【インドネシア編】各世代の価値観に影響を与えたテクノロジーの背景とは

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リサーチャーコラム

2022/7/6(水)

アジアのターゲット市場で消費者調査を行うと、「なぜこういった傾向がみられるのか」と、スコアの解釈への悩みに直面することがあります。その裏には、各国の消費者意識に影響をあたえる「社会背景」「文化背景」等が必ず存在し、海外での調査データの分析で重要なポイントとなります。

そこで当社は、アジアにおけるマーケティング戦略や海外調査をご担当される方が調査企画を策案する際、有用な基礎情報源として活用いただける『アジア4カ国(中国・インドネシア・タイ・ベトナム)の生活者価値観レポート』をまとめました。本連載は、各国の有識者の知見に基づいた仮説と分析を、マクロミルが独自に実施した自主調査で検証するというスタイルでご紹介していきます。

今回は、インドネシアの以下のような各世代に影響を与えた「テクノロジーの背景」について解説します。

  • 第1世代「Gen1」 ムルデカ世代(独立戦争世代)(1945~64年生まれ)
  • 第2世代「Gen2」 オルデバル世代(スハルト体制世代)(1965~74年生まれ)
  • 第3世代「Gen3」 インドネシアのミレニアル(1975~98年生まれ)
  • 第4世代「Gen4」 ジェネレーションZ(1998~2002年生まれ)

インドネシア人の価値観に影響を与えたテクノロジー

インターネット、SNS、スマートフォンといったデジタル技術は、インドネシア人同士の関係(人間相互作用)を激変させ、ライフスタイルに非常に大きな影響を与えました。

デジタル技術の広範囲な浸透

インドネシアには、1.7億人にも及ぶインターネットユーザーが存在します。また、1.6億人がSNSのアクティブユーザーで、全体人口の約6割を占めます。また、そのほとんどがスマートフォンなどのモバイルからアクセスしています。

有識者によれば、Instagram、Facebook、TwitterのようなSNSは、ピアプレッシャー(友人や同僚に買ったものを見せたい、自慢したいと思う気持ち)を刺激する重要な役割を担っているようです。FOMO(Fear of Missing Out/見逃したり取り残されたりすることへの不安)は、非常にパワフルなマーケティングの要素であり、ミレニアル世代の購買行動に影響をもたらすもので、プレッシャーにすらなっています。

ますます深まる人と人の交流(人間相互作用)

SNSやメッセンジャーアプリのWhatsAppといったコミュニケーションツールや、配車アプリの GOJEK(ゴジェック)やGrab(グラブ)、食事宅配サービスは、インドネシア人の人と人との交流を加速させました。

GOJEKやGrabは、人々の移動性と社会性を変えました。また、バイクを使った食事や食品の配達サービスは家庭と飲食業者に影響を与えました。通勤に時間がかかる人にとって、このようなサービスは非常に便利であり、仕事の帰りが遅くなっても、帰ったらすぐに家族との食事を楽しむことができるようになりました。

簡単な決済方法

格安航空会社やオンライン旅行代理店などのサイト利用が促進され、消費者は東南アジアから世界へと容易に翼を広げられるようになりました。デジタル技術による簡単な決済方法が人々の生活に変化を与えています。具体的には以下のようなサービスが挙げられます。

  • ・電子決済(OVO、GoPay、DANA)、モバイル・オンラインバンキング、消費者信用
  • ・オンライン旅行代理店(Traveloka)
  • ・ECサイト (Tokopedia・Bukalapak・Lazada)

新型コロナウイルス感染拡大によるオンライン購入の変化

テクノロジー利用状況について、コロナ以前からの変化を定量調査で調べてみました。なお、Gen1のオンラインモニター数が他世代に比べて非常に少なく、同じ世代の一般生活者よりモバイルリテラシーが高い集団である可能性がある点にはご留意ください。

以下は、日用品のオンライン購入率ですが、各世代ともにコロナ以前に比べて10ポイント前後の増加が見られました。

日用品のオンライン購入率、コロナ以前との比較(世代別)

一方、モバイル決済や電子決済の利用状況については。劇的な変化が見られました。各世代ともに半数以上が「新型コロナウイルス流行後に(利用が)増えた」と回答しました。

新型コロナウイルス流行による利用状況の変化(世代別)

インドネシアのクレジットカード保有率は、もともと2.4%(2019年JNTOレポート)と、アジア圏の中ではかなり低かったこともあり、コロナをきっかけに(アフターコロナも)利用が拡大していくと考えられます。

各世代のテクノロジーへの関わり

Gen1はアナログな価値観がベースになっているテクノロジー使用者

SNSに興味があり、SNS上でのコミュニティ活動を頻繁に行っています。スマートフォンが広がる前にも、拡大家族間、あるいは近所のマイクロコミュニティで集う習慣があり、そもそも「ネットワーキング」とは親和性があったようです。

最新の電子機器に関する情報には精通しており、情報源は一緒に住む家族か、社会的なネットワーク(アナログなつながり)です。

Eコマースにあまり興味を持っていません。

Gen2はアナログとデジタルの過渡期世代

この世代はデジタルテクノロジーに完全に浸るライフスタイルではなく、デジタルの利便性は理解しながら、リスクについても認識しているため、情報収集はネットから、買い物はネットと店舗といった使い分けをします。

購買力が最強と言われる世代であるため、利便性とセキュリティが更に整備され、それを許容できる意識変化が起これば、大きなデジタル消費の受け皿になる余地があります。例えば、5Gとコロナの影響による様々なシーンでのオンライン利用の増加は、この世代のデジタルシフトには大きな後押しになりそうです。

デジタルフレンドリーなGen3

ミレニアル世代の価値観、考え方、行動は、主にテクノロジーとライフスタイルによって決まります。

ミレニアル世代の購買行動は、現在のデジタル技術力によって簡単に左右されます。インターネット上の閲覧履歴情報をもとに、購買欲をくすぐる好みのサイトへと誘導されれば、実際に購入に至る傾向があります。

SNS上で、宗教がライフスタイルのトレンドとして商業化されるにつれて、この世代の持つ宗教的価値観が高くなっています。セレブのインフルエンサーたちが、この宗教的トレンドを作り出しており、快楽主義的なライフスタイルが許される範囲内であれば、宗教的価値観は特に相反するものではないと主張しているようです。

また、オンラインで海外旅行や国内旅行を予約することにも抵抗がなく、Tokopedia, BliBli, BukalapakといったECサイトを頻繁に利用して、携帯電話や電子機器、アパレルなども購入します。

Gen3のオンライン購買比率は高く、オンラインプロモーションへの情報接触が高いため、ECのターゲティングには乗りやすい消費者層です。トレンド情報や、SNSのコミュニティでの情報を頻繁にチェックしており、オンラインプロモーションとの親和性が最も高い世代と言えます。

SNS・コミュニケーションツールで収集・発信する情報

有識者によると、「インドネシアのミレニアルズのテクノロジーへの興味や個人主義的な価値観は、欧米のミレニアルズと共通しているが、欧米のミレニアルズと大きな隔たりが生じている理由は『宗教』である」と分析しています。定量調査の結果でも、SNS上で宗教に関する情報発信・収集を行う人がどの世代でも3~4割存在しました。インドネシア独特のライフスタイル・価値観が、テクノロジー分野にも及んでいることが検証されました。

SNS・コミュニケーションツールによる、「宗教」に関する情報収集・発信(世代別)

デジタルネイティブなGen4

「i世代」と呼ばれるGen4は、デジタルネイティブであり、テクノロジーに精通しています。スマートフォンの持つ機能を全て使いこなし、デジタル技術によって、合理的・効率的なライフスタイルを手に入れています。

自分たちは忙しい生活をしていると考えており、何の問題もなく普通にオンラインで買い物をし、モバイル機器やノートPCから日々の生活を管理します。物理的な店舗に行って、必要なものを購入する必要性を感じていません。ショッピングモールに行く目的は買い物ではなく、友達や同僚と集い、楽しい時間を過ごすためです。この世代をターゲットに限定した ECサイトが存在しており、Gen4はそのサイトを閲覧したり、そこから購入したりします。

個人主義で利己的な価値観を持つGen4は、欲しいと思った時にすぐ手に入れたいという欲求があります。ECが整備されたこの時代に、Gen4の欲求はマッチしているようです。もちろん、海外旅行や国内旅行もオンラインで予約をします。

インドネシアのSNSは、テレビタレントやユーチューバー、Instagramのインフルエンサーといったセレブ集団が先導しています。

この世代は、形のある物にお金を使うだけではなく、Netflixのようなストリーミングや、ゲームなどのデジタルサービスにも出費をします。

自主調査:スマートフォンアプリで普段利用するサービス

有識者によるGen4の分析のように、定量調査の結果でも「形のある物にお金を使うだけではなく、Netflixのようなストリーミングやゲームなどのデジタルサービス」の利用が他世代よりも高い傾向が見られます。

スマートフォンアプリで普段利用するサービス(世代別)

以上が、インドネシアの有識者の意見を交えた、各世代が影響を受けたテクノロジーの背景です。本連載では、研究で得られたインサイトをベースに、購買行動、テクノロジーの影響、家族とのかかわり、社会からの影響などをテーマに調査を行い、定量的にその内容を検証していきます。

次回は、「各世代の価値観に影響を与えたテクノロジーの背景とは【タイ編】」をご紹介します。

定量調査の調査概要
調査地域: インドネシア全土
世代別回答者数: Gen1(n=54)、Gen2(n=211)、Gen3(n=3299)、Gen4(n=598)
※各世代で男女が概ね半数ずつになるよう割付。民族別の割付は行わず、自然発生ベースで回収
調査方法: インターネット調査
調査時期: 2019年12月

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著者の紹介

北島尚

北島 尚

株式会社マクロミル グローバルリサーチ本部 海外事業開発ディレクター
米国フォーダム大学大学院修士課程修了。LVMHグループにてブランドマネージャー、PwCコンサルティングにて国内外の企業のマーケティング戦略プロジェクトに参画。その後、オグルヴィ&メイザーにて日本企業の海外ブランディングおよびマーケティングを支援するエキスポートプラクティスを起ち上げ、ジェネラルマネージャーとしてチームをけん引。現在は、マクロミルにて日本企業の海外市場における調査と戦略サポートを務める。

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