購買データとは?基礎知識からPOS/ID-POSなどの種類、使い分けも説明【購買データの基礎知識 第1回】

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リサーチャーコラム

2025/4/22(火)

購買データは、企業が顧客の購買行動を理解し、マーケティング戦略を最適化するために不可欠な情報です。本連載では、データ分析初心者や購買データ分析に興味があるがハードルを感じている方々に向けて、購買データとはどんなデータか、意思決定にどのように役立てられるのか、わかりやすく解説していきます。
第1回の本記事では、購買データの種類と特徴、それぞれの使い分けについて説明します。

1. 購買・販売データの種類について

購買データとは、お客様(個人)が「買った」を示すデータであり、販売データは商品が「売れた」を示すデータです。まずは、いくつかの代表的なデータの種類について説明します。

【図1】販売・購買データの種類(出典:購買データ分析基礎セミナー)
【図2】販売・購買データの種類と例(出典:購買データ分析基礎セミナー)

購買・販売データは、大別して事業会社に紐づくデータ店舗に紐づくデータ個人に紐づくデータに分けることができます。

1-1. 事業会社に紐づくデータ

①【事業会社】自社の売上データ

事業会社各社が自社で管理している売上記録や販売データです。事業会社内部で、業績評価や動向確認に活用されます。

1-2. 小売店に紐づくデータ

②【小売店】POSデータ

小売店各社の店舗のレジ通過データです。スーパーマーケットの店頭のレジでスキャンされたJANコードに紐づく商品の販売情報がこれに該当します。

③【小売店】ID-POSデータ

POSデータに小売店のポイントカードなどで登録された購入者情報が紐づいたデータです。会計時に購入者が提示する小売店のポイントカードなどで把握されている購入者情報が、店舗のレジ通過商品情報に紐づいて活用されます。
店舗に紐づくデータであるPOS、ID-POSデータは、さらに小売チェーンが自社データを提供するものと、データ販売会社が複数チェーンのデータを統合して提供するものに分けられます。

1-3. 個人に紐づくデータ

④【個人】ポイント/決済サービス履歴データ

購入時に店頭でお客様が示す小売店に紐づかないポイントサービス(楽天ポイントやVポイント等)や、決済手段(QRコード決済やクレジットカード等)から取得できるデータです。購入者情報が紐づく購買履歴データとなります。

⑤【個人】消費者購買履歴データ

リサーチ会社が収集する個人の購買履歴データです。基本的にショッパー(購入者)個人が自身の購買履歴を登録する仕組みです。JANスキャン型(マクロミル「QPR」等)やレシート読み取り型、家計簿入力型などがあります。

2. 各データの特性・市場の捉え方の視点

このように、一口に販売データ・購買データと言っても、その中身は様々です。
それでは、それぞれのデータが何を市場として捉えているのか、データにはどのような特性があるのかを見ていきます。

①【事業会社】自社の売上データ

まず、事業会社にとって最も身近な販売情報である「①自社の売上データ」についてです。自社の販売情報を正確に把握することができますが、このデータでは他社の商品がどう売れているのかはわかりません。

②【小売店】POSデータ ③【小売店】ID-POSデータ

POSデータ、ID-POSデータは、「お店の販売状況」を示すデータです。これらにはさらに小売チェーンが自社データを提供するものと、データ販売会社が複数チェーンのデータを統合して提供するものとに分けることができます。

【図3】店頭POS/ID-POSの種類(出典:購買データ分析基礎セミナー)

特定の小売チェーンが提供するデータはデータ提供チェーンが明らかなため、その小売内での自社の位置づけやカテゴリの動向を正確に把握することが可能です。また、チェーンの特徴をおおよそ把握することもできます。

データ販売会社の提供データはチェーン毎の偏りが相殺されて、より市場全体に近い傾向や変化を把握するのに適しています。しかし、一方で、提供した小売店の情報が秘匿されていることが多く、チェーンの分析はできないことが一般的です。
また、ID-POSデータの場合、購入者の情報が紐づいているため、個別のチェーンでのリピート購買は捉えられますが、チェーンをまたいだIDの統合はされていないため(2024年時点)、異なるチェーンで購買された場合には同一人物と判定できず、リピートと捉えられません。

④ポイント/決済サービス履歴データ、⑤消費者購買履歴データ

これらは、「消費者、ショッパーの購買状況」を示すデータです。

【図4】個人に紐づくデータの特徴(出典:購買データ分析基礎セミナー)

④ポイント/決済サービス履歴データは、クレジットカードやポイントカードの利用に基づいて収集されます。そのため、会員特性(例えば、オトク好き、面倒くさがり、そのお店での買い物が多いといった個人の特徴)や、データの網羅性(ショッパー個人があらゆる店頭でもれなくその決済手段やポイントカードを提示してくれるか等)に歪みが生じる可能性があります。
しかし、利用者数や店舗カバー率が高い場合、そのデータの有用性は高まります。

⑤消費者購買履歴データは、「市場を反映すること」を目指してデータが収集されており、買い物の仕方に影響があると思われる属性(例えば、性年齢、ライフステージ、居住地、年齢など)の視点で調整することで、「誰の情報を収集しているか」というモニタ特性による歪みは発生しにくいデータです。
一方で、調査協力モニタが指示通りにすべての買い物情報を登録してくれるのかという、取得データの歪みが発しえるため、なかなか完全に市場を反映するというのは難しいですが、市場性を反映するという意味合いでは強みがあります。

3. 各データでわかること

これらのデータの特性を踏まえて、それぞれのデータで何がわかるのかを見ていきましょう。

【図5】各データでわかること(出典:購買データ分析基礎セミナー)

①【事業会社】自社の売り上げデータ

・自社の「何が」「いくらで」売れたかを把握することができます。
・他社の商品がどう売れているのかはわかりません。

②【小売店】POSデータ

・メーカーを限定せずに「何が」「いくつ」「いくらで」売れたのかを把握できます。
・「誰が」買ったのかはわかりません。

③【小売店】ID-POSデータ

・POSの情報に加えて、「誰が」買ったのか、そのチェーンで何度目の購入なのかがわかります。
・複数チェーンを統合したデータであっても、チェーンをまたいでのIDの統合はされません。そのため、1人の購買者が複数のチェーンで購買した場合は、同一購買者の購買とは判定できず、併買状況などの分析はできません。

④【個人】ポイント/決済サービス履歴データ⑤【個人】消費者購買履歴データ

・「何が」「いくつ」「いくらで」「どこで」「誰が」買ったのかがわかります。また、買い物行動以外の情報もIDに紐づいていることが多く、ID-POSよりも詳しく「誰が」を捉えることも可能です。

4.データの特性に応じた使い分け

ここまで見てきたように、それぞれのデータは特性が強くあり、用途の向き不向きがあります。それぞれの使い分けについて見ていきます。

【図6】データ特性に応じた使い分け(出典:購買データ分析基礎セミナー)

(1)市場推計

データ販売会社が提供する複数チェーンを統合したPOSデータの中でも市場推計データとして提供されているサービスのデータが、市場の販売動向の全体感をつかむのには最適です。データ販売会社が協力を得られた一部の小売店の傾向のみが反映されているため、確実に正しい情報とは言いきれませんが、データ販売会社は市場反映を目指した調整を行っており、一定程度の信頼性のある情報と言えます。

(2)チェーンの理解や施策の効果検証

チェーンの理解や施策の効果検証には、該当の小売チェーン提供のPOSデータやID-POSデータが最適です。小売チェーン内での販売動向を詳細に分析することができます。

(3)購入者の理解・リピート購入の理解

ショッパーの市場反映が目指されている消費者購買履歴データが最適です。これにより、顧客の購買行動やリピート購入の傾向を詳細に把握することができます。

(4)変化のトラッキング

変化のトラッキングは、取得データが何に基づいているかという前提の範囲内で、多くのデータサービスで有用です。多くのデータは市場を完全に反映した推計が難しいことから、絶対的な数値よりも同一データ内での「変化」に注目した分析の方が、活用頻度が高いです。

今回は、購買データ・販売データの種類とその特性、使いわけについてご説明しました。まだデータ分析になじみのない方でも何となく、データのイメージがつかめたのではないでしょうか。
第2回目から第4回目では、今回ご紹介した⑤【個人】消費者購買履歴データについて、マクロミルが提供するQPRを例として分析の基礎をご説明していきます。データ分析初心者の方に基本的な内容をご説明しますので、是非ご覧ください。

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著者の紹介

落合優子

株式会社マクロミル 第2事業本部 アカウントマネジメント部 パネルデータビジネスユニット カスタマーサクセスグループ

落合 優子

中途入社後、「QPR(消費者購買履歴データ)」の集計部に配属。その後カスタマーサクセスグループへ異動。年間契約企業様へのQPR利活用促進業務に加え、データ集計業務を担当する。購買データを軸に幅広い業務領域に従事する。

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