インタビュー調査の成否を分ける「事前調査(スクリーニング調査)」とは?理想の対象者に出会うための設計ガイド

公開日  :2023/4/21(金)

最終更新日:2026/2/20(金)

「ユーザーインタビューをすることになったが、誰に話を聞けばいいのかわからない」
「会社から『顧客の声を聴いてこい』と言われたが、的外れな人に会って失敗したくない」

ユーザーインタビューやデプスインタビューにおいて、「調査の成否は対象者選定で8割決まる」と言っても過言ではありません。どれほど優れたインタビュアーを用意し、緻密な質問案を練り上げても、対象者がターゲットから外れていれば、得られるインサイトはノイズだらけの無価値なものになってしまうからです。

その精度を担保し、インタビューを「意味のある時間」にする鍵となるのが「事前調査(スクリーニング調査)」です。

事前調査とは、インタビュー本番を行う前に、数万人規模のパネルから「条件に合致する候補者」をピンポイントに絞り込むプロセスです。単なる属性確認ではなく、本番で深掘りすべき「真に語れるターゲット」を特定する役割を果たします。

この記事では、初めてインタビュー調査を検討しているマーケターや担当者の方に向けて、事前調査の意味、設計のコツ、インタビューならではの注意点までを体系的に解説していきます。

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事前調査とは何か?その定義と位置づけ

事前調査(スクリーニング調査)とは、インタビュー本番に進むべき対象者を条件抽出するために行われる「選別目的の調査」を指します。膨大なモニターの中から、特定のサービスの利用者や特定の課題を持つ層をあぶり出す、いわば“門番”のような工程です。

主な役割は以下のとおりです。

  • インタビューのターゲット条件(属性・行動・意識)への合致確認
  • 出現率(ターゲットが世の中にどの程度存在するか)の把握
  • インタビューに必要な人数(サンプル数)の確保
  • 回答拒否層や、主観の薄い不適格者の除外
  • 競合他社関係者などの「排他条件」の適用

1対1で深く話を聞く定性調査において、このステップは「最高の一人」に出会うための生命線となります。

なぜ事前調査が必要なのか?

「とりあえず使っている人に聞ければいい」という曖昧な姿勢では、インタビューの1時間を無駄にし、マーケティングの意思決定を誤らせます。事前調査が不可欠とされる背景には、主に4つの意義があります。

① 1件あたりの「調査密度」を最大化するため

インタビュー調査は、1人あたりの謝礼や工数が高くつきます。本番にターゲット外の人が混入すると、その1時間は完全にロスになります。事前調査で厳格にスクリーニングを行うことで、純度の高い「ターゲットの声」だけを濃密に抽出できます。

② 「記憶にない」「語ることがない」という事故を防ぐため

「特定の商品を買った」という事実だけでなく、「その時の検討プロセスを覚えているか」までを事前調査で確認します。これにより、本番で「覚えていません」「なんとなくです」と沈黙されるスクを最小限に抑えられます

③ 出現率の低いニッチな層を特定するため

BtoBツールの導入を決裁した部長層」など、出現率が数%以下のターゲットを探す場合、事前調査なしで対象者を見つけることは不可能です。大規模なパネルに事前調査をかけることで、希少な対象者を確実に捕捉できます

④ 対象者の「言語化能力」をチェックするため

インタビューで最も困るのは「はい/いいえ」でしか答えてくれない対象者です。事前調査の段階で自由記述欄を設け、エピソードを具体的に書ける「語れる対象者」を選抜することで、データの信頼性と深さを守ります

事前調査の主な手法と特徴

インタビュー調査における事前調査は、どのようにターゲットを定義したいかによって設計が変わります。

① 基本属性によるスクリーニング

性別、年齢、居住地、職業、役職などのデモグラフィック属性で絞り込みます。BtoB調査であれば、業種や従業員規模、担当部署などが必須項目になります。

② 行動・実態によるスクリーニング

「過去3ヶ月以内に特定の商品を購入したか」「週に何回サービスを利用しているか」といった事実を確認します。記憶の想起を促すため、具体的な選択肢を提示することが重要です。

③ 悩み・課題感によるスクリーニング

「現在、業務の効率化にどの程度困っているか」といったペインポイントで絞り込みます。インタビューで解決策を提案したい場合、この「課題の深さ」が選定基準になります。

④ 意識・価値観によるスクリーニング

「新しいもの好きか」「コスト重視か」といったサイコグラフィック属性で絞り込みます定量的なスコア判定を用いて、分析の軸となる「価値観のタイプ」を定義します。

⑤ 自由記述による定性スクリーニング

ここがインタビュー調査において最も重要です。事前調査に自由記述欄を設け、エピソードの具体性を確認します。ここでしっかり書ける人は、本番でも「豊かなインサイト」をもたらしてくれます

⑥ 画像回収によるスクリーニング

「現在特定商品を利用している」という条件の際に、その商品画像を撮影して送ってもらうことで事実確認ができます

事前調査の設計で押さえるべきポイント

事前調査の設計を誤ると、虚偽の回答を誘発したり、肝心のターゲットを逃したりします。

① 調査目的から逆算した「条件定義」の明確化

「SaaSに関心がある人」という曖昧な定義ではなく、「過去6ヶ月以内に自社でクラウド会計ソフトを導入し、かつ製品比較を行った人」のように、客観的に判別できる基準を作ります。

② 矛盾回答を炙り出す「トラップ設問」の設置

似たような設問を角度を変えて配置したり、実在しない架空の商品名を選択肢に混ぜることで、適当に回答している層を排除します。これにより、本番に呼ぶべきでない人を事前にカットします

③ 本調査への「接続性」と「鮮度」

事前調査からインタビュー本番までの期間が空きすぎると、対象者の状況や熱量が変化してしまいます。可能な限りシームレスに本番へ移行できるよう、事前のリクルーティングスケジュールを綿密に組むのが鉄則です

成功事例:事前調査で本調査の質を高めたケース

事例①:BtoBソフトウェアの導入関与者調査

ターゲットが極めて限定的な法人向けソフトの調査において、事前調査で「職種」だけでなく「決裁権限の有無」や「導入検討プロセスへの関与度」を詳細に確認。ノイズとなる一般社員を排除し、真の意思決定者のみをインタビューに呼ぶことで、営業戦略に直結する回答を得ることに成功した。

事例②:高級家電メーカーの買い替え需要調査

単なる所有者ではなく、「購入から5年以上経過し、かつ現行製品に明確な不満を抱えている層」を事前調査で特定。さらに自由記述で「不満点」を具体的に書ける人だけを抽出した結果、インタビューでは次期モデル開発に繋がる決定的なインサイトを得られた。

ありがちな失敗とその回避策

① 条件を厳しくしすぎて、インタビュー対象者がいなくなる

→ 対策:事前調査の前に「出現率」を予測し、条件に優先順位をつけます。「必須条件」と「できれば満たしたい条件」を分けておくことで、リクルーティングの詰まりを防ぎます。

② 設問文が不親切で、対象者が条件を誤解してしまう

→ 対策:「最近」ではなく「過去1ヶ月以内」など、誰が読んでも同じ解釈になる具体的な数値を用います。

③ 事前調査で「聞きすぎて」しまう

→ 対策:事前調査はあくまで「選別」です。聞きたいことはインタビュー本番まで我慢し、アンケートの設問数は最小限(10問程度)に留めて回答者の離脱を防ぎます。

まとめ:事前調査は“調査データの守護神”である

事前調査(スクリーニング調査)とは、単に対象者を分ける作業ではありません。それは、インタビューから得られるアウトプットの価値を決定づける「データの門番」とも言える重要な工程です

  • ターゲット定義は具体的で客観的か
  • 回答を誘導するような聞き方になっていないか
  • 本番で「語れる」エピソードを持っているか

これらの設計に妥協しないことこそが、インタビュー調査を成功させる最短ルートです。ビジネスの命運を分ける意思決定には、磨き上げられた純度の高い「生の声」が必要です。その土台を作るのが、事前調査なのです。

著者の紹介

鳥居 慧

株式会社マクロミル

鳥居 慧

2009年に株式会社マクロミルに入社。
10年以上にわたり定量調査から定性調査まで幅広いリサーチサービスの運用部門に従事し、10,000件以上のプロジェクトに関与。
2024年、セルフ型のオンラインインタビュープラットフォーム「Interview Zero」を立ち上げ、プロダクト責任者として従事。

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監修

Macromill News 事務局

監修:株式会社マクロミル マーケティングユニット

20万人以上が登録するマーケティングメディア「Macromill News」を起点に、マーケティング知見や消費者インサイトに関わる情報を発信。

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