ウェルビーイングとは?“幸せ”が企業価値になる時代のマーケティング戦略

公開日:2026/1/16(金)

「ウェルビーイング」という言葉、あなたは自信を持って説明できますか?
なんとなく「健康そう」「幸福そう」といったイメージはあるかもしれません。
しかし最近ではこの言葉が、個人の生き方だけでなく、企業のブランディング、従業員体験、そしてマーケティング戦略の中核に位置づけられ始めています

たとえば、以下のような企業活動が“ウェルビーイング戦略”として語られるようになっています。

  • ユニリーバの「サステナブル・リビング・ブランド」
  • パナソニックの「Well-being House」構想
  • Z世代向けアパレルが“自己肯定感”を軸にしたブランド設計

つまり、ウェルビーイングはもはや「個人の話」ではなく、「企業が顧客とどうつながるか」「どんな意味を提供するか」を左右する概念になっているのです

監修

Macromill News 事務局

監修:株式会社マクロミル マーケティングユニット

20万人以上が登録するマーケティングメディア「Macromill News」を起点に、マーケティング知見や消費者インサイトに関わる情報を発信。

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「Well-being(ウェルビーイング)」の定義とは?

WHO(世界保健機関)はウェルビーイングを「身体的・精神的・社会的に良好な状態」と定義しています。
ポイントは「健康=病気でない」という意味にとどまらず、「前向きで満たされた状態」を目指すという点です
また、現代では以下の5領域が重視されるようになっています。

  1. 身体的ウェルビーイング(体調・睡眠・運動)
  2. 精神的ウェルビーイング(心の安定・自己受容)
  3. 社会的ウェルビーイング(つながり・所属感)
  4. 経済的ウェルビーイング(安定した収入・将来への安心)
  5. 職業的ウェルビーイング(働きがい・スキル成長)

このように多次元的で、しかも主観的な「満足」が軸になるため、
企業は“従業員”に対しても、“生活者”に対しても、「どう支援するか」が問われています。

なぜ今、マーケティングに「ウェルビーイング」が必要なのか?

「モノが満たされた世界」では“意味”が差別化要因になる

良い商品、便利なサービスは、すでに溢れています。
そんな中で、消費者がブランドを選ぶ基準は「何を得られるか」ではなく、「どんな気持ちになれるか」にシフトしつつあります。

  • その商品は、自分にどんな意味をくれるか?
  • このブランドといると、自分はどんな人になれるか?

つまり、「自分のウェルビーイングを高めてくれるブランドかどうか」が、選ばれるかどうかの分水嶺になっているのです

Z世代・ミレニアル世代の価値観が変わった

Z世代は「競争より共感」「所有より体験」「実利より意味」を重視する傾向があります
特に「自分の心と身体を大切にする」ことに対する感度が高く、企業がその価値観に寄り添っているかどうかが評価されます。

  • SNSでも「自分らしくいられるか」「自分の感情を肯定できるか」が鍵
  • ウェルビーイング訴求が共感の起点になりやすい

パーパスドリブンな企業経営と直結している

企業の存在意義(パーパス)とウェルビーイングは極めて親和性が高い概念です
たとえば「すべての人の暮らしを前向きにする」「社会に優しい選択を可能にする」といったパーパスは、生活者のウェルビーイングを支える視点と直結しています。

ウェルビーイングを組み込むマーケティング戦略とは?

もはや“あってもなくてもいい”付加価値ではなく、ブランドの中核設計として扱われるようになったウェルビーイング。では、企業は実際にどのようにこれをマーケティング戦略に取り入れているのでしょうか。
ここでは、以下3つの視点で見ていきます。

  • どんな企業が「売上」に結びつけているのか?
  • ウェルビーイングを“商品価値”に落とし込むには?
  • 消費者接点ごとに、何を仕掛ければいいのか?

ブランドの「意味」を再構築する

従来のUSP(独自の売り文句)では、機能やスペックが差別化要因でした。
しかし、ウェルビーイング文脈ではこう置き換えられます:

従来の訴求軸 ウェルビーイング視点の訴求
他社より安い、早い、便利自分に合っていて、安心できる
優れた性能、ハイスペック心地よく使える、ストレスを減らせる
成分・原材料の品質使うことで健康的・前向きな気持ちになる

この「意味の設計」が、マーケティング全体に波及していくのです。

商品開発・サービス設計に“心地よさ”の概念を入れる

ウェルビーイング訴求は、広告コピーだけの話ではありません。むしろUX設計や商品開発の段階から組み込まれてこそ、真の価値が伝わります。

  • パッケージデザインが“やさしい”“落ち着く”トーン
  • 香りや音・触感を活用した「感覚的な満足」設計
  • サービス利用時に“自分が大切にされている”と感じさせる導線設計

「これは、自分のウェルビーイングを理解してくれている」と思わせる商品やUXは、それ自体がマーケティングです

広告・コンテンツも“押し売り”ではなく“共感の起点”に

人は「自分に合うもの」に対して、自ら能動的に関わります。
そのため、ウェルビーイングを軸にした広告表現は、次のように変化しています。

旧来型の広告ウェルビーイング型広告
「買ってください」「あなたに合っているかもしれません」
「便利」「お得」「限定」「これがあると、心が少し軽くなります」
スペック訴求生活の中で得られる感覚・変化の提示

消費者体験のマップにも「心の流れ」を組み込む

カスタマージャーニーは「機能」だけでなく、「感情」「心理状態」を含めて設計することで、エンゲージメントが変わってきます。

以下は、ウェルビーイング視点でのタッチポイント設計例です。

タッチポイント機能的行動心理的体験
Web広告を見る商品を知る“自分にも合うかも”と希望が湧く
商品ページにアクセス情報を調べる“やさしいデザインで落ち着く”
使ってみる効果を体感“なんか最近ちょっと前向きになれた”
リピート購入必要だから買う“自分の定番、心地よさの源”

このように、“感情のグラデーション”を意識することが、ウェルビーイング・マーケティングの肝です

BtoCとBtoB、それぞれのウェルビーイング戦略

生活者向け(BtoC)の文脈

BtoCでは、主に「感情」と「ライフスタイル」への寄り添いが軸になります。
Z世代~ミレニアル世代を中心に、次のような価値が響いています。

  • “自分らしくいられる”こと(セルフエスティーム)
  • “余白のある暮らし”や“情報過多からの解放”
  • “推し活”や“癒し”を提供するブランドとしての役割

法人向け(BtoB)の文脈

BtoBの場合、直接的な“顧客の幸せ”というよりも、「組織がより健全に回る」「社員の満足度が上がる」ことがビジネスの成果に繋がります

  • 福利厚生・健康経営支援サービス
  • エンゲージメントサーベイ
  • オフィス環境・リモートワーク支援
  • メンタルヘルス可視化ツール

BtoCとBtoBのウェルビーイング施策比較

視点BtoCBtoB
ターゲット個人の感情・生活組織・従業員・労働環境
成果指標ファン化・共感・継続率離職率・満足度・業績貢献
よくある施策コミュニティ設計、やさしいUI/UX、物語訴求エンゲージメント可視化、サポート体制、CS支援

実践企業に学ぶ:ウェルビーイングを成果に変えたマーケティング事例

「ウェルビーイング」という言葉が一過性の流行にとどまらないのは、実際に成果を出している企業が多数存在するからです
ここでは、国内外の事例から、マーケティングや事業設計にウェルビーイングを組み込む実践例を紹介します。

ユニリーバ:「サステナブルな幸福」をブランドに統合

  • 「サステナブル・リビング・ブランド」群を設定
  • パーパスを掲げ、製品ごとに“社会課題に対する態度”を定義
  • ブランド好意度だけでなく、売上成長率も高水準に推移
  • 代表例:「Dove」→ “ありのままの美しさを応援する”

ベネッセ:「教育×ウェルビーイング」で母親の安心感を支援

  • 通信教育「こどもちゃれんじ」に“親の不安解消”コンテンツを追加
  • 使い方ガイド、共感型ストーリーブック、SNS連携を強化
  • 子どもの知育だけでなく「親の心の支援」を含むブランド設計

サントリー:「水と生きる」から地域と人の関係性へ

  • 企業スローガン「水と生きる」をウェルビーイング視点で再解釈
  • 「天然水の森」活動と連携し、自然と共にある豊かさを発信
  • 商品を「買う」ではなく、「共感して取り入れる」構造に変換

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