
企業のマーケティングにおいて、消費者の本音を理解するための定性調査が注目を集めています。特に代表的な手法である「デプスインタビュー」と「グループインタビュー」は、それぞれの特徴を活かした使い分けが重要です。この記事では、両者の違いやメリット・デメリット、活用方法などについて、具体例も交えて詳しく解説します。参考にしてください。
- 定性調査の重要性が増している背景
- デプスインタビューとグループインタビューの違い
- メリットとデメリットの徹底比較
- 【比較表】対象者人数・時間・メリット・デメリット
- デプスインタビューとグループインタビューの適切な使い分け
- 注目の定性調査リモートインタビュー
- まとめ
定性調査の重要性が増している背景
現代のビジネス環境において、定性調査の重要性が高まっている背景には、主に2つの要因があります。第一に、消費者の価値観とライフスタイルの多様化です。従来の定量的なアンケート調査だけでは、消費者心理の十分な理解が難しくなってきています。
第二に、従来のマスマーケティングから、個々の消費者を深く理解するOne to Oneマーケティングへの移行が進んでいることです。これにより、特定の個人のニーズに応える商品開発が重視されるようになりました。このような変化により、定量データだけでなく、定性調査の重要性がますます高まってきています。
デプスインタビューとグループインタビューの違い
定性調査の代表的な手法として、「デプスインタビュー」と「グループインタビュー」があります。どちらも人から直接話を聞く調査方法ですが、その実施方法や特徴には大きな違いがあります。ここでは、それぞれの特徴を解説します。
デプスインタビューとは
デプスインタビューは、インタビュアーと対象者が1対1で行う調査方法です。60分から90分程度の時間をかけて、個人の価値観やライフスタイル、購買行動などを深く掘り下げていきます。他者の影響を受けずに本音を引き出せることが特徴で、特に金融や健康など、センシティブなテーマの調査に適しています。ただし、1人あたりの調査コストは比較的高くなります。
グループインタビューとは
グループインタビューは、1人のモデレーター(司会者)に対して、4〜6人程度の参加者が集まり、座談会形式で行う調査手法です。約2時間かけて、参加者同士の対話や意見交換を通じて、さまざまな視点を集めることができます。
製品開発やマーケティング施策の検討に向いていますが、1人あたりの発言時間が限られ、個人の深層心理まで探ることは難しいという特徴があります。
メリットとデメリットの徹底比較
デプスインタビューとグループインタビューには、それぞれ特徴的なメリットとデメリットがあります。調査の目的や対象に応じて、適切な手法を選択することが重要です。各調査方法のメリットとデメリットを解説します。
デプスインタビューのメリット
デプスインタビューの最大のメリットは、個人の深層心理まで掘り下げられることです。1対1の対話形式で時間をかけることで、消費者の本当の価値観やライフスタイルを理解することができます。
金融や健康といったセンシティブな話題でも、率直な意見を引き出すことが可能です。これにより、製品開発における本質的なユーザーニーズを把握することが可能になります。
デプスインタビューのデメリット
一方で、デプスインタビューには時間とコストがかかる点が大きな課題です。1人あたりの調査時間が長く、個別に実施する必要があるため、効率が悪くなります。また、インタビュアーの技量によって、結果が大きく変わる可能性があります。さらに、調査対象者の数が限られるため、組織内での合意形成に課題が生じることもあります。
グループインタビューのメリット
グループインタビューでは、参加者同士の対話から多様な意見を効率的に集めることが可能です。これは「グループダイナミクス」と呼ばれる効果で、お互いの発言に刺激を受け、新しいアイデアが生まれやすくなります。
また、複数人を同時に調査できるため、時間とコストを抑えることができます。さらに、参加者の表情や態度からもさまざまな情報を得られることも特徴です。
グループインタビューのデメリット
グループインタビューの課題は、個人の深い心理まで探ることが難しい点です。1人あたりの発言時間が限られるため、十分な掘り下げができません。また、発言力の強い参加者に意見が引きずられたり、他者の目を気にして本音を話せなかったりする可能性があります。
加えて、モデレーターの進行スキルによって調査の質が大きく左右されることも、重要な課題となっています。
【比較表】対象者人数・時間・メリット・デメリット
デプスインタビューとグループインタビューのそれぞれの特徴を、比較表としてまとめました。
デプスインタビュー | グループインタビュー | |
---|---|---|
対象者人数 | インタビュー形式(1名) | グループ形式(5〜6名) |
調査時間 | 1人あたり60〜90分程度 | 2時間程度 |
メリット | ・個人の深層心理や価値観を詳しく理解できる ・センシティブな話題でも率直な意見を得られる ・製品開発に活かせる本質的なユーザーニーズを把握できる | ・参加者同士の対話から多様な意見を効率的に収集できる ・時間とコストを抑えられる ・参加者の反応から幅広い情報が得られる |
デメリット | ・1人あたりの調査時間とコストが高い ・インタビュアーの技量で結果が変わりやすい ・調査対象者数が限られ、統計的な代表性に欠ける | ・個人の深層心理まで掘り下げることが難しい ・発言力の強い参加者に意見を引きずられやすい ・他者の目を気にして本音を話せない可能性がある |
デプスインタビューとグループインタビューの適切な使い分け
デプスインタビューとグループインタビューは、調査の目的や予算に応じて適切に使い分けることが重要です。それぞれの手法には得意分野があるため、調査の性質に合わせて選択しましょう。
デプスインタビューが向いている調査
デプスインタビューは、個人の深層心理や詳細な行動パターンを理解する必要がある場合に最適です。特に、金融や健康など、プライバシーに関わる繊細なテーマを扱う際に効果を発揮します。また、商品開発の初期段階でペルソナを設定する場合や、ターゲット層の生活習慣や価値観を深く理解する必要がある場合にも適しています。
活用例
デプスインタビューは、消費者1人ひとりの価値観や行動を深く理解するための調査手法です。具体的には、以下のような場面で活用できます。
・商品開発におけるペルソナ設定のための消費者理解
・カスタマージャーニーマップ作成のための購買行動分析
・既存商品の改善点を探るための使用実態調査
・金融商品や医療サービスに関する意識調査
グループインタビューが向いている調査
グループインタビューは、短時間で多様な意見を収集したい場合や、参加者同士の対話から新しいアイデアを得たい場合に適しています。特に、商品の市場性を検証する際や、幅広い層の反応を確認したい場合に効果的です。また、限られた予算で可能な限り多くの意見を集めたい場合にも推奨される手法です。
活用例
グループインタビューは、短時間で多様な意見を集められる調査手法です。具体的には、以下のような場面で活用できます。
- 新商品のコンセプト検証や市場性の確認
- 既存商品の改善点の洗い出し
- マーケティング施策の方向性検討
- 異なる属性間での商品評価の比較
注目の定性調査リモートインタビュー
近年、インターネットを活用したリモートインタビューが定性調査の新しい手法として注目を集めています。オンライン会議システムを使用することで、場所の制約なく調査が可能です。これにより、子育て中の主婦や地方在住者など、従来は参加が難しかった対象者へもアプローチできるようになりました。
会場費や移動費が不要でコストを抑えられる点も特徴で、対象者は自宅などリラックスできる環境で参加できます。デプスインタビューやグループインタビューにも対応可能で、今後も定性調査の重要な選択肢として定着していくと考えられます。
まとめ
デプスインタビューとグループインタビューは、定性調査の代表的な手法です。消費者の価値観が多様するなか、これらの手法を適切に使い分けることで、より深い消費者理解が可能になります。
株式会社マクロミルでは、こうした定性調査を含む包括的なマーケティングリサーチサービスを提供しています。リサーチデータを活用したコンサルティングから、具体的なマーケティング施策の支援まで、一気通貫のソリューションをご用意しています。定性調査の活用についてより詳しく知りたい場合は、ぜひ一度お問い合わせください。
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