100年ブランドから学ぶ「強いブランド」の秘訣

カルピス、三ツ矢、ウィルキンソン100年ブランドから学ぶ「強いブランド」の秘訣

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マーケターコラム

2024/11/19(火)

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100年以上続くブランドがどのようにして「意味のある価値」を消費者に提供し続けているのか、 アサヒ飲料社・アサヒビール社のブランディングの秘訣を探ります。

2024年11月28日(木)10:30-12:30

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アサヒ飲料社には、市場導入から100年以上愛され続けているブランドが3つも存在する。

【画像】カルピス、三ツ矢、ウィルキンソン100年ブランドから学ぶ「強いブランド」の秘訣

今年2024年は、三ツ矢サイダー140周年、ウィルキンソン120周年のアサヒ飲料が持つ2つの炭酸ブランドのW周年の年に当たる。また、今年2024年、カルピスは105周年を迎えた。
100年以上前の生活者にとって「意味のある価値」を提供することで誕生したこれら3つのブランドは、100年以上の時を経る中で、古臭い昔の商品として忘れ去られることなく、今の時代のユーザーの心の中にもしっかりと「意味のある価値」を根付かせ続け、愛され続けているのである。


時代が変わり、生活様式が変わり、ユーザーのニーズやウォンツも変わっていく中、その時代の流れをとらえてユーザーの心を動かす「意味のある価値」を100年以上も提供し続けてこれたのは、手を緩めることのない市場動向・ユーザー理解のたまものと言えるだろう。

競合ブランドに対する自社ブランドのユーザー構造や、ユーザーの心の中に醸成されている各ブランドの「意味のある価値」を調べ、ブランドの課題をあぶり出し、更なるビジネスチャンスに繋がる打ち手を繰り出すというPDCAを100年以上も続けていく。

ブランディングとは終わりなき挑戦の連続である。

顧客目線のブランディングとは?

ただの「製品」と「ブランド」の違いは、ユーザーの心の中に「意味をもつ価値」として存在できているか否かである。

たとえば、のどが渇いたから飲む「水」。「別にどのメーカーのどんな水でも大差ないし、なんなら水道水でも構わない」という人にとっては「水」というカテゴリーにおいて「意味のある価値」を提供してくれるブランドは存在しないのかもしれない。が、同じ水でも、ある人にとって「とても意味のある価値があり、自分はこの水が大好きである」という存在になれると、それはただの「水」ではなく「ブランド」となる。そして、より多くの人たちに「意味のある価値」を感じてもらえるようになることで、その商品はより強いブランドとなっていく。

「車」や「腕時計」や「バッグ」のような購入頻度が低く、購入時にじっくり吟味して何を買うかを決めるようなカテゴリーの商品はブランディングがしやすい。というのは、ユーザー自身がじっくり対象となる商品の特徴を理解しようとしてくれて、自分にとってより「意味のある価値」があるものを選ぼうとしてくれるからである。

反対に、「水」のように、ほぼ毎日使うものになればなるほど、ブランディングは難しくなってくる。なぜならば、毎日使う日用雑貨品(FMCG)と呼ばれるものを購入する際、ユーザーは前述のような購入頻度の低いカテゴリー購入の時のようには時間も手間もかけてくれないからである。
しかし、ブランディングは、購入頻度の低いカテゴリーだけではなく、FMCG商品群にとっても非常に有効且つ重要なマーケティングである。

「誰」にどんな「意味のある価値」を提供したいのか

「『水』なんか水道水でもかまわない」と考える人もいれば、お気に入りの「水」ブランドが存在する人もいる。また、お気に入りの「水」ブランドは人によって様々で、Aが好きな人もいればBが好きな人もいる。それは、Aが好きな人にとってはAが提供している何かがその人にとってより「意味のある価値」があり、またBが好きな人にとっては逆にBが提供している何かの方がより「意味のある価値」があるから、ということである。

そこで、企業としてブランディングを考える際には、誰=どんな人に、どんな「意味のある価値」を提供すれば、より多くの人たちに購入してもらえるかな?と作戦を練るわけである。新しくブランドを立ち上げる時だけでなく、既存ブランドを成長・強化させていくためにも、常に、競合状況も含め、市場・カテゴリー全体でどんな商品が存在し、どんな人たちにどんな商品がどんな「意味のある価値」を提供しているのか、を知った上で、自社商品をどのように位置づけ進化させていくべきか、を考えていくことで、ブランドは成長し続ける。

「ブランディング」は「誰にどんな意味ある価値を提供するのか」ということを戦略的に意図して、それを浸透させていくことなのである。
3つもの100年ブランドを持つアサヒ飲料社では、2024年に、改めて、全てのブランドが提供する「意味のある価値」をまとめ直した。

筆者はアサヒ飲料社におけるブランディング再確認の過程で色々お手伝いをさせていただいたのだが、その経験から、100年以上続いているブランドが提供し続けている「意味のある価値」は実に普遍的であり、だからこそ時代を超えて生活者の心に響き、愛され続けているのだということを目の当たりにし、1人のマーケターとしても、また1人の生活者としてもとても感動した。

例えば、カルピスを例にとってみよう。

【画像】「誰」にどんな「意味のある価値」を提供したいのか

カルピスの根幹をなすのは「濃縮タイプのカルピス」が提供する甘酸っぱくて美味しい体験とその思い出である。

お母さんに作ってもらったカルピス。家族のために自分が作ってあげたカルピス。友達の家で作ってもらったカルピス。おばあちゃんの家で作ってもらったカルピス。カルピスを飲みながらみんなで過ごした笑顔の時間。原風景のように浮かび上がる幸せな体験。

甘酸っぱくて美味しい幸せな体験は、思い出すだけで穏やかで優しい気持ちを引き起こし「心と体にピース」をもたらしてくれる。そして、1人1人に芽生える優しい気持ちや心とからだのピースから、自分たちの周りにも豊かさ・ピースが広がっていく。

濃縮タイプのカルピスを家で作って飲むこともなくなってきた人達は、簡単に飲めるカルピスウォーターでいつでも優しさを充電できる。モヤモヤした気持ちになった時はカルピスソーダのシュワシュワした泡でモヤモヤを浄化・解消して優しさを取り戻すことができる。

ちょっと自分を甘やかしてあげたい時には、甘めのカルピスTHE RICHで自分を満たしてあげるのもいい。自分の健康を考えてあげたい時には、機能のついたPLUSカルピスで心と体を整えて。

カルピスとは、1人1人の心と体にピースを提供し、それを通じて世界中にピースを広げていく、という、時代を超えて世界中に通用する普遍的な「意味ある価値」を提供するブランドだからこそ、100年以上も愛され続けているのである。

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1日集中で有識者から学ぶ

100年以上続くブランドがどのようにして「意味のある価値」を消費者に提供し続けているのか、 アサヒ飲料社・アサヒビール社のブランディングの秘訣を探ります。

2024年11月28日(木)10:30-12:30

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著者の紹介

米田恵美子

株式会社インサイト・ピークス 代表取締役社長 元P&Gジャパン執行役員

米田 恵美子

P&G消費者市場戦略本部/CMKのヘッドとして執行役員を務めた後、コンサルティング会社設立。常任としてアサヒビール社・アサヒ飲料社・アサヒグループ食品社のマーケティングインサイトコンサルティングやマクロミルコンソーシアムへ参画。顧問を務めながら、多くの企業のマーケティングやブランディング、インサイト、リサーチ領域での相談を受けている。著書『専門家以外の人のためのリサーチ&データ活用の教科書(版元:東洋経済)』

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