栄養補助食品(サプリメント)とは?最新の市場の概要を解説
栄養補助食品とは、日常の食事だけでは摂取しきれない栄養素を補うことを目的とした食品の総称です。ビタミン、ミネラル、アミノ酸、ハーブエキスなど、さまざまな成分を組み合わせた製品が市販されており、健康意識が高まる中で需要が伸びています。
栄養補助食品は健康食品のひとつであり、「健康補助食品」や「サプリメント」など様々な名称で呼ばれています。
「健康寿命」や「予防医療」というキーワードが注目される現代において、日々の食生活だけでは不足しがちな栄養バランスを補う手段として、栄養補助食品が広く受け入れられています。
栄養補助食品が求められる背景
ライフスタイルの多様化とともに、食事時間の不規則化や外食の増加、あるいはダイエットや美容などの目的で食事制限を行う人が増え、必要な栄養素を食事だけで満たすことが難しくなってきました。こうした背景から、サプリメントをはじめとする栄養補助食品への依存度が高まっています。
さらに、高齢化社会の到来が栄養補助食品市場を押し上げています。
健康維持や生活習慣病予防、運動機能低下への配慮など、高齢者の健康意識が高まり、ビタミンやカルシウム、グルコサミンなどの成分を含む製品が注目されています。
栄養補助食品を支える技術
栄養補助食品には、ユーザーの年齢や体調、ライフスタイル、悩みに合わせた様々な製品があります。
また、多彩な形態を持つ点も特徴です。たとえば、ドリンクタイプ、グミタイプ、ゼリータイプなど多様な種類の形状があり、ユーザーの好みや目的に合わせて選択ができます。こうした製品設計には、以下のような技術が大きく関与しています。
- 濃縮や抽出の技術
- 形状・剤形を設計する技術
- 吸水性や分解性を高める技術
こうした技術と成分によって、多様な市場ニーズに応える形で進化を続けているのが栄養補助食品の世界です。
製品選びの難しさと情報の信頼性
栄養補助食品の市場には多種多様な製品が存在するため、ユーザーが自分に合った製品を選ぶのは簡単ではありません。SNS広告などで目立つキャッチコピーに惹かれて購入したものの、実際には期待した効果を感じられず不満を抱くケースもしばしば見られます。
ここで重要になるのが情報の透明性と信頼性です。情報の透明性と信頼性を確立するためには、栄養補助食品の分野でもヒト試験(臨床試験)を通じてエビデンスを取得することが有効です。
ヒト試験とは
その製品を実際に人間(ヒト)に摂取していただき、安全性や有効性(効果)を科学的に確認する試験のことです。
ヒト試験での安全性の確認
栄養補助食品は「食品」として販売され、継続的に摂取されることが多いため、安全性の確認が不可欠です。動物実験や細胞試験ではわからない、人特有の副作用やアレルギー反応を確認するには、ヒト試験が特に有効です。
ヒト試験での裏付け
ヒト試験をおこない、「栄養補助食品の吸収性」等を科学的に検証します。人を対象とした信頼性の高いデータを用いて検証することで、製品の信頼性と説得力が増し、ユーザーの安心感に繋がります。
栄養補助食品市場をめぐるトレンド
グローバル化や健康志向の高まりに伴い、栄養補助食品市場は世界的に拡大し続けています。以下に最新のトレンドを挙げます。
機能特化型製品の増加
ユーザーの多様な悩みに対応するため、ビタミンやアミノ酸、ハーブエキスのようなベーシックな成分だけでなく、プロバイオティクス(人の健康に良い働きをする生きた微生物)など、新しい成分を組み合わせた先端的なサプリメントが登場しています。
サブスクリプションサービス
定期購入モデルでユーザーとの接点を長期維持し、コミュニティに誘導して口コミを活性化する企業が増加しています。
デジタルヘルスとの融合
ヘルスケアアプリやウェアラブルデバイスと連動して、栄養補助食品の効果を可視化する動きが進んでいます。ユーザーの摂取データを分析することで、将来的にはAIエージェントが年齢・性別・体重・睡眠時間・食事など個々のユーザーの詳細に基づいて、1人1人にあった健康サポートプランを提案する可能性も見込まれています。
栄養補助食品の未来と課題
栄養補助食品は今後も健康意識の高まりを背景に需要が伸びると考えられますが、いくつか課題も浮上しています。
例えばバイアスや誤情報の拡散です。
SNS広告を通じた広告表現が誇大になりやすい場合もあり、誠実なエビデンス提示やユーザーの自己判断を補う体制が不可欠となります。ヒト試験を通じたエビデンスの提示を行うことで、信頼と説得力の獲得に繋がります。
課題はありながらも、ユーザーが自身の健康を管理しやすくなる社会的要請は今後さらに高まると見られ、栄養補助食品は生活に欠かすことのできないアイテムになるといえるでしょう。
まとめ
栄養補助食品(サプリメント、健康補助食品)は、日常の食生活だけでは摂りにくい栄養素や機能性成分を補い、ユーザーの健康維持や体質改善をサポートする役割を果たします。
体調面を整え、健康的な生活を支えることへ多方面から貢献する一方で、選択肢が非常に多いことから「何が最適なのか分からない」という消費者の声が多いのも現実です。
また、誇大広告など、栄養補助食品をめぐる懸念点も浮上しています。
総じて、栄養補助食品はユーザーの健康意識に深く結びつき、多様なニーズやライフステージに対応する不可欠な存在となりつつあります。
著者の紹介

大出 聡馬
クリニカルトライアル事業ユニット長
2019年より、機能性表示食品のヒト臨床試験において、複数の食品CROと連携しながら、多くの臨床試験を推進し、試験を成功に導いてきた実績を持つ。
2021年にはマクロミルのライフサイエンス事業本部立ち上げにおいて中心的な役割を担い、オペレーション部門の責任者として体制構築を主導。
2024年より現職。臨床試験事業の責任者として、臨床試験の立案から実行までを統括し、企業の研究開発支援をリードしている。