「このブランド、伝えたいことが分からない」
「結局、何が強みなの?」
「広告の表現がバラバラで一貫性がない」
「メッセージが届いていない気がする」
マーケティングに関わる人なら、こうした違和感を覚えたことがあるのではないでしょうか。
その原因の多くは、「メッセージ」が設計されていない、あるいは設計されていても統一されていないことにあります。
商品が良くても、企画が面白くても、「どんなメッセージで誰に伝えるか」が曖昧なままだと、マーケティングは迷走します。
逆に言えば、強いメッセージを持つブランドは、広告表現も、SNS運用も、営業トークも、一貫して“伝わる”設計ができているのです。
本記事では、「メッセージとは何か?」という基本的な問いから始まり、その定義、役割、種類、マーケティングにおける設計方法、実例、よくある誤解、そして“伝わるメッセージ”をつくるための原則まで、丁寧に解説していきます。
- メッセージの定義:単なる“言葉”ではなく、“意味の設計”
- なぜ“メッセージ設計”が重要なのか?
- よくある「メッセージの誤解」3選
- メッセージには“階層”がある:整理しないと“伝わらない”
- “階層ごとの整合性”がブランドの強さをつくる
- 場面に応じた使い分けと“翻訳力”の重要性
- “伝わる”メッセージに共通する3つの条件
- ユーザーを動かすメッセージ設計の3ステップ
- メッセージとブランド:言葉の一貫性が信頼をつくる
- 社内に“メッセージの共通言語”をつくるには?
- まとめ:メッセージとは、“行動を引き出す構造”である
メッセージの定義:単なる“言葉”ではなく、“意味の設計”
マーケティングにおける「メッセージ」とは、ブランドや商品が「何を伝えたいか」、そして「それを誰に向けてどう伝えるか」を言語化・設計したものです。
単に「キャッチコピー」や「タグライン」のことではありません。
メッセージとは、以下のような“情報の設計”そのものを指します。
| 構成要素 | 内容 |
|---|---|
| 意図 | どんな価値を、誰に届けたいのか |
| 表現 | どんな言葉やトーンで伝えるか |
| コンテキスト | どんな場面・メディアで発信されるのか |
| 統一性 | 全体で一貫性を保ち、認知と記憶に残るか |
| 行動喚起 | 受け手にどんなアクションを求めるか |
→ メッセージとは、「商品やサービスの価値を、意味ある形で届けるための“戦略的な言葉”」です。
なぜ“メッセージ設計”が重要なのか?
顧客は「何の機能を買うか」ではなく「何に共感するか」で選んでいる
機能価値が飽和した現代の消費者は、スペックや機能だけで商品を選びません。
その背後にある「ストーリー」「価値観」「世界観」といった“意味”に共感して初めて、購買行動に移ります。
→ メッセージは、商品と顧客の間に“共感の橋”を架けるための設計です。
情報過多の時代に“覚えられる言葉”が武器になる
SNS、動画広告、サブスク、インフルエンサー、バナー広告……。
膨大な情報が飛び交う中で、短い言葉で“伝えたいことを伝える力”は、かつてないほど価値を持っています。
→ 強いメッセージは、「認知→理解→記憶→共有」までを一気に推進します。
社内外の“共通言語”になる
- 営業資料や提案書で使われる言葉
- 広告代理店とのやり取り
- SNSやPR記事のトーン
- 新人研修や社内の説明資料
あらゆる接点で「このブランドは何を伝えたいのか」がブレていると、社内での意思統一も社外での信頼構築も難しくなります。
→ 明確なメッセージは、ブランディングの“軸”であり、全員が立ち返る“土台”でもあるのです。
よくある「メッセージの誤解」3選
1.「メッセージ=キャッチコピー」だと思っている
キャッチコピーはあくまで、メッセージの一部を表現した“短縮表現”です。
メッセージとは、「伝えたいことそのもの」であり、広告文の技法とは異なります。
2.「メッセージは外部向けのもの」だと思っている
メッセージは、外部だけでなく内部(従業員・パートナー・株主)にも響くべきものです。
むしろ、社内が共感していないメッセージは、外には届きません。
3.「一度作れば終わり」と思っている
社会やターゲットの価値観が変われば、伝え方も変える必要があります。
一貫性を保ちつつも、柔軟にアップデートされていくのが“生きたメッセージ”です。
メッセージには“階層”がある:整理しないと“伝わらない”
メッセージ設計において重要なのは、「一つの言葉で全部を伝えようとしない」ことです。
実際には、企業・ブランド・商品・サービスといったレイヤーごとに、それぞれの目的に応じたメッセージが必要です。
それらは“階層構造”を持ち、互いに関係し合いながら「一貫性」と「分かりやすさ」をつくっています。
コーポレートメッセージ(企業の存在理由)
企業としての「Why=なぜ存在するのか」を示すトップレイヤーのメッセージです。
ビジョン・パーパス・ステートメントと重なることもあります。
| 内容 | 例 |
|---|---|
| 社会における使命 | 「人とテクノロジーの未来をつなぐ」 |
| 組織の価値観 | 「正直であること。シンプルであること。」 |
| 長期的視座の問いかけ | 「100年後の笑顔のために。」 |
→ 社内外に対して、“この会社が何のために存在しているか”を明確に伝える軸となります。
ブランドメッセージ(ブランドの世界観)
ブランドとして「どう見られたいか」「どんな価値を届けたいか」を伝えるメッセージです。
広告・プロモーション・SNS・クリエイティブなど、ユーザーとの接点において最も使われるメッセージです。
| 内容 | 例 |
|---|---|
| 世界観 | 「自分らしさを、もっと自由に。」 |
| 感情 | 「あなたの一歩を、応援したい。」 |
| トーン | 親しみ/信頼/挑戦/共感など |
→ ブランドメッセージは、伝える手段が変わっても、変わらない“語りの中心”です。
商品・サービスメッセージ(提供価値の明示)
個別の商品やサービスに関する「誰に、何を、どう届けるか」を示すメッセージです。
広告コピーや訴求軸、紹介文のもととなる部分です。
| 内容 | 例 |
|---|---|
| ベネフィット | 「肌を守りながら、美しく整える」 |
| 差別化ポイント | 「1日1回でOK。他にはない持続力」 |
| 使用シーンの提示 | 「朝の15分で、暮らしが変わる。」 |
→ 商品メッセージは、検討・比較・購買の瞬間に最も機能する言葉です。
キャンペーン/クリエイティブメッセージ(短期施策の訴求)
販促やプロモーションにおいて、特定期間・特定媒体で使用される“表現的メッセージ”です。
コピーライターが担う部分とも重なります。
| 内容 | 例 |
|---|---|
| 広告コピー | 「はじめよう、わたしを変える30日」 |
| ハッシュタグ | 「#この瞬間が好き」 |
| キャッチフレーズ | 「今だけ、もっと自由に。」 |
→ 認知や共感、話題性を生む目的が強く、ブランドメッセージと矛盾しないことが重要です。
“階層ごとの整合性”がブランドの強さをつくる
これらのメッセージ群は、バラバラに設計してはいけません。
どのメッセージも、「企業として何を大切にしているのか」に接続しておく必要があります。
| 階層 | 例:コスメブランドの場合 |
|---|---|
| コーポレート | 「すべての人に、選ぶ自由と選ばれる力を。」 |
| ブランド | 「肌に悩む人を、もう一人にしない。」 |
| 商品 | 「365日、揺らがない素肌へ。」 |
| クリエイティブ | 「#もう隠さない。素肌でいこう」 |
→ このように、“言葉の一本筋”が通っていれば、どの接点からブランドに触れても“伝わるもの”が揺らがないのです。
場面に応じた使い分けと“翻訳力”の重要性
よくあるのが、「ビジョンはあるけど、現場でどう伝えていいか分からない」という悩みです。
ここで必要になるのが、メッセージの“翻訳力”と“運用設計”です。
内部での共通言語化
- ブランドメッセージを営業資料の中でどう伝えるか
- 商品説明会や店頭トークで使いやすい表現に変換する
- 研修・社内掲示・イントラ用コンテンツに落とし込む
→ 社員やパートナーが自然とメッセージを“語れる状態”をつくることが、統一感を生みます。
外部メディアや顧客接点での変換設計
- PR用の言葉とWebコピーでトーンが合っていない
- SNSではラフなのに、オウンドメディアでは硬すぎる
- 説明会とチラシでメッセージが矛盾している
→ どの媒体でも「言葉は変えても、意味は同じ」にする必要があります。
“伝わる”メッセージに共通する3つの条件
メッセージをつくるとき、つい「いい言葉を思いつこう」としてしまいがちですが、大切なのは“思いつき”ではなく“設計”です。
伝わるメッセージには、以下の3つの条件が必ず含まれています。
1. 明確である:何を伝えたいかが“一言で”言える
- 抽象的すぎて、誰にでも当てはまってしまう
- 言葉は綺麗だが、具体性に欠ける
- 結局、何が強みか分からない
これらはすべて、「意味の設計が甘い」状態です。
“強いメッセージ”は、聞いた相手の頭の中に“ワンフレーズ”で残る構造になっています。
2. 一貫している:どこで見ても“同じことを言っている”
- 広告とSNSと営業資料で言ってることが違う
- 商品説明とPR記事でトーンがバラバラ
- 社員も顧客も「結局何が言いたいの?」と感じている
→ 一貫性がないメッセージは、伝わらないどころか“信用されない”原因にもなります。
3. 心が動く:自分ごととして“受け取られる”
- 自分の悩みに応えてくれる
- 行動したくなる、話したくなる
- 胸に残る・口にしたくなる
→ これは、単に“正しい”メッセージではなく、“感情に触れている”メッセージです。
伝えるだけでは足りない。「動かす」ことが目的です。
ユーザーを動かすメッセージ設計の3ステップ
ステップ1:「誰に・何を・なぜ」を明文化する
まず、以下のように「誰の、どんな状態を、どう変えたいか」を整理します。
| 要素 | 設問例 |
|---|---|
| 誰に | 誰に向けて伝えるのか?(属性・心理・行動) |
| 何を | 何を伝えたいのか?(価値・行動・世界観) |
| なぜ | なぜそれを伝える必要があるのか?(課題・期待・競合との差) |
この段階ではまだ“言葉”にしなくてOK。
意味の輪郭を可視化することが目的です。
ステップ2:「感情トリガー」を設計する
人が動くときには、必ず感情が介在しています。
| 感情の種類 | 設計ポイント |
|---|---|
| 安心 | 信頼感・正しさ・根拠・実績 |
| 共感 | 同じ気持ち・似た経験・価値観 |
| 驚き | 期待とのギャップ・意外性・突破口 |
| 憧れ | ライフスタイル・理想像・ビジュアル訴求 |
| 緊張感 | 限定性・希少性・時間制約 |
→ メッセージには必ず1つ以上“感情のフック”を込めましょう。
ステップ3:伝えるフォーマットを選ぶ
メッセージにはいくつかの「型」が存在します。
以下は実務で使える代表的なフォーマットです。
「ベネフィット型」:変化を約束する
例:「1日たった5分で、英語が話せる自分へ」
ポイント:“自分に何が起こるか”を想像できること
「共感×提案型」:読者の心に寄り添う
例:「忙しくても、自分らしさはあきらめない」
ポイント:相手の悩みや状況に共鳴すること
「問いかけ型」:自分ごと化を促す
例:「最後に“自分の時間”を持てたのはいつですか?」
ポイント:読み手が考える時間を生むこと
「ストーリー型」:世界観に巻き込む
例:「肌の悩みを、わたしは“デザイン”で変えた」
ポイント:読み手が“自分もそうなれる”と思えるような構造に
メッセージとブランド:言葉の一貫性が信頼をつくる
メッセージは、単なるマーケティングの言葉ではありません。
それは、「このブランドは何を大切にしているか」「どんな約束をしているか」を体現する、ブランドそのものの“声”です。
だからこそ、ブランドとメッセージは切り離して語れません。
一貫性のあるメッセージこそが、ブランドへの“信頼”をつくるのです。
ブランドは「言葉を持った存在」になっているか?
いまや、消費者はブランドに対して「物を売っている会社」以上のものを求めています。
- どんな価値観を持っているのか
- 社会に対してどんなスタンスなのか
- 私たちとどんな関係を築こうとしているのか
→ これらはすべて、メッセージによって伝えられ、共感や応援という形で返ってくるのです。
ブランドトーンとメッセージの統一が“人格”をつくる
強いブランドは、どのチャネルでも「同じ声」で語ります。
- テレビCMで語っていることと、公式サイトが矛盾していないか
- SNSでのラフな投稿も、根底にあるメッセージとズレていないか
- 店頭スタッフのトークと広告コピーに共通の世界観があるか
→ メッセージとは、「人格をつくる言葉」であり、「信頼を育てる行動」でもあるのです。
社内に“メッセージの共通言語”をつくるには?
どんなに良いメッセージでも、それが社内に伝わっていなければ、
現場ではバラバラな言葉が飛び交い、ユーザー体験に“ズレ”が生じます。
ブランドの強さとは、「誰が語っても、伝わることが変わらない」状態です。
そのためには、社内への浸透と共通言語化が欠かせません。
メッセージを“見える化”し、いつでもアクセスできるようにする
- ブランドブックやメッセージマップを社内Wikiに公開
- スライドテンプレート・提案書フォーマットに反映
- SNSや広告のトーンルールを言語化して共有
→ “言語の共通フォーマット”が整えば、現場の判断もブレなくなります。
社員自身が語れるようになる“体験”をつくる
- ワークショップ形式で「あなたならこのメッセージをどう伝える?」を体験
- 新入社員研修で、ブランドメッセージを自分の言葉で説明させる
- 営業やカスタマーサクセス部門が、メッセージを活用した事例を共有する
→ 言葉を“使う”ことで、“自分のものになる”。
これが、“共感”ではなく“共通”の強さを生む方法です。
メッセージを“アップデート可能”な文化にする
メッセージは、1回つくったら終わりではありません。
社会の価値観、顧客の変化、自社の進化に合わせて、“ブレずに変わる”設計が必要です。
- 半年〜年1回のメッセージレビュー会議を設ける
- 現場から「今のメッセージ、ちょっと届いてないかも」という声を拾える文化をつくる
- 社内でメッセージ改善案を募集する制度も効果的
→ 一貫性とは、“変わらないこと”ではなく、“本質を守りながら変わり続けること”です。
まとめ:メッセージとは、“行動を引き出す構造”である
マーケティングにおけるメッセージとは、
単なるキャッチコピーやスローガンではなく、
ブランドの価値を、誰かの行動へと変換する“意味の設計図”です。
- “言うべきこと”を“届く言葉”に変換する
- すべてのチャネルで一貫して“同じ意味”を伝える
- 社内外で“共有できる言葉”として運用する
- ユーザーにとって“動く理由”になる
この4つを兼ね備えたとき、メッセージは“人を動かす”力を持つようになります。
