
定性調査では「モデレーター」を設置することが大切とされています。では、モデレーターは、定性調査においてどのような役割を担っているのでしょうか?本記事では、定性調査におけるモデレーターのおもな役割や、モデレーターが意識したい8つのポイントを解説します。定性調査を実施する際は、ぜひ参考にしてください。
定性調査とは?
定性調査とは、対象者の行動の理由や価値観など、数値化できないデータを収集する調査手法です。定性調査では「そのサービスを選んだ理由」や「商品を利用した感想」など、「なぜ(Why)」や「どのように(How)」にあたる内容を調べることを目的とします。ユーザーの行動の背景にある深層心理や潜在的なニーズの深掘りが可能です。
定性調査のおもな手法
定性調査では、おもに対面方式での調査手法が採用されます。代表的な手法には、次のようなものがあります。
グループインタビュー
複数人の対象者を集め、テーマについて自由に発言してもらい、その様子を調査する手法
デプスインタビュー
インタビュアーと対象者が1対1で対話する手法
行動観察調査(エスノグラフィ)
対象者と行動をともにし、行動を観察する手法
訪問観察調査(家庭訪問)
行動観察調査のひとつで、対象者の自宅を訪問し、行動を観察する手法
ワークショップ
複数の対象者に商品をつくる過程などを体験してもらい、その様子や会話内容などを観察する手法
MROC(マーケティングリサーチオンラインコミュニティ)
オンライン上のコミュニティに参加してもらい、対象者同士のやりとりを観察する手法
定性調査におけるモデレーターとは?
定性調査におけるモデレーターとは、グループインタビューやデプスインタビューのようなインタビュー調査において、司会者やインタビュアーの役割を担う人のことです。
対象者の本音を引き出せるかどうかは、質問を投げかけるモデレーターのスキル・経験によって左右されます。そのため、モデレーターの力量は、定性調査の質に大きく影響するとされています。
モデレーターのおもな役割
インタビュー調査におけるモデレーターのおもな役割は、対象者の潜在意識を探り、深掘りすることです。インタビューのテーマに合わせて設定した質問を投げかけ、安心感を与えるようなコミュニケーションをとりながら、相手の本音を引き出します。また、対象者の意見を分析することも、モデレーターの仕事のひとつです。表面的な言葉だけでなく、表情や声のトーンなどにも注目しながら、相手の深層心理を読み解きます。対象者の意見をまとめて、報告書を作成することもモデレーターの役割です。
グループインタビューにおける役割
グループインタビューにおけるモデレーターには、上記に加えて進行管理の役割も求められます。参加者同士のディスカッションが円滑に進むよう、議論の方向性を調整したり、発言者が偏らないよう配慮したりします。
デプスインタビューにおける役割
デプスインタビューは1対1で行われるため、モデレーターには特に傾聴力が必要です。対話を通じて、相手の本音を引き出すスキルが求められます。対象者が安心して話せるよう、信頼関係を築くことが大切です。
インタビュー調査の基本手順
ここからは、インタビュー調査の基本的な流れを紹介します。
調査目的を明確化する
まずは、調査の目的を明確化しましょう。目的が曖昧なまま調査を実施すると、有益な結果を得られる可能性が低下してしまいます。また、このときに仮説を設定しておくと、インタビュー対象者の選定や質問内容の決定に役立ちます。
インタビューの計画を策定する
次に、インタビューの実施計画を策定しましょう。検討する項目としては、以下の6つが挙げられます。
- インタビューの種類
- 実施形態
- 対象者の人数
- インタビュー時間
- 全体のスケジュール
- 予算
インタビューの実施形態には、オフラインやオンライン、チャット形式などがあります。インタビュー時間はグループインタビューは1時間〜1時間半、デプスインタビューは1時間半〜2時間程度が一般的です。
インタビューフローを作成する
インタビューフローとは、質問項目や順番、時間配分などを定めた台本のことです。調査目的に合わせた質問内容を検討し、できるだけ前後の質問が回答に影響し合わないよう意識しながら順番を決めます。
また、インタビューフローには、調査目的や注意事項などの説明パートや自己紹介パート、クロージングのパートも設定しましょう。
インタビューの対象者を選定する
次に、インタビューの対象者を選定します。インタビュー計画を策定する際に定めた条件に合う人を見つけ出し、インタビューを依頼します。確実に条件に合致する対象者を抽出するため、スクリーニング調査(事前調査)を行うこともおすすめです。
インタビューを実施する
ここまでの準備が完了したら、インタビューを実施しましょう。インタビューには専門スキルが求められるため、インタビュアーを外注するのも一案です。
特に、グループインタビューは複数人から意見を引き出しつつ、時間内に終える必要があるため、インタビュアーには高いスキルが求められます。
インタビュー結果を分析する
インタビューはただ実施して終わりではなく、結果を分析することが重要です。インタビューの録音データを文字に起こして議事録を作成し、そこからわかることを整理しましょう。最後に、分析結果をまとめたレポートを作成して完了です。
インタビュー調査でモデレーターが意識したい8つのポイント
インタビュー調査を実施する際、モデレーターは以下の8つのポイントを意識することが大切です。
1.行動の背景を深掘りする
インタビュー調査では、対象者の行動の背景を深掘りする必要があります。「○○をした」「○○を選んだ」という表面的な回答だけでなく、その背景にある気持ちや価値観をヒアリングすることが重要です。その行動の動機やきっかけ、その行動をとったときの気持ちや満足感など、感情の部分を掘り下げてインタビューしましょう。
2.インタビューフローに縛られすぎない
インタビューを円滑に進めるためには台本が必要ですが、インタビューフローにとらわれすぎないことも重要です。インタビューフローはあくまで基本の型と考えて、対象者の反応を見ながら臨機応変に対応しましょう。たとえば、対象者が気になる回答をしたときは、次の質問に進む前に発言内容を掘り下げることをおすすめします。
3.発言しやすい雰囲気を作る
対象者の本音を引き出せるよう、話しやすい雰囲気を作ることも大切な仕事です。そのためには、相手の話を「聞く力」を高めることが重要です。また、グループインタビューにおいては、あまり発言できていない人がいる場合は意見を求めるなどして、参加者全員が平等に発言できるよう気を配りましょう。
4.回答を誘導しない
モデレーターは、インタビュー実施側が欲しい回答を得られるよう、対象者の回答を誘導してはなりません。参加者たちから想定外の発言が飛び出したり、仮説とは異なる流れになったりした場合も、余計な介入は避けるべきです。適切に進行管理をしながらも、話の流れを見守る姿勢も必要です。
5.相手の発言を遮らない
対象者に質問を投げかけたあとは、相手の発言が終わるまで話を遮らないよう注意しましょう。モデレーターは、どのような発言内容でも、対象者の意見を尊重する必要があります。モデレーターが「あなたの話を聞きます」という姿勢を見せることで、対象者は安心し、自分のペースで気持ちを伝えられるようになります。
6.沈黙を恐れない
インタビュー中に沈黙の時間が訪れると、進行管理を担うモデレーターとしては不安を感じてしまうでしょう。しかし、沈黙はけっして悪いものではなく、その時間を使って、対象者は自分の意見を整理することができます。
また、回答までに「間」が生じたことは、調査結果を分析するうえで大切な情報のひとつとなります。
7.中立の立場を保つ
インタビュー中、モデレーターはあくまで中立の立場を保つことが大切です。インタビューの対象者はモデレーターの影響を受けやすい傾向があり、モデレーターが自分の意見や感想を述べると、対象者の回答もそれらに近づいてしまう可能性があります。
また、いかなる意見にも同調・否定をしないことで、全ての参加者が安心して意見を話しやすくなります。
8.ラポールを形成する
ラポールとは心理学用語のひとつで、お互いを受け入れ、信頼し合っている状態のことです。
インタビュー調査において相手の本音を引き出すためには、ラポールの形成が不可欠といえます。インタビュー開始直後に本題に入るのではなく、最初の10分ほどで自己紹介や雑談を交えると、ラポールが形成されやすくなります。
グループ調査においても、はじめに自由に自己紹介をする時間を作ることで、安心感や一体感を与えられるでしょう。
参考:定性調査とは?基本から定量調査との違いや比較・メリット・手法まで解説
まとめ
定性調査におけるモデレーターは、インタビューが円滑に進むよう場をコントロールし、対象者の本音を引き出すという重要な役割を担います。モデレーターには高いスキルが求められるので、自社での対応が難しい場合は、専門家への外注を検討してもよいでしょう。
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