【第6話】NPS®の時系列推移をNPS®マップで読み解く|NPS®を使いこなす方法

2023/8/29(火)

定期的にNPS®を調査して変化を確認している、という方は多いのではないでしょうか。第6話では、NPS®を時系列で見ていく際の課題と、「NPS®マップ」を活用することで見えてくる新しい時系列分析(推移の見方)について解説したいと思います。

目次

時系列分析における課題

年単位や四半期単位、月単位など、定期的に自社のNPS®を調査している企業は多いと思います。せっかくですから、NPS®の推移を時系列で見たいですよね。しかし、ただ単純に時系列に並べてはみたものの解釈に悩んでしまった、という経験がある方も多いのではないでしょうか。

NPS®はブランドや製品カテゴリなどの全体で一つの値、もしくは男女別など分析軸単位で一つの値が算出されます。これを時系列で見る場合は、一つの数値の増減を見ていきます。下記のようなグラフを作成します。

【図1】NPS<sup>®</sup>の時系列グラフ

【図1】NPS®の時系列グラフ

ここまで極端に乱高下することはあまりありませんが、NPS®を時系列に見た場合にはこのグラフで傾向を見ていくことになります。しかしこの時、数値の上下(増減)は見ることができますが、課題はその結果をどのように解釈をしたらよいのかが分かりにくい点だと思います。上記のグラフから「1月から3月にかけてNPS®は改善傾向にあったが、4月に急落したこと」は分かりますが、1月から3月までの改善はどんな意味があったのか、4月の急落はどのような影響があったのかなどは読み取ることができません。

NPS®はブランドや製品、分析単位で一つの数値が出るため、時系列分析を行うと〇ポイント上がった/×ポイント下がったなど、単に数値の推移のみに目が行きがちです。

NPS®マップを使った時系列分析 ~NPS®増減の意味を読み解く~

NPS®マップは、そのプロット位置からNPS®のスコアの意味を読み取ることができる点が大きな特徴です(第4話で詳しく説明しています)。このNPS®マップを使って時系列分析を行うとどのようなことが見えてくるのでしょうか。

NPS®マップを使った時系列分析は、マップ上にNPS®の推移をプロットして行います。最初にプロットした位置から次にプロットした位置が、上下左右のどちらかの方向へ動いたか、この「どちらの方向に移動したか」で、時系列上で数値が上下(増減)した意味を読み解くことができます。

① NPS®が改善する場合のマップ上の動き

【図2】NPS<sup>®</sup>が改善する場合のマップ上の動き

【図2】NPS®が改善する場合のマップ上の動き

NPS®が改善した場合は、NPS®マップ上のプロット位置が元の場所からA~Cの3方向に移動します。

  1. A)上方向への移動(垂直移動)
  2. B)右上方向への移動
  3. C)右方向への(水平移動)

「批判者」「中立者」「推奨者」の変化

  1. A)上方向:批判者の純減
    「中立者」「推奨者」が同じ割合で増え、増えた分「批判者」が減る。
  2. B)右上方向:ファンの純増
    「推奨者」が増え、「中立者」「批判者」ともに減る。
  3. C)右横方向:二極化の促進(中立者がファンへ)
    「中立者」が減り「推奨者」が増える。「批判者」は変わらないため、顧客が「推奨者」と「批判者」に二分されて行く可能性あり。

② NPS®が悪化する場合のマップ上の動き

【図3】NPS<sup>®</sup>悪化する場合のマップ上の動き

【図3】NPS®悪化する場合のマップ上の動き

NPS®が悪化した場合は、NPS®マップ上のプロット位置が元の場所からD~Gの4方向に位置します。

  1. D)右下方向への移動
  2. E)下方向への移動(垂直移動)
  3. F)左下方向への移動
  4. G)左方向への移動(水平移動)

「批判者」「中立者」「推奨者」の変化

  1. D)右下方向:ニッチ化への道
    批判者」が増え「中立者」「推奨者」が減る。「推奨者」よりも「中立者」の減少幅の方が大きい。
  2. E)下方向:ロイヤリティの純減
    「中立者」「推奨者」が同じ割合で減り、減った分すべてが批判者の増加分になる。
  3. F)左下方向:最悪のロイヤリティ減少
    「批判者」が増え「中立者」「推奨者」が減る。「中立者」よりも「推奨者」の減少幅の方が大きい。
  4. G)左横方向:ファンの中立化
    「推奨者」が減り「中立者」が増える。「批判者」は変わらないため、純粋にファンが減り「中立者」となる。

③ 顧客の中立化が進む場合のマップ上の動き

【図4】顧客の中立化が進む場合のマップ上の動き

【図4】顧客の中立化が進む場合のマップ上の動き

最後に、NPS®マップ上のプロット位置が、元の場所からHに移動した場合です。この場合のみ、NPS®の改善、悪化の両方が起こりえます。

「中立者」のみが増え、「批判者」と「推奨者」が減少する場合に起こる移動方向のため、「批判者」「推奨者」のどちらの減少幅が大きかったかによって、NPS®の値の改善、悪化が決まるためです。

「批判者」も「推奨者」も減り、純粋に「中立者」のみが増えるため、満足はしているがファンに至らない層が増えることになり、顧客ロイヤリティが改善しているように見えてリスクを内在する状況へ進んでいると考えられます。

「批判者」「中立者」「推奨者」の変化

  1. H)左上方向:中立者のみ増加(リスクのあるロイヤル化の可能性)
    「批判者」「推奨者」が減り、中立者だけが増える。

NPS®マップで読み解く、時系列分析のまとめ

いかがでしたでしょうか。単純にNPS®の数値を時系列で追うよりも、実際の意思決定にもつながる深い示唆が得られたのではないでしょうか。NPS®を使った時系列分析の際にはNPS®マップが活躍します。

最後に、NPS®マップ上のプロット位置の移動方向とその意味について一覧にまとめました。皆様が今後、NPS®を時系列分析される際に、ぜひご活用いただければと思います。

【図5】NPS®マップ上のプロット位置の移動方向とその意味のまとめ

【図5】NPS®マップ上のプロット位置の移動方向とその意味のまとめ

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著者の紹介

内田智之

内田 智之

株式会社マクロミル リサーチ営業本部 第3営業部 リサーチプランナー
電機業界専門紙の記者を経て、2002年にインタースコープ(現マクロミル)に入社。
営業職、営業企画職を経験したのち、2009年よりリサーチャーとして、広告代理店や製造業、サービス業など幅広い業界を担当。 専門統計調査士の資格を有し、現在はリサーチプランナーとしてクライアントへの調査企画・提案、設計や分析、勉強会など営業活動の支援を行う。2021年にNPS®マップを提唱し、日本マーケティング学会で発表(特許出願中)。

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