気軽に広く届けたい」ならウェビナー「濃密な議論や交流をしたい」ならリアルセミナーといった棲み分けを考えることが重要です。

ウェビナーの主な活用パターン(BtoB編)

BtoB領域では、ウェビナーは単なる「製品紹介」にとどまらず、多様な目的で活用されています。ここでは、代表的な活用パターンを紹介します。

見込み客の獲得(リードジェネレーション)

ホワイトペーパーや広告よりも、より深い接点を持ちたい場合に有効。テーマを“課題解決”に設定し、悩みを抱える層の関心を引き出すことができます。たとえば、「属人化を解消する営業改革の進め方」など。

リードナーチャリング(検討段階の後押し)

製品やサービスの魅力は理解しているが、導入に踏み切れていない層に対して、事例紹介や専門家の解説を通じて安心感を提供するパターン。検討の“最後のひと押し”として非常に効果的です。

顧客育成・クロスセル施策

既存顧客に対して、新しいサービスや活用方法を伝える「アップセル型ウェビナー」も効果的です。導入後の満足度向上にも寄与し、LTV向上にもつながります。

パートナー/社内研修ツール

代理店や販売パートナーへの製品理解の促進、社内メンバーの教育用途としても活用されます。いつでもどこでも参加でき、記録も残るため、教育コストを抑える手段としても注目されています。

ウェビナー開催のステップ:企画から配信、フォローアップまで

ウェビナーは、ただ配信するだけでは成果につながりません。成果を出すためには「誰に・何を・どう伝えるか」を明確にしたうえで、設計・運営・フォローを戦略的に行う必要があります。ここでは、BtoBマーケティングにおけるウェビナー開催の基本的なステップを解説します。

① テーマ・ターゲットの設計

まず最初に決めるべきは、「誰に向けて何を伝えるか」です。たとえば「マーケティング担当者向けにリード獲得施策を紹介する」「情報システム部門向けにSaaSのセキュリティ対策を伝える」など、具体的なターゲットを想定したテーマ設計が必要です。
ここが曖昧だと、コンテンツも集客もぼやけてしまいます。

② コンテンツと構成の設計

ウェビナーはリアルな場と違い、参加者の集中力が切れやすい傾向があります。長時間にせず、30〜45分程度に収め、以下のような流れが一般的です。

  • 導入(参加のお礼、目的の共有)
  • 本編(課題の整理 → 解決の視点 → 提案)
  • Q&A(双方向性で満足度を高める)
  • クロージング(今後のご案内、アンケート誘導)

専門的な話に寄りすぎず、課題感とストーリー性を大切にすると参加者の印象に残りやすくなります

③ 配信環境の選定と準備

使用する配信ツールは目的や参加人数に応じて選びます。

  • Zoomウェビナー:視聴者数が多く、参加者とのインタラクションも可能
  • Microsoft Teams:社内利用に強い
  • WebinarNinja、Vimeo、YouTube Live:ブランディングや外部向けに強い

事前の機材テストや進行台本、タイムキーパー、スピーカー紹介などのリハーサルも重要です

④ フォローアップと営業連携

ウェビナー後は、資料送付・アンケート収集・録画アーカイブの配信など、フォローアップが成否を分けます。特に重要なのは、「参加者の行動に応じて営業アクションを切り替える」ことです。
たとえば、

  • Q&Aで積極的だった参加者には個別連絡
  • アンケートで導入検討中と回答した人には営業がフォロー
  • 一般参加者にはナーチャリング用のコンテンツを配信

ウェビナーは“獲得で終わり”ではなく、“育成・商談化の起点”です。

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集客・リマインド・参加率向上の工夫

「よいコンテンツを用意したのに、人が集まらない」――これは多くのマーケティング担当者が経験する課題です。ウェビナーは準備だけでなく、集客から本番参加、アフターまでの「導線設計」が成果を左右します

集客の起点は“価値訴求”

告知段階では、製品名や企業名ではなく、「顧客の課題にどう役立つか」を前面に出すことが重要です。

例:
✕「◯◯製品紹介セミナー」
○「属人化を解消!営業活動を“仕組み化”する3つのポイント」
また、以下のようなチャネルを組み合わせて告知します。

  • 自社メールマガジン(既存リードへの訴求)
  • Webサイト/オウンドメディアでの掲載
  • SNS(特にXやLinkedIn)
  • パートナー企業との共同告知

リマインドメールの最適化

「申し込んでも当日忘れていた」は非常によくあるケースです。リマインドメールは、前日・当日の2回が効果的で、以下の情報を含めましょう。

  • 開催日時とURL(クリックしやすいように)
  • 内容の再訴求(「これだけは聞いてほしい」など)
  • 質問募集や資料DLの案内(能動的にする工夫)

参加率を高める“ちょっとした配慮”

  • 視聴環境の案内(スマホで見やすいか、イヤホンが必要か)
  • 当日ログイン時間の目安(5分前にはアクセスを)
  • 複数回開催や録画案内(都合が合わない層への救済)

こうした小さな気遣いが、「参加しやすさ」を高める秘訣になります。

成功事例に学ぶウェビナー戦略

ウェビナーを定常施策として活用し、高い成果を上げている企業には共通点があります。ここでは2つの代表的な事例をご紹介します。

事例①:SaaS企業A社 – 見込み客育成型ウェビナー

A社は、毎月1回のウェビナーを継続的に実施。テーマは製品紹介ではなく「業務課題の整理」「成功企業の工夫」など顧客視点の学び重視。その結果、ナーチャリング中のリードが継続的に接点を持ち、商談化率が1.7倍に。録画アーカイブをコンテンツ資産として活用することで、年間を通じたリード育成にも成功。

事例②:ITベンダーB社 – ABM型ウェビナーで商談化率50%超

B社は、業種ごとにパーソナライズしたウェビナーを展開(例:製造業向けDX、金融業界のセキュリティ対策など)。ウェビナー後はアンケートで関心度を確認し、スコアリングで営業に連携。結果、商談化率は通常施策の約3倍に。ABM(アカウントベースドマーケティング)とウェビナーの相性の良さが証明された取り組みといえます。

ウェビナーのKPIと改善方法

ウェビナー施策を継続的に改善し、成果につなげるには、目的に応じたKPI(重要業績評価指標)の設計が欠かせません。単に「参加者数」だけを追うのではなく、その後の“つながり”までをトラッキングする視点が必要です

代表的なKPI項目

  • 申込数:告知・訴求の魅力を測る指標
  • 参加率(参加者数 ÷ 申込者数):リマインドや開催時間、テーマ設定の妥当性を示す
  • 離脱率(途中退出の割合):コンテンツ構成の適切さ、配信環境の良し悪しが影響
  • アンケート回答率/満足度:次回施策や改善のヒント
  • 商談化率・受注率:営業連携まで含めた本質的な成果

改善のアプローチ

離脱ポイントの把握

動画アーカイブの視聴データを使い、「いつ離脱されたか」「どのスライドで関心が落ちたか」を把握。

スピーカーの話し方を工夫

単調なトークや資料の読み上げが続くと離脱率が上がる。適度なQ&Aやストーリーテリングで緩急をつける。

CTA(次の行動)を明確にする

視聴者は「何をすればいいか」が明確でないと離脱しやすい。次の資料DL、個別相談予約など“手を動かす導線”を設計する。

ウェビナーは“やって終わり”ではありません。「どう見られたか」「どう動いてもらえたか」までを追いかけることで、初めてマーケティング施策としての意義が生まれます

今後の展望:ハイブリッド開催・動画資産化・AI連携

ハイブリッドセミナーへの移行

対面イベントの再開に伴い、オンラインとリアルを組み合わせた“ハイブリッドセミナー”の需要が高まっています。現地に来られない人にはライブ配信を、後日視聴したい人にはオンデマンド動画を――というように、「接点を選ばせる自由設計」が主流になりつつあります。

コンテンツの資産化

1回限りの配信で終わるのではなく、録画・チャプター分割・記事化などを通じて「育成コンテンツ」として再利用する流れも加速中です。特にナーチャリング用途では、「興味関心に応じてピンポイントで届ける」活用が進んでいます。

AIと連携した分析と最適化

生成AIやインテントデータを活用することで、参加者ごとの関心領域を自動で分類し、個別フォローやシナリオ配信に活かす取り組みも始まっています。今後は「視聴行動×属性×AI推論」による“超精密ナーチャリング”が進化していくと見られます。

まとめ:人を動かす“場”としてのウェビナー

ウェビナーとは、単なる“映像配信”ではありません。それは、見込み客と対話し、課題を共有し、信頼を築いていく「対話の場」であり、「関係構築の起点」です。

  • 地理や時間の制約を超え
  • 企業の“顔”や“思想”を届け
  • 顧客の意思決定を後押しする

このような価値を持つウェビナーは、BtoBマーケティングにおいて欠かせない戦略的施策となりました。コンテンツ、集客、接点設計、営業連携――そのすべてが連動して、はじめて「成果の出るウェビナー」が成立します。

そして、回を重ねるほどに「ファン」が生まれ、企業の信頼資産となっていく。まさにウェビナーとは、“関係を育てるマーケティングの場”なのです。

著者の紹介

橘 亮介

株式会社マクロミル マーケティング部門ユニット長

橘 亮介

コーポレート及びプロダクトマーケティングのマネジメントを管掌。2015年からインサイドセールスの企画設計/KPI管理、KPIマネジメント、イベントマーケティング、WEBマーケティング、コンテンツ企画、MA導入・運用やインフルエンサー活用など、幅広い領域を経験後、2022年以降はマネジャーとしてマーケティングROIの管理や組織設計、全社マーケティング設計に従事。

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