「インタビュー結果にバラつきがありすぎて比較できない」
「モデレーターごとの聞き方の違いで、結果が変わってしまった」
「調査のたびに質問の構成が違っていて、分析が難しい」
こうした課題に直面した経験があるなら、「構造化インタビュー(Structured Interview)」という手法は有力な選択肢となります。
構造化インタビューとは、あらかじめ決められた質問内容・順序に従って実施される、統一性と再現性を重視したインタビュー形式です。調査対象者が誰であっても、同じ質問が同じ順序で聞かれるため、得られる回答の比較や定量的な分析がしやすくなります。
この記事では、構造化インタビューの定義、目的、特徴、非構造化インタビューとの違い、設計と実施のポイント、よくある失敗までを、調査設計の視点から解説していきます。
- 構造化インタビューとは何か?その定義と基本構造
- 構造化と非構造化の違い:質問の自由度と再現性のトレードオフ
- 構造化インタビューのメリットとデメリット
- 構造化インタビューの設計手順とポイント
- よくある失敗とその対処法
- まとめ:構造化インタビューは“再現可能な対話”を設計する技術
構造化インタビューとは何か?その定義と基本構造
構造化インタビューとは、事前に作成された「統一された質問スクリプト」に従って、すべての調査対象者に同じ質問を同じ順序で行うインタビュー手法です。
この手法は、主に以下の2つの目的で活用されます。
- 複数の対象者から“比較可能なデータ”を集めたいとき
- モデレーターの主観やスキル差による“データのゆらぎ”を抑えたいとき
構造化インタビューは、もともと心理学・人事評価・選考プロセスなどでよく使われていましたが、近年ではユーザーリサーチやUX評価、マーケティングリサーチにおいてもその有効性が再評価されています。
構造化と非構造化の違い:質問の自由度と再現性のトレードオフ
構造化インタビューは、しばしば「非構造化インタビュー」や「半構造化インタビュー」と比較されます。どの形式が優れているというよりも、目的や調査対象に応じて適切なスタイルを選択することが重要です。
| 項目 | 構造化インタビュー | 半構造化インタビュー | 非構造化インタビュー |
|---|---|---|---|
| 質問の事前設計 | 完全に固定 | 大枠あり、自由に展開可能 | なし(自由対話) |
| 会話の流れ | 決まっている | 柔軟に変更可 | 完全に自由 |
| 主な目的 | 比較・定量・再現 | 深掘り・共感・発見 | 傾聴・探索・関係構築 |
| 向いている場面 | 大人数の比較・評価・選考 | 新商品のニーズ調査・UX改善 | 新規概念の探索・感情理解 |
| モデレーターの影響 | 少ない | 中程度 | 非常に大きい |
構造化インタビューは、調査の「比較可能性」「データ品質」「分析効率性」を重視する局面で威力を発揮します。
構造化インタビューのメリットとデメリット
メリット①:データの定量性と比較可能性が高い
全員に同じ質問を同じ順序で行うため、得られた回答の傾向や違いを数値的に比較しやすくなります。大規模な調査や複数モデレーターによる実施でも結果のばらつきを抑えられます。
メリット②:モデレーター間の差が出にくい
質問文が固定されており、アドリブを最小限に抑えられるため、誰が実施しても同じ進行ができ、スキル差の影響が小さくなります。
メリット③:分析負荷が下がり、効率的なレポート作成が可能
定型化された回答フォーマットにより、コーディングや集計の作業が容易になります。特にKPIとの照合や属性ごとのクロス分析に向いています。
デメリット①:自由回答の深掘りがしにくい
自由な会話展開がしにくく、参加者の本音や意外な視点を引き出すには不向きな場合があります。探索的なテーマでは情報の幅が狭まりやすくなります。
デメリット②:柔軟性が低く、臨機応変な応答が難しい
想定外の反応や、新たな課題への展開があった場合でも、質問が固定されているため追従しにくいという欠点があります。
構造化インタビューの設計手順とポイント
構造化インタビューは「誰が聞いても同じ質問」「どの対象者にも同じ順序で進行」を前提とするため、設計段階が非常に重要です。ここでは、設計時の具体的なステップと、その際に意識すべきポイントを解説します。
① 調査目的と評価軸の明確化
まずは「何を明らかにしたいのか」「その判断材料は何か」を明確にします。目的が不明確なまま質問をつくると、情報が散らばり、比較できないインタビューになってしまいます。
例:
- ユーザーがある操作を行うまでに感じる心理的ハードルは何か
- 特定の業務フローにおける課題の発生要因はどこか
- サービス選定時に最も重視される基準は何か
② 質問項目の列挙と分類
目的に基づいて質問を洗い出した後、それらをカテゴリーごとに分類します。導入(ウォームアップ)→本題→締めという流れを意識し、質問の関連性や論理展開を整理します。
③ 質問文の統一と表現の調整
全対象者に同じ質問を行うため、質問文はシンプルかつ明確でなければなりません。
- 回答者が誤解しない言い回しにする
- 長すぎず、聞き取りやすいリズムに整える
- 曖昧な表現や専門用語は避け、補足を加える
✕:そのときって、どんな感じでした?
○:◯◯を利用された際、印象に残っている点を具体的に教えてください
④ 回答フォーマットと評価指標の定義
分析しやすくするために、選択式・尺度式・自由回答などのフォーマットを設計します。必要に応じてスコアリング基準やコーディングルールを明文化し、後工程の負担を軽減します。
よくある失敗とその対処法
構造化インタビューは設計に時間がかかる分、運用段階での失敗は避けたいものです。しかし、現場では想定外のトラブルが起きることも珍しくありません。ここでは、よくある失敗とその対処法を紹介します。
質問が抽象的すぎて、回答がばらつく
→ 対策:質問文を作成する際には、回答者が“何について答えればよいのか”が明確になるよう、具体的な語句で表現する。例示や選択肢を併用することで、意図を伝えやすくなります。
✕:どのように感じましたか?
○:◯◯のデザインについて、使いづらいと感じた点があれば教えてください。
モデレーターが質問を飛ばしてしまう
→ 対策:質問票にチェック欄を設け、進行中に確認しながら進める。また、途中で脱線した場合に“戻るポイント”を明記しておくと、構造を見失いません。
時間配分に失敗して、重要な質問が聞けなかった
→ 対策:各質問に“想定所要時間”を設定し、時間超過時の“必須質問リスト”を作成しておく。優先順位が明確になっていれば、焦らずに対応できます。
回答が短く、情報が浅いまま終わってしまう
→ 対策:構造化インタビューでも、自由回答に対しては深掘りの余地を残す。“なぜですか?”“具体的には?”といった追加質問を用意しておきましょう。
まとめ:構造化インタビューは“再現可能な対話”を設計する技術
構造化インタビューとは、調査において“聞き漏れ”や“バラつき”を最小限に抑え、誰が聞いても同じデータが得られるように設計された、ルールと構造のある対話手法です。
- モデレーターの主観に依存せず
- 対象者ごとの回答を比較可能にし
- 設計者の仮説検証を確実に支援する
このような特性により、定量性と再現性が求められる調査現場で高く評価されています。
一方で、自由度が制限されるため、「意外な発見」や「文脈からにじみ出る気づき」は得にくい側面もあります。そのため、構造化と非構造化のバランスをどう取るか、テーマや目的に応じて判断することが重要です。
構造化インタビューは“問いの質”が成果を左右する世界です。調査設計の経験が浅い段階でも、しっかりとガイドを作り込むことで、安定した成果を出すことができます。
再現性を担保したい、複数人での実施に耐えうるフローを設計したい、評価を数値化して説明責任を果たしたい──
そした課題を感じている方にとって、構造化インタビューは大きな助けとなるでしょう。
著者の紹介
株式会社マクロミル
鳥居 慧
2009年に株式会社マクロミルに入社。
10年以上にわたり定量調査から定性調査まで幅広いリサーチサービスの運用部門に従事し、10,000件以上のプロジェクトに関与。
2024年、セルフ型のオンラインインタビュープラットフォーム「Interview Zero」を立ち上げ、プロダクト責任者として従事。
