市場占有率とは、市場における自社のシェアがわかる指標です。自社の商品やサービスだけでなく、競合とのポジションを把握でき、分析した指標をもとにマーケティング戦略を立てる際に役立ちます。この記事では、市場占有率の種類や計算方法、目標値、活用する場面などを解説しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
市場占有率とは
市場占有率とは、商品やサービスがもつ特定の市場における割合のことです。別名「マーケットシェア」と呼ばれており、市場に参入するかどうかの指標として活用されます。また、市場における自社の立ち位置を知る際の指標にも活用が可能です。市場占有率を目標値として、マーケティングが実施されます。
市場占有率の種類と計算方法
市場占有率の計算には、2つの方法があります。ここでは、市場占有率の種類と計算方法を解説します。
絶対的市場占有率
絶対的市場占有率とは、特定の市場における商品やサービスの売上の割合を指します。計算方法は、以下のとおりです。
- 絶対的市場占有率=自社の売り上げ÷市場全体の売り上げ
絶対的市場占有率を割り出す際は、対象とする市場を定義する必要があります。また、売上金額と売上個数で計算すると、占有率の割合が異なるため、売上の定義も決めましょう。
相対的市場占有率
相対的市場占有率とは、他社と比較したうえで自社の市場占有率を示すものです。企業同士のシェアを比較する際に活用されます。計算方法は、以下のとおりです。
- 相対的市場占有率=自社の絶対的市場占有率÷競合他社の絶対的市場占有率
自社の絶対的市場占有率10%に対して他社が40%だった場合、相対的市場占有率は25%となります。
市場占有率の目安となる目標値
市場の目標値には、さまざまな指標があります。ここでは、市場占有率の目安となる目標値を解説します。
独占的市場
独占的市場とは、商品やサービスが市場のシェアを独占している状態です。市場占有率が73.9%以上の場合を指します。シェアを上位の2社が占めている場合は「2大寡占」といい、上位3社で占める場合は「3大寡占」と呼びます。
相対的安定市場
相対的安定市場とは、3社以上が市場のシェアを競っている状態です。別名「40%目標」と呼ばれており、市場のシェアを41.7%以上獲得している場合は、安定した地位にあるといえます。
市場影響
市場影響とは、市場を牽引する企業のもつ影響力です。シェアが26.1%を占めている場合は、業界において強い影響をもつといえます。しかし、業界1位のシェアが26.1%前後の場合は、2位以下の企業に逆転される可能性が高くなります。
並列的競争
並列的競争とは、複数の企業がシェアをもち拮抗している状態です。業界トップのシェアが19.3%の場合は、競い合っている状態といえます。競争の激しい業界では、シェア19.3%が目標として設定されています。
市場認知
市場認知とは、市場における商品やサービスの認知度です。市場認知は、10.9%が市場に参入する際の影響力の基準値として用いられています。シェアが基準値を下回る場合は、影響力が少ないと判断されます。
市場存在
市場存在とは、業界に参入する際の目標値です。他人に名前をいわれて思い出せる状態で、業界での競争についていくには、最低でもシェア6.8%が目標値とされます。目標値を上回らない場合は、市場からの撤退を視野に入れる必要があります。
市場を占有するメリット・デメリット
市場を占有すると優位性を保てる反面、取引で警戒される存在となります。ここでは、市場を占有するメリット・デメリットを解説します。
市場を占有するメリット
市場を占有するメリットは、市場における優位性の確保です。業界の牽引役として存在できるようになり、さまざまな取引を有利に進められます。マーケティングの施策を実行する際も、大きな効果を期待できるでしょう。市場規模の大きい業界の場合、売上の拡大や生産コストの削減などのメリットが得られます。
市場を占有するデメリット
市場を占有している企業は、中小企業との取引で警戒されやすくなります。市場シェアの大きさによって、公平な取引にならないことが懸念されるためです。また、イノベーションによって優位性が保てなくなるリスクがあり、市場が変化する際に顧客のニーズに対応できなくなる可能性があります。
市場占有率を活用する場面
市場占有率は、市場の参入時や自社の立ち位置を確認する際に有効な指標です。ここでは、市場占有率を活用する場面を解説します。
新たな市場に参入する
市場占有率を把握すると、競合他社やシェアをもとに市場への参入を検討できます。たとえば、競合他社が独占状態の場合と、拮抗している場合ではアプローチの方法を変えることが可能です。自社の状況を把握すると、新規市場への戦略を立てられるだけでなく、自社が参入するべきかどうかの判断もできます。
自社のポジションを把握する
自社の立ち位置がわかると、競合を分析したうえで定量的な目標値を設定できます。自社のポジションを他社と比較して把握できるため、商品やサービスがもつ影響力を測りやすくなります。また、マーケットシェアにおける特徴の細かい分析ができるため、市場におけるポジション取りの戦略を立てることも可能です。
ランチェスター戦略の注意点
市場占有率をもとにランチェスター戦略を立てることは、中小企業にとって有効な戦略です。ここでは、ランチェスター戦略の注意点を解説します。
ランチェスター戦略とは
ランチェスター戦略とは、ビジネスにおいて中小企業が大企業に勝つための戦略です。自社の得意分野を特化させることで、大企業とは異なる方法で市場シェアを獲得します。ランチェスター戦略には、第一法則・第二法則があります。
第一法則は、1対1を想定した戦略です。第二法則は、1対複数の相手を想定してシェアを獲得する戦略です。ランチェスター戦略には、自社の業界内でのシェアを7段階に分けて把握するマーケットシェア理論もあります。
ランチェスター戦略の注意点
ランチェスター戦略は弱者が強者にも勝てる可能性を高めますが、万能ではありません。経営の知識やノウハウをもとに、適切な戦略を立てることが必要です。市場においては、自社の苦手な分野で戦うことは間違った戦略です。ランチェスター戦略を立てる際は、市場を分析したうえで、自社の立ち位置を把握しましょう。
市場占有率の分析方法
市場占有率を分析する際は、PPM分析を活用することをおすすめします。ここでは、PPM分析について解説します。
PPM分析とは
PPM分析は、自社の商品やサービス、事業活動などを分析する際に活用される手法です。分類は、以下の4つに分かれます。
- 花形:市場成長率と市場占有率のどちらも高い分野
- 金のなる木:市場成長率が低く、市場占有率が高い分野
- 問題児:市場成長率が高く、市場占有率が低い分野
- 負け犬:市場成長率と市場占有率のどちらも低い分野
PPM分析は、以下の計算式を活用して、自社の立ち位置を把握できます。
- 市場成長率=本年度の市場規模÷昨年度の市場規模
- 市場占有率=事業部門の売上高÷市場規模
PPM分析のメリット・デメリット
PPM分析を活用すると、自社と競合のポジションを把握できます。市場における立ち位置がわかると、資源を投資する際の判断として活用できるため、コスト削減や将来を考慮して経営の戦略を立てやすくなります。
ただし、PPM分析は財務指標のみを使って分析する方法であるため、事業全体を俯瞰することに適していません。PPM分析をする際は、多方面からの可能性を考慮して、さまざまな視点から分析をすることが重要です。
場占有率の調査を成功させるポイント
市場占有率の調査は、将来の予測を含むマーケティングリサーチを行うことで成功しやすくなります。市場は常に変化しており、社会情勢や経済などの変化によって、シェアが左右する可能性があるためです。市場調査を効率的に実施する際は、市場調査のプロのノウハウを活用することをおすすめします。
まとめ
市場占有率は、市場における自社がもつシェアです。市場占有率を分析すると、新規参入時の戦略や既存事業の撤退など、さまざまな指標として活用できます。自社のマーケティングを実施する際は、市場占有率をもとに戦略を決めることが重要です。
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