消費者購買履歴データの分析ステップをご紹介!事例を使ってわかりやすく解説します。【購買データの基礎知識 第2回】

2025/5/13(火)

第1回では、購買データ・販売データの種類とその特性、使い分けについてご説明しました。
第2回以降は、そのデータの1つ「消費者購買履歴データ(以下、購買履歴データ)」にフォーカスして、データ分析の基礎をご説明していきます。

購買履歴データは、リサーチ会社によって「市場を反映すること」を目指して収集されたデータであり、豊富な顧客属性データや対象のパネル(消費者)の購買動向を長期間トラッキングできることから、特に顧客理解に強みを持つデータです。

1. 購買履歴データの具体的な活用例

まずは、購買履歴データがどのようなシーンで活用されているかを紹介します。
次の表は、マクロミルが提供する購買履歴データ「QPR」の年間契約サービス「QPR-TRACE」を利用しているユーザーに「QPRの活用目的」を尋ねたアンケート結果です。

【図1】「QPR-TRACE」満足度調査のアンケート結果(2024年11月実施)

アンケート結果から、自社商品に対する市場の反応の確認、広告・販促のパフォーマンスの計測、市場の実態把握、商談を有利に進めるための裏付けデータ等、様々な目的で活用されていることがわかります。
このように、購買履歴データはマーケティングの意思決定市場の実態把握に欠かせないデータとして活用されています。

2. 購買履歴データで分析可能な要素

次に、購買履歴データを使って分析できる市場の要素について説明します。何が分析できるのかを理解することで、データ分析の視点(データの切り口)を考える助けになります。

【図2】市場の構成要素

簡潔に言うと購買履歴データは、「いつ・誰が・どこで・何を」「どれだけ/いくらで」購入したかという市場を構成する要素を数値化したデータです。これらの要素を組み合わせて分析することで、市場や消費者の実態を把握することができます。

3. 購買履歴データの基本的な分析ステップ

次に、これらの要素をどのように組み合わせて市場を分析するのか、具体例をご紹介します。
購買履歴データのもっともベーシックな使い方は、市場の実態把握その要因仮説の構築です。以下は、2022年秋ごろに始まったチョコレートショック(チョコレートの原料となるカカオの価格高騰)を受けたチョコレートカテゴリの実態把握とその要因仮説の構築をテーマとした分析例です。

3-1. チョコレート市場の「実態把握」と「要因の分解」

下の図はカカオショックの前後のチョコレートと他の菓子カテゴリの実態を分析したグラフです。2022年・2024年(いつ)について、市場の購入数量の増減(どれだけ)やさらに詳細な指標を切り口として分析します。

※商品単価にばらつきがあるカテゴリでは「金額」で集計するのが一般的ですが、ここでは分析例としてわかりやすいように、大きな動きのあった「数量」での集計を行っています。

【図3】菓子カテゴリ別インデックスツリー(100人あたり購入数量、購入率、購入者あたり購入数量)

2022年と2024年を比較すると、ほとんどの菓子カテゴリでは「100人あたり購入数量」は横ばいか、上昇していますが、チョコレートカテゴリだけが大きく減少しています。また、購入数量の変化を「購入率(購入者数)」「購入者あたり購入数量」の要素に分けて見ると、「購入者あたり購入数量」が大きく減少していることがわかります。
ここから、チョコレートカテゴリの購入数量が大きく減少していること、またその要因は購入者あたりの購入数量の減少にあることがわかります。

「どれだけ・いくらで」の要素には、購入数量の他にも購入金額・回数・本数・容量(ml)・杯数なども含まれます。また、購買頻度、平均価格、リピート率、併買率リフト値*等の分析も可能です。

*リフト値:指定した商品(または商品群)の購買者が併買対象の商品を購入する確率が、全体のモニタと比べて何倍高いかを示す指標

3-2. チョコレートカテゴリの不調は「いつ」起こったのか?

チョコレートの市場縮小の要因をさらに詳しく分析していきます。まずは、「いつ」の視点について、時系列データを見ていきます。

以下は、2020年からの5年間の「100人あたりの購入数量」を示した時系列グラフです。

【図4】チョコレートカテゴリ「100人あたり購入数量」の推移

2021年から緩やかに減少していますが、2023年、2024年にはさらに減少が加速しています。

次に、こちらは平均価格の時系列グラフです。

【図5】チョコレートカテゴリ「平均価格」の推移

平均価格は2023年と2024年に大きく上昇しています。これらのことから、チョコレートカテゴリの縮小傾向は2023年から加速し、平均価格の上昇が1つの要因である可能性が考えられます。

「いつ」の視点は、年次だけでなく半期・四半期・月次・週次のように細かく設定することで、季節による傾向前期・後期の比較等、市場の時系列の動きを詳細に把握することができます。

3-3. チョコレートの購入が減ったのは「だれ」か?

次に、「だれが」の視点で、チョコレートの購入量が減少した購買者層(属性)を探っていきます。

以下は、性年代別に2022年と2024年の「100人あたり購入数量」を示したグラフです。

【図6】チョコレートカテゴリ 性別×年代別「100人あたり購入数量」(2022年、2024年)

2024年に最も購入量が高いのは女性40代ですが、2022年と比較すると減少しています。他にも10代を除くすべての層で購入量が減少しています。ただし、男女ともに70代は減少幅が比較的少ない傾向があります。
「だれが」という視点は、性別や年代だけでなく、既婚/未婚・家族構成・末子年齢・職業・ライフステージなど、買い物傾向に影響を与える様々な属性情報が含まれます。これらの詳細な消費者属性を分析することで、顧客をより深く理解することが可能になります。

3-4. チョコレートは「どこ」で買われているのか?

以下は、2022年と2024年の業態別の購入数量構成比を示したグラフです

【図7】チョコレートカテゴリ 業態構成比(2022年、2024年)

2022年・2024年共にスーパーがシェアの約半数を占めていますが、比率は約1ポイント減少しています。一方、シェアを伸ばしているのはドラッグストアで、約2.7ポイントの増加となっています。

「どこ」という視点には、業態だけでなく、主要なチェーンの比較や、モニタの居住エリアごとの分析なども含まれます。具体的には、チェーンごとの購買量の比較や、エリアごとの購買傾向などが分析できます。

3-5. その他の分析視点

ここまで、基本的な分析視点について説明しました。購買履歴データでは、さらに複雑な分析も可能です。たとえば、併買された商品群を基とした顧客のセグメンテーション、商品間の購買量の流出入、新商品のトライアル率・リピート率の推移等が挙げられます。また、「いつ・誰が・どこで・何を」の視点で分析対象を絞り込むことで、特定のチェーンでの売れ筋商品の確認や、特定の性年代(女性30代・40代など)に対象を絞ったブランドの売れ行き比較等、多角的な分析が可能です。

第2回となる今回は、購買履歴データの基礎知識や分析ステップを、購買履歴データ「QPR」を例にとってご説明しました。データの基礎を理解することは、適切な分析方法を学ぶ第一歩です。読者の皆さんもぜひ購買履歴データの理解を深め、活用を進めていただければと思います。
次回の第3回では、今回の知識を活かして購買履歴データを集計した後、集計した数値やグラフから傾向を読み解くコツについてお伝えいたします。

・・・皆様のご参考情報としてご活用ください・・・
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著者の紹介

落合優子

株式会社マクロミル 第2事業本部 アカウントマネジメント部 パネルデータビジネスユニット カスタマーサクセスグループ

落合 優子

中途入社後、「QPR(消費者購買履歴データ)」の集計部に配属。その後カスタマーサクセスグループへ異動。年間契約企業様へのQPR利活用促進業務に加え、データ集計業務を担当する。購買データを軸に幅広い業務領域に従事する。

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