
第2回となる前回のコラムでは、購買履歴データで分析可能な要素と、その要素が分析の切り口としてどのように使えるかをお伝えしました。
では、これらの切り口を使ってグラフなどの分析データを出力した後、どのようにそのデータを読み解けば良いのでしょうか。
第3回では、分析結果から傾向を読み解くコツについて、ご紹介します。
- 1. 傾向を読み解くために着目するべき視点
- 1-1. 継続的な傾き:一定の方向に向かって変動しているかどうか
- 1-2. 比較対象とのギャップ:比較対象との差異や類似性があるかどうか
- 1-3. ある地点からの変動:特定の時点からの変化があるかどうか
- 1-4. 繰り返される規則性:周期的なパターンが見られるかどうか
- 2. 傾向を見つけたらどうするか
1. 傾向を読み解くために着目するべき視点
データ分析の基本は「分けて比べる」ことにあります。分析要素を適切に分けて比べることで、異なるパターンやトレンドを見つけることができ、より深い洞察を得ることが可能となります。購買履歴データの切り口、つまりデータ要素の「分け方」については前回のコラムでご説明しましたので、今回は分けた項目の「比べ方」、つまり具体的な読み解き方のコツを4つの視点にわけて説明します。
購買履歴の集計データから示唆を得るために着目すべき基本的な視点が以下の4点になります。分析結果を読み解く際にはこのような傾向を見つけることを意識してください。また、このような傾向を見つけるために、集計結果は基本的にグラフにして見ることをお勧めします。
- 継続的な傾き:一定の方向に向かって変動しているかどうか
- 比較対象とのギャップ:比較対象との差異や類似性があるかどうか
- ある地点からの変動:特定の時点からの変化があるかどうか
- 繰り返される規則性:周期的なパターンが見られるかどうか
この4つの視点について、それぞれ具体的な事例をもとに説明していきます。
事例は一部、マクロミルが提供する簡易自主分析「GIVE QPRレポート」のデータを使用しています。
1-1. 継続的な傾き:一定の方向に向かって変動しているかどうか
以下のグラフは、「果汁飲料」を分析の対象として、年次の時系列で種類×容量帯別の購入容量を算出したレポートとなります。

「果汁100% 51-1100ml」の購入容量を示す折れ線グラフは右下に傾いており、年々減少傾向であることが読み取れます。このように、継続的な減少傾向あるいは増加傾向があるか、という見方が【継続的な傾き】の視点です。
1-2. 比較対象とのギャップ:比較対象との差異や類似性があるかどうか
以下は、「果汁100% 651-1100ml」について、性年代別の100人あたりの購入容量をそれぞれ前年比較したレポートとなります。

「前年の購入容量」を比較対象として見ると、当年は特に「男性40代」「女性30-50代」の購入容量の減少が大きいことが読み取れます。このように、比較対象と比べて明確な差があるかが【比較対象とのギャップ】の視点です。
「当年」に対する「前年」や「前年同期」等の期間の比較以外にも、「自社ブランド」に対して「競合ブランド」あるいは「カテゴリ全体の傾向」のように商品・商品群の比較や、購入者層、購入業態等の比較も可能です。
1-3. ある地点からの変動:特定の時点からの変化があるかどうか
以下は、「オートミール」カテゴリを対象として、10年間の市場規模の推移を年次で確認したレポートとなります。

本格的なコロナ禍が始まった「2020年」を起点に購入金額が伸びており、2019年と比較して9-10倍ほど伸びていることが読み取れます。このように特定の時点からそれまでとは違う傾向になっているかが【ある地点からの変動】の視点です。
購買状況の変動を確認すべき「ある地点」は、コロナ禍や増税、値上げラッシュなどの社会情勢の他にも、新商品の発売、プロモーションの実施、競合商品の上市などのマーケティング施策の実施タイミング等も当てはまります。
1-4. 繰り返される規則性:周期的なパターンが見られるかどうか
以下は、「チョコレート」カテゴリを対象として、3年間の月次の市場規模を種類別に確認したグラフとなります。

チョコレート全体で、毎年バレンタイン時期の2月に購入金額が増える傾向にあります。また夏に比べて冬のほうが、購入金額が多い傾向も現れています。これが【繰り返される規則性】の視点です。季節や曜日等の条件によって繰り返し同様の変動が起こるのかを確認します。
この視点は、時系列や当期と前期等の比較を見るときにも重要です。購入状況の変化が何らかの社会情勢やマーケティング活動の結果によってもたらされたものか、あるいは季節性などの要因によって繰り返し起こっているものなのかを見極める必要があります。
2. 集計データに傾向を見つけたらどうするか
ここまで、「購買履歴データの集計結果から傾向を読み解くコツ」をご説明しました。
傾向を見つけたのはいいけれど、この後どうしたらいいかイメージがつきづらい方も多いのではないでしょうか。
ここからは、集計結果から特徴を見つけた後、どのように分析を深めていけばいいのかをご説明します。
集計結果に特徴を見つけたら、さらに切り口を細分化する、あるいは切り口を変えてより詳細に要因を分析します。具体例を用いて詳しくご説明します。
以下は2-1にて用いた、「オートミール」カテゴリを対象として、10年間の市場規模の推移を年次で確認したレポートとなります。【3.ある地点からの変動】の視点で「2020年」からの変動を見ると、ここから購入金額が大きく伸びていることがわかります。

ここから切り口を変え、「2020年」以降に何が起こったのかを確認し、購入金額が伸びている要因を確認します。
以下は「オートミール」カテゴリを対象として、10年間の市場規模の推移をメーカー別に年次で確認したレポートとなります。

「2020年」からの変動を見ると、日本の大手食品メーカーB、CやプライベートブランドD、Eの金額が伸びていることがわかります。この結果から「2020年」以降、オートミール市場のボリュームが伸びている要因として上記メーカー、PBのシェア拡大が考えられます。
次に、以下は「オートミール」カテゴリを対象として、5年間の購入先の変化を業態別の購入金額構成比の形で確認したレポートとなります。

「2020年」からの変動を見ますと、ドラッグストア、ホームセンター、ディスカウントストアのシェアが徐々に伸びていることがわかります。この結果から「2020年」以降、様々な業態でオートミールが購入できるようになったことも、購入金額が伸びている要因の1つとして考えられます。
このように「いつ」という切り口から「だれが」や「どこで」に切り口を変えて再度データを集計し、また傾向を探すことで、より深い部分まで分析が可能になります。切り口を変える際の注意点として、分析可能な要素に対して総当たり的に分析するのは非効率です。売上増加の要因に対して仮説を立ててから、その仮説を切り口に落とし込んで分析、確認していくとスムーズに進められます。
第3回では、「購買履歴の集計データから傾向を読み解くコツ」について解説しました。
ご説明した4つの視点に着目して集計結果のグラフから特徴を見出し、仮説を基に切り口を変えながらデータの集計、結果の確認を繰り返していくことで、市場実態の把握とその要因の解明を進めることができます。
次回は、「購買データの分析の進め方のコツ」について詳しく解説します。
・・・皆様のご参考情報としてご活用ください・・・
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著者の紹介

株式会社マクロミル 第2事業本部 アカウントマネジメント部 パネルデータビジネスユニット カスタマーサクセスグループ
谷上 菜々子
購買履歴データ「QPR」の営業として配属後、カスタマーサクセスグループへ異動。年間契約企業様へのQPR利活用促進業務に加え、データ集計業務を担当する。購買データを軸に幅広い業務領域に従事する。
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