【ベトナム編】各世代の価値観に影響を与えたテクノロジーの背景とは

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リサーチャーコラム

2022/7/6(水)

アジアのターゲット市場で消費者調査を行うと、「なぜこういった傾向がみられるのか」と、スコアの解釈への悩みに直面することがあります。その裏には、各国の消費者意識に影響をあたえる「社会背景」「文化背景」等が必ず存在し、海外での調査データの分析で重要なポイントとなります。

そこで当社は、アジアにおけるマーケティング戦略や海外調査をご担当される方が調査企画を策案する際、有用な基礎情報源として活用いただける『アジア4カ国(中国・インドネシア・タイ・ベトナム)の生活者価値観レポート』をまとめました。本連載は、各国の有識者の知見に基づいた仮説と分析を、マクロミルが独自に実施した自主調査で検証するというスタイルでご紹介していきます。

今回は、ベトナムの以下のような各世代に影響を与えた「テクノロジーの背景」について解説します。

  • 第1世代「Gen1」 ベトナム戦争世代(リタイヤ層)(~1975年生まれ)
  • 第2世代「Gen2」 ドイモイ世代(ジェネレーションX)(1976~89年生まれ)
  • 第3世代「Gen3」 ミレニアル世代(フリートレード世代)(1990~99年生まれ)
  • 第4世代「Gen4」 ポスト・ミレニアル世代(ジェネレーションZ)(2000年生まれ~)

積極的に新しい技術を取り入れるベトナム人

コミュニケーションテクノロジーの幅広い採用

格安携帯電話とSNSの普及によって地理的な境界線がなくなってきています。人口の73%が携帯電話を利用し、43%がスマート機器を使っています。人口の67%がインターネットを利用しており、インターネットユーザーの73%がPCから、24%がモバイルからウェブにアクセスしています。「Facebook」や、モバイルメッセージアプリ「Zalo(ザロ)」といったSNS、その他多くのコミュニケーションチャネルが存在し、SNS利用率は57%です。交通手段の手配から金融サービスまで様々な分野がこのテクノロジーの恩恵を受けており、全購入の61%がモバイル決済であり、2019年に実施した調査によると、2018年から24%増加しました。

Eコマースの準備が完了し、市場へ本格参入

モバイル決済は、2016年の時点で50億USDに達し、2020年の100億USDを目指し成長を続け、今も伸長しています。しかし、ベトナムの消費者は、オンラインで販売されている商品に対する信頼度が低いため、Eコマースの売上は小売市場全体の3%に留まっています。2020年時点で、モバイルユーザーの70%が3Gまたは4Gを利用していましたが、その後は、5Gの普及が進んでいます。

ベトナムでは、Traveloka(トラベロカ)、Klook(クルック)、booking.com(ブッキング・ドットコム)、Airbnb(エアビーアンドビー)といったオンライン旅行代理店が増えています。国内の観光情報をオンラインで検索する需要が、2015年から2020年の5年間で32倍に増加しました。その中でも特に目を引くのは、ベトナム語で検索される観光関連の商品であり、毎月500万回以上検索されています。夏休みのハイシーズンには、検索回数は月800万回にも達します。

テクノロジーがより一層大きな役割を担う時代へ

有識者は、ITの進歩に伴う人々の消費傾向の変化を予想しています。特にEコマースの分野ではその傾向が強いと考えています。Fintechがさらに進歩し、より簡単に商品が手に入り、より簡単にクレジットサービスを利用できるようになれば消費も促進され、若年はますますテクノロジーに依存するようになり、そして、AIとビッグデータがより一層使われ、人々のニーズは即時に満たされるようになる。若い世代の人たちはすでに利便性を享受していることもあり、この先の進化も自然に受け容れることができるだろうとコメントしています。

世代ごとのテクノロジーとのかかわりの違い

Gen1は保守的な考え方

Gen1世代は、親戚・家族や旧友と連絡を取り合うために、自分たちの生活にテクノロジーを積極的に取り入れるようになりました。Facebookアカウント所有率は90%にものぼります。

一方、Eコマースが発展していても使いこなすことが難しいと考えています。便利なため、ECサイトで買い物はしますが、リスク低減のために安価な商品しか購入しません。オンライン決済に関しては用心深く、金融関連の取引は実際の銀行の店舗に足を運び、キャッシュレスではなく未だに現金取引を好みます。

日用品のオンライン購入率、コロナ以前との比較(世代別)

定量調査の結果を見ると、新型コロナを境に、各世代のEコマース利用比率が上昇しました。特に上世代のオンラインシフトが進みました。

なお、当調査では、Gen1のオンラインモニター数が他世代より非常に少ないため、同じ世代の一般生活者よりモバイルリテラシーが高い集団である可能性がある点をご留意ください。

日用品のオンライン購入割合、コロナ以前との比較(世代別)

リスクと利便性のバランスを気にするGen2

新しいことに対して前向きであり、柔軟性もありますが、危険なことには不安を抱くGen2。モバイル機器の利用にはとても馴染んでいますが、オンラインショッピングはモバイルではなくコンピューターを利用する人が32%存在します。

また、SNSの利用については、一人が複数のアカウントを所有することが一般的です。

決済手段の変化

ベトナムは、ASEAN諸国の中でも比較的オンライン決済の金融インフラが遅れている国です。それでも、コロナ以前に比べれば、オンライン決済利用率は各世代ともに増えてきています。定量調査の結果を見ると、オンライン決済に対して用心深いGen1でさえ、コロナ禍の状況を経て、モバイルでの決済方法を選ぶ傾向にあります。

新型コロナウイルス流行による利用状況の変化(世代別)

欧米に憧れるGen3

テクノロジーやインターネットなどの「海外の発明」を使って、西洋の世界を探求したいと考えるGen3。新しいサービスの利用については、Gen2よりも積極的で、かつ柔軟です。リスクより探求心が先立つ傾向があります。

モバイル機器の使用には、Gen2同様にとても馴染んでおり、一人が複数のアカウントを所有することが一般的です。

下の世代ほどモノ消費からコト消費へ

若い世代に移るにつれて、購買行動はモノからコト消費にシフトするのは、世代間の価値観の違いとして各国で共通してみられる傾向です。ベトナムについても、定量調査の結果からその傾向を確認してみると、モバイルでの利用サービスで同様の傾向が見て取れます。上の世代は、商品購入やサービス関連アプリの利用が高いのに対して、下の世代はコンテンツ系の消費が高い傾向が確認できます。

スマートフォンアプリからよく利用するサービス

気ままでクールなGen4

この世代の多くは、親の携帯やタブレットで遊びながら育ちました。密接につながり合った世界で育っており、一番使いやすいコミュニケーション手段はスマートフォンです。1日の平均スクリーンタイムは3時間です。スマートフォンやSNSを巧みに操作し、Facebookだけではなく、SnapchatやInstagram、Pinterestなど様々なアプリを使いこなします。

Eコマースなどの技術の発達の中で、この世代は非常に早い段階で自分たちの生活に新しいテクノロジーを取り入れています。

以上が、ベトナムの有識者の意見を交えた、各世代が影響を受けたテクノロジーの背景です。本連載では、研究で得られたインサイトをベースに、購買行動、テクノロジーの影響、家族とのかかわり、社会からの影響などをテーマに調査を行い、定量的にその内容を検証していきます。

次回は、「生活者の価値観・地域での違い【中国編】」をご紹介します。

定量調査の調査概要
調査地域: ベトナム全土
世代別回答者数: Gen1(n=221/男性138、女性83)、Gen2(n=485/男性198、女性287)、Gen3(n=597/男性204, 女性393)、Gen4(n=332/男性130、女性202)
調査方法: インターネット調査
調査時期: 2020年2月

著者の紹介

北島尚

北島 尚

株式会社マクロミル グローバルリサーチ本部 海外事業開発ディレクター
米国フォーダム大学大学院修士課程修了。LVMHグループにてブランドマネージャー、PwCコンサルティングにて国内外の企業のマーケティング戦略プロジェクトに参画。その後、オグルヴィ&メイザーにて日本企業の海外ブランディングおよびマーケティングを支援するエキスポートプラクティスを起ち上げ、ジェネラルマネージャーとしてチームをけん引。現在は、マクロミルにて日本企業の海外市場における調査と戦略サポートを務める。

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