N1分析®とは?通常インタビューとの違い、メリット・デメリットから実施のポイントまで詳細に解説!

N1分析®(エヌワン分析)とは、マーケティングやサービス開発などの領域において、「特定の1人(N=1)の顧客(あるいはユーザー)の動向を徹底的に深掘りし、その行動や心理から本質的なニーズを抽出する」手法を指します。集計ベースの大量データ分析(マス向けリサーチ)とは対照的に、1人分の事例をじっくり観察することによって隠れたニーズや潜在的なアイデアを発見するアプローチが特色です。

この「1人」のパターンを丁寧に読み解くことで、他の多くの顧客にも通用する普遍的な本質が見えてくる、とする考え方に基づいています。

「N1分析®」はマクロミルグループが保有する商標です。
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監修

Macromill News 事務局

監修:株式会社マクロミル マーケティングユニット

20万人以上が登録するマーケティングメディア「Macromill News」を起点に、マーケティング知見や消費者インサイトに関わる情報を発信。

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N1分析®が求められる背景

近年、消費者ニーズが多様化・細分化する中で、大規模サンプルに頼る調査だけでは捉えきれない「深層心理」や「実際の行動理由」が増えてきました。また、競争が激化し、単なる機能面の優位ではなく、ユーザーが心から求める体験やサービスを提供する必要性が高まっています。

そうした中、あえて数多くのデータを集めるのではなく、「特定の1人の行動や感情に寄り添う」ことで、より深いインサイト(洞察)を得ようというN1分析®が注目されています。質的アプローチと掛け合わせることでイノベーティブなアイデアが生まれるケースも多いです。

N1分析®を支える要素

N1分析®を成功させるには、以下の要素が重要です。

深い観察・ヒアリング

対象となる1人のユーザーや顧客に対し、じっくりと行動観察デプスインタビューを行う。

真のニーズ発見

表面的な要望だけでなく、その背後にある想いや問題点を掘り下げる。

仮説の拡張性

1人のケースから得られたインサイトを、どのように多くのユーザーへ適用できるかを検討する。

これらを通じて、既存の市場調査アンケートでは見落としがちな「たった一人の声」から革新的なアイデアを引き出せます。

N1分析®と他の調査手法との違い

従来のマーケティングリサーチでは、「N=1,000」など大量サンプルを集計分析してユーザー全体の平均的傾向を把握する手法が主流でした。それに対しN1分析®は「N=1」、つまりたった1人の事例を深く見ることで、平均値に埋もれがちな独自性や核心的な欲求を捉える点が大きく異なります。

また、ユーザー中心デザインやデプスインタビューなど「質的調査(定性調査)」に近いアプローチですが、N1分析は初期段階であえて数を限定することで徹底的に「一人のユーザー視点」に注力し、そこから普遍的な示唆を導き出そうとする点に特徴があります。

N1分析®を実施するためのステップ

N1分析を行う際は、まず調査目的を明確にし、どのようなテーマや課題について洞察を得たいかを設定します。次に、テーマとの関係が深い一人のユーザーを選び、インタビューや観察を通じて彼または彼女のライフスタイルや感情の動き、具体的な行動を深堀りします。

得られた情報から、「どのような背景や本質的欲求が潜んでいるのか」を洗い出し、製品やサービス開発、改善のヒントを得ます。そのうえで、定量調査を行って他のユーザーや市場全体への適用可能性を検証し、仮説をさらにブラッシュアップしていく流れが基本です。

N1分析®のメリットとデメリット

メリットとしては、「数多くのデータに埋もれることなく、具体的な人の生の声を掘り下げられる」ことで斬新なアイデアや価値観に出会える点が挙げられます。また、調査対象者との親密なコミュニケーションを通じて本音や感情を引き出しやすく、仮説構築において強い説得力を持つ場合があります。

一方、デメリットは、あくまでも一人のユーザー事例なので、得られた結果が必ずしも「多数のユーザー」に通用するとは限らないリスクがあることです。ここで生まれた仮説を、他の調査やテストで補強・検証しないと、過度に一般化してしまう危険性があります。

N1分析®の活用事例に学ぶポイント

あるベンチャー企業がN1分析を行い、高齢者向けの健康関連サービスに取り組んだ事例があります。一人の要介護者とその家族の生活を数週間にわたり観察・面談した結果、表面的には気づかれなかった苦労や本当に必要な支援が見えてきました。その洞察をサービス設計に反映したところ、顧客満足度(CS)や利用率が大幅に向上しました。

このような成功例では、N1分析®を深く行い、単なるデータでは見えてこない当事者のリアルな声や状況を理解することで、本質的な課題解決につながるアイデアが創出されています。

デジタル時代におけるN1分析®の役割

大規模データ分析やAI活用が進むデジタル社会では、ビッグデータからパターンを抽出する手法が主流化してきました。しかし、その一方で「個々人の文脈」や「数字に表れにくい気持ち」の把握も重要性を増しています。

N1分析®は、大量データでは見逃される個別事例に焦点を当てることで、新しい商品やユーザー体験の源泉を見出す上で有効です。デジタル技術と組み合わせることで、N1分析®で得た洞察(インサイト)を迅速に検証し、大規模実装へ繋げる可能性がより広がっていると言えます。

まとめ

N1分析®とは、特定の1人のユーザー(顧客)を深く観察・ヒアリングし、その行動や感情から本質的なニーズや課題を導き出す手法のことです。大規模サンプルによる数値データだけでは見えにくいユーザーの本音や意図を、あえて「1人」に着目して丁寧に読み解くことで、新規事業や製品・サービス開発のインサイトを得られる利点があります。

ただし、単一の事例に基づくため、得られた仮説を安易に一般化せず、他の調査や検証と組み合わせて活用する必要があります。デジタル社会が進展しビッグデータが注目されるなかでも、N1分析®のように個人に根ざしたアプローチが、イノベーションや顧客理解の源となる可能性を大いに秘めていると言えるでしょう。

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