
POSデータを活用すると、売上や在庫、顧客動向などの情報を正確に把握でき、効率的な経営判断や販促施策に役立ちます。売上予測や在庫管理の精度向上、ターゲットに沿ったマーケティングなど、多くのメリットがあります。この記事では、POSデータのメリットや分析方法、活用事例を交え、具体的な活用ポイントを解説します。
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POSデータとは
POSは、Point of Saleの略で、日本語では「販売時点情報管理」と訳されます。 POSデータとは、小売店や飲食店などの販売時、POSレジを通過する際に得られる売上情報を指します。
日別・商品別・顧客属性別などの売上を詳細に収集でき、分析によってマーケティングや商品開発、在庫管理、販促施策の最適化に役立ちます。つまり、POSデータは店舗の売上把握や向上に欠かせない重要なデータです。
POSデータの重要性
POSデータは、売上の実態を正確に示す信頼性の高い情報源です。商品の販売動向を把握できるだけでなく、損益管理や在庫・顧客管理の効率化、新商品の企画立案にも活用できます。さらに、多角的な分析を行うことで、売上拡大や経営改善に向けた意思決定を裏付ける根拠を得られます。
POSデータを分析するメリット
POSデータを分析すると、売上予測や在庫管理の精度向上など、多くのメリットが得られます。以下で詳しく解説します。
売上予測ができる
POSデータを活用することで、過去の売上実績から将来の売上を予測できます。たとえば、前年の夏季のデータを分析すれば、今年の夏の販売計画を立てやすくなります。忘年会シーズンであれば、前年12月の商品別売上を参考にして、需要が高まる商品や売上額を見込むことが可能です。
店舗ごとの必要人員も事前に把握でき、シフトの調整を効率的に進められます。このようにPOSデータは、季節商品の動向をはじめとする売上予測や販売計画、人員配置の最適化に大きく役立ちます。
在庫管理の精度を向上できる
売上を予測できれば、在庫の仕入れ量を無駄なく調整できます。たとえば、直近の売れ行きに加え、季節性やキャンペーン要因も考慮して仕入れ量を調整できます。
さらに、POSデータを蓄積していけば予測の精度が高まり、在庫の持ちすぎや欠品のリスクを抑えられるため、コストの削減や在庫管理の効率化につながります。
マーケティング施策が改善できる
POSデータを活用すれば、マーケティングの精度を高められます。会員カードやポイントカードなどのID-POSデータは、顧客の性別・年齢層・居住地といった属性情報を持ち合わせているため、購入された商品や購入時期などのデータを組み合わせることで、ターゲットを明確に設定できます。
その結果、顧客のニーズに沿ったプロモーションを展開でき、勘に頼らずデータに基づいた戦略立案が可能になります。費用対効果の高いマーケティング活動を実現できる点が大きなメリットです。
POSデータを分析する方法
POSデータを分析する方法は多岐にわたり、売上の傾向把握から顧客行動の理解まで幅広く活用できます。ここでは、特に重要な4つの分析方法について解説します。
ABC分析
ABC分析は、店舗の商品ごとの売上への貢献度を把握するための分析方法です。各商品の利益率や販売コスト、売上を総合的に評価し、ランク付けすることで、どの商品が重要かを明確にできます。一般的な分類は、以下の通りです。
- Aランク:最も重要な商品で、仕入れを増やす優先度が高い
- Bランク:中程度の重要度の商品で、現状の仕入れを維持して様子を見る
- Cランク:優先度が低い商品で、仕入れの抑制、あるいは停止も検討する
ABC分析を活用することで、売れ筋や不振商品の把握が可能になり、在庫管理や販促戦略の改善につなげられます。
トレンド分析
トレンド分析は、商品の販売動向を季節や流行の影響を考慮して把握する分析方法です。たとえば、夏には冷たい飲料がよく売れ、クリスマスにはゲーム機の需要が高まるといった傾向を明らかにできます。売れやすい時期を把握することで、発注タイミングやプロモーション計画の最適化が可能です。
RFM分析
RFM分析は、顧客を「最近の購入日(Recency)」「来店頻度(Frequency)」「購入金額(Monetary)」の3つの指標で評価する分析方法です。3つの指標をもとに顧客をランク分けし、各グループに応じたマーケティング施策を実施できます。
たとえば、接触しやすい優良顧客に向けて販促活動を行うことで、売上の向上が期待できます。重要な顧客を明確に把握できるため、戦略的なマーケティングに役立てることが可能です。
バスケット分析
バスケット分析は、顧客が同時に購入する商品の組み合わせを明らかにする分析方法です。買い物かごや注文テーブルを単位として、どの商品が一緒に購入されやすいかを集計・分析します。たとえば、ペットボトル飲料とおにぎりや、テーブルとイスの組み合わせなどがわかります。
分析結果を活用すれば、セット販売の企画や関連商品の陳列位置の工夫など、売上を伸ばすための販売戦略に役立てられます。
POSデータ分析の活用事例
POSデータ分析を活用する際には、事例を参考にすることをおすすめします。3つのパターンの活用事例を紹介します。
商品の改善や新規開発
POSデータを活用すると、商品の見直しや新商品開発に役立ちます。例えば、ある飲食店では、売れ残り食品の削減とターゲット層に合った新商品の開発が課題でした。POSデータのABC分析で焼き魚の注文が少ないことがわかり、平日は半額にするなど廃棄を減らす対応を実施しました。
また、顧客データと組み合わせた分析で20代男性が揚げ物を好むことが判明し、唐揚げのバリエーションを増やして新商品として提供しています。その結果、焼き魚の在庫適正化と平日の販促強化、唐揚げの販売拡大という両面で成果を上げられました。
季節キャンペーンの実施
トレンド分析を活用すると、店舗の実態に沿った効果的なキャンペーンを打ち出せます。例えば、あるカフェでは、POSデータを使ったトレンド分析により、かき氷系デザートの売れ始めが例年より早いことが判明しました。その結果、5月のゴールデンウィークから販促を開始し昨年より顧客数と売上を伸ばしています。
人件費の削減
売上予測の精度を高めることで、時間ごとの必要人員を正確に把握できます。これにより、シフトを適切に調整しながら人件費を抑えることが可能です。例えば、ある飲食店では、週末の従来の5人体制を見直し、10〜17時は2人、17〜21時は5人、21〜23時は3人と時間帯ごとに人数を調整しています。これにより、サービスの質を維持しながら人件費を削減できました。
POSデータの注意点
POSデータを取り扱う際の注意点を2つピックアップし、解説します。
1. 厳重なセキュリティ対策が必要
POSデータを取り扱う際には、厳重なセキュリティ対策が必要です。POSデータは複数店舗の情報をまとめて管理できる便利さがありますが、オンラインで扱うため情報漏えいのリスクも伴います。顧客情報は個人情報にあたるため、取り扱いには細心の注意を払いましょう。
万が一データが流出すれば、顧客からの信頼を失う可能性があります。POSを導入する際は、セキュリティ面をしっかり確認しておくことが重要です。
オフライン状態では扱えない
POSデータはリアルタイム更新を前提とするため、安定したインターネット環境が望ましいです。インターネット環境が整っていない場合、POSレジの導入自体が難しくなることもあります。無線LAN設置に対応しているサービスもあるため、店舗にインターネット環境がない場合は、対応の有無を確認して選びましょう。
まとめ
POSデータを分析することで、売上予測や在庫管理、マーケティング施策の改善、人件費の最適化など、多方面で経営効率を高められます。実際の活用事例を参考に、データに基づく戦略を立てることで、店舗の売上拡大やコスト削減が可能です。導入時にはセキュリティやインターネット環境の確認も忘れず、安心して運用できる体制を整えましょう。
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