AIDMA(アイドマ)とは?歴史やAISASとの違い、マーケティングにおける活用方法などを徹底解説!

AIDMA(アイドマ)とは、消費者が商品・サービスを購入に至るまでの心理プロセスを5段階で整理した古典的なマーケティングフレームワークを指します。具体的には「Attention(注意)」「Interest(興味)」「Desire(欲求)」「Memory(記憶)」「Action(行動)」の頭文字を取った用語であり、消費者心理の流れを簡易的にモデル化しています。従来の広告理論や販売促進施策を検討する際に、AIDMAは多くの教科書や講義で基本形として取り上げられ、アナログ時代の消費者行動を読み解くベースとしても機能してきました。

一方、デジタル社会が進展し、SNS広告や検索連動型広告を通じて企業がより詳細にユーザー行動を把握できるようになる中、AIDMAだけでは捉えきれないオンライン特有の行動パターンが出現しました。そこで、「AISAS(アイサス)」や「AISCEAS(アイスシーズ)」などのフレームワークが提唱されてゆきました。

しかし、AIDMAが長年にわたって参照され続けた理由は『シンプルさ』にこそあります。ユーザーが製品を認知し、興味を持ち、欲求を抱いて記憶し、最終的に行動するという一連のステップは、現代のDXやオムニチャネル戦略を考えるうえでも基礎的な理解として役立ちます。大規模言語モデルなどの先端技術が次々と生まれる昨今のマーケティング環境においても、マクロな消費者行動モデルとしてAIDMAを再評価する動きがあるのも事実です。

AIDMAの歴史と背景

AIDMAの起源は1920年代にもさかのぼるとされ、E.S.ルイスが提唱した「AIDA(注意・興味・欲求・行動)」モデルが下地といわれています。そこから「Memory(記憶)」という要素が加わったのがAIDMAです。当時はテレビや新聞、雑誌などのマスメディア広告が主流で、消費者が商品に接触してから買うまでの過程を簡易的にモデル化した理論が重宝されました。

そのころはSNS広告や検索連動型広告といった手法は存在せず、Cookie規制も想定外です。したがって、広告費の配分を考えるうえでも、どれだけ注意を引き、興味を持ってもらうかが鍵とされ、記憶に残す施策が中心でした。一方で、コンバージョン率(CVR)の測定は困難であり、オフラインの売上データと広告費の関連付けに苦心する時代でもありました。

AIDMAというモデルが広く受け入れられた理由としては、ユーザーの購買プロセスを誰にでも分かりやすい形で表現している点が大きいでしょう。Attention(注意)からInterest(興味)へ移行し、Desire(欲求)で購買意欲を高め、Memory(記憶)にしっかり残したうえでAction(行動)に至るという流れは、企業の販売戦略にもストレートに組み込めます。今でいうコミュニティやファーストパーティデータ活用とは程遠い時代でも、消費者の心理的プロセスは変わらず、古典的ながら普遍的な理論として評価されてきました。

AIDMAとマーケティングファネル

マーケティングファネル(購買ファネル)とは、消費者が広範囲の選択肢から特定のブランドや商品を最終的に購入するまでに、徐々に母数が絞られていく過程を漏斗(ファネル)にたとえた概念です。AIDMAは、そのファネル内で具体的に消費者がどういう心理状態を辿るかを示したフレームとして位置付けられることが多いです

たとえば、ファネルの上部(認知・興味)においては、Attention(注意)やInterest(興味)が主な役割を果たします。SNS広告や検索連動型広告でユーザーの目に留まることで注意を引き、商品やサービスのユニークなポイントを提示して興味を喚起します。ファネルの中部では、Desire(欲求)を高める、あるいは減じないためのEFO(Entry Form Optimization)やステップメールによるフォローが大切になり、さらにMemory(記憶)としてブランドロイヤリティを形成する仕掛けも必要となるでしょう。ファネルの下部(行動・購買)に至っては、Action(行動)を後押しするUI/UX最適化がCVRを左右します。

Cookie規制が進む中で、ユーザー行動データを細かくトラッキングするのが難しくなっても、ファーストパーティデータとコミュニティから得られるインサイトをAIDMAの各段階にうまく織り込むことで、短期的に広告費を抑えながらPDCAサイクルを回すアプローチが可能です。オムニチャネルやDXを導入する企業が、このAIDMAの心理プロセスを指標として取り入れている背景には、データドリブン施策と心理モデルの整合性が重要とされるからといえます。

AIDMAとAISAS(アイサス)の比較

AIDMA(注意・興味・欲求・記憶・行動)が従来の古典的モデルであるのに対し、インターネット時代に注目を浴びるもう一つのフレームとして「AISAS(アイサス)」が存在します。AISASは、Attention(注意)→ Interest(興味)→ Search(検索)→ Action(行動)→ Share(共有)という消費者行動モデルを示し、オンライン環境での「検索」と「共有」が非常に強い影響を持つことを組み込んだ形です。

AIDMAではMemory(記憶)という段階が非常に重視されていましたが、AISASではユーザーが商品情報を記憶するよりも先に「Search(検索)」で情報を手軽に取得し、「Share(共有)」でSNSやコミュニティを通じて他者の意見や口コミを知るプロセスを前提としています。Cookie規制や広告費の制限があっても、SNS広告やファーストパーティデータで把握したユーザー行動をトリガーに、コミュニティで共有される情報がブランドロイヤリティに直接影響するケースがますます増えています。

とはいえ、AIDMAが「古い」わけではありません。Search(検索)やShare(共有)を含めたユーザー体験でも、注意を集めて興味を引き、欲求を形成したあとアクションするという心理プロセス自体は多分に残っています。大規模言語モデルやAIエージェントが進化しても、人間の意識が短期間で根本から変わるわけではありません。したがって、AIDMAをベースにしつつ、SearchやShareといったインタラクション要素をハイブリッド化する発想が今なお有効とされています

AIDMAを実践する際のPDCAアプローチ

AIDMAを実践するにあたり、PDCA(Plan, Do, Check, Act)のサイクルで手順を組み立てる手法が多くの企業で導入されています。たとえば、Attention(注意)を引くためのSNS広告プランを策定し(Plan)、実際に広告を出稿して(Do)、CTRやCVRなどのKPIを評価して(Check)、クリエイティブや出稿タイミングを改善する(Act)といった流れです。これを週次・月次で繰り返すことで、どの段階(Attention, Interest, Desire, Memory, Action)がボトルネックになっているかを可視化できます。

このプロセスにおいてCookie規制が導入された場合でも、ファーストパーティデータとコミュニティの活用にフォーカスすればユーザー行動ログを把握でき、離脱率やロイヤリティを把握しやすい環境が維持可能です。ステップメールで興味段階から欲求段階への移行を促進したり、Memory段階の維持を狙ってメルマガやアプリプッシュ通知を活用したりと、PDCAのステップごとに施策を微調整できるのがAIDMAモデルの強みといえます

さらに、ABテストやEFO(Entry Form Optimization)を加えることでユーザーの離脱原因やCVR低下の要因を詳細に特定しやすくなります。こうしたデータドリブン施策と心理モデルを統合することで、AIDMA理論に基づくマーケティング施策をより深く、精密に運用できるのがDX時代の特徴でしょう。

AIDMAによる広告費の最適化

広告費を最適化するうえでも、AIDMAは有用な視点を提供します。従来、テレビCMや新聞広告など、オフラインで一方通行の伝達が中心だった時代は、注意(Attention)と興味(Interest)を得るためにかなりのコストを要しました。現代では、SNS広告や検索連動型広告を使ってピンポイントにユーザーへアプローチできるものの、競合他社との出稿競争で広告費が高騰しがちです。

そこでAIDMAの各段階に注目し、どのステップでユーザーが落ちてしまっているかを見極めると、不要な広告費を削減する余地が見えてきます。たとえばAttentionで十分に引きつけられているのにInterestが伸び悩む場合は、クリエイティブやキャッチコピー、LPのUIが弱点かもしれません。Desire形成が弱ければ、製品ページの情報不足や口コミ(WOM)不足、コミュニティとの連携が不足している可能性もあります。

Cookie規制が進行しても、ファーストパーティデータでユーザー行動ログを把握し、AIDMAの段階的評価をPDCAサイクルで繰り返すことで、広告費を無駄なく再配分できるのです。具体的には、週次・月次レポートを用いて「Memory段階の施策が薄いためブランドロイヤリティが高まらない」「Action(購入)手前で入力フォームが複雑」など課題を特定し、EFOを導入するなど改善策を速やかに展開します。

AIDMAに対する批判と拡張モデル

AIDMAは古典的なモデルであり、現代のデジタル社会ではAISASやAISCEASなどの拡張モデルが提唱されました。その主な背景として、インターネットが普及して検索(Search)や共有(Share)の要素が消費者行動に大きな影響を与えるようになった事実が挙げられます。さらに、ユーザーが購入したあとにもSNS広告やコミュニティで反響をチェックし、二次的な購入意欲や口コミ(WOM)効果が発生する流れも強くなりました。

また、Memory(記憶)というプロセスがネット環境では瞬間的に検索で置き換えられることが多く、記憶に依存しない購買行動が広がったとも指摘されます。ファーストパーティデータをベースに、ユーザーが再検索や再アクセスをするたびにCookie情報やログイン情報でパーソナライズされた体験を提供する仕組みが浸透し、AIDMAの記憶段階が重視されにくくなったのです

しかし、その一方でAIDMAは消費者心理を基本ステップに分けるというシンプルなフレームであるがゆえに、市場やコミュニティでの展開を俯瞰する際には依然として有用です。とくにオフラインも含めたオムニチャネル環境では、ユーザーに強い印象を残すMemory段階をどう演出するかが広告費抑制やCVR向上につながるケースもあり、マーケティング担当者が柔軟に使い分けることが求められています。

AIDMAの今後の展望

AIエージェントや大規模言語モデル(LLM)が進化し、Cookie規制が強化される時代において、AIDMAの各段階の意味合いがますます複雑化する可能性があります。ユーザーがAttentionを向けるきっかけはSNS広告や検索結果だけに留まらず、コミュニティやオフラインイベント、あるいはインフルエンサーの動画配信など多岐にわたっています。そこで、デジタル・オフラインを併用するDX戦略を打ち出しながらAIDMAを再定義するアプローチが注目されるでしょう

また、マルチモーダル解析によってテキストだけでなく画像や音声、動画なども含めてユーザー行動を捉えられるようになれば、InterestやDesireの形成プロセスがより可視化され、Memoryの段階でどのようなシーン・情報が印象を残しているかを精密に解析できるようになるかもしれません。それがPDCAサイクルでのABテスト強化やUI/UX改善に活かされれば、AIDMAモデルがさらに洗練された形で応用される可能性があります。

とはいえ、AIDMAは消費者心理の流れを大づかみに捉えたモデルであり、すべての業界や商品に一対一で当てはまるわけではありません。消費財と高額商材、BtoCとBtoBなど、異なる市場特性を理解しつつアジャストすることが、AIDMAを活かす際の必須条件となるでしょう。市場特性に合わせて、AISASやAISCEASといった拡張モデルを参照することも妥当です。

まとめ

AIDMA(Attention, Interest, Desire, Memory, Action)は、消費者が商品やサービスを知ってから購入に至るまでの心理プロセスを5つのステップに分けた古典的なマーケティング理論です。今日ではAISASなどの拡張モデルが注目を集めるものの、AIDMAの「認知→興味→欲求→記憶→行動」という流れは、消費者心理を理解するうえでなおも重要な基礎を提供します

こうした戦略では、大規模言語モデルやAIエージェントを取り入れる動きも加速しており、DXの文脈でオムニチャネル施策とAIDMAを組み合わせる企業が増えています。AIDMAはあくまで心理プロセスの一つの“型”ではありますが、このシンプルさこそがブランド施策やUI/UX改善を俯瞰する指標として使いやすい要因となっています。大切なのは、AIDMAを絶対視するのではなく、AISASやAISCEASなどの考え方とも柔軟に組み合わせながら、自社の製品・サービスにフィットさせるクリエイティブな応用力です。そうすることで、コモディティ化しがちな市場でも独自の存在感を放ち、ユーザーとの長期的な関係構築が実現しやすくなるでしょう。

監修

Macromill News 事務局

監修:株式会社マクロミル マーケティングユニット

20万人以上が登録するマーケティングメディア「Macromill News」を起点に、マーケティング知見や消費者インサイトに関わる情報を発信。

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