いきなり集計はNG?戦略の土台を作る「市場把握」3つのステップ【購買データ分析・実践講座 第1回】

公開日:2026/2/5(木)

「売上の増減はわかるが、その理由が説明できない」「ターゲット層を定義し直したいが根拠がない」。そんなマーケティングの現場で起こりがちな課題を、購買データはどう解決できるのでしょうか。本連載では、マーケティングの現場でそのまま使える実践的な分析アプローチを、以下のマーケティングフェーズごとに分けて紹介していきます。

  • 第1回 市場実態把握
  • 第2回 商談資料作成
  • 第3回 市場トラッキング

また本コラムではマクロミルの購買履歴データサービス【QPR-TRACE™】を用いた場合の分析例なども併せてご紹介します。
第1回のテーマは、商品開発のスタート地点となる「市場実態把握」です。 市場をマクロとミクロの両面から捉え、戦略の土台を作るための「3つのステップ」をマスターしましょう。

※QPR (Quick Purchase Report) とは:
全国3万5千人(15-79歳)のモニタのお買い物履歴を基に、購買者のデモグラフィック属性や詳細な購買動向の分析ができるマクロミルが提供するパネルデータサービスです。

監修

Macromill News 事務局

監修:株式会社マクロミル マーケティングユニット

20万人以上が登録するマーケティングメディア「Macromill News」を起点に、マーケティング知見や消費者インサイトに関わる情報を発信。

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【市場実態把握】の分析ステップ概要

闇雲にデータを集計し始める前に、まずは分析の全体像を整理しましょう。市場の実態を正しく把握するためには、場当たり的に数字を追うのではなく、以下の3つのステップで視点を「全体」から「詳細」へと移していくことが重要です。

[図1. 市場実態把握の3ステップ]

図1. 市場実態把握の3ステップ

分析ステップは、大きく分けて「 1.集計ベースの決定」「2. 基本的な市場の把握」「3.市場構造の深掘り」の3ステップとなります。各ステップについて、詳しく説明してまいります。

[Step1]集計ベースの決定

一連のデータ分析を行うにあたって、まず行うのは「集計ベース」の選択です。QPRなどの購買データでは、主に「金額(円)」と「数量(個)」が基本的な集計ベースとなります。

[図2. 集計ベースの例]

図2. 集計ベースの例

最も一般的なのは、「売上金額」に近しい「購入金額」を使った分析です。しかし、消費者の購買実態を把握する上では、必ずしも金額だけが正解ではありません。目的に応じて「金額」と「数量」を使い分けてください。

  • 市場規模や売上金額(購入金額)を見たい場合→「金額」ベースを使用します。
  • 消費量や商品の動きを見たい場合→「数量」ベースを使用します。

「金額」ベースでの集計は、昨今のような値上げ局面では注意が必要です。「購入金額は前年比で伸びているが、実は値上げによる単価増が要因で、買われている数量(個数)は減っている」というケースが多々あります。 この場合、金額だけを見ていると「好調」と誤認してしまいます。

「数量」ベースでの集計も、商品によって内容量のバラつきが多いカテゴリ(例: 500mlと1000ml、バラ売りとセット売り)では、正確な購入量が掴みにくい点には注意が必要です。

また、カテゴリによっては、「容量(ml)」「重量(g)」「入り数( 本数など)」等、商品の実質的な量を反映した単位が集計に適している場合もあります。「数量」よりもさらに正確に購入された量を分析することができますが、使用するデータベースに詳細な商品情報が含まれている必要があります。

*QPRの分析上の注意点
・QPRではすべての分析で「金額」と「数量」に加えて「購入回数」での集計が可能です。それ以外の集計ベースは、カテゴリやご契約によって使用できるものが異なります。
・分析レポートを抽出した後に、自由に集計単位を切り替えてデータを見ることができます。

[Step2]基本的な市場の把握

集計単位が決まったら、いよいよデータを抽出し、分析するステップに入ります。
まずは、「基本的な市場の把握」として、市場の全体像をマクロな視点でつかみます。

[図3.基本的な市場の把握の3ステップ]

図3.基本的な市場の把握の3ステップ

それぞれのステップについて、具体的な出力例や分析の際の注意点なども交えて、わかりやすくご説明していきます。

[Step2-1]市場トレンドの把握

まずは、カテゴリ全体が成長しているか、また、どのサブカテゴリや競合にニーズがあるのかなど、市場のトレンドを確認します。以下は、QPRの【トレンド分析】のグラフです。

【グラフ1】カテゴリ・サブカテゴリの市場規模推移(5年間)]

【グラフ1】カテゴリ・サブカテゴリの市場規模推移(5年間)]

【グラフ2】サブカテゴリ内上位ブランドの市場規模推移(5年間)

【グラフ2】サブカテゴリ内上位ブランドの市場規模推移(5年間)

月次・四半期・半期・年次などの時系列で市場規模(100人あたり購入金額)*の推移を確認します。カテゴリ全体、サブカテゴリ、主要ブランドとブレイクダウンすることで、カテゴリ全体が市場として伸長しているか、どのサブカテゴリにニーズがあるか、シェアを伸ばしている競合は何かといったトレンド状況を把握できます。

*QPRでは、市場規模を「100人あたり購入金額」という指標で表しています。分析対象となる消費者(モニタ)100人あたりの購入金額を示す指標であり、人口(15-79歳)100人分の購入金額に相当します。

さらに細かく好調な商品を確認したい場合は、商品単位で購入金額(100人あたり)を把握できる【アイテムランキング】を確認します。

【グラフ3】カテゴリの100人あたり購入金額順アイテムランキング(1年間)

【グラフ3】カテゴリの100人あたり購入金額順アイテムランキング(1年間)

購入金額の高い順に並べた商品群から市場の売れ筋商品を確認できます。また、昨年との数値の比較(昨対比)を見ることで、好調な商品や不調な商品を確認することもできます。好調な競合品は、その後の分析におけるベンチマーク商品の有力候補にもなります。

*QPRの分析上の注意点
【アイテムランキング】の商品はJANコード(バーコードの管理番号)で識別されるため、リニューアルなどでJANコードが変更されると、昨対比が出力されなくなる場合があります。

[Step2-2] 好不調要因の把握

市場のトレンド状況がわかったら、次はその「好調・不調の要因」を分析します。ここで使用するのは【間口奥行分析】です。

【グラフ4】100人あたり購入金額の要素の分解(2年間比較)

【グラフ4】100人あたり購入金額の要素の分解(2年間比較)

市場の売上(購入金額)は、以下の式で成り立っています。

売上(購入金額) = 購入者数 × 購入者1人あたり購入金額

【間口奥行分析】では、市場の好調・不調の要因を「購入者数*(間口)」と「購入者(1人)あたり購入金額(奥行)」とに切り分けて、どちらの増減によるものかを確認します。上の例では、「購入者あたり購入金額」の増加がより大きく、購入者ごとの平均購入金額が増えたことがカテゴリ伸長の大きな要因であることがわかります。

*購入者数は「購入率(%)」の指標で表しています。分析対象となる消費者(モニタ)のうち何%の人がその商品を購入しているかを示す指標です。

また、ここで注意したいのが前述の「値上げ」問題です。「購入者あたり購入金額」が伸びていても、それは「平均価格(購入単価)」が上がった(=値上げ)だけかもしれません。そこで、「購入者あたり購入金額」の要素もさらに分解して確認します。

【グラフ5】「購入者あたり購入金額」の要素の分解(2年間比較)

【グラフ5】「購入者あたり購入金額」の要素の分解(2年間比較)

「購入者あたり購入金額」は「購入者あたり購入回数」と「購入1回あたり購入金額」とに分けることができます。さらに「購入1回あたりの金額」は「平均金額」と「購入1回あたりの数量」とに分けることができます。このように要因を切り分けていくことで、「購入者の購入回数が増えたことにより、購入者1人あたりの購入金額が増加したことが、市場規模の伸長の大きな要因である」という実態を見極めることができます。

[Step2-3] 顧客像の把握

カテゴリの好・不調を把握し、さらに注目すべきサブカテゴリやブランドが明らかになったら、次は「誰が」買っているのかという「顧客像(ターゲット)」を明確にします。以下はQPRの【購入者属性分析】のグラフです。

【グラフ6】カテゴリ・サブカテゴリの購入者人数構成比(ライフステージ別)

【グラフ6】カテゴリ・サブカテゴリの購入者人数構成比(ライフステージ別)

カテゴリやブランドについて、購入者の属性(性別、年齢、ライフステージ等)別の人数または金額の構成比から、ボリュームゾーンとなる購入者層や比較対象との購入者層の差異を把握します。既存商品の改良のための分析であれば「自社の顧客」と「市場全体(または競合)」の属性を比較し、ズレや、まだアプローチできていない層を特定します。また、新規参入であれば、その市場や競合商品の顧客から「典型的な顧客像」を掴みます。

ここまでの、「基本的な市場の把握」のステップで、次のような市場の概要を把握することができます。

  • 市場が現在好調なのか、不調なのか。注目すべきサブカテゴリ・ブランドはどこか
  • 好調・不調の要因となっている要素は何か
  • どんな顧客層が市場のメインとなっているのか

以降の、より深掘りした分析を進めていくうえでも、この前提条件を踏まえておくことが仮説の構築や要因の推察に役立ちます。

[Step3] より深掘りした市場構造把握

市場の概要が掴めたら、次は購入者の「購買行動」に着目し、市場の構造を深掘りしていきます。

[図4.市場構造の深掘りの3ステップ]

図4.市場構造の深掘りの3ステップ

[Step3-1] 顧客の定着率の把握

対象とするカテゴリは、顧客の入れ替わりが激しい市場でしょうか。それとも固定客がつきやすい市場でしょうか。QPRの【新規継続離反分析】のグラフから確認します。

【新規継続離反分析】では、前後する2つの期間(前期と後期)の購入の有無から次のように購入者を分類し、顧客の流動状況を可視化します。

[図5.新規者・継続者・離反者の分類]

図5.新規者・継続者・離反者の分類

【グラフ7】カテゴリ別の「後期」購入者の「継続者」「新規者」の人数構成比

【グラフ7】カテゴリ別の「後期」購入者の「継続者」「新規者」の人数構成比

継続・新規者(あるいは継続・離反者)の比率から、カテゴリやブランドの成長が「新規顧客の獲得」「既存顧客の維持」のどちらに支えられているか等を見極められます。特に、複数のカテゴリ、ブランドを比較することでより具体的に傾向を判断することができます。

[Step3-2] ロイヤリティの把握

次に、カテゴリやブランドが、どれだけ「ヘビーユーザー」に支えられているかを確認します。以下は、QPRの【購入量層分析】のグラフです。

【グラフ8】購入量層別構成比

【グラフ8】購入量層別構成比

【購入量層分析】は、購入者を購入数量や購入金額の多い順に「ヘビー」「ミドル」「ライト」層に分類し、各層が人数と購入金額の何%を占めるかを見ます。これにより、一部のヘビーユーザーに支えられているのか、あるいはライトユーザーに広く浅く買われているのかという市場構造がわかります。
ユーザー層を定義する方法は、「購入額〇〇円以上がヘビー層」のように基準となる購入量を定める購入量基準と、「購入金額上位〇%までがヘビー層」のようにシェアでラインを引く累積シェア基準があります。

*QPRの分析上の注意点
QPRの【購入量層分析】には、ヘビー・ミドル・ライトを分ける基準(量層判定基準)を決めるためのシミュレーション機能があります。基準値の決め方はコラム末尾のAppendixの項をご参照ください。

[Step3-3] 併買状況の把握

次に、カテゴリ内での「併買」(商品同士が同じ購入者に買われること)の構造を確認します。これにより、ブランド間の競合関係や、顧客が商品を選ぶ際の潜在的なニーズを探ることができます。
併買の強さを表す指標には、「併買率」「リフト値」があります。

[図6.併買率とリフト値]

図6.併買率とリフト値

以下は、QPRの【併買分析】のグラフです。

【グラフ9】ブランドA購入者の競合ブランドの併買率・リフト値

【グラフ9】ブランドA購入者の競合ブランドの併買率・リフト値

ブランドAと併買されることが多く、直接的な競合となる可能性が高いのは、「併買率」が高いブランドBです。一方、ブランドEは「併買率」はさほど高くありませんが、「リフト値」が高く、共通の潜在ニーズを持つ顧客層に購入されている可能性があります。

*QPRの分析上の注意点
QPRの併買分析は、【期間併買】が基本となります。POS分析のような【同時併買(1回の買い物カゴ=バスケットでの併買)】ではなく、数カ月から1年間程度の期間内で、同じ顧客に購入された商品同士を「併買関係」とみなします。「同時併買」が商品の陳列(棚割り)やセット購入(レシピ検討)の参考になる一方、「期間併買」は顧客の隠れたニーズの深掘りや、競合関係を確認するのに役立ちます。

また、「AからBへ顧客が流れている(スイッチしている)」といったより具体的な流出入の構造を見たい場合は、【スイッチ分析(2期間)】を使用します。
【スイッチ分析(2期間)】は、前後の期間の購買行動を比較することで、あるブランドから別のブランドへ、どのように顧客の購入量が移動したかを明らかにすることができます。これにより、より直接的な競合関係を把握するのに役立ちます。

【グラフ10】ブランドAの競合ブランドとの流出入状況

ここまでの、「より深掘りした市場構造把握」のステップで、次のような具体的な市場構造を把握することができます。

  • 顧客が定着しやすい市場なのか
  • ヘビーユーザーの獲得状況と売上の集中度
  • 併買関係から見た競合関係・潜在ニーズ

ここまで分析することで、「どんな人に、どのように買い支えられているか」という市場のメカニズムが見えてきます。このような示唆を戦略立案に活かせれば、「売上を上げよう」という抽象的な目標ではなく、「特定の潜在ニーズに向けた商品を開発する」「ヘビー層の離反を防ぐ」といった、より精度の高い施策を打つことができます。

まとめ

今回は、商品開発等の第一歩として、市場の「今」を正しく把握する「市場実態把握」のための分析ステップをご紹介しました。具体的な分析ステップを知ることで、購買データ分析をご自身の業務にも落とし込めるイメージがわいてきたのではないでしょうか?
客観的なデータから市場を体系的に読み解くことで、戦略の精度は高まります。商品改良や新規参入の土台として、購買データ分析を是非お役立てください。
次回は「商談資料作成」をテーマとした分析手法をご紹介します。ご期待ください。


Appendix:購入量層分析の補足資料
[Appendix.1] 購入量層分析のユーザー判定基準
【購入量層分析】とは、顧客を商品の購入量や購入金額によって分類・分析する手法です。
分類には主に「1.購入量」と「2.累積シェア」の2種類の基準があります。

1.購入量基準(購入量の「絶対値」で判定する)
購入量や購入金額に対して、一定の閾値を設けて分類する方法です。
例:「年間購入金額 1,200円分以上」をヘビーユーザーと定義

  • この基準でわかること:
    ヘビー層の獲得状況: ロイヤリティの高い顧客をどの程度確保できているか。
    売上の集中度: 一部の顧客に売上がどれだけ依存しているか。
  • メリット
    ブランド間で同じ基準(1,200円など)を用いるため、「ブランド力(顧客をヘビー化させる力)」を直接比較できます。

2.累積シェア基準(購入量の「シェア」でグループを分ける)
売上への貢献度が高い順に顧客を並べ、売上全体の何%を占めるグループかで分類する方法です。

例:「売上全体の50%を占めるまでの上位層」をヘビーユーザーと定義

  • この基準でわかること:
    売上の集中度: ヘビー層の人数比率が極端に少ない場合、一部の熱心なファンに売上が強く支えられている(=依存度が高い)状態を示す。
  • メリット:
    ブランドによって購入単価や購入頻度が異なる場合でも、「顧客構造(一部への集中度)」を同列に比較できる。

[Appendix.2] ユーザー判定基準の策定方法
QPRの【購入量層分析】には、ヘビー・ミドル・ライトの判定基準を策定するための「シミュレーション機能」があります。
この機能を用いて、人数や購入量の比率を確認しながら、カテゴリやブランドの特徴が最も明確に出る基準値を探る考え方をご説明します。
※貴社独自の既定基準がある場合は、そちらを優先してください。

1.「購入量基準」を設定する場合の考え方

  • 感覚的な基準(肌感覚):
    「このカテゴリなら、年間で〇回(〇円)買っていればヘビーと言える」といった経験則や実感に基づいて設定する。
  • 段階的な分類(ステップダウン):
    まずヘビーの基準を決め、その半分をミドル、それ以下をライトとする。
  • 購買量構成比による逆算:
    分析対象の総購買量のうち、ヘビー層が約50%、ミドル・ライトが各25%程度になるように基準値を調整する。

2.「累積シェア基準」を設定する場合の考え方

  • 基本設定:
    初期設定として「ヘビー:売上の50%」「ミドル:25%」「ライト:25%」を用いて分析を開始する。
  • 調整が必要なケース:
    「ヘビー層の人数が少なすぎて分析が困難」「比較対象と差異が出ない」といった場合は、ヘビーのシェア基準を下げる(例:40%にする)などの調整を行う。

監修

Macromill News 事務局

監修:株式会社マクロミル マーケティングユニット

20万人以上が登録するマーケティングメディア「Macromill News」を起点に、マーケティング知見や消費者インサイトに関わる情報を発信。

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著者の紹介

落合優子

株式会社マクロミル 第2事業本部 アカウントマネジメント部 パネルデータビジネスユニット カスタマーサクセスグループ

落合 優子

中途入社後、「QPR(消費者購買履歴データ)」の集計部に配属。その後カスタマーサクセスグループへ異動。年間契約企業様へのQPR利活用促進業務に加え、データ集計業務を担当する。購買データを軸に幅広い業務領域に従事する。

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