
消費者の嗜好やトレンドを知るために、マーケティングリサーチは欠かせない手法であり、重要性が増しています。
本記事は企業でマーケティングを担当するビジネスパーソンに向けて、マーケティングリサーチがなぜ重要性なのか、また効果性の高い調査手法や実施にあたっての注意点を解説します。マーケティング施策の立案・改善に役立つマーケティングリサーチを知るヒントにしてください。
目次

マーケティングリサーチの重要性4つのポイント
はじめにマーケティングリサーチが重要な理由と、調査時に押さえるべきポイントを4つ解説します。
マーケティングリサーチは消費者ニーズの把握に役立つ
消費者のニーズや嗜好を知らずして、購買意欲を刺激する商品・サービスは開発できません。マーケティングリサーチは、企業が消費者の目線に立ち、消費者を理解するために役立ちます。
消費者起点の行動が必要な相談窓口と異なり、マーケティングリサーチは企業が主体的に調査するため、精度の高い情報を集められます。
マーケティングリサーチは消費者起点の商品開発に役立つ
現代は、基本的なニーズを満たす商品・サービスがあふれる時代です。そのため、万人受けする商品・サービスより、消費者個々に向けたニッチな商品・サービスが好まれます。
マーケティングリサーチによって、消費者の潜在的なニーズ(インサイト)を把握できれば、消費者起点の商品開発が可能になるでしょう。
参考:インサイトとは?マーケティングに活用する方法やポイントなどを解説
マーケティングリサーチはトレンドの予測に役立つ
マーケティングリサーチを継続実施し分析を続けると、消費トレンドの傾向や時代ごとの推移を把握できるようになります。集めた情報から次の流行を予測できれば、ヒット商品の開発も不可能ではありません。
マーケティングリサーチには、消費者の本音や市場傾向を精査する「トレンド分析」というアプローチ法もあります。
マーケティングリサーチは経営リスク軽減に役立つ
マーケティングリサーチは、堅実な事業展開を可能にします。1つひとつの調査を綿密に実行し、仮説検証と分析を繰り返すことで、潜在的なリスクすら洗い出せるためです。
マーケティングリサーチの結果を踏まえた緻密なPDCAを回せるようになり、経営上のリスク軽減にも貢献します。

マーケティングリサーチの重要性が声高にいわれるようになった背景
近年、マーケティングリサーチの重要性が声高にいわれるようになりました。その背景を2つ、解説します。
リサーチ結果に基づく意思決定が重要性を持つようになった
変化の速いビジネス現場と多様化する消費者嗜好に対応するには、エビデンスに基づく意思決定が重要です。主観や経験則、不確かな憶測からは、成果を精度高く導けません。
マーケティングリサーチなら客観的事実を導けます。
マーケティングリサーチの市場規模は伸びている
マーケティングリサーチの重要性は、市場規模の伸びからも分かります。マーケティングリサーチの市場規模は着実に拡大しており、2022年度には、前年比109.9%の2,590億円に達しました。
低成長時代だからこそ、入念に調査し堅実に事業を進めたい企業の思惑が見てとれます。

マーケティングリサーチ実施の5ステップ
マーケティングリサーチを実施する手順を、5つのステップに分けて解説します。
1.マーケティングリサーチを実施する目的を明確にする
はじめに、マーケティングリサーチの目的を明確にします。企業にとっての問題や課題を洗い出し、調査を通じて得たいデータを整理しましょう。目的を明確にすると、調査手法・調査対象の選定も円滑に進みます。
参考:アンケートとは?目的や種類、質の高いアンケートを作るコツも解説
2.マーケティングリサーチの実施計画を立てる
実施計画は、次の5項目を軸に立案します。
- 調査対象者の条件
- 調査項目
- 調査手法
- 調査の対象人数
- スケジュール
先に決めた目的、および調査から得たい結果を踏まえ、具体的に計画しましょう。
3.マーケティングリサーチを実施する
決定した計画に従い、マーケティングリサーチを実施します。
ただし、大勢の調査対象から確実に回答を回収する作業は、容易ではありません。精度の高い結果を効率よく得るには、マーケティングリサーチを専業にする調査会社への依頼もおすすめです。
4.マーケティングリサーチの結果を分析する
調査により得たデータは、そのままでは活用できません。情報の種類やデータの活用イメージに合わせて最適な手法を選択し、分析することが大切です。調査結果から仮説を導き、次の意思決定につなげます。
5.マーケティングリサーチの結果を受けて意思決定する
調査と分析から導いた仮説を受けて、必要な意思決定を下します。実際の商品開発に進む場合だけでなく、新しい課題を発見し、あらためてマーケティングリサーチを実施する場合もあります。

マーケティングリサーチの主な手法
マーケティングリサーチの手法は、定量的・定性的の2グループに分けられます。それぞれの具体的な手法を解説します。
参考:定量調査と定性調査とは?定性調査の基本や方法、定量調査との違い、使い分けを解説
定量的なマーケティングリサーチ手法6つ
定量的とは、数値・数量であらわせる概念です。定量的なマーケティングリサーチは「数字で回答を得られる手法」といえます。
定量的な結果を得られるマーケティングリサーチ手法と概要は、以下のとおりです。
手法 | 概要 |
---|---|
インターネット調査 | インターネットを利用したアンケート調査。代表的な定量調査。 |
会場調査 | 調査対象者を一同に集め、同一条件下で実施する調査。 |
ホームユーステスト | 調査対象者の自宅で商品を利用してもらい、アンケートに回答してもらう調査。 |
訪問面接調査 | 調査対象者の自宅を訪問して行うアンケート調査。 |
街頭調査 | 街頭で通行人にアンケートを行う調査。 |
郵送調査 | アンケート用紙を郵送し、回答後に返送してもらう調査。 |
手法 | インターネット調査 | 会場調査 | ホームユーステスト | 郵送調査 | 訪問面接調査 | 街頭調査 |
---|---|---|---|---|---|---|
概要 | インターネットを利用したアンケート調査。代表的な定量調査。 | 調査対象者を一同に集め、同一条件下で実施する調査。 | 調査対象者の自宅で商品を利用してもらい、アンケートに回答してもらう調査。 | アンケート用紙を郵送し、回答後に返送してもらう調査。 | 調査対象者の自宅を訪問して行うアンケート調査。 | 街頭で通行人にアンケートを行う調査。 |
定性的なマーケティングリサーチ手法5つ
定性的とは、数値で表せない感覚や感想を指す概念です。定性的なマーケティングリサーチは「言葉で回答を得られる調査手法」といえます。
定性的な結果を得られるマーケティングリサーチ手法と概要は、以下のとおりです。
手法 | 概要 |
---|---|
グループインタビュー | 少人数グループの調査対象に、特定のテーマに関するインタビューを実施する調査。 |
デプスインタビュー | 調査対象者に1対1でインタビューする調査。 |
オンラインインタビュー | オンライン形態(ビデオ会議システムの利用)で調査対象者にインタビューを実施する調査。 |
訪問観察調査 | 調査対象者が実際にどのように商品を使っているか、自宅に訪問して現場を見ながらインタビューする調査。 |
日記調査 | 特定のテーマに関する情報や感想などを、日記のような形で調査対象者から回収する調査。 |
手法 | グループインタビュー | デプスインタビュー | オンラインインタビュー | 訪問観察調査 | 日記調査 |
---|---|---|---|---|---|
BBB | 少人数グループの調査対象に、特定のテーマに関するインタビューを実施する調査。 | 調査対象者に1対1でインタビューする調査。 | オンライン形態(ビデオ会議システムの利用)で調査対象者にインタビューを実施する調査。 | 調査対象者が実際にどのように商品を使っているか、自宅に訪問して現場を見ながらインタビューする調査。 | 特定のテーマに関する情報や感想などを、日記のような形で調査対象者から回収する調査。 |

重要なマーケティングリサーチ手法「パネル調査」とは
継続的な情報収集により、データの推移や傾向を把握できる「パネル調査」について解説します。
パネル調査とは
パネル調査とは、同じ調査対象に同じ質問を、一定期間に何回も行う手法です。パネルは「枠」の意味で、調査対象を枠に固定したような調査スタイルから名前が付きました。
ちなみに、1回完結型のアンケート調査は「アドホック調査」と呼びます。
パネル調査からわかる情報
パネル調査は、時間の経過とともに変化する要素を正確に把握できます。
時系列で変化する情報の例は、以下です。
- 消費動向
- 消費者の嗜好の変化
- ある商品の販売推移
- 消費者のメディア接触の傾向
パネル調査は、調査対象に継続的に接触するため、トライアルからリピートにつながった率も調べられます。
パネル調査のメリット
パネル調査を通じて得られるメリットは、3つあります。
- 時系列で正確に情報を取得できる
- 基礎情報の取得を省き、効率よく調査できる
- 対象者の確保にかかる労力が少ない
パネル調査は、特定の調査対象を継続的にリサーチします。他の調査手法に比べて、調査対象集めや基礎情報の取得にかかる手間が少なくて済みます。
パネル調査を実施する際の注意点
一定期間の継続が必要なパネル調査は、調査対象にも負担がかかります。調査対象が途中で離脱する可能性も十分考えられるため、必要数以上に調査対象者を確保しておかなければなりません。
また、1回の調査で完結するアドホック調査より、コストがかかりやすい点も押さえておきましょう。調査対象者に対し、継続的なアプローチをする人的・時間的リソースの確保が重要です。

マーケティングリサーチは課題に応じての実施が重要
マーケティングでは、プロセスごとにさまざまな課題が生じます。
新規市場に参入する前なら、トレンドの発見やターゲティング、ポジショニングなどが課題になるでしょう。商品開発の段階であれば、コンセプトの設定やターゲットからの受容度調査が必要です。
マーケティングリサーチは、マーケティングの問題を解決する有効な手段です。マーケティングのフェーズや課題に応じて、適切な手法を選択し実施しましょう。

マーケティングリサーチが重要性を持つ局面4つ
企業が抱える課題を解決する過程で、マーケティングリサーチが役立つ局面として、以下の4つが挙げられます。
- 現状把握
- 解決案の仮説構築
- 解決案の仮説検証
- 問題解決の後
どの局面でも、消費者や顧客のニーズの把握が課題解決の鍵を握ります。
また、それぞれの局面は相互に関連し合っています。全体をストーリーとして捉え、最適なマーケティングリサーチを選定し課題を解決しましょう。

マーケティングリサーチの注意点
効果性の高いマーケティングリサーチを実施するために、知っておきたい注意点を3つ解説します。
現状を正しく分析しておく
マーケティングリサーチの前には、自社の現状と課題の正確な分析が重要です。
マーケティングリサーチは、明確になった課題を解決する手段です。課題を精査できていなければ、調査をしても価値あるデータは得られないでしょう。
1つのマーケティングリサーチ結果だけに頼らない
マーケティングリサーチによって得られた結果は、限定的なサンプルから収集した情報であることを理解しておきましょう。
リサーチ結果の精度をより高めるためには、サンプル数を増やす方法が考えられます。また、結果に偏りが出にくい工夫を凝らすことも重要です。例えば、年代別の回答率を揃えるといった方法が考えられます。
マーケティングリサーチ専門会社のサポートを積極的に利用する
マーケティングリサーチは、手間とコストがかかる調査です。精度の高い結果を得ようとすればするほど、セグメントの細分化や手法の工夫などのプロセスが発生します。
より効率よくリサーチを進めるために、調査会社を利用を検討するのもよいでしょう。

まとめ
マーケティングリサーチは消費者の嗜好や動向を知る手段として、重要な意味を持っています。しかし、エビデンスに基づく精度の高いデータが手に入る一方で、実施には手間とコストがかかります。
スピーディな意思決定のためにも、マーケティングリサーチ会社の積極利用がおすすめです。株式会社マクロミルは、リサーチからデータの活用までを一気通貫でサポートします。マーケティングリサーチで得られたデータと、企業が持つデータを融合させ、消費者動向に即したマーケティング施策の提案も支援します。
また、以下の資料ではマーケティングリサーチの基礎をまとめています。無料でダウンロードいただけますので、ぜひお役立てください。
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