【グローバルリサーチ活用事例】大ヒット記録中『バイオハザード ヴィレッジ』 の開発において、チューンアップにつながったマクロミルのグローバルリサーチ

2021/10/7(木)

株式会社カプコン様

世界中から熱狂的な支持を集めている「バイオハザード」シリーズ最新作、『バイオハザード ヴィレッジ』を2021年5月に発売された株式会社カプコン様(以下、カプコン)。全世界の出荷は450万本を突破し、大ヒットを記録しています。
本タイトルのコンセプトは“死にもの狂いのサバイバルホラー”。このコンセプトがプレイヤーに伝わっているのかどうか、実際に国内・海外のプレイヤーにゲームを体験いただく「プレイテスト」をマクロミルにて実施いただいています。幅広いユーザーから熱い支持を集め、最新作への期待も非常に高い中、「プレイテスト」を行うことの重要性やその活用について、カプコン マーケティング戦略部 大谷様と、マクロミルでリサーチを担当した2名にお話をお伺いしました。

※2021年6月末時点(ダウンロード版販売実績を含む)

株式会社カプコン

マーケティング戦略部
大谷剛
※以下敬称略

株式会社マクロミル

第1事業本部 アカウントセールス部 WESTユニット
三好竜也

株式会社マクロミル

事業統括室 エグゼクティブ リサーチ フェロー
小林健

ゲーム市場やゲーマーを理解しているマクロミルに依頼した、課題を洗い出すためのリサーチ

―今回、マクロミルではどのようなリサーチを実施いただいたのでしょうか。

大谷:
『バイオハザード ヴィレッジ』の開発段階において、国内外での「プレイテスト」を2回、プロモーションの仮説検証、発売後の効果検証のリサーチを実施しました。

マクロミルには、前作の『バイオハザード RE:3』でもご協力いただいていますが、今回も調査を依頼したのは、“ゲーム市場やゲーマーの心情をご理解してくれているから”です。これまでの知見があることも理由の一つですが、リサーチを行う上で、ゲーム市場やプレイヤーの気持ちを理解していることは非常に重要だと思っています。マクロミルはこの部分で、他社よりも優れていると感じました。例えば、定量調査であれば調査票の設問の一つ、定性調査であれば聞き方の一つをとっても、プレイヤーの心情を引き出すための機微を捉えていて、これは普段からゲームに関わっていないとなかなかできないことなんです。

小林:
私はリサーチャーとして関わらせていただきましたが、大谷さんからは、リサーチの企画段階から、今回のリサーチの目的は何なのか、課題感はどこにあるのか、最終的に実現したいゴールまで、詳細な情報提供がありました。
今回のような機密性が高い開発段階のリサーチでは、我々のような第三者への情報提供が限定的になるケースも多く、もどかしく感じることもあるのですが、カプコン様からは多くの情報を共有いただけたため、私たちはその上で最適なリサーチ方法を考えることができました。リサーチの品質をあげることにも間違いなくつながったと思います。

―大谷さんからの詳細な情報提供があったからこそ、ご満足いただけるリサーチを提供できたわけですね。
今回実施したリサーチの中で、2回実施したプレイテストが特に重要であったとお伺いしていますが、どのような目的で実施されたのでしょうか。

大谷:
プレイテストでは、ゲームの開発過程で実際にプレイヤーにゲームを体験してもらい、その後グループインタビュー調査を実施するわけですが、特に開発メンバーが気にしているのは、良かった点ではなく、自分たちでは気づけていなかった点やその課題を明確化することです。
ただ、プレイヤーから出てきた言葉をそのまま受け止めてしまうと、見誤ってしまう可能性があります。プレイテストの最大の目的は、その言葉の意味合いを考え、つなぎ合わせることで、プレイヤーが実現して欲しいと思っているインサイトを導き出すことです。グループインタビューを通じて、真の課題を深掘りすることができると思っています。

4カ国を巡りながら修正を重ねたプレイテスト。
コロナ禍で急遽オンラインに変更した中でもプレイヤーの心情を深掘りすることができた

― プレイヤーのインサイトを導き出すことが重要なのですね。
実際に行ったプレイテストについて、詳しく教えていただけますでしょうか。

三好:
1回目のプレイテストは、2019年に、ロサンゼルス、ニューヨーク、フランクフルト、香港、日本の4カ国5都市で行いました。海外の4都市は、各2日間でプレイテストを実施し、1日かけて移動という形で、約2週間かけてまわりました。
今だからこそお話できますが、実は初回のロサンゼルスのプレイテストは、プレイヤーのインサイトを深掘りすることができず、大谷さんにご満足いただける結果ではありませんでした。ロサンゼルスのプレイテストが終わったタイミングで、大谷さんから「ここをもっと深掘りしたい」など、事前に考えていただいたポイントをご意見くださったため、次のニューヨークではそこを改善し、さらにそこの反省点を次に活かし・・・と、旅の中で試行錯誤して進めていきました。

2020年に実施した2回目のプレイテストは、コロナ禍ということもあり、日本以外はオンラインで実施しています。慣れないオンライン環境下ではありましたが、1回目に実施した土台があり、それを再現しながらアップデートし行うことができました。結果として、どちらのプレイテストでも、プレイヤーの心情を深掘りすることができ、インサイトを引き出す良いインタビューになったと思います。

大谷:
色々思い出してきましたが、ロサンゼルスは確かにちょっと不満でした(笑)。
でも2都市目のニューヨークで改善していただいて、伝えたかったことをきちんと理解してくれたんだなと。旅の中でどんどんアップデートされていきましたよね。
その後、2回目の海外のプレイテストは、コロナの感染拡大で、急遽オンラインで実施することになりましたが、まだオンラインで実施するノウハウがなく、遠隔でどうやってゲームを体験してもらうの?って。そんなときに、機材の調達や実施方法など、すごく考えて色々と動いていただいたのは、とても感謝しています。オンラインならではの課題はあれど、その場で急遽作り上げてくれたので、なんとか実施することができました。

行き過ぎたかもしれないマクロミルからのメッセージ。でもそれがゲームの再設計につながった

― 各地で実施した今回のプレイテストでは、どのような効果が得られたのでしょうか。

大谷:
プレイテストから出てきたのは「考える余地がない」というキーワードでした。同じようにゲームを実際にプレイして問題がないかを確認する社内の品質管理部でも、似たようなキーワードが出てきて。これはどういうことなのだろうか、もっと深く見ていく必要があるねと。
今回のゲームは、“死にもの狂いのサバイバルホラー”というコンセプトで作っており、コンセプト自体はプレイヤーに刺さっていることは分かったものの、実際にテスト用のROMをプレイすると、ただ走り回り、出てくるクリーチャーに向けて射撃する繰り返しで、プレイヤーが自由を感じることができず、戦略性がないといったことから、「プレイヤー自身が考える余地がない」ということが明らかになったんです。マクロミルという第三者の機関を通じて、コンセプトがゲームで体現できていないということが分かり、ゲーム内容を作り変える契機の1つになりました。

小林:
大谷さんから、マクロミルの調査が契機となったという嬉しい言葉をいただきましたが、実は1回目のプレイテスト実施後に行ったカプコン様への報告会では手応えがありませんでした。全くいい記憶としては残っていないんです!
このインタビューの前に、報告会の資料をもう一度見直したのですが、出来映えは決して悪くなく、我ながらよく書けていました(笑)。ただ、資料として読み手、聞き手に突きつけるようなメッセージ・構成になっていて、このゲームに全身全霊で向き合っている皆さんにとって受け止めづらいものになっていたとも思います。当時大谷さんにも報告会後にお伝えしていましたが、釈迦に説法な、行き過ぎたメッセージだったのではないかと。
その後、カプコン様がYouTubeにアップされている本作のメイキング映像を拝見したのですが、その中でディレクターの佐藤さんが、制作過程における改良について、私が報告書で伝えたメッセージも用いながらお話しされていたんです。そのときに初めて「良かった」と思えました。お伝えしたかったことが伝わって、記憶にも残していただき、その上でゲームを改良してくださったことに、大げさな表現になりますが、心が震えるくらい感動しました。リサーチャーとしての自信にもつながりました。

大谷:
誰しも、認めたくない、受け止めたくない部分ってあると思うのですが、それを受け入れるきっかけづくりがどこかで必要ですよね。プレイテストで求めていた課題抽出を、マクロミルの第三者の視点で論理的に出していただけたことで、そのきっかけを得られたと思いますし、バイオハザードシリーズのエグゼクティブプロデューサーである竹内自身もその後の開発を進めていく中で、何度も報告書の資料を見返す機会があったと言っていました。

― プレイテストで得られた効果は、実際のゲームにはどのように反映されたのでしょうか。

大谷:
開発担当者からは、プレイテストで明確になった、敵から襲われるシーンで考える余地がなく、戦略性がない、サバイバルホラーになっていないと思われている点について、敵の登場やひっ迫した戦闘を段階的にすることにより、緊張感を与えつつ、遊び方を学べる丁寧な作り方にしたというフィードバックを受けています。ここに辿り着くまでに一年以上かけたと聞いています。

また、プレイテストでは「追われる」怖さは実現できているものの、「追われる」を感じすぎてしまっていることが分かり、ただ狙って撃っての連続のゲームにならないよう「追われる」感の少ない作りにするため、緩急を大切にしつつ、その一方で、緩急の緩の部分を与えすぎない作りにこだわって再設計したと聞いています。その結果、実際はプレイヤーはMAP上を誘導されているのですが、そう感じさせない、つまり自ら考えて戦略的に行動を選択していると実感できる仕掛けを作ることができています。

ユーザーが求めている価値を、今後もマクロミルと一緒にひき出していきたい

― ゲーム開発におけるリサーチの役割については、どのようにお考えでしょうか。

大谷:
3つの役割があると思っています。
1つは、第三者として、評価するという役割です。要所で、外部から改めて評価をすることの大切さというのは、間違いなくあると思います。

もう1つは、繰り返しになってしまいますが、プレイヤーのインサイトを導き出すことです。
新規ユーザー・既存のファンから様々な要望が寄せられ、どのように応えていくか考えていく中で、「このゲームは面白い」と体感してもらうためには、共通項を探していく必要があると思うのですが、それってやはり表面的な言葉ではだめだと思っているんです。SNSやアンケートでは、例えば、文字の大きさがどうたったか、UI(ユーザインタフェース)がどうだったか、敵の強さがどうだったか、怖かったかどうか・・・など、答えやすいことは明確に出てきやすいのですが、本当に出していく必要があるのは、インタビューの中で対象者からでてきた言葉の中にあるインサイトです。言葉をつなぎ合わせたときに、その中にあるインサイトの解釈が必要で、言葉を単純に拾うだけでは、どうしても見誤ってしまう可能性があるので、プレイテストで実施するようなインサイトを導き出すためのインタビューを非常に重要視しています。

最後の1つは、コンセプトを明確にすることです。
エンタメ独特のものだと思うのですが、日用消費財などの商品とは違って、エンタメって変化を伴うんです。
例えば、お水やチョコレートって、買って開封して食べ終わるまで、水は水だし、チョコレートの甘さは最後の一口まで同じじゃないですか。でもゲームは、例えば今回の『バイオハザード ヴィレッジ』では、サバイバルホラーでありながら、時にはアクション性を感じたり、時には心理的なホラーを感じたり、死にものぐるいの体験に心臓がバクバクしたり、ストーリーにとても感動したり・・・と、様々な変化があるんです。ゲームの序盤にコンセプトをきちんと伝えた上で、その後の変化を楽しんでもらうよう設計しているので、序盤でゲームのコンセプトがきちんと伝わっているかどうかがとても大事なんです。なのでプレイテストでは、ゲームの始まりの部分を体験してもらい、そのコンセプトが明確に伝わっているのかどうかを確認しています。

― マクロミルに今後期待することがあれば、教えてください。

大谷:
リサーチは、実施して終わりではなく、それを各タイトルで有効に活かしていくことこそが大事だと思っています。どうしても調査の方法には制限がありますが、その中で、表面的な部分ではなく、ユーザー自身も気づいていないような実現して欲しい価値、求めている価値をひき出すことが重要です。その価値を具体的に出せれば出せるほど、私たちはその価値をゲームに取り込んでいく努力をすることができます。今後も、表面的な寄せ集めではなく、ユーザーのインサイトを明確にするリサーチを一緒に実施していきたいですね。

定量調査で携わっていただいている方にももちろん感謝していますが、定性調査で小林さん、三好さん、グローバルにおける運営担当の方を含め、このお三方が関わってくれて、初めてカプコンとマクロミルの仕事が成立すると思っています。担当が変わったらこの関係は終わってしまうんじゃないかな(笑)。ぜひお三方には引き続き、カプコンの担当をお願いしたいと思っています。

小林:
有難いお言葉をいただいて、私からは「これからも頑張ります」という一言に尽きます。
幸いにもリサーチャーという職業なので、これからも人の気持ちや物事を理解し、お伝えすることに全力で取り組んでいきます。

三好:
私も、感謝の気持ちがすごく大きいですね。
カプコン様として、新たなリサーチにも取り組んでいかれる中で、マクロミルが目指している「パートナー」に近い形でのお取り組みができていることは、すごく有難いと感じています。大谷さんもご存知の通り、私はゲームリテラシーがあまり高くないので・・・、リサーチやマーケティング全体の部分でしっかりと価値を提供し、これからも良いお取り組みをさせていただきたいです。

大谷:
私にとって三好さんはマーケティングの相談相手ですね。自分の出した答えに悩むときってやっぱりあるので、一人で悩むよりも三好さんに相談させていただけるのはとても助かっています。これからもよろしくお願いします。

― 本日はありがとうございました。

※YouTubeにアップされているメインキング映像
https://www.youtube.com/watch?v=06UoqbX0x20 (『バイオハザード ヴィレッジ』メイキング映像3)

その他にも『biohazard公式YouTubeチャンネル』では、様々なメイキングやトレーラーがアップされている
https://www.youtube.com/channel/UCbReH8gzVeGr6wuQHEOiHFA

こちらの事例でご紹介したサービス

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グループインタビュー200プロジェクト、デプスインタビュー700プロジェクトの年間運用実績。社内外約120名のモデレーターが調査課題やテーマに応じて定性調査をサポートいたします。

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