「機能性アルコール」市場の8年を解剖!高所得層はなぜ「コスパ商品」を選ぶのか?

公開日:2026/1/21(水)

成熟した健康志向アルコール市場において、購買データと意識データから消費者の「なぜ買うのか」という深層心理を紐解きます 。年収などの属性イメージを覆す、ビール、RTDそれぞれの購入者が持つ意外な価値観を解説します。

監修

Macromill News 事務局

監修:株式会社マクロミル マーケティングユニット

20万人以上が登録するマーケティングメディア「Macromill News」を起点に、マーケティング知見や消費者インサイトに関わる情報を発信。

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近年、健康志向の高まりや多様なライフスタイルの広がりをきっかけに、「ギルトフリー」や「ソバーキュリアス」、「微アル」といった、罪悪感のなさやあえて飲酒しないことに着目したトレンドが浸透し、アルコール市場に新たな選択肢をもたらしました。その中で、ビール飲料やRTD*の機能性表示食品は、2018年度からの数年で市場を大きく拡大し、今やその地位を確立しています。市場が成熟期に入った今、次に重要となるのは、「誰が」買っているのかだけでなく、「なぜ」それを買うのか、という消費者の深層心理です。

今回は、機能性表示食品や特定保健用食品(特保)の飲料を「健康志向飲料**」と定義し、親和性の高いカテゴリとの比較や、バスケット単価の分析などの購買データと意識プロファイルを掛け合わせ、成熟市場における「新しいお酒との付き合い方」の真の姿を探ります。

*Ready to Drinkの略で、ふたを開けてそのまま飲める飲料。缶チューハイなどが該当します。

**性質上、健康志向のビール・RTDは、それぞれノンアルコールビール・ノンアルコールRTDの一種となります。

※商材の特性上、集計対象とするQPRモニタは20歳以上に限定します

※2018年9月~2019年8月を2018年度と定義し、以降の年度も同様とします

1.健康志向飲料市場の変遷

2018年度以降、健康志向アルコールの市場規模(100人あたり購入金額)は増加傾向にあり、2023年度まで毎年拡大を続けています。特に機能性表示食品のビール飲料は、2018年度から2020年度にかけて5倍以上に拡大し、2024年度の時点でも2020年度と同等の市場規模(100人あたり購入金額)となっています。また、機能性表示食品のRTDについても2024年度は2019年度の約2.5倍と、堅調な増加がみられます。

【図表1】健康志向飲料の市場規模(100人あたり購入金額)の推移
【図表2】健康志向飲料の購入率(購入者数)の推移

2. 健康志向アルコールの併買状況

では、市場が成熟した2024年度では、健康志向アルコール飲料はどのようなカテゴリと併買されているのでしょうか。健康志向飲料と、健康志向以外(機能性表示や特保の付いていない)アルコールとの併買分析*を見ていきます。

*QPRの併買分析では、指定した商品区分について、併買(同期間に他に何を買っているか)を確認できます。買い回りを知ることで、他カテゴリとの関係性を掴みます

【図表3】健康志向アルコールと健康志向飲料との併買

「飲料購入者TOTAL**」と比較すると、「健康志向ビール」・「健康志向RTD」はそれぞれの併買率が高く、併買関係があることが分かります。それ以外の健康志向飲料では、「健康志向乳飲料」の併買率の高さが目立ちます。

**2024年度にアルコールを含む何かしらの飲料を購入したモニタとなります

【図表4】 健康志向アルコールと健康志向以外アルコールとの併買

健康志向以外のアルコールでは、「ノンアルコールビール・ビールテイスト」との併買率が高いことが分かります。図表2の結果と合わせると、健康志向ビールと健康志向RTDは、健康志向乳飲料やノンアルコールビール・ビールテイストと親和性が高く、購入者の性質が類似しているカテゴリであることが分かります。

3.購入者の深掘り

3-1. 属性から見る購入者の特徴

続いて、健康志向ビール・RTDがそれぞれどのような人に購入されているのかを調べるために、購入者の属性を集計しました。集計結果は図表5、6*になります。

性年代別の集計では、健康志向ビール購入者は60代以上が多いこと、健康志向RTD購入者は50代女性が多いことが分かり、健康志向アルコールが比較的高齢層に支持されていることが示されました。また、健康志向ビールは世帯年収200-400万、健康志向RTDは600-800万の世帯が多いことから、健康志向RTD購入者は健康志向ビール購入者と比べて、購買力が高い傾向にあることが予想されます。

【図表5】健康志向ビール購入者(対象者)と健康志向飲料購入者(比較対象)との属性比較
【図表6】健康志向RTD購入者(対象者)と健康志向飲料購入者(比較対象)の属性比較

*QPRモニタの属性を、「SCAPEプロファイル」サービス(3-3. 購入者の意識プロファイル)で使用しているフォーマットに合わせて作成しています。

3-2.バスケット分析から見る購買状況

一方で、収入の中で消費に回す割合は世帯によって異なるため、必ずしも収入と購買力は一致しない可能性があります。そこで、より消費実態を明らかにした上で、「商品の買われ方」という観点から健康志向アルコール購入者の特徴を調べるために、2024年9月-2025年8月の1年間の購買データからバスケット分析を実施しました。

バスケット分析は、分析対象となる商品が含まれるバスケット(買い物かご)の総金額や含まれる商品数、各商品の購入者の購入頻度を集計する手法です。これにより、「商品○○は商品△△と比べてバスケット単価が高く、購入者が多くの支出を行う傾向にある」など、各商品購入者の消費の積極性や、店から見た優良性を明らかにすることができます。

■分析概要

・分析手法:バスケット分析
・対象期間:2024年9月~2025年8月
・使用データ:JICFS食品データ(たばこを除く)
・分析対象:各種健康志向飲料、ビール類、RTD類
・対象業態:全業態
・対象モニタ:20歳以上のQPRモニタ

■分析結果

【図表7】健康志向飲料、ビール、RTDのバスケット分析*
*QPRデータを用いたアドホック分析サービス、「QPR-ANALYZE」で提供している分析手法となります

健康志向ビールを例にとると、それぞれの指標は以下のように読み解くことができます。

・01_バスケット単価:
健康志向ビールが購入される際に「同じバスケットに含まれる食品の総金額」は平均2,423.6円

・02_バスケット内数量:
健康志向ビールが購入される際に「同じバスケットに含まれる食品の総数量」は平均10.3個

・03_購入者あたり購入回数:
健康志向ビール購入者の「1年間の食品購入回数」は平均291.3回

・04_平均価格:
健康志向ビールの「平均購入単価」は421.7円

この例のように健康志向ビール・RTDについて読み取り、属性も含めて特徴をまとめた結果を、以下の図表に示しています。

【図表8】バスケット分析サマリ

■健康志向ビールの特徴

他商品と比較して、健康志向ビールが最もバスケット単価が高い結果となり、一度の買い物で多額の金額を支払う優良消費者と考えられます。属性分析では、世帯年収200-400万の世帯が多く、購買力が低いと示唆されましたが、分析で示されたバスケット単価の高さや商品特性を踏まえると、むしろ嗜好や健康に積極的に支出する気質があるという仮説が立てられました。また、ビールの特性として、6缶パックによるまとめ買いが単価を押し上げた可能性はあるものの、購入回数や数量の高さ、健康志向以外のビールと比較したバスケット単価の高さからは、それだけでは説明できない積極性が伺えます。

■健康志向RTDの特徴

さらに、健康志向RTDは全カテゴリでバスケット内数量が最も多い一方、バスケット単価や平均価格は高くないことから、安価な商品を多く買っている傾向が読み取れます。このことから、健康志向RTDが金銭・健康の両面において購入者の罪悪感を減らす、「ギルトフリー」な商品として選ばれているという仮説が立てられます。一方で、健康志向ビール購入者と比べて比較的世帯年収は高いものの、消費や健康への積極性は見られないという結果になりました。

こうしたバスケット分析を通じて、購入者の価値観に基づく仮説が立てられました。次節ではQPRモニタへのアンケートの分析を通じて、購入者の意識を検証します。

3-3.購入者の意識プロファイル

バスケット分析で立てた仮説について検証するために、QPR-SCAPE*を用いて、購入者の意識に基づいたプロファイルシートを作成します。健康志向飲料購入者全体を比較対象とし、健康志向アルコール購入者の特徴的な意識を示した結果が以下となります。 

■分析概要

・分析手法:SCAPEプロファイル
・購買期間:2024年9月~2025年8月
・使用データ:QPR-SCAPE調査(2025年6月調査)
・分析対象:健康志向ビール、健康志向RTD購入者(比較対象として健康志向飲料購入者)
・対象モニタ:20歳以上のQPRモニタ

*約3万人のQPRモニタに年に1回実施しているアンケートで、意識データを収集しています

■健康志向ビール購入者の特徴

【図表9】健康志向ビール購入者のプロファイル

健康志向ビール購入者の特徴として、運動や食事制限などの行動を実施していること、買い物では価格を気にする一方、健康を維持するためにはお金や時間をかけていることが挙げられました。バスケット分析では、健康志向ビール購入者は消費に積極的で、健康のために支出を惜しまないという仮説が立てられていましたが、意識データを用いたプロファイルによってこの仮説が支持されています。

■健康志向RTD購入者の特徴

【図表10】健康志向RTD購入者のプロファイル

健康志向RTD購入者の特徴としては、健康志向ビール購入者より健康にお金や時間をかけないが、見た目を気にする傾向があること、買い物が好きであることが挙げられます。健康志向RTD購入者が買い物を好むという傾向は、バスケット分析の仮説と一致していました。また、「なるべくお金や時間を掛けたくないが、より良い見た目でありたい」といった意識は「お酒を飲むのは我慢したくないが、なるべく健康に悪いものは避けたい」といった、ギルトフリーな商品との相性の良さが伺えます。

以上の結果から、健康志向アルコール購入者は、バスケット分析で立てた仮説と概ね近い価値観を持っていることが示されました。このように、購買データと意識を掛け合わせることで、より深い購入者理解が可能となります。

4.まとめ

健康志向アルコール市場は拡大・定着を経て、成熟期に入りました。その背景として、コロナ禍による健康志向の広がりや、「ギルトフリー」「ソバーキュリアス」といった、新たなお酒との付き合い方の定着が考えられます。

それと同時に、単なる性年代や年収といった属性だけでは捉えきれない側面が浮き彫りになっています。事実、今回の調査では「世帯年収は控えめだが、健康への投資は惜しまず、消費に積極的な健康志向ビール購入者」と、「比較的裕福だが、安価でギルトフリーな商品を好むRTD購入者」という、属性のイメージとは異なる購買実態が明らかになりました。

このように、消費者の真の価値観を理解するには、「誰か」(属性)を知るだけでは不十分です。その買い物かごに他に何が入っているのか、普段から何を考えて買い物をしているのか。「なぜ」それを買っているのかを含めて購買行動全体を俯瞰する視点こそが、複雑化する市場で消費者の心に響く提案を生み出す鍵となるのではないでしょうか。

著者の紹介

吉川 錬太郎

株式会社マクロミル 第2事業本部 データマネジメント部 購買データアナリスト

吉川 錬太郎

新卒入社後、消費者購買履歴データ(QPR)を扱うデータ集計部に配属。
パネルデータの集計・分析業務に従事し、消費財メーカーの専任アナリストとして、クライアントの課題に応じた分析設計も行う。購買データを軸に幅広い業務領域に従事する。

平野 絵実

平野 絵実

中途入社後、消費者購買履歴データ(QPR)を扱うデータ集計部に配属。
パネルデータの集計・分析業務に加え、レポート作成を対応する。購買データを軸に幅広い業務領域に従事する。

監修

Macromill News 事務局

監修:株式会社マクロミル マーケティングユニット

20万人以上が登録するマーケティングメディア「Macromill News」を起点に、マーケティング知見や消費者インサイトに関わる情報を発信。

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