GRRとは?チャーンとダウングレードを見抜き、事業の“守りの強さ”を可視化するSaaSの基本指標

公開日:2026/3/26(木)

SaaSやサブスクリプションビジネスでこんな経験はありませんか?

  • 新規獲得は順調なのに、ARRがなぜか横ばい
  • 解約数は把握しているが、売上の減り具合がよく分からない
  • アップセルに注目しすぎて、土台が崩れていた

それらの原因を可視化できる指標が、GRR(Gross Revenue Retention)です。

NRRが「攻めの指標」だとすれば、GRRは「守りの指標」
事業の収益を“減らさずに維持できているか”を、アップセルなしで純粋に測る数少ないKPIです。

この記事では、GRRとは何か?という定義から始まり、

  • NRRとの違い
  • 正しい計算方法と活用法
  • 改善アプローチと実践事例
  • マーケ・営業・CSチームでの共有の仕方

まで、実務に直結する形で深掘りして解説していきます。

監修

Macromill News 事務局

監修:株式会社マクロミル マーケティングユニット

20万人以上が登録するマーケティングメディア「Macromill News」を起点に、マーケティング知見や消費者インサイトに関わる情報を発信。

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GRRとは?意味と定義をわかりやすく解説

GRR(Gross Revenue Retention)とは、
既存顧客のうち、解約やダウングレードによって失われた売上を除いた“純粋な収益維持率”を表す指標です

ひと言で表すと:

「今いる顧客の売上が、1年後にどれくらい残っているか?」を測るもの。

GRRはアップセルを含まず、あくまで“今の売上をどれだけ維持できているか”を確認する、事業の安定性を示すKPIです。

GRRの計算式と具体例

基本の計算式は以下の通り:

GRR(%)=(継続売上 − ダウングレード − チャーン)÷ 前年同月の既存売上 × 100

用語の意味

  • 継続売上:前年同月から変化のない既存顧客の売上
  • ダウングレード:プラン変更・利用人数減などで下がった売上
  • チャーン:契約終了・解約により失われた売上

計算例

前年6月の既存売上:¥1,000,000
1年後の6月時点:

  • 継続売上:¥600,000
  • ダウングレード:¥200,000
  • チャーン:¥200,000

GRR = (600,000) ÷ 1,000,000 × 100 = 60%

→ 解約・縮小によって、既存顧客の売上は40%失われているということ。

NRRとの違いを明確に理解する

指標アップセル含む?測れること主な使い道
GRR含まない解約・ダウングレードによる売上損失の大きさ事業の安定性の確認、CS施策の効果測定
NRR含む守り+攻めを含めた“総合的な売上成長率”経営判断/投資評価/将来予測のベース

→GRRが低くてもNRRが高いことはありますが、GRRが低いままでは長期的に不安定な事業になります。

GRRを改善することが、SaaSの「売上の底」を支える理由

① チャーンは“穴の空いたバケツ”問題

  • 新規でいくら売っても、既存顧客が辞めていれば意味がない
  • GRRを改善しない限り、ARRの成長は止まる

② 事業価値(バリュエーション)に影響を与える

  • GRRが高い=解約されにくいサービス=安定したキャッシュフロー
  • 投資家や経営陣が事業の“防御力”を測る最重要指標として注視

③ LTV・CAC・ペイバック期間すべてに直結

  • GRRが高い → 顧客継続期間が伸びる → LTVが伸びる → CAC回収が早まる
  • 逆にGRRが低いと、LTVが短くなり、広告投資が非効率に

GRRの理想値とベンチマーク

業界やビジネスモデルにより異なりますが、SaaSの一般的な目安は以下の通り:

GRR水準意味
95〜100%非常に優秀(エンタープライズSaaSなど)
90〜94%健全な水準
85〜89%改善余地あり
〜84%以下危険信号(チャーン・縮小の抑制が急務)

※特にBtoBの場合、100%超えはNRRで狙う領域です。
GRRでは「100%を維持」できるかどうかが勝負。

GRRを改善するには?実践的アプローチ

GRRは、単なる「数字」ではなく、“顧客が離れる理由を可視化し、防ぐための問い”です。

① チャーン(解約)を防ぐ

  • オンボーディング体験の改善(初期離脱の防止)
  • 顧客の“成功体験”を早期に設計
  • 定期的なサクセスレビュー/エンゲージメント強化
  • ヘルススコア導入で“解約予兆”の検知

② ダウングレードを防ぐ

  • 利用状況とプランの“フィット感”を確認
  • アクティブユーザー数の維持・拡大策
  • ユーザー教育・プロダクトツアーによる活用度向上

③ 解約理由の定量化・パターン分析

  • 「使いこなせなかった」
  • 「料金と価値が合わなかった」
  • 「競合に乗り換えた」

→ 解約面談/アンケート/インタビューから“真の理由”を集め、プロダクト・サポートにフィードバック

GRRをチームKPIとして“自分ごと化”するには?

GRRは経営層だけでなく、CS・営業・マーケチーム全体で共有するべきKPIです。

部門観点アクション例
CSチャーン/満足度定期レビュー、問い合わせ対応品質の向上
営業ダウングレードの抑制過剰セールスの抑止、実利用ベースでの提案
マーケ初期定着の支援コンテンツでの教育/ステップメール設計
プロダクト活用率向上UX改善、機能の“発見性”強化

→ チーム全体で「GRR=顧客の満足度と定着の証拠」として扱うことが重要です。

GRRのダッシュボード・モニタリング設計のポイント

  • 月次/四半期のGRRトレンド
  • 顧客セグメント別GRR(業界/プラン/契約期間)
  • 解約理由別分類グラフ
  • 重要アカウントの離脱アラート(Slack連携など)

数値だけでなく、“アクションのきっかけ”を生むダッシュボードにすることが大切です。

まとめ:GRRとは「売上の地盤」であり、成長の土台を守る“守りのKPI”

GRRは、派手な成長を測る指標ではありません。
しかし、事業が健全に伸びていくかどうかを左右する“売上の地盤”を表す極めて重要なKPIです。

  • NRRが高くても、GRRが崩れていれば長くは続かない
  • GRRを高く保つことで、LTVが上がり、CACが回収でき、ARRが積み上がる
  • 成長する企業は、例外なく「守りが強い」

「新規を取る力」ではなく、「既存を維持する力」こそが真の競争優位。
その状態を可視化し、改善し続けることが、GRRを追う最大の価値です。

著者の紹介

伊賀 正志

株式会社マクロミル 事業統括本部 事業開発ユニット スペシャリスト 人間中心設計専門家

伊賀 正志

アクセンチュアを経て2010年に株式会社マクロミルに入社。BtoBリサーチ事業の成長・拡大に大きく貢献し、同領域における「エキスパートインタビューサービス」や「UI/UXリサーチサービス」の立ち上げを主導。また、事業企画部門においては全社基幹システムの刷新やBIツール導入、生産性改善プロジェクトなど、組織基盤の強化にも従事。現在は新規事業開発に携わり、自ら多数のクライアントインタビューを行いながらセミナー登壇も務める。

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