
冷凍野菜市場は、近年急速に成長しており、市場規模はこの10年間で約1.9倍に成長しました。*1
その背景として、コロナ禍の巣ごもり期間を経て冷凍野菜の保存性や簡便性の高さが評価されたことや、頻発する天候不良や自然災害の中で生の野菜が手に入りにくい昨今の状況などが挙げられます。また、冷凍加工技術の進化によって冷凍野菜の品質が年々向上していることも需要を後押ししていると考えられます。
本記事では、冷凍野菜市場の購買データ分析を通じて、過去10年間の市場規模の変化、素材別のシェアの変化、そして購入者属性の分析に焦点を当てます。
*1 QPR100人あたり金額
- 1. 直近10年の「冷凍野菜市場」の動向
- 1-1. 市場規模の伸長とその要因
- 1-2. 素材別シェアの変化
- 1-3. 購入業態の変化
- 2. 冷凍野菜購入者の属性分析
- 2-1. コロナ禍前後でのライフステージ別購入状況
- 2-2. 子供の年齢別の素材購入傾向
- 2-3. 冷凍野菜購入者に購入されやすい食品カテゴリ
- 3. まとめ
※本レポートで使用するグラフはすべて購買履歴データQPRの分析データを基にしております
※本レポートではJICFS「冷凍農産素材」に分類されている商品のうち、果物などを除いた野菜を素材とした商品を「冷凍野菜」として定義します
1. 直近10年の「冷凍野菜市場」の動向
冷凍野菜市場は、過去10年間で大きな変化を遂げました。特にコロナ禍をきっかけに、冷凍野菜の需要は急増しました。以下ではその詳細を見ていきます。
※以下、特に記載がない場合グラフのデータは15-69歳のモニタを対象としています
1-1. 市場規模の伸長とその要因
次のグラフは、冷凍野菜の市場ボリューム(100人あたり購入金額・数量)の10年間の推移を示しています。

2020年にコロナ禍が本格化すると、冷凍野菜の市場ボリュームは金額・数量共に大きく伸長しました。購入数量は、コロナ禍の終息により需要が落ち着いたためか2022年をピークにやや縮小しましたが、2024年の購買数量は2015年との比率で137%と大きく増えていて、コロナ禍前と比較すると高い水準です。一方、購入金額は引き続き増加し、2024年の購買金額は2015年と比べて186%となりました。
次に、購買金額の伸長要因を詳しく見ていきます。

100人あたり購入金額を「購入率(購入者数)」と「購入者あたり購入金額(購入者の平均購入金額)」の要素に分けると、2015年と2024年の比較で購入率が115%、購入者あたり購入金額が162%とどちらも大きく伸長しています。
次に、購入者あたり購入金額の要素も分解してみます。
購入者あたり購入金額を「商品の平均金額」と「購入者あたり購入数量」の要素に分けると、平均金額が135%、購入者あたり購入数量が119%といずれも大きく伸長しています。

このように、冷凍野菜のカテゴリの伸長は、購入者の増加と、購入者あたりの購入金額の増加の両方によって起こったことがわかります。さらに購入者あたり購入金額の伸長には、平均金額と購入者あたり数量の伸長の両方により起こったことがわかります。特に、平均価格の伸長は、2022年終盤からの食料品全般の値上げも影響していると考えられます。
1-2. 冷凍野菜の素材別のシェアの変化
次に、冷凍野菜の主要な素材別に10年間の金額シェアの変化を見ていきます。

2015年では、「枝豆」と「ポテト」が冷凍野菜の主流でした。おつまみ、おやつとしての需要が大きかったと考えられます。2018年以降「ブロッコリー」が大きく伸長し、2024年には最も購入金額の高い素材となりました。
また、「ほうれん草」も右肩上がりで伸び続け、2015年と2024年のシェアを比較すると、ブロッコリー以外では唯一シェアを落としていない素材です。
時短調理の普及や生野菜の価格高騰を受けて、料理の素材として使える冷凍野菜の需要が増加していることが推測されます。
一方、2020年までトップであった「枝豆」は、2021年以降シェアを落としています(平均価格の伸長により購入金額は維持傾向ですが、購入数量は減少の傾向です)。2021年のビールの購入容量縮小のタイミングに類似しており、消費者のビール離れに連動して冷凍枝豆の消費も減少しているという可能性も考えられます。

1-3. 10年間の購入業態の変化
冷凍野菜の購入業態も10年間で大きく変化しています。次のグラフは、2015年と2024年の購入金額の業態構成比を食品・飲料全体と比較したグラフです。

冷凍野菜の購入金額は、2015年ではその他購入先(主に個人宅配・共同購入)が22.4%を占めていましたが、2024年では11.6%に減少しました。その分、スーパーのシェアが増え、2015年の65.0%とから2024年では70.0%に伸びました。
また、ドラッグストアも4.7%から9.7%に伸長しています。スーパーやドラッグストアでの冷凍野菜の取り扱いが増え、消費者の購入機会が広がっていると考えられます。
2.冷凍野菜購入者の属性分析
次に、冷凍野菜の市場が大きく変化したコロナ禍前後の比較で購入者層の変化について分析します。特に、女性子育て層や子供の年齢別の購入傾向に注目していきます。
※以下、特に記載がない場合グラフのデータは15-79歳のモニタを対象としています
2-1. コロナ禍前後でのライフステージ別購入状況
次のグラフでは、購入者の属性(ライフステージ)別の100人あたり購入金額をコロナ禍前の2019年と2024年とで比較しています。

2024年で購入金額が最も高いのは、女性子育て層(DEWKS/非就業既婚子あり)です。コロナ禍以前の2019年でも金額が高かったものの、2024年にはさらに大きく伸長しています。
他のいずれの購入者層でも購入金額は伸長しており、幅広い消費者層に浸透していることがうかがえます。
2-2. 子供の年齢別の素材購入傾向
子育て層での冷凍野菜の需要の高さが見えてきましたので、次は子供の年齢によって購入の傾向に差があるかを確認しています。
次のグラフは、末子年齢別(モニタの同居家族内で最も年齢の低い子供の年齢別)にモニタを分けた際の、素材別の100人当たり購入金額を示しています。

小学校高学年までの子供がいる家庭では、冷凍野菜TOTALの購入金額が比較的高い傾向にあります。特に「ポテト」は、未就学児から高校生の年齢までの子供のいる家庭で、他の素材よりも購入金額が高く、子供に人気があることがうかがえます。
一方で、乳幼児のいる家庭では、「ブロッコリー」や「ほうれん草」の購入金額が比較的高く、離乳食の素材としての需要があると考えられます。
2-3. 冷凍野菜購入者に購入されやすい食品カテゴリ
最後に、冷凍野菜購入者に買われやすい「食品・飲料」カテゴリを確認していきます(「食品・飲料」のカテゴリ別購入金額を全モニタと比較)。
※JICFS細分類カテゴリの中で、全モニタの金額シェアが0.1%以上あるカテゴリを対象としています

*冷凍農産素材:冷凍野菜の他に冷凍果実を含む
*冷凍調理:中華まん、ホットケーキ、和菓子などの半調理品
*その他冷凍食品:冷凍の生地、パン、パイ、デザート類、ピザクラフト等
*その他調味料:中華以外の世界の調味料、ウスターをベースとしない汎用的なソース、味付け用の合わせ調味料等
*その他調理品:調味料に一品具材を追加するだけで調理が完成する商品や、味付け乾燥のもので料理をする時に簡単に用いることのできる具材、トッピング等
*プレミックス:(小麦粉に塩や調味料を加えたもの)、クレープの素、加糖ミックス(ホットケーキの素)、お好み焼きの素等
冷凍野菜購入者の「食品・飲料」カテゴリの100人あたり購入金額を全モニタと比較すると、上位15カテゴリ中8カテゴリが「冷凍食品」関連のカテゴリでした。
また、「ベビーフード」も金額は大きくないものの、比率の差では上位に挙がっています。その他には、「野菜缶詰」、「プレミックス」、「ソーセージ・ベーコン」など、簡便性の高い食材や、調理のしやすい食材などが上位に挙がりました。
このことから、冷凍野菜の消費者は、野菜以外にも他の冷凍素材や料理を簡便にする食材を使用しやすい傾向があり、また一定数の消費者が離乳食にベビーフードや冷凍素材を活用していることが予測されます。
3.まとめ
冷凍野菜市場は、過去10年間で大きな成長を遂げています。冷凍技術の向上により商品の品質が向上したこと、社会情勢や自然災害によって生の野菜の供給が不安定になっていること、また昨今のタイパ主義の高まりによる時短・簡便調理の需要にマッチしたこと等がその背景として考えられます。
特に、ブロッコリーやほうれん草などの料理素材としての冷凍野菜は、時短調理や健康志向の高まりによってより需要が増加すると見込まれます。野菜の価格上昇が続く中、冷凍野菜の利便性、多様性、安定性が市場の成長を支えることが期待されます。
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著者の紹介

株式会社マクロミル 第2事業本部 アカウントマネジメント部 パネルデータビジネスユニット カスタマーサクセスグループ
落合 優子
中途入社後、「QPR(消費者購買履歴データ)」の集計部に配属。その後カスタマーサクセスグループへ異動。年間契約企業様へのQPR利活用促進業務に加え、データ集計業務を担当する。購買データを軸に幅広い業務領域に従事する。
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