【中国編】各世代の価値観に影響を与えたテクノロジーの背景とは

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リサーチャーコラム

2022/7/6(水)

アジアのターゲット市場で消費者調査を行うと、「なぜこういった傾向がみられるのか」と、スコアの解釈への悩みに直面することがあります。その裏には、各国の消費者意識に影響をあたえる「社会背景」「文化背景」等が必ず存在し、海外での調査データの分析で重要なポイントとなります。

そこで当社は、アジアにおけるマーケティング戦略や海外調査をご担当される方が調査企画を策案する際、有用な基礎情報源として活用いただける『アジア4カ国(中国・インドネシア・タイ・ベトナム)の生活者価値観レポート』をまとめました。本連載は、各国の有識者の知見に基づいた仮説と分析を、マクロミルが独自に実施した自主調査で検証するというスタイルでご紹介していきます。

今回は、中国の以下のような各世代に影響を与えた「テクノロジーの背景」について解説します。

  • 第1世代「Gen1」 50后(1950~59年生まれ)
  • 第2世代「Gen2」 60后・70后(1960~79年生まれ)
  • 第3世代「Gen3」 千禧一代(中国版ミレニアル世代 1980~1994年生まれ)
  • 第4世代「Gen4」 95后(1995年以降生まれ)

モバイルファーストな消費者行動

モバイルファーストによる人々の大規模なインタラクションの実現

中国のSNS市場は世界最大であり、それぞれのブランドが消費者と最適なコミュニケーションをとるには絶好なスペースです。中国のアクティブなSNSユーザー数は、なんと10億人を超えています。アメリカでも2億人であり、これは驚くべき数字です。中国人にとってSNSは、日々の生活に必要不可欠な存在になりました。自分たちの気持ちや、共有したい出来事、意見などを投稿したり、友人や世界の知らなかったことを発見したり、エンターテインメントとして楽しんだり、他の人が書いた商品やサービスのレビューや体験談を読んだり、さらにはそのSNSプラットフォーム上で直接ショッピングをしたりしています。

オンラインでのショッピングにフォーカスすると、2019年には、小売販売のオンライン売上高が1.5兆ドルと言われていました。これは、中国の小売販売の総売上高の1/4にあたります。その後、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、オンライン売上比率はさらに上昇したと考えられます。

世界の最も熱心なスマホ・SNSユーザーとも言える、中国の8.5億人を超えるデジタル消費者は、世界市場のマーケターにとっては、宝の山です。モバイルファーストな消費者行動、革新的なソーシャルコマースの手段、信用のあるデジタル決済のインフラ、これら全てが中国の消費者を突き動かしています。世界中の小売業者とブランドにとって、中国の市場は今や注目すべき参入市場であり、勝ち取らなくてはならない市場とも言えます。この小売市場はすでに世界最大規模を誇っており、4.1億人以上いる中国のミレニアル世代の購買力が、未来の成長を間違いなく支えていくでしょう。

テクノロジーに関連する意識・行動の違い

テクノロジーに保守的なGen1。ネット初体験はメッセンジャーアプリ?

人格形成期にテクノロジーの影響を受けなかったGen1はテクノロジーに関しては保守的で、新しいテクノロジーを探して、流行に乗る行動はしません。欧米のシニア層は段階的なテクノロジー経験(有線でのテレコミュニケーション→インターネット→モバイル)を経ていますが、中国のこの世代にとっては、急激にモバイルテクノロジーの波が押し寄せてきたため、欧米のベビーブーマーとは異なるテクノロジーへの接触をしています。例えば、初めてのインターネット経験が、スマートフォンでの「WeChat」(中国のインスタントメッセンジャーアプリ)といったケースも少なくありません。

WeChatユーザーは、2018年に10.8億人を突破しました。最近の中国では、WeChat無しにはどこにも行けません。シルバー世代でさえも、20%がこのアプリを使用しています。面白いことに、WeChatの高齢ユーザーが、実はモーメンツ機能を最も利用しているのです。
※文章や写真を他のユーザーと共有できるWeChatの機能

Gen1はネット情報収集も保守的

Gen1世代のインターネット(主にモバイル)からの情報収集傾向について定量調査で聴取したところ、健康や買い物など、自分の身の回りの関心事が多いようです。ビジネスや趣味に関する新しい情報を取得するといった行動は、若い世代に比較すると活用度が低いようです。

SNSやその他コミュニケーションツールで収集・投稿する情報(世代別)

情報格差が存在するGen2

Gen2は、新しいテクノロジーアイディアやコンセプトを受け入れることを、難しいと感じている世代です(エリアによって差はあります)。従来の主流メディア(テレビ・紙媒体)を情報源とし、そこからの影響が高い世代です。

この世代は、教育改革(1979年)によって高等教育が受けられるようになった世代であるため、都市部の教育レベルが高い層のモバイルリテラシーは申し分なく高く、SNSやEコマースへの受容性が高いといった、情報格差が存在する世代です。

多忙なGen3。買い物はオンライン

この世代はデジタルネイティブではないものの、モバイルリテラシーは十分高く、SNSの浸透率も高いことが特徴です。生活の中で複数のアプリを使いこなして生活しています。

また、オンラインショッピングに対しての抵抗感はなく、その活用に関しては非常に長けています。実際に、2016年のデータによると、オンライン購入者の20%はミレニアル世代で、この世代はとても忙しいので、オフラインショッピング(実店舗での購買)の時間をあまりとることができないという実情もあります。

商品を購入する際の重視点の違い

定量調査で、買い物をする際に重視する点を尋ねました。Gen1~2世代は、機能や価格、原料・成分を重視して買うのに対し、Eコマースを使いこなしているGen3~4世代は、ネット上のレビューを重視して買う傾向が見られます。自分の中での合理的な判断基準のために、レビュー情報を活用し、客観的な意見も比較しながら買い物をしています。

3C製品(家電・PC・スマホなど)の購買重視点(世代別)

日用品・消費財(食品・飲料・化粧品・衣料を含む)の購買重視点(世代別)

Gen4

SNSとモバイルテクノロジーの時代に生き、デジタルネイティブであるこの世代は、デジタルメディアを非常に上手に使いこなします。また、量より高品質を選び、生活の質の向上を求める世代です。

プロモーションやグループ購入は上手に利用し、また、商品やサービスのレビューも頻繁に目を通したり、WeChatの様々なグループに所属したりして、お得なショッピング情報の収集に余念がありません。

そして、多種多様なメディアにアクセスできるようになるにつれて、自分のスタイルを主張したいと考えているようになりました。大手の有名ブランドにはそれほど興味はなく、社会のメインストリームから外れようとする傾向もあります。

中国におけるテクノロジーとこれからのテクノロジー環境

メイド・イン・チャイナ2025

以前の中国製商品は、安くて低品質の代名詞のようなものでしたが、これが劇的に変化しました。2015年に中国政府は、西洋諸国の高度なハイテク技術との差を縮め、中国が輸入技術に依存する傾向を軽減することを目的とした国家戦略「メイド・イン・チャイナ2025」を発表しました (2019年、サウスチャイナ・モーニング・ポストより/香港の英字新聞)。

中国政府による国家戦略によって、中国人は、自国のことを今まで以上に誇りに思い、海外製品よりも国内製品を選ぶようになるでしょう。人々のナショナリズム的な傾向は強まり、自国とのつながりも深くなることが予想されます。実際に、海外留学をしていた学生の多くも、中国に戻ってきています。

5Gそして・・・

2019年、香港の英字新聞であるサウスチャイナ・モーニング・ポストは、「2020年に次世代のモバイル技術を反映するネットワークサービスの提供が一般向けに開始される。この普及が、人工知能(AI)、モノのインターネット(IoT)、拡張現実/仮想現実(AR/VR)技術を搭載した個人消費者や産業用途向けのアプリケーションを、幅広くサポートするようになる」と報じました。当時、それらは「今そこにある未来」でしたが、2022年の現在では、これらの技術は既に一般化し、さらに次のメタバース技術なども一般化し始めています。

以上が、中国の有識者の意見を交えた、各世代に影響を与えた「テクノロジーの背景」です。本連載では、研究で得られたインサイトをベースに、購買行動、テクノロジーの影響、家族とのかかわり、社会からの影響などをテーマに調査を行い、定量的にその内容を検証していきます。

次回は、「各世代の価値観に影響を与えたテクノロジーの背景とは【インドネシア編】」をご紹介します。

定量調査の調査概要
調査地域: 北京(n=206)、上海(n=220)、広州(n=190)、成都(n=184)の各都市居住者
世代別回答者数: Gen1(n=150)、Gen2(n=225)、Gen3(n=225)、Gen4(n=200)
※各都市および世代で男女が概ね半数ずつになるよう割付
調査方法: インターネット調査
調査時期: 2019年12月

著者の紹介

北島尚

北島 尚

株式会社マクロミル グローバルリサーチ本部 海外事業開発ディレクター
米国フォーダム大学大学院修士課程修了。LVMHグループにてブランドマネージャー、PwCコンサルティングにて国内外の企業のマーケティング戦略プロジェクトに参画。その後、オグルヴィ&メイザーにて日本企業の海外ブランディングおよびマーケティングを支援するエキスポートプラクティスを起ち上げ、ジェネラルマネージャーとしてチームをけん引。現在は、マクロミルにて日本企業の海外市場における調査と戦略サポートを務める。

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