【ライフサイエンス事例】ポーラ化成工業株式会社

ウェルビーイングな世界を創るために、サイエンス×マーケティングでトータルサポート

ポーラ化成工業株式会社様(以下、ポーラ化成工業)は、一人ひとりの心と体を満たすことで、ウェルビーイング(よく生きること)な世界を創りたいという想いから、me-fullness(以下、ミーフルネス)プロジェクトを立ち上げられています。このプロジェクトの第一弾として、2022年1月に、気持ちの切り替えをサポートするアプリをリリースされました。マクロミルが新しく設立したライフサイエンス事業は、このアプリにおいて技術構築やプロダクト開発をトータルサポートしました。ミーフルネスプロジェクトへの想いや、マクロミルがご支援したことについて、ポーラ化成工業の本川様、加藤様と、ライフサイエンス事業の責任者である吉田にお話を伺いました。

ポーラ化成工業株式会社

フロンティア リサーチ センター
上級主任研究員 博士(理学)
本川智紀
※以下敬称略

ポーラ化成工業株式会社

フロンティア リサーチ センター
加藤朋美
※以下敬称略

株式会社マクロミル

ライフサイエンス事業本部 本部長
吉田昂平

日常の中に「句読点」をつくりたい

― 本川様、加藤様のミッションを教えてください。

本川:
私たちは元々、化粧品事業を展開するポーラで“美白”の研究を行っており、旗艦ブランドの開発などに20年近く携わってきました。6年ほど前に「化粧品の枠を超えて新しい価値を創造する」という会社方針の決定がきっかけで、「何かやりなさい」と会社から命を受けたことが始まりでした。自社のアセットを活かすという前提はあるものの、テーマは自由。正直何をやればいいのか全く分からない状態からスタートしました(笑)。
そこから、「私たちがやりたいこと」と「化粧品の技術」を掛け合わせて開始したのが、今の“ウェルネステック”です。「私たちがやりたいこと」は、誰もがほっと一息つける、そんな瞬間を持てる世界を創ることです。例えば、喫茶店でコーヒー飲んだり、道端で花の香りをかいで季節の移ろいを感じたりだとか、そんな幸せな瞬間や、ほっとひと一息つける時間をつくっていきたいと考えています。ほんの一瞬の積み重ねではありますが、こういった時間が人生を豊かにしたり、彩ったりして、最終的には、何かに一歩を踏み出す大きな勇気にもなったり、非常に良いことにつながっていくと思っています。
それと掛け合わせる「化粧品の技術」は、ミーフルネスにおいて端的に言うと、“自分の状態”に合った、ほっと一息つける瞬間を提供する技術です。これらを構築して、新たな事業につなげていこうと考えています。

― 会社に託される以前から、そのような世界観をお持ちだったのでしょうか。

本川:
そうですね。そういった瞬間が減っていると感じていて、そんな瞬間をつくり、日常に散りばめたいと加藤さんとも以前より話をしていました。忙しい日常の中で、「句読点をつける」。私たち自身が、そんな世界を創りたいと思っていたことが、このプロジェクトのスタートですね。

加藤:
文章を読む時の句読点って、そこでブレスするからこそ、強弱や緩急がついて流れるような聞きやすさが生まれると思うのですが、日常生活もきっと一緒で、そういった句読点が大事だと思います。
スキンケア商品の開発に携わっていると、色々な方の肌測定をしたり、お話を伺ったりするのですが、肌の状態が良い人は、スキンケアだけを頑張っているのではなく、生活の中で色々と楽しいことがあったり、好奇心があったりと、バックボーンが違うんですよね。外から化粧品を塗るだけでは限界があるならば、会社として皆さんの人生を豊かにするためには、これまでとは異なるアプローチ方法が必要だと考えていました。

化粧品の技術を活かして、気持ちの切り替えの難しさを解決していく

― このミーフルネスプロジェクトの第一弾として開発されたアプリの概要について教えてください。

本川:
現代社会は、疲労やストレスがすごく溜まりますよね。そうすると、なかなか気持ちの切り替えが難しい。切り替えができずにいると、気分も落ち込むし、やりたいことがやれなくなったり、不眠になったりと、マイナスの連鎖が起きてきます。こういったことを課題として捉え、私たちがほっと一息つける瞬間を提供することで、気持ちの切り替えの難しさを解決していこうと考えました。

化粧品の技術を使ってこれを実現させるために、具体的には二つのことを行っています。
一つは、肌を使って自分の状態を知る技術の構築です。おそらく皆さんも共感されると思うのですが、疲れている時や寝不足の時、大変な状況の時って、肌が荒れてしまいますよね。肌と内面は、ものすごくつながっているんです。私たちは、肌の分析の技術に長けているので、肌を知ることによって、自分の内面が分かるのではという発想でこの技術を構築しました。
もう一つは、自分の状態に合わせてほっと一息つく体験ができる、触覚を中心とした五感体験の提供をしています。この考え方として、一緒に歩く人と自分のテンポが揃っていく、周りと徐々にテンポが合っていくという「引き込み現象」というものがあります。これをヒントに、振動をベースに、その振動に合わせて曲や映像、ヒトの声を融合したコンテンツを作り、一人ひとりの状態に合ったほっと一息につける体験を構築しました。
この二つの技術を構築し、どこでも、誰でも、どんな場所でも体験できるように、皆さんが肌身離さず持っているスマートフォンを通じて提供しようと、まずはアプリを開発しました。

開発した「ミーフルネス」のアプリ

― 筆者の個人的なお話になってしまいますが、気持ちの切り替えとしてヨガをやっているのですが、このアプリを使用したことで、ヨガを行う目的を改めて考えるきっかけにもなりました。目的を忘れてしまっていたなと・・・

本川:
私はマインドフルネスをずっとやっていて、ヨガと同じように、実際にちゃんとやると良い効果を得られるのですが、その“ちゃんとやる”のが難しいんですよね。マインドフルネスは、呼吸に意識を集中することで、ネガティブな感情から距離を置く、まさに句読点をつけることなのですが、なかなか一般の方にはできないですし、呼吸にずっと意識をするって飽きてしまうんです。一般化しづらい課題がある中で、この思想を活用して、緩いマインドフルネスができないか、という発想も少しありましたね。マインドフルネスでは呼吸に意識をしますが、このアプリでは振動に意識をして、その振動も心拍数に合わせたものなので同期しやすくして。さらに呼吸だけだと飽きるのと同じように、振動だけだと飽きてしまうので、曲や音声を入れたり。私の体験を活用して、皆さんが簡単に自分に合った答えを提供できる仕組みができないかと思って作りました。

加藤:
アプリで何もかもを解決するのは絶対に無理なんです。アプリで何か気づきを得たりとか、「これをやってみようかな」って一歩前に出たりだとか、意識が少しでも変わることの方が、大事だと思います。まさにそういった気づきを提供できたのなら嬉しいですね。

マクロミルの強みは「サイエンス×マーケティング」でトータル支援ができること

― この一連の取り組みの中で、マクロミルがサポートを始めたきっかけは何でしょうか。

吉田:
以前より、生活者理解などのマーケティング調査のご支援はしていました。今回のお取り組みは、マクロミルがライフサイエンス事業の立ち上げに向けて動きだしたタイミングで、マクロミルモニタ※1(以下、モニター)から様々な生体データの取得や、ヒト臨床試験※2のサポートができるようになったとご案内したことがきっかけでした。

※1 マクロミルが独自に構築したリサーチ専用のモニター

※2 食品・化粧品・サプリメントなど非医薬品の領域で、有効性や安全性を示すために行う試験

そこでご興味を持っていただいて、最初は、パネルから様々な生体データを多面的に取得することからスタートしました。私たちもこの事業が受け入れられるのか不安があったのですが、ご紹介差し上げた際に良い反応をいただけたことを覚えています。

加藤:
それまでも肌測定をした被験者へのちょっとしたアンケート調査は行っていました。そこから派生して、もっとライフログ情報や生体情報を知りたいと思っても、肌測定をお願いしている機関では当然取得できなくて。じゃあ自分たちで直接取得しようと取り組むものの、ノウハウもないので、非常に苦労していました。そんなタイミングで、吉田さんから案内をいただいたんです。アンケート調査や分析をそもそも得意とするマクロミルが、その領域までできるとなったら、もう絶対頼もうって思いました(笑)。

本川:
肌は色々なものと関係しているので、その関係性を調べたいと思っていたのですが、誰もそんなことをやっていなくて、実際にはなかなかできない。これらを実施しようとした場合、重要なことが二つあります。一つは、肌の情報をきちんと取れること。もう一つは、肌と紐づけるための多様なライフログ情報が取得できること。この両方が必要でした。マクロミルはこの二つを叶える、今まで誰もやっていなかったことを始めたわけで、これはすごいことだと思いました。

― 具体的にはどのようなサポートを行ったのでしょうか。

吉田:
マクロミルがサポートしたことを大きく整理すると二つあります。
一つは、サイエンス領域での技術構築・プロダクト開発のサポートです。モニターから肌や唾液などの多様な生体データを大規模に取得するための臨床試験や、それらを元にソリューションとして作ったアプリを、実際にモニターに使っていただき、ストレス軽減効果等を検証するための介入試験の実施支援を行いました。これにはマクロミルのグループ会社であるセンタン※3も加わって、伴走させていただきました。
もう一つは、マーケティング領域でのサポートです。アプリ自体の生活者にとっての需要性の把握や、UI/UX※4の改善のためのリサーチを行いました。また、対外的なPRに活用するためのリサーチ・エビデンス構築のお手伝いもさせていただきました。

※3 脳科学・認知神経科学の知見に基づいたマーケティング・コンサルティングサービスを展開するマクロミルのグループ会社

※4 ユーザーが見たり触れたりする部分と、製品などを通じて得られる体験や経験

加藤:
アプリの調査では、調査設計からご提案していただいたり、テスト段階のアプリでも、モニターの皆さんにインストールしていただける方法を考えてくれたり、様々な視点から助言をいただき、リードしてもらいました。そのおかげで調査を進めることができたと思っています。センタンも、高い専門性をお持ちで、論文などを用いてバックボーンがあるものをご提案していただけたので、非常に安心できました。

吉田:
臨床試験ができる会社や、マーケティング調査ができる会社はそれぞれありますが、マクロミルがユニークなのは「サイエンス×マーケティング」で一気通貫にご支援ができる点で、他にない新しい切り口だと思います。オペレーションがイレギュラーなものに関しても何らか形にできる点も強みだと思いますね。私たちがハブとなり、専門性の高いセンタンなどのグループ会社や外部パートナーの協力を得て、コーディネートしながら形にしていくことが、私たちの介在価値だと思っています。御社とプロジェクトを進めていく中で、この価値にも気づくことができました。色々とご相談いただけることで、私たちも新しいやり方を確立でき、有難く思っています。

加藤:
データがあるおかげで、社内でデータに基づいた説明ができ、次のステップに進められますし、ユーザーに価値を伝える設計にも役立てられています。

吉田:
私たちのサービスをここまで使っていただいて、プロジェクトが前進し、アプリとして世に出て、さらにそれを広げていくフェーズも含めて伴走させていただけて・・・、ウェルネス・ヘルスケア領域は商品化に至るまでのスパンが非常に長いため、この一連に携われることはとても貴重で、御社の進め方も、非常に勉強になっています。一緒に挑戦しようというスタンスでいてくださることも、嬉しいですね。

本川:
まだまだご相談したいことはたくさんありますね。私たちの考えややりたいことも分かっているので、いただくご提案に「そう、それそれ!」って(笑)。長くご一緒いただけて、私たちも助かっています。

マクロミルは、ミーフルネスのプロジェクトメンバー。共に価値を広げていきたい

― 今後のプロジェクトの展望をお伺いさせてください。

本川:
アプリで提供していることをさらに拡大していきます。例えば、肌で自分を知る技術は、今以上に体内の詳しい状態も分析できるよう進化をさせたいと思っています。その目途はつきました。また、五感体験では、アプリから飛び出して、デジタルだけでなく実際に触れるソリューションにまで発展させたいと思っています。

さらには、応用範囲を広げていきたいと考えています。
一つは場所。今のアプリは、自宅で皆さんが使うものですが、職場や学校、移動空間、果ては宇宙船など、色々なところで使えるようにしていきたいですね。もう一つは対象です。子供や、困りごとが多いと思われる妊婦さん、職業別では、スポーツ選手やドライバーなどのストレスや疲労が課題となりそうな仕事に直結しているような方々へと広げていきたいですね。
やりたいことはたくさんありますが、私たちだけではできないと思っていますので、一緒に取り組んでいただける方と共に、価値を広げていきたいと思っていますし、マクロミルにも引き続きサポートいただきたいと思っています。

加藤:
届けたい人を広げるには、今ある技術だけでは難しいので、研究も含めて今後さらに取り組んでいく必要があります。今も様々な外部の方に協力をいただき進めているのですが、さらに多くの方の協力が必要になってきます。マクロミルの今までの信頼と実績は、私たちに確実にインプットされているので、今後もご相談させていただくと思いますね。

― マクロミルに対する今後の期待を教えてください。

本川:
ライフサイエンス事業に、何かオリジナリティがあってもいいかなと思います。例えば、マクロミル独自の検査ソリューションや、データを収集できるような仕組みがあるととても良いですよね。

吉田:
そうですね。生活者の多様な生体データを取得するための検査ソリューションの拡充や、そういったデータを蓄積し、ご活用いただけるようなデータプラットフォームの構築といった方向性を検討していきたいと考えています。
また、マクロミルが本来得意なのは、生活者のインサイトを把握し、気持ちや行動を変えてもらうにはどうすべきかをサポートすることです。一方、ライフサイエンス事業では、商品やサービスにおける“エビデンス”を得ることができます。サイエンスとマーケティングを架橋し、エビデンスを活用して生活者の行動変容にどのようにつなげていくのか、このナレッジを蓄積していくことが、ウェルネス・ヘルスケア領域における新たな価値創出のための一つの解につながると思っています。

本川:
ミーフルネスのアプリは、その時に合ったモードを選べる仕組みになっていますが、アプリを利用する時というのは、自身に課題を抱えているタイミングでもあります。例えば、30代女性はお昼休み明けの起動回数が多くて、色々なモードがある中で活性化するモードが多く使われているのですが、おそらくそれは昼食後に眠くならないように目を覚ましたいから。こういった傾向は、データがあるからこそ見えてきたことです。今後、このような情報から、さらに分析ができるようになってくると思いますので、マクロミルとうまく連携しながら、体系化も一緒にやれると良いですね。

吉田:
一体となることで、色々な可能性を広げていけると思いますので、今後もぜひご一緒にお取り組みさせていただければと思います。

― 本日はありがとうございました。


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