アンケート調査は、顧客満足度向上や商品開発など、さまざまな場面で活用されています。アンケート設計とは、アンケート調査の目的を達成するために、誰に、何を、どのように聞くのかを設計するプロセスです。本記事では、アンケート設計の基本的な方法や注意点について解説します。
アンケートとは
アンケートは、特定のテーマについて人々の意見や考え、行動などを調査するために、質問紙やWebフォームなどを用いて回答を集める方法です。市場調査、顧客満足度調査、商品開発調査など、さまざまな場面で活用されています。目的を明確に設定し、適切な設問を作成することで、収集した回答内容から次のアクションに繋げられる可能性があります。
アンケートの設計方法:事前準備編
アンケートを設計するには、事前準備も大切です。ここでは、アンケートの設計方法について解説します。
1.目的を設定する
まずはアンケートの目的を設定します。なぜアンケートを実施するのか、アンケート実施後はどのようなアクションをとるのかなどを明確にしましょう。目的を設定することで、必要な情報を効率的に収集できたり、有益な情報を集められる可能性が高まります。
2.調査対象者を設定する
アンケート調査の成功には、調査対象者を適切に設定することが重要です。調査対象者が興味のある内容であれば、回答率向上に繋がるでしょう。また、調査対象者に合致していれば、信頼性の高いデータ収集が可能です。
たとえば、若者を意識したい場合は10代、対象を幅広くしたい場合は全世代など、対象を明確にしましょう。また、性別、地域などで分けることも大切です。
3.アンケート手法を決定する
アンケート調査を実施する際には、どのような手法でアンケートを行うのかを決定する必要があります。アンケート手法は、以下の要素を考慮しましょう。
調査対象者
調査対象者がインターネットを利用しているかどうか、電話でのインタビューに協力してくれるのかどうかなどを考慮します。
調査目的
調査目的によっては、特定の手法が適している場合があります。たとえば顧客満足度調査や市場調査は、紙のアンケートやWebアンケートで実施することが一般的です。
アンケート手法の種類
主なアンケート手法には以下が挙げられます。
- Web調査:インターネット上でアンケートを実施する方法
- 対面調査:インタビュー専用会場で1対1やグループで直接インタビューを行う方法
- Web対面調査:調査対象者の自宅とビデオ通話で接続し、インタビューを行う方法
- 電話調査:電話でインタビューを行う方法
- 郵送調査:アンケート用紙を郵送で送付し、回答を郵送で回収する方法
調査目的や調査対象者、予算などを考慮して、最適な手法を選択することが大切です。
アンケートの設計方法:項目作成編
ここでは、アンケートに適した項目の作成方法を解説します。
1.調査項目の全体設計をする
アンケート調査の成功には、調査項目の分類と全体設計が重要です。目的や調査対象の設定をもとに、調査項目を考えましょう。また、どのような項目が目的達成に最適なのかを考慮します。このように、事前に全体設計を整理しておくことで、データ分析を効率的に行うことができます。
2.構成を考える
アンケートの構成は、回答者の理解度や回答率に大きく影響します。項目を羅列するだけでなく、論理的な流れと心理的な負担を考慮した構成にしましょう。最初は答えやすい質問から始め、徐々に難しい質問へと移行します。こうして設問の難易度や順番を工夫することで、回答者の負担を軽減できるでしょう。
3.回答形式を決定する
設問の内容や目的に合致した回答形式を選択することが必要です。以下で、主な回答形式を紹介します。
- 単一回答 (SA): 複数の選択肢から1つだけ選ぶ形式
- 複数回答 (MA):複数の選択肢から複数選ぶ形式
- 自由回答(FA):質問した内容に対し意見を自由に書き込んでもらう形式
- 自由回答(N):金額や時間など数字のみで回答を記載する形式
回答形式は、回答者の負担やデータ分析に影響するため、適切なものを選びましょう。
アンケート後の分析のポイント
アンケートを回収したら分析を行いましょう。ここでは、分析のポイントを解説します。
データを集計しやすい形にそろえる
アンケート調査を実施後、結果を分析するには、まずデータを集計しやすい形に準備する必要があります。データの形式が統一されていなければ、集計作業に時間がかかり、分析結果の見直しも困難になります。
多くのアンケートシステムは、集計機能が搭載されているため、活用するのもおすすめです。また、SPSSやExcelなどの統計分析ソフトを用いることで、高度な分析を行えます。
全体の傾向を把握するには単純集計がおすすめ
データ分析を行う際には、まず全体的な傾向を把握しましょう。そのための第一歩として、「単純集計」がおすすめです。単純集計とは、各設問に回答者全体の度数とパーセンテージ(%)を算出する方法です。最も基本的な集計方法であり、アンケート結果全体の傾向を把握するのに役立ちます。
参考:単純集計とは
属性・質問の傾向把握にはクロス集計がおすすめ
単純集計で全体の傾向を把握した後、より詳細な分析を行うためには、「クロス集計」がおすすめです。クロス集計は、複数の設問を縦横に掛け合わせて集計する方法です。たとえば「性別」と「商品満足度」という2つの設問を掛け合わせて集計することで、「男性は商品にどの程度満足しているのか」、「女性は商品にどの程度満足しているのか」といった回答の傾向や、属性ごとの違いを分析できます。
参考:クロス集計とは
データ集計の際の注意点
ここでは、データ集計の際の注意点を解説します。
グラフの種類に注意する
アンケートデータを集計したら、次は可視化です。可視化にはグラフが有効ですが、設問の種類や目的に合致したグラフを選択することが重要です。おすすめの設問とグラフの組み合わせは以下の通りです。
- 単純集計:円グラフ、帯グラフ
- クロス集計:折れ線グラフ、棒グラフ
- 自由回答(FA/N):ヒストグラム、ワードクラウド
読み取り方に注意する
データ集計において、集計データの読み間違いを避けるために、度数のみと%でそれぞれグラフを作成しましょう。
- 度数:各回答選択肢を選んだ回答者の人数
- %:各回答選択肢を選んだ回答者の割合
度数のみのグラフは、回答者数の多い選択肢が強調され、全体的な傾向を把握しやすいでしょう。%のみのグラフは、回答者数の少ない選択肢でも、割合が分かりやすく、比較分析に適しています。
アンケートの回答率を上げるコツ
ここでは、アンケートの回答率を上げるコツを解説します。
設問数を工夫する
アンケートの回答率を上げるためには、回答者にとってストレスのかからない設問数に設定することが重要です。設問数が多すぎると、回答に時間がかかり、回答者が負担を感じてしまう可能性があります。どうしても設問が多くなる場合は、複数ページにしたり、途中保存のボタンを付けるなどします。
流れを意識する
以下のように回答者にとって読み取りやすく、スムーズに回答できるアンケート作成も大切です。
時系列の順序
回答の時系列がいったりきたりすると、回答者が混乱する可能性があります。一般的に、「過去→現在→未来」の時系列に沿って設問を並べると、回答者が理解しやすくなります。
詳細な情報への移行
最初は全体的な質問から始め、徐々に詳細な質問へと移行していくと、回答者がスムーズに回答できます。
設問は端的にする
文字数が多すぎると、回答者が読むのが面倒だと感じてしまい、回答率が低下する可能性があります。設問を端的にすることで、回答者の負担を軽減でき、回答にかかる時間を短縮できます。一文はできるだけ短くし、難しい言葉や専門用語は避けましょう。回答者の負担を軽減することで、回答率を向上させられます。
インセンティブを設定する
インセンティブとは、アンケート回答のお礼として回答者に渡すものです。粗品や現金、ポイントなど、さまざまな種類があります。また、インセンティブを設定することで回答率を高めやすくなり、回答者への感謝を伝えられます。インセンティブの主な種類は、以下のとおりです。
- 粗品:ボールペン、メモ帳、クリアファイルなど
- 現金:ギフト券、電子マネー、現金書留など
- ポイント:ポイントサイトやアンケートサイト独自のポイント
設問の数や内容に合わせて、インセンティブを調整しましょう。
まとめ
アンケートは設計が肝であり、時間をかけて構築していくことで、より有益な情報を収集できます。また、アンケート実施後のデータ分析にも全体の設計が影響するため、目的や調査対象者を明確にすることが重要です。
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