【第1話】現場で起きている課題|NPS®を使いこなす方法

2019/3/4(月)

近年、顧客ロイヤルティの指標として注目されている「ネットプロモータースコア(Net Promoter Score)®」。頭文字をとって「NPS®(※1)」と呼ばれ、自社で採用されている方も多いのではないでしょうか。今回はこのNPS®を使いこなす方法について考えていきたいと思います。

念のため、NPS®の基本をおさらいしてみましょう。

NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー名誉ディレクターのフレッド・ライクヘルドが提唱した「顧客ロイヤリティの指標」です。聴取方法、結果の算出方法は以下の通り。

  • 評価対象のブランド毎に「おすすめ度合い」を11段階(0点~10点)で聴取
  • 回答結果から、推奨者(9点・10点)、中立者(7点・8点)、批判者(0点~6点)を設定し、推奨者の比率から批判者の比率を引いた値がNPS®となる

こうして算出された結果は、企業の売上や利益の成長率と相関があるとされており、企業経営の評価指標として採用を検討する企業が増えています。

NPS®のイメージ

図1 NPS®のイメージ

NPS®でよくある話

NPS®は、設問を1問だけ追加するだけで聴取できる点、算出方法が比較的簡単な点、成長率に相関があるなど経営指標として有効そうな点が評価されているように感じます。特に成長率との相関は経営層に注目され、トップダウンでNPS®の採用が決まったという話をたびたび耳にします。

その一方で、NPS®を実際に活用しようとすると様々な問題に直面することがあります。例えば、良く耳にする話としては、「自社他社問わず、NPS®が大幅にマイナスになる」といったものがあります。競合を含めて軒並みスコアがマイナスになるため、「そもそもこの指標、使えるのか?」といった議論に発展することもあるようです。 経営陣からはKPIとしての活用を求められる一方で、実際にはとても報告できそうもないマイナスの成績がでることも多いNPS®。現場からすれば、手軽そうに見えて実は扱いの難しい手法とも言えそうです。

本コラムでは、NPS®をより使いやすくするために、様々な視点で「NPS®とは何か?」を考えていきたいと思います。単純だけれども、奥深いNPS®。このコラムがその理解を深めるための一助になればと考えています。

テーマの特定~NPS®の課題の整理~

NPS®にはどのような課題があるのかをまずは整理してみましょう。考えるべき視点は、大きく以下の3つに分けられます。

  1. 聴取方法の視点
    • 11段階評価の聴取で良いのか?
    • そもそも聴取内容は「推奨度合い」で良いのか? …など
  2. 分析方法の視点
    • 推奨者=9点・10点、中立者=7点・8点、批判者=6点以下の定義の是非
    • 「推奨者-批判者=NPS®」の定義の是非 …など
  3. 結果の解釈の視点
    • 結果をどう解釈すれば良いのか?(特にマイナスの場合)
    • 結果を高めるための打ち手をどう読み解けば良いのか? …など
NPS®の課題

図2 NPS®の課題

これら3つのうち、「1.聴取方法」「2.分析方法」は、NPS®の諸問題を解決するための根幹に当たる重要な視点です。しかし、その一方でこの部分を変更すると、そもそも「NPS®」ではなく「独自のロイヤルティ指標」の作成につながってしまいます。

例えば、「11段階の聴取方法ではなく10段階とし、推奨者の定義は7点以上」と変更して、分析結果がプラスの値で安定したとします。ロイヤリティ指標としては使いやすくなったかもしれませんが、それはすでに「NPS®」ではなく、独自指標となってはいないでしょうか。NPS®の採用を決めた経営陣からは、「NPS®で高いスコアが出ないために、別の指標を作った」とも見られてしまうかもしれません。

NPS®を使いこなすためには、「3.結果の解釈」の視点で、問題を解決しNPS®に対する知見を深めていく必要がありそうです。従って本コラムでは、この「3.結果の解釈」の視点にテーマを絞り、NPS®について考えていきたいと思います。

「結果の解釈」の視点から、NPS®の課題を整理

では、NPS®の「結果の解釈」の視点で課題を整理してみましょう。

  1. マイナススコアの評価方法がわからない
    例:「自社他社含めてNPS®がマイナスになることが多く、解釈に困ります。」
  2. 目標値設定がしにくい
    例:「NPS®をKPIと設定した場合、いくつ以上を目指すべきかわかりません。」
  3. NPS®をコントロールする要因が不明
    例:「NPS®をコントロールするキードライバーがわかりません。そのため、NPS®向上のための具体的な施策の立案の難易度が高くなります。」

これらのような課題がよく聞こえてきます。これはNPS®の運用時に直面する課題と言い換えてもいかもしれません。 実際に、“NPS®調査をしてデータを取ったのは良いが、結果は大きくマイナス。どこまで改善するべきか、どうしたら改善されるのか。何もわからず、お蔵入り。”そんな現場の声を実際に耳にします。

次回、第2話からは、これらの3つの課題について1つ1つ細かく見ていきたいと思います。

※1:NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。

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著者の紹介

内田智之

内田 智之

株式会社マクロミル リサーチ営業本部 第3営業部 リサーチプランナー
電機業界専門紙の記者を経て、2002年にインタースコープ(現マクロミル)に入社。
営業職、営業企画職を経験したのち、2009年よりリサーチャーとして、広告代理店や製造業、サービス業など幅広い業界を担当。 専門統計調査士の資格を有し、現在はリサーチプランナーとしてクライアントへの調査企画・提案、設計や分析、勉強会など営業活動の支援を行う。2021年にNPS®マップを提唱し、日本マーケティング学会で発表(特許出願中)。

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