SGL(Sales Generated Lead)とは?営業起点で価値を生み出す“逆流型リード戦略”の再発見
公開日:2025/12/25(木)
SGL(Sales Generated Lead)とは、営業担当者が自らの活動によって創出したリード、もしくは商談機会を指します。
マーケティングが育成したリード(MQL)や営業が受け取ったリード(SAL, SQL)とは異なり、完全に営業自身のアクションから生まれる“独立系リード”であることが特徴です。
具体的には次のようなケースがSGLに該当します:
- 過去の名刺や人脈への再接触から生まれた商談
- 紹介によって営業が獲得した初回接点
- 営業自身がSNSやセミナーで獲得した問い合わせ
- 顧客の紹介、リファーラル、社内での横展開
つまりSGLとは、“与えられたリード”ではなく、“営業自身が生み出したリード”であり、その営業の「観察力・関係構築力・能動性」を測るひとつの指標でもあるのです。
- なぜSGLが今、注目されているのか?
- SGLを生み出す5つの代表的チャネル
- マーケティングにとってのSGLの意味:トップ・オブ・ファネルを営業が拡張する構造
- SGLのKPI設計と運用:定義と可視化が成果を生む
- SGLを起点とした営業文化の育て方
- SGLの未来:AI時代における“人間の探索力”の価値
- まとめ:SGLとは、“売る力”ではなく“生み出す力”を可視化する思想である
なぜSGLが今、注目されているのか?
MA(マーケティングオートメーション)の普及やインサイドセールス体制の整備が進んだ今、営業は“もらうリード”に慣れすぎてしまったという声も少なくありません。
そんな中で、SGLは以下のような理由から再評価されています。
“与えられたリード”の限界
マーケティング起点のMQLだけでは「タイミングが合わない」「温度感が分からない」などの問題も発生しやすく、営業は“自分で獲りに行った方が早い”と感じるケースが増加しています。
営業力の可視化と再定義
SGLは、営業の“待ち”ではなく“攻め”の姿勢を可視化する指標です。
「売れる営業」とは、“上手に受け取る人”ではなく“自分で場を作れる人”という文化を育てるために、SGLは非常に効果的です。
マーケティングリソースへの過度な依存を避ける
リード創出の9割以上をマーケに依存してしまうと、費用対効果・案件偏り・季節変動などのリスクが発生します。
SGLは“自走型の営業活動”として、このリスクを分散する役割を果たします。
SGLを生み出す5つの代表的チャネル
SGLは“営業の努力”によって生まれるとはいえ、完全に属人的な動きだけではありません。以下のようなチャネル・手段が、構造的なSGL創出のヒントになります。
1. リファーラル(紹介営業)
既存顧客からの紹介、取引先企業内での横展開など。最も信頼度が高く、受注率も高くなることが多い。
2. 休眠顧客の掘り起こし
過去に提案して失注した、またはフェードアウトしていた企業への再接触。営業の文脈記憶が活きる。
3. 人脈・名刺からの再接触
展示会・交流会・前職・取引関係など、人的ネットワークを“育て直す”動き。
4. SNSや個人ブランディング
LinkedIn、X、noteなどで情報発信を行い、「○○さんの記事読みました」と能動的に接触してくるリードを創出する。
5. ABM的アプローチの独自起点
営業が独自に「この企業に入りたい」とターゲットを定め、段階的に接点を築いていく動き(例:電話→手紙→カジュアル面談→提案)
マーケティングにとってのSGLの意味:トップ・オブ・ファネルを営業が拡張する構造
マーケターから見たSGLは「営業の管轄」と思われがちですが、実はSGLが活発な組織ほど“ファネル構造が安定する”という傾向があります。
- マーケは“ナーチャリングに集中”し、営業は“探索活動に集中”できる分業構造
- SGLを通じて営業が“顧客インサイト”を拾い、それがMA設計・コンテンツ設計にフィードバックされる
- “MQLが足りないときのボトルネック”を、SGLで柔軟に補完できる
つまり、SGLとは「営業の責任範囲」ではなく、「マーケと営業の共同ファネル拡張装置」として機能するのです。
SGLのKPI設計と運用:定義と可視化が成果を生む
SGLは、正しく定義し、記録し、評価しなければ機能しません。以下のような設計が実務上のポイントになります。
- SGL定義(営業自身の行動によって初回接点が発生したリード)
- SGL登録ルール(CRM上で「起点:営業」「チャネル:SGL」などを明示)
KPI設計例
- SGL数(月別/担当別)
- SGLから商談化した率(SGL-to-SQL)
- SGLから受注に至った率(SGL-to-WIN)
- SGLあたりのリード創出コスト(工数ベース)
- SGL経由案件の平均単価やLTV
SGLは“成果だけを追う指標”ではなく、“営業プロセスの構造を育てる指標”です。定量・定性の両面から評価する仕組みが必要です。
SGLを起点とした営業文化の育て方
SGLが根付く組織は、「営業が“情報を待つ側”ではなく、“市場と接続する主体”である」文化を持っています。
- 定例で「今月のSGLベストアクション」を共有
- 成功事例をコンテンツ化し、他のメンバーも再現できるようにする
- 新人でも“SGLを生むチャレンジ”を通じて営業の本質に触れられる設計
- 失敗SGLも「なぜ断られたか」の文脈を共有する
SGLとは“数字”であると同時に、“振る舞い”でもあります。それを称賛し、学習し、組織に根づかせる設計が必要です。
SGLの未来:AI時代における“人間の探索力”の価値
リード創出が自動化され、AIがスコアリングやナーチャリングを担う時代においても、「誰にどう接触するかを構造から作る力」は営業の中核であり続けます。
- 「どこに需要がありそうか」を“肌感覚”でつかめる人間ならではの直観
- “今この企業は話を聞くタイミングだ”という空気の読み取り
- “非言語の関係性”を活かした初期提案の構築
SGLとは、営業における「発見力」と「関係構築力」を言語化する試みでもあり、今後さらに重要性を増す概念です。
まとめ:SGLとは、“売る力”ではなく“生み出す力”を可視化する思想である
SGL(Sales Generated Lead)は、営業が自ら創出するリードです。
それは単なる“頑張り”ではなく、「どう接点をつくり、どう情報を拾い、どう文脈を編むか」という、構造設計としての営業力の証明です。
- マーケに依存せず、自ら“市場を耕す”営業の姿勢
- 組織全体で“顧客発見の方法論”を共有し、再現性を持たせる文化
- 営業を“待つ人”ではなく、“生み出す人”として再定義する思想
SGLとは、営業とマーケティングの間にある“静かな境界線”を越え、両者が“顧客にとっての価値起点”として融合していくためのプロトコルなのです。
著者の紹介
株式会社マクロミル 事業統括本部 事業開発ユニット スペシャリスト 人間中心設計専門家
伊賀 正志
アクセンチュアを経て2010年に株式会社マクロミルに入社。BtoBリサーチ事業の成長・拡大に大きく貢献し、同領域における「エキスパートインタビューサービス」や「UI/UXリサーチサービス」の立ち上げを主導。また、事業企画部門においては全社基幹システムの刷新やBIツール導入、生産性改善プロジェクトなど、組織基盤の強化にも従事。現在は新規事業開発に携わり、自ら多数のクライアントインタビューを行いながらセミナー登壇も務める。
