「インタビューで何を聞けばよいかわからなかった」
「聞きたいことはあったのに、本番で抜けてしまった」
「参加者の話を深掘りしきれず、表面的な答えばかりになった」
こうした経験は、ユーザーインタビューや定性調査の現場でよく起きるものです。その原因の多くは、“場当たり的な進行”にあります。
そこで欠かせないのが「インタビューガイド(Interview Guide)」の存在です。
インタビューガイドとは、調査の目的や仮説に基づき、インタビューで聞くべき内容や質問の順序を体系的に整理した設計資料のことです。インタビューの流れを明文化することで、モデレーションの精度が高まり、調査結果の一貫性と再現性が向上します。
この記事では、調査実務におけるインタビューガイドの定義、目的、構成要素、設計ステップ、具体的な質問例、活用上の注意点までを、体系的に解説していきます。
- インタビューガイドとは何か?その定義と目的
- なぜインタビューガイドが必要なのか?
- インタビューガイドの構成と作成ステップ
- 質問設計のコツ:深掘りと共感を引き出す工夫
- ありがちな失敗と回避策
- まとめ:インタビューガイドは“思考の整理図”である
インタビューガイドとは何か?その定義と目的
インタビューガイドとは、インタビューを通じて明らかにすべき内容を漏れなく聞き出すための設計書であり、モデレーターが“調査の設計意図を実現するための進行計画”です。
単に「質問リスト」ではなく:
- 調査目的に基づいた“情報の収集設計”
- 仮説検証の“優先順位の整理”
- インタビューフロー全体の“構造と流れの設計”
といった要素が含まれます。
調査の現場では、時間が限られており、参加者ごとに温度感や回答の深さが異なります。ガイドがなければ、どこまで深掘りすべきか、何を優先すべきかの判断が曖昧になり、調査結果の比較や分析に支障が出ます。
つまり、インタビューガイドは「聞くための準備」であると同時に、「分析につながる前提づくり」でもあるのです。
なぜインタビューガイドが必要なのか?
インタビューは、即興の会話ではありません。事前に明確な設計図がなければ、聞きたいことを聞き逃し、仮説検証が不十分になり、データの質が低下してしまいます。インタビューガイドが必要とされる背景には、以下のような理由があります。
調査目的と現場のズレをなくすため
モデレーターは、必ずしも調査設計をした本人とは限りません。そのため、インタビューガイドを通じて「なぜこの質問が必要か」「この回答で何を読み取りたいのか」を共有しておくことが不可欠です。
会話の流れを設計し、場の質を高めるため
インタビューは一問一答ではなく、文脈のある会話です。質問の順番や遷移の設計が不自然だと、参加者は戸惑い、自由な発言がしづらくなります。ガイドによってスムーズな流れをつくり、心理的安全性を高めることができます。
分析しやすいデータを収集するため
インタビュー結果は後で読み返し、コーディングし、比較・分析する必要があります。質問が曖昧だったり、回収した内容がまちまちだと、分析に耐えられない“ブレたデータ”になります。インタビューガイドは、比較可能なデータを揃えるための設計図でもあります。
時間を守り、質問の優先順位を管理するため
限られた時間の中で、すべてのトピックを丁寧に扱うことは難しい場合もあります。インタビューガイドに“Must/Should/Could”のような優先度を設けておくことで、状況に応じた柔軟な対応が可能になります。
インタビューガイドの構成と作成ステップ
インタビューガイドは「順番通りに読む台本」ではなく、「調査目的を達成するための道筋を可視化したフレーム」です。以下は、基本的な構成と作成のステップです。
調査目的の明記
ガイド冒頭には、以下のような情報を記載しておくと効果的です。
- 調査全体の目的と背景
- 想定している仮説
- このインタビューで明らかにしたいこと
- 特に注目している質問やテーマ
これにより、誰が実施しても共通の認識で進行できます。
導入トーク
インタビュー冒頭の挨拶や説明、アイスブレイクもガイドに含めます。参加者の緊張をほぐし、安心して話せる空気をつくるための一言があるだけで、発言量が変わってきます。
例:
「今日は皆さんのご意見をうかがいたくてお時間をいただきました。正解はないので、気楽にお話しくださいね」
本質問(メインセクション)
テーマごとに質問を分類し、それぞれに以下のような設計要素を加えます。
- 質問文(口頭でそのまま読み上げる形が望ましい)
- 質問の意図(モデレーターが理解すべき背景)
- フォローアップ例(深掘りする際の参考)
- 優先度(Must/Should/Couldなど)
締めのトークと振り返り
最後に、「言い残したことはないか」「全体を通して印象に残った点は?」などのクロージング質問を設けます。さらに、インタビュー終了後にモデレーターが気づいた点や反省を記録する欄も設けておくと、次回の改善につながります。
質問設計のコツ:深掘りと共感を引き出す工夫
良質なインタビューガイドは、単に質問を並べるだけではなく、「深く考えてもらえる問い」と「自然に話しやすい流れ」を両立させる設計になっています。ここでは、質問文をつくる際の実践的なコツを紹介します。
オープンクエスチョンを基本にする
「はい/いいえ」で答えられる質問では、思考や感情を引き出すことができません。「なぜそう思いましたか?」「そのとき、どんな気持ちでしたか?」など、自由に話せる問いかけが基本です。
✕:この商品を使って満足しましたか?
○:この商品を使って、どのような点が特に良いと感じましたか?
質問は“ひとつずつ”にする
質問の中に複数の要素が含まれると、参加者はどれに答えればいいのか迷ってしまいます。設問はできるだけシンプルに、1トピック1クエスチョンの原則を守りましょう。
✕:使いやすさや価格に満足していますか?
○:まず、使いやすさについてどう感じましたか?(→価格は次に聞く)
時系列やストーリー構造を意識する
思い出しやすく、語りやすい流れをつくるには、「過去→現在→未来」や、「きっかけ→選択→結果→振り返り」など、時間軸やストーリーの構造に沿って質問を配置するのが効果的です。
本音を引き出すための“揺さぶり質問”を用意する
参加者が最初に話す内容は、必ずしも本音とは限りません。「他の商品と比べたら?」「もし今からやり直せるとしたら?」など、視点を変えることで“表層の意見”を“内面の本質”に掘り下げていくことができます。
ありがちな失敗と回避策
質問項目が多すぎて時間内に終わらない
→ 対策:全体で必ず聞く“核心質問”を3〜5個に絞る。それ以外は時間があれば聞く“余白”として設計する
質問の意図がモデレーター間で共有できていない
→ 対策:インタビューガイドに「質問の目的」や「どう聞いてもらいたいか」をコメントで明記する。複数人で実施する場合は、事前ブリーフィングを必ず実施する
インタビュー後に「聞き逃し」に気づく
→ 対策:ガイドに“チェック欄”や“メモ欄”を設けて、リアルタイムで確認できるようにする。録音だけに頼らず、進行中に目を通せる設計が安心につながる
まとめ:インタビューガイドは“思考の整理図”である
インタビューガイドとは、調査現場において「何を聞くか」だけでなく、「なぜ聞くのか」「どんな順番でどう引き出すか」を整理する、いわば“対話設計の地図”です。
- モデレーターの感覚だけに頼らず
- チーム全体で仮説を共有し
- 回収データの質と分析のしやすさを高める
そのためのツールとして、インタビューガイドは極めて重要な役割を担っています。
調査は“聞いたこと”ではなく、“聞けたこと”で評価される。
その「聞けるかどうか」を決めるのが、ガイド設計です。
迷いなく問いかけ、深く共感し、鋭く掘り下げる――
そのための準備を、あなたのガイドが支えてくれるはずです。
著者の紹介
株式会社マクロミル
鳥居 慧
2009年に株式会社マクロミルに入社。
10年以上にわたり定量調査から定性調査まで幅広いリサーチサービスの運用部門に従事し、10,000件以上のプロジェクトに関与。
2024年、セルフ型のオンラインインタビュープラットフォーム「Interview Zero」を立ち上げ、プロダクト責任者として従事。
