
デジタル時代のマーケティングにおいて、効率的かつ効果的に市場動向を把握するためのネットリサーチは、ますます欠かせないツールとなっています。インターネットを活用した調査手法は、従来の対面式や郵送調査と比較して短期間で大量のデータ収集が可能であり、コスト効率も優れているのが特徴です。本記事では、ネットリサーチの基本概念から実施手順、効果的な活用方法まで、マーケティング課題解決に直結する実践的なノウハウを体系的に解説します。
ネットリサーチとは?基本概念と特徴
ネットリサーチとは、インターネットを介してデータを収集する調査手法です。おもにWebアンケートを用いた定量調査を指します。特徴として、性別・年齢・居住地などの基本属性から購買履歴や趣味嗜好まで、回答者の詳細な属性指定が可能な点が挙げられます。総務省の調査によると、日本のインターネット利用率(個人)は86.2%に達し、幅広い年齢層からデータを収集できる環境が整っているといえるでしょう。
※参考:総務省 令和6年版情報通信白書
ネットリサーチのメリット
ネットリサーチは従来の調査手法より時間・コストの効率がよく、データ収集や分析の柔軟性にも優れています。
時間と費用の効率性
ネットリサーチは、調査実施から結果取得までの時間とコストを大幅に削減できます。従来の紙ベース調査で必要だった印刷・配布・回収作業が不要となり、専門パネルを持つリサーチ会社を利用すれば回答者を集める手間も省けます。
質問作成から結果集計までパソコンで完結するため、従来数週間かかっていた調査期間が数日程度まで短縮され、迅速な意思決定が可能になるでしょう。
データ収集と分析の柔軟性
ネットリサーチでは地理的制約がなく全国・全世界から大量にデータを収集できます。詳細な属性指定が可能なため、ターゲットを絞った調査が実施でき、デジタル形式での回答収集により入力ミスも防止できます。
専用ツールでクロス集計や統計分析が簡単に行え、画像や動画を用いた多様な質問形式にも対応できるため、より正確で深い知見を得られる点が大きな強みです。
ネットリサーチのデメリット
ネットリサーチには多くの利点がある反面、調査対象者の偏りや回答品質に関する課題も存在します。
調査対象がインターネットユーザーに限定される
ネットリサーチはインターネットユーザーのみを対象とするため、調査対象に偏りが生じる問題があります。総務省データによれば携帯型デバイス保有率(個人)は86.2%と高いものの、高齢者層やネット非利用者からの回答は得られにくいでしょう。
50代までの調査は問題ないケースが多くありますが、60代以上や特定職種に限定すると十分なサンプル確保が難しくなることもあります。調査設計時には対象者の偏りを考慮した補正や解釈が必要となるでしょう。
回答の信憑性が欠ける
ネットリサーチは手軽に回答できる反面、回答の質に懸念が生じることがあります。報酬目的の虚偽回答や、質問を十分に読まない「手抜き回答」などが代表的な問題点です。多くのリサーチ会社のモニターは匿名登録のため、属性情報の真偽確認が困難な状況です。
また、難易度の高い設問では回答率低下も発生します。こうした課題に対し、スクリーニング調査やトラップ質問など、回答品質向上のための対策実施が進んでいます。
ネットリサーチの活用方法
ネットリサーチは顧客動向把握や商品開発など、さまざまなビジネスシーンで活用できます。適切な設計で企業の意思決定の支援が可能です。
顧客・市場動向の把握
ネットリサーチは顧客や市場を理解するのに役立ちます。ブランド認知度調査では、自社製品がどれだけ知られているかを測り、競合との位置づけを明らかにできます。また、細かい条件で対象者を絞った調査により、ターゲットの行動や好みを詳しく知ることができるでしょう。
さらに、広告やキャンペーンの前後で調査すれば、その効果を数値で確認でき、投資の適切さを判断できます。
社内改善・商品開発への活用
新商品開発や既存商品改善では、市場調査で顧客の潜在ニーズを発見し、商品開発に生かすことでヒット商品を生み出す可能性が高まるでしょう。そのため多くの企業がネットリサーチを取り入れ商品開発を実践しています。
また、従業員満足度調査を定期的に行うことで社内課題を見える化し、働きやすい環境づくりに役立てることが可能です。このような取り組みにより離職率低下や業績向上につなげることができるでしょう。
ネットリサーチの方法
効果的なネットリサーチを実施するための6つの基本ステップを詳しく紹介します。
1. 調査目的を設定する
ネットリサーチの第一歩は明確な目的設定です。「何のために調査するのか」「どんな情報が必要か」を具体化します。マーケティング課題を明らかにし、調査結果をどう活用するかを決めておきましょう。目的があいまいでは、質問がさまざまな方向に広がってしまい、有効な結果が得られません。仮説検証や実態把握など、活用方法を明確にすることが成功への鍵です。
2. 調査計画を立案する
目的が決まったら調査計画を立てます。対象者の条件(年齢・性別・地域など)、必要サンプル数、調査期間、予算を決定します。情報収集方法やデータ管理プロセスも計画に含めましょう。調査対象の条件設定は結果に大きく影響するため、目的に合わせて適切に設定することが重要です。この段階でスケジュールも組み立てておくとよいでしょう。
3. 調査票を作成する
計画に基づいて調査票を作成します。設問は回答者が理解しやすい表現を使い、選択肢に漏れや重複がないよう注意します。専門用語は避け、明確な主語を含めた文章にしましょう。回答を誘導するような質問や、1つの質問で複数のことを尋ねないよう気をつけます。Excelで作成しておくと、後でアンケートに反映する際に効率的です。
4. 調査を実施する
調査票完成後、まず第三者にテスト回答してもらい、問題点を修正します。その後本調査を実施し、計画した方法でインターネットを通じてデータを収集します。期間を設定して効率よく情報を集めることが大切です。自動集計機能があるシステムなら、期間中に速報値を確認することも可能です。
5. 調査結果を集計・分析する
データ収集後は集計・分析を行います。単純集計で全体像を把握し、さらにクロス集計やクラスター分析、時系列分析などで深く掘り下げます。データのパターンやトレンド、特徴的な点に注目し、調査目的に対してどのような意味を持つのか考察しましょう。分析ソフトを活用すれば、複雑な分析も効率的に実施できます。
6. レポートを作成する
最後に分析結果をレポートにまとめます。調査背景・目的・方法・結果要約・詳細分析・結論・提言を含めた構成にします。グラフや表を効果的に用いて視覚的に分かりやすくし、得られた洞察から具体的なアクションプランを提案するとより実用的です。意思決定者が理解しやすいよう、専門用語を避け簡潔明瞭な表現を心がけましょう。
ネットリサーチの注意点
ネットリサーチを実施する際には、いくつかの重要な制約や注意点があります。ここでは、特に押さえておくべき3つの注意点について詳しく解説します。
インターネット未利用者の調査はできない
ネットリサーチはインターネットユーザーのみが対象となるため、高齢者層や一部地域の意見が反映されにくいという制約があります。総務省調査によると、特に高齢者のインターネット普及率は低く、またリサーチ会社の登録モニターには都市部居住者が多い傾向があります。
さらに「調査慣れ」した回答者の意見が一般消費者と異なる可能性もあるため、こうした偏りを認識したうえで結果を解釈することが重要です。
マルチデバイスに対応する
スマートフォンやタブレットからのアンケート回答が増加しており、パソコンのみを想定した調査設計では十分なデータが得られません。一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会によれば、2019年時点で回答の56.1%がスマートフォンからとなっています。
若年層ほどスマートフォン利用率が高いため、デバイス対応が不十分だと年齢層に偏りが生じます。質問文は短く、選択肢は少なめにし、画像は軽量化するなどの工夫が必要です。
※参考:一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会「インターネット調査品質ガイドライン 第2版」
海外の市場調査に対応しているか確認する
グローバル展開を検討する企業にとって海外市場調査は重要ですが、国によってインターネット環境や調査事情が異なります。特に新興国ではオフライン調査が主流の地域もあるため、リサーチ会社の対応国・地域を事前確認する必要があります。
また言語や文化的背景による違いも考慮し、質問内容や選択肢が現地文化に適合しているか検討することが重要です。
ネットリサーチの活用事例
アサヒビールの「ドライゼロ」は典型的な成功例です。同社の「ダブルゼロ」はシェア2%と低迷していたものの、ネットリサーチにより「普段からビールを飲む人がアルコールを飲まない選択肢として利用している」という実態が判明しました。
「男性的」「ビールに近い」というポジションが市場で空白だったことを発見し、「ビールの代替品」として開発された「ドライゼロ」は2012年に発売後、シェア24%を超える成功を収めました。
まとめ
ネットリサーチは、インターネットを用いたリサーチ手法として、多くの企業で活用されています。その特徴は、スピーディな調査実施と低コスト、そして柔軟なデータ収集にあります。
ネットリサーチを成功させるポイントは、明確な調査目的の設定です。「何のために調査するのか」「どのような情報が必要か」を具体化し、マーケティング課題を明らかにすることが重要です。
実施においては、信頼性の高いリサーチ会社を選ぶことも成功の鍵といえます。マクロミルは、豊富なモニターパネルと専門的な分析ノウハウを持ち、質の高い調査結果を提供することが可能です。ネットリサーチにお困りの際は、ぜひマクロミルにご相談ください。
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