
日本での「タンパク質ブーム」は2015年ごろから始まり、健康志向の高まりとともにその人気は年々拡大してきました。現在では、体形の維持や美容を目的に「タンパク質が補給できる食品」を選ぶ消費者が増え、スーパーやコンビニの棚には多種多様なプロテイン・高タンパク商品が並ぶようになりました。さらに、2020年頃からのコロナ禍をきっかけに健康意識が一層高まり、2024年にはグリークヨーグルト(ギリシャヨーグルト)の流行など、高タンパク市場は大きな変化を遂げています。
本コラムでは、マクロミルが提供する「消費者購買履歴データQPR」を活用し、高タンパク市場の現状や、市場の主要なカテゴリの購入者傾向の違い等を明らかにします。
- 1. 高タンパク市場の7年間の変遷
- 1-1. 市場をけん引しているカテゴリは?
- 1-2. 主要3カテゴリの購入者数、顧客単価の変遷は?
- 1-3. 高タンパクヨーグルト伸長要因は、ヨーグルトブームによるものか?
- 1-4. 高タンパク市場の7年間の変遷のまとめ
- 2. ヨーグルト、粉末プロテイン、ソフトドリンクのユーザー分析
- 2-1. ユーザーの性年代層に差異はあるか?
- 2-2. どの業態で購入されているか?
- 2-3. 続けやすいのはどれか?
- 2-4. ヨーグルト、粉末プロテイン、ソフトドリンクのユーザー分析のまとめ
- 3. まとめ
※本レポートでは、15-79歳のモニタ(消費者)の購買履歴を分析の対象としています
※本レポートでは、主に加工食品、菓子、ヨーグルト、ソフトドリンク、健康食品について、ブランドコンセプトや
パッケージ訴求でタンパク質の摂取・強化をうたっているものを「プロテイン・高タンパク商品」と定義しています
※グラフには、高タンパク市場のトータルと、以下の主要なカテゴリのみを表示しています
・ヨーグルト(食べるタイプ):食べるタイプの高タンパクヨーグルト、 ギリシャ(グリーク)ヨーグルト等
・粉末プロテイン:粉末タイプのプロテイン
・ソフトドリンク:ミルクプロテイン飲料、高タンパク質牛乳等
・加工食品(各種):グラノーラ、豆腐バー、サラダチキン、カップ麺、魚肉ソーセージ等
・栄養バランス食品:バータイプの栄養バランス食品
※「年度」は4月1日-翌年3月31の期間を示しています
1. 高タンパク市場の7年間の変遷
2018年度から2024年度までの7年間について、高タンパク市場全体と主要カテゴリごとの市場ボリューム、購入者数、顧客単価の変遷を見ていきます。
1-1. 市場をけん引しているカテゴリは?

高タンパク市場全体の2024年度の市場ボリューム(100人あたり購入金額)は、6年前の2.5倍に拡大しました。以下は主要カテゴリごとの動向です。
■直近で好調のカテゴリ
- ヨーグルト:2024年度の購入金額が6年前の246%と大幅に伸長。特に2020~2023年度は前年比120%前後の伸長を続け、2023年度以降は粉末プロテインを抜いてカテゴリシェアトップに
- ソフトドリンク:ほぼ毎年成長を続け、2024年度の購入金額は6年前の486%となり、市場シェア3位に
■直近で不調のカテゴリ
- 粉末プロテイン:2019年度、2020年度までは前年比120%を超える伸長を続けたが、2021年度には伸長が鈍化し、2023年度からは縮小傾向
- 加工食品:豆腐バー、サラダチキン、グラノーラなど様々な食品がブームとなり、2021年度まで伸
長が続いたが、その後は停滞 - 栄食バランス食品:2021年度まで伸長を続けていたが、2022年度以降縮小傾向
1-2. 主要3カテゴリの購入者数、顧客単価の変遷は?


次に、上位3カテゴリについて、2018年度、2021年度、2024年度の3年おきの市場ボリュームと、購入者数(購入率)、顧客単価(購入者あたり購入金額)の変遷を見ていきます。
- ヨーグルト:購入者数、顧客単価共に堅調な伸長を続けている
- 粉末プロテイン:他2カテゴリと比べて、購入者数が少ない一方で顧客単価の高いカテゴリ。購入者数は、2021年度は伸長したが、2024年度は縮小。一方で、ライトユーザーが減って市場にヘビーユーザーが残ったためか、顧客単価は増加
- ソフトドリンク:2021年度に購入者数が大きく伸長した。2024年度は購入者数の伸長は停滞したが、顧客単価はひき続き伸長
1-3. 高タンパクヨーグルト伸長要因は、ヨーグルトブームによるものか?

高タンパクヨーグルトの100人あたり購入金額の伸長傾向を、ヨーグルト(食べるタイプ)全体と比較してみます。2024年度の高タンパクヨーグルトの伸長(2018年度比246%)は、ヨーグルト全体の伸長(2018年度比111%)を上回っています。また、100人あたり購入金額の伸長タイミングの傾向もヨーグルト全体と異なっており、ヨーグルト市場全体のブームではなく、高タンパクヨーグルトが特に好調であることを示しています。
1-4. 高タンパク市場の7年間の変遷のまとめ
「タンパク質ブーム」により、高タンパク市場は大きく拡大しましたが、2020~2021年度をピークに粉末プロテイン、栄養バランス食品、加工食品は縮小の傾向に転じました。市場をけん引してきた粉末プロテインに代わってトップとなったのが、ヨーグルトです。ヨーグルト市場全体の伸長と比較しても大きな伸長傾向にあり、近年話題のグリークヨーグルト等を含む高タンパク質ヨーグルトが特別に好調であることがわかります。また、ソフトドリンクも好調なカテゴリであり、高タンパク市場はカテゴリごとの好不調がはっきり分かれる結果となりました。
2. ヨーグルト、粉末プロテイン、ソフトドリンクのユーザー分析
ここからは、市場の上位3カテゴリであるヨーグルト、粉末プロテイン、ソフトドリンクについて、ユーザー(購入者)の傾向を比較していきます。
2-1. ユーザーの性年代層に差異はあるか?



性年代別の100人あたりの購入金額*を比較すると、以下の傾向が見られます。
- ヨーグルト:女性の購入金額が高く、特に50代、40代、30代の順に高い
- 粉末プロテイン:男女差は少なく、男性40代、男性30代、女性40代の順に高い
- ソフトドリンク:男性の購入金額が高く、30代、50代、20代の順に高い
このように、3つのカテゴリでは、それぞれに購入者の性年代層に違いが見られました。
*各性年代のモニタ100人あたりの購入金額。実際の金額シェアではなく各層の母数の大きさの違いを排除した分析となります。
2-2. どの業態で購入されているか?

カテゴリごとの購入業態の金額比率は以下の通りです。
- ヨーグルト: スーパーの比率が81%として突出して高い
- 粉末プロテイン:通信販売が40%、ドラッグストアが37%を占めている
- ソフトドリンク:スーパーの比率が54%だが、他のカテゴリと比べてコンビニの比率が25%と最も高い
これらの傾向から、以下の様な購入スタイルが多いことが推測されます。
- ヨーグルト: 日常の食料品の買い物の一環として購入
- 粉末プロテイン:事前に購入を決めて、計画的に購入
- ソフトドリンク:外出先での手軽なたんぱく質補給食の選択肢として購入されやすい
2-3. 続けやすいのはどれか?

こちらは、2022、2023、2024年度の3期間のうち、いくつの期間で同カテゴリの商品を購入したかを分析したグラフです(1年・2年購入者については、期間内のどの年度で購入したかは不問)。
3年間連続しての継続購入者の比率を比較すると、以下の結果が得られました。
- ヨーグルト: 21%(最も高い)
- 粉末プロテイン:11%(最も低い)
- ソフトドリンク:18%(中間)
3年連続の継続購入者の比率が最も低いのは粉末プロテイン、最も高いのはヨーグルトとなりました。
高タンパクヨーグルトの上位商品の多くは、「ギリシャヨーグルト(グリークヨーグルト)」と呼ばれる水切りヨーグルトで、濃厚でクリーミーな味わいで人気を集めています。また、スプーンで手軽に食べられて朝食や間食に取り入れやすいこともあり、「おいしさと手軽さ」の両立が続けやすさにつながっていることが推測されます。
2-4. ヨーグルト、粉末プロテイン、ソフトドリンクのユーザー分析のまとめ
ここまでの分析を以下にまとめます。

- ヨーグルト:女性の購入金額が高く、特に30~50代に購入されやすい。スーパーの金額比率が高く、日常の買い物の一つとして購入されていると推測される。3年連続の購入率も高く、手軽に続けられる高タンパク食品。
- 粉末プロテイン:購入金額に男女差は少なく、男性30代、40代、女性40代の順に購入されやすい。ドラッグストア、通信販売の金額比率が高く、計画的に購入されていると推測される。3年連続の購入率は他のカテゴリより低く、食品ではないことや高額な商品であること等から比較的習慣になりにくいと考えられる。
- ソフトドリンク:男性の購入金額が高く、男性30代、50代、20代の順に購入されやすい。他のカテゴリと比較してコンビニの金額比率が高く、外出時の手軽な高タンパク食品として選択されやすいと考えられる。
3.まとめ
高タンパク市場は、2018年度から2024年度の7年間で大きく成長しました。その中でも、ヨーグルトとソフトドリンクが市場を牽引する主要カテゴリとして台頭しています。特に、ヨーグルトは「おいしさ」と「手軽さ」を兼ね備えた商品として支持されていることが考えられ、継続購入率の高さが市場の安定成長を支えています。一方、ソフトドリンクは外出時に手軽にたんぱく質を摂取できる選択肢として、人気を集めているようです。
一方で、粉末プロテインや栄養バランス食品、加工食品といったカテゴリは、「タンパク質ブーム」のピークを過ぎたことで成長が鈍化し、縮小傾向にあります。粉末プロテインは、特定の層に支持される一方で、継続購入率が低いことが課題となりそうです。
市場全体としては、「おいしく、手軽に摂取できる」という要素が、プロテイン・高タンパク商品の選択において重要なポイントであることが明らかです。今後の市場拡大には、これらの要素をさらに強化し、幅広い層にアプローチする商品開発が鍵となると考えられます。
・・・皆様のご参考情報としてご活用ください・・・
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著者の紹介

株式会社マクロミル 第2事業本部 アカウントマネジメント部 パネルデータビジネスユニット カスタマーサクセスグループ
落合 優子
中途入社後、「QPR(消費者購買履歴データ)」の集計部に配属。その後カスタマーサクセスグループへ異動。年間契約企業様へのQPR利活用促進業務に加え、データ集計業務を担当する。購買データを軸に幅広い業務領域に従事する。
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