
筆者のところには「テレビとデジタルの最適なアロケーションモデルをつくりたい」という依頼が非常に多い。「予算で何対何が最適な割合なんでしょうか?」という問いかけが多いが、予算はあくまで最終的に決まるものである。
またテレビは広告プランがほぼ出稿量でありイコール予算になるが、デジタル側は3,000万円の使い方は100通りではきかないほどある。最適なプランを定めて、その結果としての予算となるので、いきなり予算から入ってもなかなか解決しない。
さて、ではこの「テレビとデジタルのアロケーションモデル」の開発にはどういうプロセスが必要だろうか。
結論からいうと、ブランドごとにテレビ×デジタルの最適解を見つけて、予算に落として、それを合算して宣伝部としての総予算化するということになろう。
では、ブランドごとのテレビ×デジタルの最適解はどう導き出すか…。アプローチは主に二つあるかなと思う。
1.パーセプションフローの各プロセスに基づいて予算配分を決める
ひとつめは、そのブランドにおけるパーセプションフローに基づいて、各プロセスの予算配分(どこが重要か…)を決める。その上で、各プロセスで機能するメディアを決める。 デジタルと言っても『ブランド認知』の役割をさせる使い方もあれば、『ファンの育成』に使うものもある。一概にデジタルだからこの目的で使える、というものでもない。
要はメディア配分から入るのではなく、パーセプションフローの各プロセスにおける予算配分から入るということだ。
もちろんこうした設定の元、実際に広告投下して効果測定をすることで検証することになる。
2.キャンペーンの目的に応じて、広告投下テストを行い、最適なプランを探す
ふたつめは、ブランドごとに今期のキャンペーンの目標が、『ターゲットリーチの最大化』なのか、『広告・ブランド認知の最大化』なのか、『購入意向の最大化』なのかを決めて、実証するための広告投下を行って効果測定することでデータを得る方法だ。

図1 配信目的に応じた「テレビ×デジタル」の組み合わせ例
ブランドごと、またはキャンペーンごとに、
- 最適フリークエンシー(例:テレビCM○回、デジタル動画視聴完了○回)
- タイミング(例:テレビスポットキャンペーン開始4週間前からデジタル出稿開始)
- 広告フォーマット(例:インストリーム、インバナーを視聴完了単価で最適化)
- ターゲティング手法(例:デモグラ配信+帰宅時間推定ターゲティング)
などを決めていことで、結果予算に落ちてくる。
繰り返しになるが、特にデジタル側のプランニングには変数が多い。「テレビ×デジタル」はブランド別、キャンペーン目的別にテレビと組み合わせるデジタル広告配信プランニングをしっかりつくることだ。
おそらくこうした実証を得るためのテレビ投下・デジタル配信をやっていくと、テレビとデジタルの両方に当たった人の態度変容値が上がるケースが多いと思う。
以下に示す図2、図3は、あるブランドで「テレビCMのみ」接触した人と、「テレビCM+デジタル広告」に接触した人への調査結果を示したものだ。「ブランド認知」「ブランドに対する興味関心」「ブランドへの好意度」はいずれもテレビCM+デジタル広告の両方に接触した人の方が高い結果となった。また、購買行動傾向に関しても、同様の結果が得られた。

図2 デジタル認知とブランド認知傾向に関する調査結果

図3 デジタル認知と購買行動傾向に関する調査結果
基本、テレビは既存購入者に対するリテンション促進やロイヤリティ醸成維持には非常に効果的だ。 しかし、新規顧客の獲得には、テレビも必要だが、別の接点からの接触も欠かせない。複数のメディア接触は最初の購買行動促進に効果的だと思う。
昨今の広告に求められる効果は「購買につながる」ということであろう。 特にデジタルを組み合わせることへの期待は、おおよそ「購買行動」への寄与であることは間違いない。
テレビ×デジタルの組み合わせに期待される効果が、「購買行動を促すかどうか」であれば、注目すべきはまさにテレビ×デジタルをターゲットにオーバーラップさせる投下ということになるだろう。
ここは深堀りが必要で、テレビとデジタルが同じクリエイティブでは芸がなく、相乗効果や化学反応を生むための広告表現の最適化が追求されるべきである。
デジタルデバイスによるコミュニケーションは基本「ユーザー文脈」で行われる。一方テレビは基本パッシブなので「ブランドの文脈」で成立している。
だとすると、デジタルでは「ユーザーの自分事化」が目的となる。「この広告は私向きのコミュニケーションだな…」と思ってもらうことが目的だ。
一方、テレビは「社会事化であることを認識してもらう」ことが狙いかもしれない。つまり、「このブランドはテレビでもやっているし、みんなが知っているブランドであり、一定の評価を得ているのだろう」という認識である。
その意味では、ブランドへの関心を得るための文脈が複数のセグメントに対して設定できるのであれば、デジタルでは複数の「自分事化」のためのCMがあっていい。
デジタル広告のターゲティングは、「当てたい人に当てる」ということもできるが、逆にいうと「当てたくない人には当てずに済む」というのも利点だ。
テレビはそのメッセージでは「私向きではない」と感じてしまう人にも当たってしまう。
テレビとデジタルのそれぞれのアドバンテージを上手に使い、双方から同じ消費者にそれぞれの役割を果たす広告接触が行われることで「購買行動」を促すコミュニケーションを目指すことができるだろう。
著者の紹介

横山 隆治
1982年青山学院大学文学部英米文学科卒。同年(株)旭通信社入社。1996年インターネット広告のメディアレップ、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(株)を起案設立。同社代表取締役副社長に就任。2001年同社を上場。インターネットの黎明期からネット広告の普及、理論化、体系化に取り組む。2008年(株)ADKインタラクティブを設立。同社代表取締役社長に就任。2010年9月デジタルコンサルティングパートナーズを主宰。2011年7月(株)デジタルインテリジェンス代表取締役に就任。
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