
市場調査の費用は、調査費や交際費、研究開発費などの勘定科目で仕訳処理されます。この記事では、市場調査費用の仕訳処理に使われる主な勘定科目や具体例、仕訳ミスを防ぐための方法について解説します。市場調査にかかった経費の分類に悩む企業の担当者は参考にしてください。
市場調査の概要と目的
市場調査とはどのようなものか、概要と目的を解説します。
市場調査とは
市場調査とは、製品開発やサービスの販売促進などをする際に、戦略に役立つ情報やトレンドを集めることです。マーケットリサーチとも呼ばれ、数字や数値で現状を把握することで、事業拡大につながる効果があります。
市場調査の目的
市場調査は、過去から現在までの市場の動向把握に役立つ調査です。市場調査を実施することで、対象となる商品の価格や売上、利用人数などの根拠がわかります。また、対象商品の動向は、販売形態や物流、ターゲットユーザーによって異なります。市場調査によりユーザーのニーズを知ることで、自社の強みや市場のトレンドが明確になり、参入価値の予測につながるでしょう。
市場調査の勘定科目が企業ごとに異なる理由
勘定科目とは、企業や個人が行った取引を記録する際の分類です。勘定項目は科目が固定されているわけではなく、取引内容に応じて自由に設定が可能です。「この勘定科目を使わなければならない」といった規則はなく、勘定科目は企業ごとに異なります。
市場調査の勘定分類
市場調査における勘定分類の主な項目を4つ解説します。
調査費
調査費は、製品やサービスの販売状況やユーザーの使用状況などを調べる際にかかった費用のことです。他の勘定科目と比べると、広く支出として計上できる特徴があります。例として、以下が挙げられます。
- 顧客満足度調査を外部委託した際の費用
- 市場調査に要した費用市場調査に要した費用
- 開発を検討している製品の市場規模調査にかかった費用
- 情報収集のために利用した際の飲食代
- 不動産の物件調査を不動産会社に依頼した際の費用
研究開発費
研究開発費は、新たな製品やサービス、商品や技術の開発にかかった費用のことです。既にある製品やサービスの改善にかかった費用も、研究開発費に含まれます。ただし、既存製品の改善費用は、改良が著しいものであると認められる場合に限り研究開発費として計上できるため、注意が必要です。
研究や開発の目的で実施した市場調査費用の他、人件費や原材料費、設備費も研究開発費として計上できます。研究開発費の例は以下のとおりです。
- 従来の製品と異なる部品の製造方法を具現化するための費用
- 試作品の製作や実験に投じた費用
- 製品化のための調査研究費用
広告宣伝費
広告宣伝費とは、製品やサービスを多くの人に周知するために行った宣伝にかかる費用です。テレビCMやパンフレット、チラシの制作費の他、ホームページの制作や運用の費用、バナー広告や動画広告の出稿費用なども含まれます。
自社の商品を販売するために行った市場調査の費用も、広告宣伝費として仕訳処理が可能です。調査費か広告宣伝費かを判断するポイントは、不特定多数の消費者を対象としているか、宣伝効果を期待しているかです。広告宣伝費の例として、以下が挙げられます。
- 既存商品のモニター調査費用
- 自社商品の認知度調査費用
交際費
交際費とは、企業や個人が取引先や得意先など、事業に関係する相手を接待したり、お中元やお歳暮などで贈答品を送ったりする際にかかる費用です。接待色が強い場合には、広告宣伝費でなく交際費として仕訳処理することが一般的です。交際費に分類される例として、以下が挙げられます。
- 市場ニーズを把握する目的で実施した取引先との会食
- 競合調査を目的とした得意先との飲食費
市場調査費用の仕訳方法
市場調査費用の仕訳方法を、仕訳例とあわせて解説します。
具体的な市場調査費用の仕訳例
市場調査費用をどのように分類するのか、具体的な仕訳例を4つ挙げます。
- 市場調査をマーケティング会社に依頼し、その報酬として90万円を支払った場合
調査費として90万円を仕訳処理します。 - 取得したい不動産の物件調査を不動産会社に依頼し、報酬として100万円を支払った場合
調査費として100万円を仕訳処理します。 - 新製品開発のために機械を100万円で購入した場合
研究開発費として100万円を仕訳処理します。 - 自社商品を周知するためにチラシを30万円で制作した場合
30万円を広告宣伝費として仕訳処理します。
外部委託した場合の仕訳処理
専門家への業務委託費用やコンサルタント費用など、業務の一部を委託する場合の費用は、外注費あるいは支払い手数料の勘定科目を利用します。自社の従業員として雇用する場合は、給与となるため、外注費は使用しません。
市場調査費用の仕訳の注意点
市場調査費用を仕訳する際の注意点を2つに分けて解説します。
勘定科目は変更しない
経費計上する費用の勘定科目は、内容が同じ場合は同じ科目を使い続けなければなりません。内容を統一することで、期ごとの費用変動を適切に管理できるようになり、確認もスムーズになります。変更すると、費用の比較ができないため注意が必要です。
なお、企業会計原則における「継続性の原則」では、一度決めた勘定項目は継続して使い続け、基本的には変えてはならないとされています。ただし、具体的な罰則はありません。
※参考:企業会計原則条文
適切な勘定科目に分類する
経費精算の際は、適切な勘定科目を使って管理しましょう。勘定科目の設定は、お金の使い道を明確にするために必要です。経費の適切な仕訳は、企業の財務状況の正確な把握につながります。
仕訳ミスを防ぐポイント
仕訳ミスは企業の財務状況に悪影響を与える可能性があります。仕訳ミスを防ぐポイントを5つに分けて解説します。
ダブルチェックを徹底する
人の手で作業する以上、ミスを完全になくすことは不可能です。仕訳ミスを防ぐためには、項目や手順を変えてダブルチェックしましょう。しかし、全ての項目をダブルチェックすると、負担が大きくなりかねません。優先順位をつけ上位の項目のみをダブルチェックの対象とすることも、状況によっては必要です。
マニュアルやルールを徹底する
ミスが発生しやすい工程を拾い上げ、細かくマニュアル化、ルール化することでミスを減らせます。チェック項目や方法、手順、チェック者の選定方法などを決め、経理部門の従業員間で共有しましょう。細かくマニュアルを作り込むと、業務の質が一定になり、業務の属人化防止にも役立ちます。
整理整頓する
仕訳ミスの例として、領収書や請求書など重要書類の紛失があります。デスクやロッカーを普段から整理整頓していないと、どこに何があるかがわからなくなり、紛失ミスが発生します。デスク周りやロッカーは元より、書類を保管するファイルの整理も心がけましょう。
集中しやすい環境を作る
仕訳ミスを防ぐためには、休憩を適切な形で取り入れ、集中力を持続することが重要です。多忙な時期は、特に休憩を取らずに業務に取り組みがちです。すると、集中力が低下し、ミスにつながりかねません。1人ひとりに適切な仕事量を割り振りましょう。
会計ソフトを活用する
会計ソフトを利用すると、手作業での計算や入力が不要になるため、ミスを防止できます。また、自動で帳簿付けができるためデータ入力作業がスムーズになり、業務効率化にもつながるでしょう。システム上でバックアップが取れるため、帳簿の紛失やエクセルの削除といった人為的ミスの心配もなくせるでしょう。また、会計初心者でも操作手順に沿ってスムーズに入力できるため、会計処理の属人化防止にもつながります。
まとめ
市場調査費用の勘定科目には研究開発費や広告宣伝費、交際費などがあります。勘定科目は、「継続性の原則」により同じものを使い続けなければなりません。また、経費ごとに適切な勘定科目を使い、財務状況の正確な把握に役立てましょう。市場調査を外部委託した場合は、外注費や調査費として仕訳処理します。
株式会社マクロミルでは、マーケティングリサーチとデジタルマーケティングリサーチを中心に、多様な社会・消費者ニーズを分析し、クライアントに的確な消費者インサイトを提供しています。マーケティングデータの提供に加えて、「データ利活用支援事業(データ・コンサルティング)」と、「マーケティング施策支援事業」を一気通貫で提供しています。市場調査にぜひお役立てください。
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