【2020年4月】新型コロナウイルスが及ぼす消費者心理への影響

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リサーチャーコラム

2020/4/10(金)

マクロミルでは、新型コロナウイルスによる消費者心理や消費金額などの影響を、定点観測調査データMacromilll Weekly Indexから読み解きお届けしている。今回は、3月に発表した後の傾向について紹介したい。

関心のある話題・ニュースの変化

「この1週間で気になった話題やニュース」を自由記述で回答してもらい、ワードクラウド※1を用いて視覚的に表した(図1)。3月の発表では、2019年12月からの各月1週目について紹介し、2月から3月にかけて「新型コロナウイルス」にまつわるキーワードが目立ったが、今回も3月は引き続き「新型コロナ」が中心であった。3月4週目、4月1週目の調査では、“オリンピックの延期の決定”や“志村けんさんの死亡”なども挙がり、いずれも新型コロナウイルスに関連したニュースに大きな関心が集まった。

図1 過去1週間で気になった話題やニュースの変化(2020年3月)

休校要請で高まった「不安」「憂鬱」、志村けんさん死去では「悲しかった」が急上昇

過去1週間を振り返ったときの“気分(センチメント)”の変化を見ると、2020年1月以降、「楽しかった」「わくわくした」「うれしかった」というポジティブ系の感情はダウントレンドが続いている。一方、「不安だった」「憂鬱だった」は中国での新型コロナの報道がされるようになってから上昇し続けてきた。3月1週は全国一律で小中高校の休校要請のタイミングであったが、この時は「不安」・「憂鬱」が高まりを見せていた。そして、新型コロナウイルスの感染により志村けんさんが亡くなられた直後の4月1週目の調査では「悲しかった」という感情が大きく上昇するとともに、「不安」と「憂鬱」も再上昇した。

図2 週間センチメントの変化

景況感、3月よりもさらに低下

消費者の景気の状態に対する印象、“景況感”についてはどうだろうか。「今の身の回りの景気判断(現況)」と「2~3カ月先の景気の見通し(先行き)」を用いて、景況感DI※2を算出したデータを見ていく(図3)。50よりも大きければ景気が良い、反対に50を下回れば景気が悪いと判断される。

景況感DIは、過去2度の消費増税のタイミングで、“現況” “先行き”ともに落ち込みを見せていた。しかし、新型コロナの感染拡大ではそれを大きく下回った。4月1週はさらなる低下が加速し、特に先行きは1カ月で10ポイントも低下した。経済の不透明さが消費者心理に大きく影響を与えているようだ。

図3 これまでの景況感DIの変化

消費マインドと消費金額の変化

「消費マインド※3」は今後1カ月の消費金額の増減の予想結果を指標化したものである。このスコアが50よりも大きければ消費が増え、50よりも小さければ消費が減るだろうという消費者心理を示しており、今後の消費全体の動きを占うことができる。

消費増税は消費マインドや消費金額に大きく影響を与えるため、そことの比較を見るために、2019年10月の消費増税前から挙動を見ていく(図4)。

消費マインドはそもそも、年単位の周期性がある。年間を通じて消費量が最も大きくなる年末にピークが来て、年始に一気に下降するという動きは2018年度と2019年度も共通している。しかし、“前年同週比(点線折れ線グラフ)”を見ると、2019年度は10月の消費増税直後に0.93まで落ち込んだが、年末に向けて緩やかに回復基調にあった。しかしながら、新型コロナの影響が深刻化してきた2020年2月3週目以降は“前年同週比”が低下し続けている。

図4 消費マインドの変化(2019年9月~)

また、過去1週間に個人がどのくらい支出したかを示したものが「消費金額」であり」(図5)、消費増税後の2019年10月~12月にかけて、“前年同月比(点線の折れ線グラフ)”が1.0を下回る週が多い。

先日、内閣府は2019年10~12月期のGDPは年率7.1ポイント減であったと発表した。GDPの6割は個人消費で支えられていると言われている。したがって、個人消費金額に関する定点観測データは、今後の経済活動の予見として活用いただけるのではないかと思う。

図5 消費金額の変化(2019年9月~)

消費マインドと同様に、消費金額も、2020年2月3週目以降に“前年同週比”が低下し続けている。10月の消費増税時は、消費金額が前年割れした期間が比較的短かったが、今回のコロナショックはまだ進行中である。4月8日より効力が発生した緊急事態宣言によって、より強い外出自粛や、企業活動の縮小・停止なども出てくるだろう。こういった事態に際した消費者の心理や行動の観測手段の1つとして、当調査データ(Macromill Weekly Index)を活用いただければと思う。なお、調査データは翌週火曜に、当社ホームページで公開している。

  • 出現頻度が高い単語を抽出し、その頻度に応じた大きさで図示する手法

  • 今の景況感(現況)は「良い(100点)、やや良い(75点)、変わらない(50点)、やや悪い(25点)、悪い(0点)」、2~3か月先の景況感(先行)は「良くなる(100点)、やや良くなる(75点)、変わらない(50点)、やや悪くなる(25点)、悪くなる(0点)」とそれぞれ点数を与えた時の平均値

  • 過去1か月間と比較した今後1か月の個人消費量について「大幅に増える(100点)、やや増える(75点)、変わらない(50点)、やや減る(25点)、大幅に減る(0点)」と点数を与えたときの平均値

Macromill Weekly Indexとは

マクロミルが週次で行う定点観測調査データです。即時性の高い消費マインドや消費動向を把握するため、毎週水曜日に1,000名のマクロミルモニタを対象にしたインターネット調査を実施しています。当調査では、過去1週間に消費した金額や、消費したモノ・サービスのカテゴリーの消費実態のほか、内閣府が実施している消費動向調査や景気ウォッチャー調査の調査票を参考にした消費マインドや景況感などを幅広く聴取しています。

著者の紹介

村上智章

村上 智章

元マクロミル 事業統括室
名古屋大学大学院工学研究科土木工学専攻修了。都市計画コンサルタントを経て、ヤフーバリューインサイト株式会社に入社。その後、マクロミルとの経営統合により、マクロミル総合研究所に配属。アナリストとして調査データの分析を担当するとともに、アンケートモニターと調査データのクオリティ管理に従事。2013年より日本マーケティング・リサーチ協会インターネット調査品質委員会委員長を務める。専門統計調査士。

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