海外市場4カ国同時のペルソナ作成プロジェクト。ファクトベースの情報に基づいた、利活用されるペルソナ像の構築に成功

業界・業種
家電・電機

2023/8/22(火)

ヤマハ株式会社様

楽器や半導体、音響機器(オーディオ・ビジュアル)、スポーツ用品、自動車部品、ネットワーク機器に至るまでの製造、販売を行なっている。主力である楽器事業では楽器の製造・販売をはじめ、音楽教室等の運営、音楽・映像ソフトの制作・販売なども展開。

抱えていた課題
  • ヘッドホン・サウンドバー市場では昨今若年層による売上が多くを占めており、中高年層が中心の現在の顧客層から新たなターゲットへと変更が必要であった
目的
  • 若年層の中でも特に「音楽とエンタメでアイデンティティを作る人」をターゲットセグメントに選定し、開発部門やマーケティング部門、さらには海外の現地メンバーも含め、事業に携わる全てのステークホルダーが「音楽とエンタメでアイデンティティを作る人」の共通イメージを描けるよう、ペルソナを作成したい
  • ペルソナ作成をテーマにしつつも、最終的なゴールは各ステークホルダーが顧客を起点に同じ方向を向いて事業を推進できるよう、ペルソナの利活用・浸透に繋げたい
成果
  • 調査企画や分析段階にてステークホルダーを巻き込むことで、事業に関わる全員がペルソナ像を納得・理解し、各々が共有イメージを持ってアクションが取れる状態へ
True Sound(※1)をコンセプトに掲げ、ミレニアル世代をターゲットとしたヘッドホン・サウンドバー事業に取り組まれているヤマハ株式会社様。今回は音響事業本部 クリエイター&コンシューマーオーディオ事業部 事業開発部の小林曜様にお話を伺いました。

将来の成長を見越した中期計画に求められていた“変化”

―ペルソナ作成とその利活用・浸透へと至る前の課題について教えてください

私たちヤマハはホームオーディオ事業を60年以上にわたって展開しており、その中の基幹となるAVレシーバーやHiFiコンポーネントについては長らく世界でトップレベルのシェアを取り続け、お客様からも高い評価を得ており、事業の中核となっています。

しかし事業を続けていく中で、既存製品の市場や顧客の層がだんだんと成熟してきたため、成長のためには変化を加えていく必要性が高まってきていました。

そこで別の定量調査も活用しながらミレニアル世代の「音楽とエンタメでアイデンティティを作る人」をターゲットに定めてはみたもののプロファイルの掘り下げが十分ではなかったため、以前より調査でお取引のあるマクロミルさんへペルソナ作成をご相談したという背景です。

音響事業本部 クリエイター&コンシューマーオーディオ事業部 事業開発部 小林曜様

―ペルソナ作成に止まらず、“ペルソナの利活用・浸透こそが真のゴール”というご提案に共感いただけたことが、マクロミル選定の決め手であったと伺っています

はい、まさに私たちが日々モヤモヤと抱えていたことのインサイトを導き出されたと思いました。ペルソナを作ることが目的でしたが、その先にはどうやってそれをステークホルダー全体に理解し、活用してもらえるかについて、課題感は持っていたものの具体的なアイデアがない状態でしたのでさすがと思いましたし、よい意味で衝撃的でした。

「音楽とエンタメでアイデンティティを作る」なミレニアル世代のお客様とは一体どのような方々なのか、そこが曖昧なままでは前に進めないし、同時に社内のあらゆるステークホルダーに浸透してゆかなければ何の意味も成さない。後から考えると社内でなかなかペルソナが浸透せず困っていたというのが調査のトリガーになっていたと思いますね。

なぜこの人は音楽を聴く必要があるのか、いろんなエンターテイメントがある中でなぜこの人は音楽を大事にするのかといったインサイトの部分から、どんな時に音楽を聴きたくなるのか、音楽を聴いてどんな気持ちになるのかというところまで深堀りたい。そこまで調べ尽くしたうえで、商品企画やマーケティングを含めた、あらゆるステークホルダーにとって理解・利活用しやすいアウトプットになれば一本軸の通ったペルソナになり得ると確信した瞬間でもありました。

Who(誰に)が分かることでWhat(何を)もHow(どのように)も定まってゆく

―ペルソナ作成後の事業活動にどのような変化や影響がありましたか

大きな変化は二点ありまして、一点目は様々な会話の起点が“お客様”になったということです。

マクロミルさんによるペルソナ作成以前は、商品企画部門より「こんなスペックの商品を作りたいです」「xx円の商品を作りたいです」といった我々視点の会話が中心でした。その商品は何のために必要なのか、誰のために必要なのかという視点が弱く、共通の判断基準がありませんでした。これでは議論も進まず、堂々巡りしがちです。しかし、ペルソナを作成したことで、お客様という明確な判断基準を以って、社内で物事を推し進めることができるようになったというのが嬉しい変化であり成果とも呼べるかと思います。

二点目は今回のペルソナの情報をもとにさらにお客様の情報やプロファイルを深めようという動きが自発的に生まれてきたことです。今回作成したペルソナをベースにしつつ、独自の調査やデータを組み合わせ、もう一段階発展させたものをステークホルダー各人が考えるようになったことは非常に大きな成果です。スタートがファクトベースのペルソナにあるため、「お客様がこう考えるからこれは良い、これは良くない」というように判断基準や優先順位付けが明確になってきたと思います。

ペルソナ調査の支持率が10%から80%の体感値へ

―ペルソナがまさに利活用されているシーンをお聞きできて嬉しく思います

実は調査が始まってから終わるまでも部署内のペルソナ調査の支持率は体感10%ぐらいしかありませんでした。しかし、定量的にまとまったレポートに加え定性的なお客様の生のコメントをメンバーに共有していくことで、先ほど述べたように今では当たり前のように顧客中心の会話が行なわれるようになりました。現在の支持率を数字で表すと80%ぐらいといっても過言ではないです。

どれだけフレームワークを使って、どれだけデータを集めて、どれだけマーケティング的に理路整然と説明しても人を動かすことはできなかったのですが、お客様が言ってくれたことは人を動かす力があるなと思いました。マクロミルさんの力を借りなければ決して成し遂げることはできなかったでしょう。

また、以前社内で様々な情報を集めながら仮説に基づいてペルソナを作ってみたのですが、これだと「こんな完璧な人は存在するのか?本当にヤマハブランドのターゲットとしてふさわしいのか?」と疑問が沸くような、地に足のついていないペルソナになってしまいました。ですので調査を行いファクトベースのペルソナを作成してよかったですね。

調査のプロであるパートナーの高い介在価値

―海外市場(日本、中国、アメリカ、ドイツ)を対象としたペルソナ作成プロジェクトであったため、ご苦労も多かったと思います

海外でもビジネスを展開する以上、地域差というのはどうしても生まれやすいです。ですので全世界でなくともある数カ国違う地域で同時に同じ調査を行うことがとても大事だと思いました。同じ調査をそれぞれの地域で実施することで、どこが共通点でどこが相違点なのかフラットに出てくるからです。今回の場合だと、お客様のインサイトは世界共通であることがわかったので、それを軸に施策を行いましょうという意思決定ができました。

よくある話として日本でまず調査してから、その結果をもとに一年後にアジアでやってみましょうという段階を踏んだ調査をしてしまいがちなのですが、その場合アウトプットを比較分析しづらい場合があります。費用と時間がかかるとはいえ、複数のターゲット国で同時にリサーチをしっかりとやっていくほうが結果的には良いアウトプットが得られるのではないかと思います。

―マクロミルの介在価値や今後の期待、マクロミルへの相談を検討している他社様向けのメッセージがありましたら教えてください

マクロミルさんは皆さんとてもスキルが高く、安心してお任せすることができました。日本で営業されている方、リサーチャー(※3)の方がいつも我々の課題に寄り添っていただけて素晴らしいのはもちろんのこと、現地のモデレーター(※2)がとても素晴らしい方が多く、インタビューでうまく意見を引き出していただきました。

代わりに私たち依頼側は、なぜこの調査をやらなければならないのか、何を知りたいのか、その結果次にどんなアクションを行うのかというのをしっかりと考えて詰めていくべきですね。自分たちで調査プロセスの全てを行ってしまうと、目的や課題の設定や、結果の分析など最も重要な部分の詰めが甘くなっていたと思います。何でも自分たちで行わずに、自分たちがやるべきことと任せることを役割分担して、トータルでプロジェクトをどう推進していくかに注力するとうまくいくのではないかと思いました。

また、これは経験則なのですが、一発で社内ステークホルダーの同意が得られることはなくて、継続的に繰り返し続けることがとても大事です。当初調査に対する支持率が低くても諦めずに調査をしたからこそ、お客様の生の声を聴いて社内の全員が腹落ちして、味方になってくれました。

調査プロジェクトにおけるステップ一つひとつのタイミングではなかなか理解を得られないものですが、最後の最後まで完走しきるとやり遂げることができるのではないかと思います。調査はすぐ結果が得られるとは思わずに、続けることが大切ではないでしょうか。

今後とも引き続きお力添えをよろしくお願いします。

(※1)True Sound
ヤマハが製品や音作りで追求している、アーティストの想いや表現を余すことなく伝え、聴く人の感情を動かす音のこと。

(※2)モデレーター
インタビュー調査において円滑なコミュニケーションとデータ収集を促進する役割を担う

(※3)リサーチャー
市場や消費者の動向を把握し、マーケティング戦略に反映させるための情報提供を行う

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