アイス市場は10年でどう変化した?「硬め食感」「アジアンテイスト」など流行りの特徴も解説します!

2025/4/15(火)

近年注目されている「アイスクリーム市場」。コロナ禍での巣ごもり需要もあり、市場規模はこの10年間で約1.4倍に成長しました。*1
アイスは夏!のイメージが強いですが、「冬のアイス」も年々定着してきており、夏期と冬期では、アイス種類の需要も異なるのも面白いところ!*2
各メーカーも特色をいかした商品を市場に投入しており、「ハード食感」や「アジアンテイスト」の台頭など、ちょっと気になるようなトレンド予測もされております。
本記事では、直近10年間の購買データから「アイスクリーム」市場のトレンドの変化について深掘りしていきます。

*1 *2 QPR100人あたり金額

※本レポートで使用するグラフはすべて購買履歴データQPRの分析データを基にしております

1. 直近10年の「アイスクリーム市場」の動向

アイスクリーム市場(以下、「アイス市場」と呼ぶ)は、過去10年間で大きな成長を遂げました。
特にコロナ禍以降では、市場規模が大きく拡大しました。以下ではその詳細を見ていきます。

※以下、特に記載がない場合グラフのデータは15-69歳のモニタを対象としています

1-1. 市場ボリュームの変化

以下のグラフは、アイス市場の市場ボリューム(100人あたり購入金額・数量)の10年間の推移を示しています。

【図1】アイス市場 市場ボリューム推移

2015年から2016年にかけて、アイス市場のボリュームは金額・数量共に大きく伸長しました。その後2019年までは一進一退の状況となりましたが、2020年のコロナ禍突入を皮切りに巣ごもり需要の影響もあり、再度、金額・数量共に大きく伸長しました。特に、金額ベースでは2024年まで右肩上がりでの伸長を継続中です。
2024年の購買数量は2015年との比率で118%と大きく増えていて、コロナ禍前と比較すると高い水準を維持しています。一方、2024年の購買金額は2015年と比べて141%と大きな伸長となりました。

1-2. 市場ボリュームの変化要因

はじめに、市場ボリューム(100人あたり購買金額)の伸長要因を要素に分解して確認します。

【図2】アイス市場インデックスツリー(100人あたり購入金額、購入率、購入者あたり購入金額)

アイス市場の100人あたり購入金額を「購入率(購入者数)」と「購入者あたり購入金額(購入者の平均購入金額)」の要素に分解すると、2015年と2024年の比較で「購入率」が105%、「購入者あたり購入金額」が134%とどちらも伸長しています。
この結果から、アイス市場の伸長は、「購入者あたり購入金額」の大幅な伸長によって市場ボリュームが拡大したと読み取れます。

次に、「購入者あたり購入金額」の要素も分解してみます。

【図3】アイス市場インデックスツリー(購入者あたり購入金額、購入者あたり購入回数、購入1回あたり購入金額)

「購入者あたり購入金額」を「購入者あたり購入回数」と「購入1回あたり購入金額」の要素に分解すると、「購入者あたり購入回数」が118%、「購入1回あたり購入金額」が114%といずれも大きく伸長しています。

以上の結果から、アイス市場の伸長は、「購入者あたりの購入金額」の大幅な増加によって起こったことがわかります。さらに「購入者あたり購入金額」は、「購入者あたり購入回数」及び「購入1回あたり購入金額」の両要素共に二桁成長したことがわかります。

1-3. アイスクリーム種類別の購買傾向(夏期・冬期)

アイスと言えば夏!のイメージが強いですが、「冬のアイス」も年々定着してきており、夏期(6月~8月)と冬期(12月~2月)では、どのような種類のアイスが人気なのか、需要を探ります。

アイスには下記の4つの種類があります。この分析では、以下のように種類を定義しています。

まず初めに、夏期と冬期のアイス市場の金額ボリュームを確認します。
(今回は、直近2024年の夏期と冬期を比較)

【図4】アイス市場インデックスツリー 夏期/冬期別(100人あたり購入金額、購入率、購入者あたり購入金額)

アイス市場は、夏期の市場ボリュームが圧倒的に大きくなることがわかります。

次に、アイス市場を100%とした際の「種類別」の購入金額シェア(購入金額の割合)を夏期と冬期に分解して確認します。

【図5】アイス種類別購入金額シェア(夏期/冬期)

購入金額シェアの一番大きい種類は夏期・冬期ともに「ラクトアイス」となっており、市場ボリュームの規模感は異なりますが金額シェアにおいては変わらない状況となっています。
冬期において、一番大きくシェアを伸ばすものは、「アイスクリーム」(夏期+12.0pt)となっており、次いで「アイスミルク」(夏期+7.9pt)となっています。冬場は乳脂肪分の高い種別のアイスが購入金額のシェアを大きく伸ばす季節となっています。

1-4. 「アイスクリーム」の顧客構造(冬期)

冬期は乳脂肪分の高い種類のアイスが多く購入されることが分かったため、冬期の「種類=アイスクリーム」(以下、「アイスクリーム」)の購入者の顧客構造をロイヤルティ別に分解して確認します。

<ロイヤルティ基準>
HI:アイス市場での総購入金額のうち、「アイスクリーム」の割合が75%以上を占める購入者
MED:アイス市場での総購入金額のうち、「アイスクリーム」の割合が50%以上75%未満の購入者
LOW:アイス市場での総購入金額のうち、「アイスクリーム」の割合が50%未満の購入者
LIGHT:アイス市場において、購入数量=2個以下の購入者(ロイヤルティの判定には含まない層)

【図6】「アイスクリーム」ロイヤルティ区分別人数構成比/金額構成比

冬期の「アイスクリーム」の購入者は、以下の2つのパターンの割合が大きくなっています。

1. ロイヤリティ=HIの購入金額比率が増加する

冬期のアイス購入者は、他の種類のアイスはあまり買わず、「アイスクリーム」ばかり購入する購入者の比率が高いことが確認できます。

2. LIGHT層の購入金額比率が増加する

この傾向から、冬期は「アイス市場」で2個以下しか購入しない人の割合が増加し、「アイスクリーム」の購入者の割合としては8.5%と比較的高い数値となり、購入数量の少ない層に買い支えられている市場だということができそうです。

2.注目の「食感」「テイスト」の動向

各メーカーも特色をいかした商品を市場に投入しており、「ハード食感」や「アジアンテイスト」の台頭など、ちょっと気になるようなトレンド予測もされております。
ここからは、【硬めの食感】【アジアンテイスト】の2つの特徴的な商品を元に、直近5年間での市場ボリュームの推移を確認していきます。

2-1. 市場の定義

マクロミルのQPR「標準マスター(データベース)」として提供している「アイスクリームマスター」をベースに、商品名に下記の名称が含まれる商品をピックアップし、カテゴリーを定義しております。

【硬めの食感】
アイス自体が固いものでは無く、チョコチップやナッツなど歯ごたえや食感を楽しめるアイスを想定し、商品名に下記が含まれるものをピックアップしています。

  • クランチ
  • チップ
  • パリパリ
  • ザクザク
  • バキバキ
  • クッキー

【アジアンテイスト】
アジアや南国風のフルーツを中心としたフレーバーを想定し、商品名に下記が含まれるものをピックアップしています。

  • 杏仁
  • マンゴー
  • スイカ、すいか
  • ライチ
  • ジャスミン
  • ウーロン
2-2. 市場ボリュームの変化

以下のグラフは、アイスクリーム【硬めの食感】【アジアンテイスト】商品の市場ボリューム(100人あたり購入金額)の5年間の推移を示しています。

【図7】【硬めの食感】【アジアンテイスト】市場ボリューム推移(2020年-2024年)

【硬めの食感】商品は、2020年から2021年にかけて「100人あたり購入金額」が大きく伸長しました。その後2023年までは若干の減少傾向となりましたが、2023年から2024年にかけて、再度大きく伸長しました。2024年の購買金額は2020年と比べて134%と大きな伸長となりました。

【アジアンテイスト】商品は、2020年をピークに「100人あたり購入金額」が減少しています。2023年から2024年にかけて増加していますが、2020年の「100人あたり購入金額」には戻っていない状況です。

2-3. 市場ボリューム変化の要因分析

大きく伸長している【硬めの食感】商品に焦点をあて、「100人あたり購買金額」の伸長要因を、要素に分解して確認します。

【図8】【硬めの食感】インデックスツリー(100人あたり購入金額、購入率、購入者あたり購入金額)

【硬めの食感】商品の市場の100人あたり購入金額を「購入率」と「購入者あたり購入金額」の要素に分解すると、2020年と2024年の比較で「購入率」が111%、「購入者あたり購入金額」が120%とどちらも伸長しています。結果、「100人あたり購入金額」は134%と大きく伸長しています。

上記のように、インデックスツリー形式では数値として確認することできますが、バブルチャート形式で確認することにより、視覚的に市場推移を確認することできます。

以下は、【硬めの食感】商品の「購入率」と「購入者あたり購入金額」の要素を、バブルチャートの散布図形式でプロットしたものになります。
横軸に「購入率(間口)」、縦軸に「購入者あたり購入金額(奥行)」を表しており、バブルの中心点の位置が各年度の間口、奥行を示しており、中心点を追うことで市場の変化を視覚的に捉えることが可能となります。

※今回は、視覚的に分かりやすいようにグラフの開始が「0」からになっていない点、注意ください

【図9】【硬めの食感】間口奥行きの推移

【硬めの食感】商品は、2020年から2021年にかけて、「購入率(間口)」、「購入者あたり購入金額(奥行)」共に増加したため、「100人あたり購入金額」が大きく伸長しました。
2022年2023年にかけては、「購入率」、「購入者あたり購入金額」共に減少しており、「100人あたり購入金額」も減少する事になりました。
2024年にかけては、一転「購入率」、「購入者あたり購入金額」共に増加しており、「100人あたり購入金額」も大きく伸長しました。結果、2024年の「100人あたり購入金額」は2020年と比べて134%と大きな伸長となりました。

3.まとめ

  • アイスクリーム市場は、過去10年間で大きな成長を遂げました(2015年と2024年では、購買金額ベースで141%と大きく伸長)。
    2015年から2016年にかけて、市場ボリュームは金額・数量共に大きく伸長、その後一進一退の状況を経て、2020年のコロナ禍突入を皮切りに再度大きく伸長しました。2024年まで右肩上がりでの伸長を継続中です。
  • 夏期・冬期の比較において、購入金額の比率が一番大きいものは「ラクトアイス」となっています。
    冬期において、一番大きく購入金額の比率を伸ばすものは、「アイスクリーム」(夏期+12.0pt)となっており、特に冬場は乳脂肪分の高いアイスが好まれることがわかります。
  • 注目の「食感」「テイスト」のトレンド動向としては、【硬めの食感】商品に大きな伸長が見られました。(2020年と2024年では、購買金額ベースで134%と大きく伸長)
    【硬めの食感】商品は、2020年から2021年にかけて、「購入率」、「購入者あたり購入金額」共に増加し、「100人あたり購入金額」が大きく伸長しました。
    2022年2023年にかけては、「購入率」、「購入者あたり購入金額」共に減少し、「100人あたり購入金額」も減少する事になりました。一転、2024年にかけては再度「購入率」、「購入者あたり購入金額」共に増加しており、「100人あたり購入金額」も大きく伸長しました。

・・・皆様のご参考情報としてご活用ください・・・
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著者の紹介

石田典弘

株式会社マクロミル 第2事業本部 アカウントマネジメント部 パネルデータビジネスユニット カスタマーサクセスグループ

石田 典弘

2003年株式会社インフォプラント入社、その後マクロミルに統合。カスタムリサーチの運用、QPR(消費者購買履歴データ)」の集計・メンテナンスを経験し、現カスタマーサクセスグループへ異動。年間契約企業様へのQPR利活用促進業務に加え、データ集計業務を担当する。購買データを軸に幅広い業務領域に従事する。

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