ニューロリサーチ(共感度測定)調査活用事例

業界・業種
食品・飲料

2017/2/7(火)

ペルフェッティ・ヴァン・メレ・ジャパン・サービス株式会社様

ニューロリサーチ(共感度測定)の活用で「フリスク」Webキャンペーン動画のクリエイティブを改善。動画リテンションレート77%を実現し、想定以上の視聴獲得へ。

※画像は公式サイトより

ペルフェッティ・ヴァン・メレ社は、オランダに本社を置き、世界150カ国以上で「メントス」「チュッパチャップス」「フリスク」等のブランドを展開する製菓会社。これらの製品の日本展開を担っているのが、ペルフェッティ・ヴァン・メレ・ジャパン・サービス株式会社だ。日本における市場調査や、日本市場に合った商品の企画などのマーケティング活動を行っている。

世界の中でも独特な市場を形成している日本において、製品展開成功のカギを握るのがマーケティングリサーチだ。様々な手法を試す中で、「フリスク」の新商品ローンチ時に初めて取り入れたのが、ニューロリサーチ。同社で「フリスク」のブランドマネージャーを務める野村俊介氏に、ニューロリサーチを実施することにした背景や、効果について話を伺った。

調査実施の効果

Web動画のクリエイティブ評価が
データで科学的に実施可能に!
動画のリテンションレート77%を実現。目標を上回る視聴実績

調査実施時期

  • 2017年8月

日本市場が肝となる「フリスク」ブランドの、新商品ローンチPJ

ペルフェッティ・ヴァン・メレ社の各商品ブランドは、世界中で広く愛されているものが多く、日本においても同様だ。中でも「フリスク」は製品売上の多くを日本が占めており、日本市場に受け入れられることがブランドにとって大きな肝となる。

この「フリスク」は、2017年9月に大型新商品のローンチを控えていた。“30分息キレイ”をうたった大型タブレット『フリスク クリーンブレス』だ。製品ローンチを成功させるため、TVCM、サンプリングなど様々なプロモーション施策が企画されていたが、その中でも重要な施策として位置付けていたのがWebプロモーション動画だった。野村氏は言う。

「全く新しい商品カテゴリーになるため、まずは商品そのものを認知してもらうことを目指していました。認知獲得に向けて、もちろんTVCMは外せません。しかし、TVCMは広くあまねく認知を獲得することは得意ではあるものの、特定のセグメント層に強くアピールするには弱い部分もある。例えば、(口臭ケアを意識する)オフィスワーカーといった特定層の認知を獲得していくには、Web動画の方が適していると考えました。」

経験値・感覚でしか語れなかった、Web動画のクリエイティブを科学する

『フリスク クリーンブレス』で特に自信を持っていた製品特長が“30分息キレイ”だった。ターゲット消費者に知ってもらうためにWeb動画の活用を選択したものの、そこには課題もあったという。

「これまでも、プロモーションの一環で、Web動画は活用していました。しかし、どんな動画なら消費者が見たいと思うのか、印象に残るのか、最後まで見てもらうにはどうしたらいいのか、が明確に定義できず、常に感覚でしか語れていないことに気持ち悪さを感じていました。これまでの経験から、企画をきれいにまとめればまとめるほど、その動画はさらっと流されてしまい視聴者の印象に残りづらいと考えています。何かしら心に残るひっかかりが必要です。我々はそれを“ザラツキ”と表現するのですが、“ザラツキ”をどう作るかは、クリエイターの感覚に頼りがちでした。」

   Web動画をより強力にワークさせるためには、何をしたらいいか。模索している時に提案されたのが「ニューロリサーチ」だった。ニューロリサーチとは、脳波や心拍などの生体指標を用いた調査手法だ。消費者の生体反応をリアルタイム計測し、その変化から無意識の反応を調べていく。アンケートやインタビューでは導き出せない、自分でも意識していない領域でのインサイトを評価できる手法として近年注目を浴びている。

「これだ!と思いました。脳波で動画を見ているときの視聴者の状態がわかる。“ザラツキ”に近いものがデータで取れるかもしれないという予感がありました。」

ニューロリサーチの実現に向けて、社内の説得状況

ペルフェッティ・ヴァン・メレ社全体では、海外において生体反応を用いた調査(ニューロリサーチやフェイシャルコーディング)を行った実績はあった。しかし、日本での導入は今回が初めて。実施にあたって、懸念やハードルはなかったのだろうか。

「元々、我々はリサーチを大事にしている会社です。何か目的・意図があって、それを明らかにできる手法があるのであれば、それは実施すべきだと考えます。確かに、ニューロリサーチは価格感を考えると、手軽に実施できるものではありません。しかし、特に広告出稿はそもそも投下コストが大きく、その中でクリエイティブが少しでもズレると、最終的には投資効率が大幅に落ちてしまうこともあります。ニューロリサーチである程度のコストをかけてでも、そのズレをチューニングし広告効果を最大化できることを考えれば、むしろ費用対効果は高いと考えました。」

   「アンケート調査の場合は、ある程度恣意的に結果を導き出すこともできてしまうので、『その結果は本当なのか?』という疑問を持つ人が出てくる場合もありました。しかし、脳波は生理反応であり嘘をつけません。やってみる価値はあると、チーム全員が思いました。そういう意味では社内の説得に苦労をすることはありませんでした。」

データという共通言語でクリエイティブを調整し、期待以上の効果を創出

今回実施したニューロリサーチは、「共感度測定」という手法だ。「共感度測定」とは、複数名の脳波から“感情を喚起される変化の度合い(脳波同期性)”を測定し、そのデータを用いて共感力を評価するものだ。

複数名のモニターに動画(商品・サービス)を見せ、脳波を測定、各自の脳波データの相関を解析したうえで、脳波同期性を明らかにしていく。単純な脳波の波形のみを見てもマーケティングに活かす事は難しいが、脳波同期性に着目することで共感度が高い箇所、低い箇所を見出すことができ、あらゆるクリエイティブ評価に有効な手法である。

それでは、今回の場合、実際にどのように調査を実施し、施策に反映させたのだろうか。

『フリスク クリーンブレス』のWebのプロモーション動画(SPECIAL MOVIE「エキセントリックな課長」)は、2分弱の長さがある。それを20~30代の社会人の男女16名に視聴してもらい、脳波測定を行った。

「動画は2分と長いので、元々“ザラツキ”を意図してつくった部分とそうではない部分がありました。調査を行うことで、我々が意図したポイントできちんと心を動かせていたことが実証でき、そこは自信を持って動画公開することができました。一方で、反応が薄かった箇所も多く、そのポイントでは改善を図りました。脳波の動きがそろわないアイドリングタイムもあり、そこはデータという根拠があることで潔くカットすることもできました。」

「これまでは、クリエイティブの良し悪しを議論する時、どうしても個人個人の感覚でしか会話できなかったのですが、今回は脳波というデータがあることで、我々もクリエイターも含め全員で共通言語を持つことができ、全員納得感を持ったクリエイティブ調整ができたのは、非常によかった点です。」

さらに、ニューロリサーチならではの新たな気付きがあったという。

「ニューロリサーチを行うことで改めて気づいたのは、今までは“心を動かすポイントばかりに目が行き、心が離れるポイントは忘れがちになっていた”ということです。脳波を見ると、どこで心が離れていくのかが明らかでした。2分と長尺の動画では、いくら心を動かすポイントが盛り込まれていたとしても、心が離れてしまえばそこで動画を見るのをやめてしまうかもしれない。製品紹介のエンドカットまでを見てもらうためには、アイドリングタイムをどう調整するかも重要でした。正直、これまでの動画では大事だと思う数カ所のポイントのブラッシュアップばかりを議論していましたが、Web動画の場合は、全編通じて抜け漏れなくブラッシュアップをはかることが重要でした。」

「エンドカットについても新しい気付きがありました。我々は何の疑問も持たず常識のように、エンドカットで商品紹介を行ってきました。しかし、脳波を見ると、エンドカットに入った瞬間、明らかに心が離れているのです。一番見てほしい部分で興味を失っていることに気づけたのは大きな収穫です。本編からエンドカットまで一気通貫したナレーションを続けたり、アニメーションを入れたりなど、本編の続きとして最後まで見てもらえるような工夫を施しました。」

脳波同期性による、共感度が高まったポイントの確認

こういった様々な修正、調整を経て完成したWeb動画。実際に公開してみたところ、反応は想定以上によかったという。

「動画を公開してみると、リテンションレート77%という結果でした。これは、15秒のTVCMとほぼ同じ数値です。2分と長尺の動画にもかかわらず、多くの方が最後まで見てくださったことを意味します。目標と比較しても、期待以上でした。Web動画からの直接的な製品売上は算出が難しいですが、製品全体の売上も非常に好調で、『フリスク クリーンブレス』がブランド内で一番売れ行きの良い状態になっています。」

長尺の動画のブラッシュアップには、ニューロリサーチが活用できる

野村氏は、ニューロリサーチを今後も活用していきたいと話す。

「TVCMよりも、ある程度長尺の動画の方が、ニューロリサーチを実施する効果が高いと感じています。ニューロリサーチは、動画の全編にわたってずっと脳波を測定できるという点がメリット。より途中での離脱のリスクが大きい長尺の動画のクリエイティブ精査に向いていると思っています。また、Web動画の方がCMに比べ、クリエイティブの修正をしやすいという点もあります。ある程度の規模でメディア展開を行うキャンペーンの際は、ぜひまた活用したいです。」

次回ニューロリサーチを活用する時は、より効果的な調査ができると考えているという。。

「次に実施する時は、動画のターゲットをもっと絞り込んで、調査参加してもらうモニターもターゲットにあった人を集めてやりたいですね。また、シーンをもう少し細かく区切って、そのシーン毎に、何を実現したいシーンなのか(共感させたい、動画を見るのをやめさせない、心を震わせたい…等)を事前に明確にし、脳波を見ながら調整していけるといいなと考えています。」

ニューロリサーチがもっと広まり、より多くの方に活用されていってほしい、と野村氏は言う。多くの人が活用するようになれば、調査会社に知見もたまって調査精度があがることが期待でき、コストも下がると考えられるからだ。消費者に支持されると自信のあるブランド・製品だからこそ、その特長をきちんと最適な消費者に届けるため、これからもマーケティングリサーチを活用していくという野村氏。新しい手法にも、それが効果を見込めるものであるならば、どんどん取り入れていきたいとの考えだ。

野村 俊介氏
ペルフェッティ・ヴァン・メレ・ジャパン・サービス株式会社
マーケティング フリスクブランドマネージャー
野村俊介氏

マーケティング本部FRISKブランドマネージャー。2015年入社。
FRISKブランドのブランド戦略、市場調査、商品企画、広告宣伝などマーケティング活動を全般的に担当。これまでにFRISK NOWmintsシリーズの日本での立ち上げ、FRISK / FRISK NEOのリニューアルなどを手掛ける。

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