
天気の良い日、洗い立ての洗濯物を太陽の下で干すのは気持ちが良いものです。日本では日常的な「外干し」の風景ですが、世界に目を向けてみると、必ずしもそれがスタンダードではありません。
本コラムでは、「『え、これって日本だけ?』~グローバルな視点で見えた”当たり前”の正体」と題し、日本と世界各地の生活習慣や、さまざまな「常識」の違いを考察していきます 。 海外市場におけるマーケティングやイノベーションのヒントが見つかるかもしれません 。
記念すべき初回のテーマは、【洗い終わった洗濯物は屋外で干す?室内で干す?】 です 。身近な家事一つをとっても、気候や法律、住宅事情によってまったく異なる世界のリアルをご紹介します。
【洗い終わった洗濯物は屋外で干す?室内で干す?】
【1】 屋外干しが中心の国:屋外でも一定の制約がある国や、室内干しの併用が多い国も

地中海岸の国であるフランスやスペイン、イタリア、トルコなどでは、屋外干しが一般的です。
フランスではベランダや中庭、窓辺に洗濯物を出している光景がより日常的です。南部など温暖で乾燥した地域では、一年の多くを外干しで済ませる家も多くあります。一方、都市部や共働き世帯では、乾燥機(sèche-linge)の普及も進んでいます。
スペインでは共用の中庭や屋上、室内パティオに干す家が多く、完全に外から見えない場所を使うことが多いです。特にバルセロナのような都市では、道路側ファサードに洗濯物を出すことが条例で禁止され、違反すると罰金が科される例もあります。
トルコでも、干し台やバルコニーに吊るして自然乾燥させる家庭が多くあります。乾燥機機能付き洗濯機も普及していますが、高機能/高消費電力のため使われないケースが多く、選択・脱水後は物干しで乾かすのが一般的です。
中国や、タイ・ベトナム・インドネシアなどの東南アジア諸国、およびインドなども、屋外干しが中心です。
例えばベトナムでは、バルコニーや屋外のワイヤーに吊るして自然乾燥させることが一般的です。都市部のアパートではスペースや換気の問題から室内干しする人もいますが、電気代を抑えたい意識や、高温多湿の気候に合わせた生活様式が根づいています。
南米のブラジルやペルーも、屋外干しが多い国です。
ペルーでは、基本はベランダ/屋上/中庭の物干しに天日干し。電気式乾燥機は都市の中〜上流家庭か、一部コンドミニオにある程度です。リマのような沿岸部は湿度が高いので、室内物干し+扇風機を併用する家庭も多くあります。
その他には、オーストラリアでも屋外で乾かすのが定番です。温暖で湿気の少ない気候、広い庭があるという環境による理由が大きいようですが、都市部では室内干しする家庭も多くあります。
また、南アフリカでは、洗濯物は庭や裏庭に設置した物干しロープで乾かすのが一般的です。日差しも強く、標高が高く乾燥したエリアも多いので、数時間で乾燥します。乾燥機を使う家庭も増えているものの、省エネや電力節約の観点から伝統的な屋外干しが根強い状況です。
【2】 室内干しが中心の国:気候要因?住宅要因?

ベランダ干しに制約があるアメリカやUAE
アメリカ合衆国では、共働き世帯が多いため時間がない、ハンガーにかけたり洗濯ばさみを使ったりするのが面倒だ、といった理由に加え、不動産価値維持のため多くのアパートでベランダ干しが禁じられています。「外に干す地域は治安が悪い」「外干しするのは貧困層」という固定観念もあるようです。
UAE(アラブ首長国連邦)では、日本のようにバルコニーの手すりから外に大きくはみ出して干すことは禁じられています。首都アブダビの自治体はベランダでの外干しを禁止しており、違反すると最大1,000ディルハム(約3万円)の罰金が科されます。代替として、多くの居住者は室内に乾燥ラックを設置したり、電子式衣類乾燥機を使用したりしています。
天候や大気状況も影響
韓国では、屋内のベランダや室内用の簡易乾燥台を使用します。特にソウルは高層マンションが多く、外部に洗濯物を干すことは景観や防犯などから避けられています。ドラム式洗濯乾燥機や衣類専用乾燥機の普及が進んでおり、梅雨や黄砂/花粉時期には、屋内乾燥がむしろ常識になりつつあります。
イギリスでも「部屋干し」が主流で、暖房の熱や除湿器を使って乾かします。冬場や雨の多い時期は、特に窓際やラジエーター付近を利用し、逆に夏や天気のよい時期は、庭やバルコニーで外干しすることも多いです。近年では環境や省エネ意識から、乾燥機の使用を控えて自然乾燥を選ぶ家庭も増えているようです。
北欧のスウェーデンでは、集合住宅の地下や別棟に共用ランドリールームがあり、室内で干すのが標準です。屋外も使いますが、寒さと天候を考え、一年中「室内干し+乾燥室」の文化が強く、予約制で時間を区切って使うなど、かなりシステマティックです。
【洗い終わった洗濯物は屋外で干す?室内で干す?】、いかがでしたか?
日常の家事であっても、その習慣の背景には気候、住宅や景観の規制、電気代や省エネ意識など多くの要因が関連しており、それぞれの地域の生活者に適した製品や関連サービスが求められていると言えるでしょう。
「日本では当たり前」の商品やサービスを海外に展開する際、現地の生活者がなぜその行動をとるのか、背景にある「見えない常識」を理解することが、市場攻略の第一歩になるのではないでしょうか。次回も是非お楽しみに!
企画・編集
マクロミル事業統括本部グローバルリサーチプロダクト部
