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セミナーレポート「アジアZ世代の価値観、ライフスタイル、購買行動を理解する」【後編】

2021年12月7日、中国・タイ・ベトナム・インドネシアのZ世代(以下、アジアZ世代)の価値観や購買行動を理解いただくためのセミナーを開催しました。本レポートでは、講演内容を抜粋してご紹介いたします。
当レポートは、前回に続く後編です。前編では、当取り組みの背景やアジアZ世代の定義、彼らに影響を与えた社会背景についてご紹介しました。後編では、アジアZ世代のアイデンティティや価値観、そして購買行動についてご紹介します。

アジアのZ世代の価値観・ライフスタイル・購買行動を理解する

■ 開催日時:2021年12月7日(火)15:00~16:00

■ 告知ページ:https://info.macromill.com/seminar/20211207.html

講師紹介

北島 尚(きたじま・ひさし)

株式会社マクロミル
グローバルリサーチ本部 海外事業開発ディレクター

4. アイデンティティ・価値観

アジアZ世代の価値観は、「個人主義的」であることが共通点です。その背景に、興味がある世界中の情報に自らアクセスしやすい時代に育ったことがあります。SNS上で自己表現を行う人が多く、「コミュニティで認められたい」という承認欲求があります。
共通点、背景を踏まえ、国ごとのZ世代の特徴を見ていきましょう。

中国
中国

中国のZ世代は、個人主義的な価値観に加え、強い競争心、そして、個人的な成功と自己実現を重視する傾向があります。前編の社会背景でも触れましたが、政府方針の成功や自国技術の高度化によって、ナショナリズムが高まり、強まっています。また、社会課題に対する意識は高まっていますが、欧米とは異なる特徴が見られます。

個人的成功と競争心

強い競争心と、成功に対する高い目標を持っているため、起業家精神に共感します。その反面で、「躺平タンピン族(寝そべり族)」と言われる低欲望・無気力な人たちも一定数存在します。

承認欲求の強さに影響する価値観

前の世代(ミレニアル世代)の価値観は、「贅沢品」がステータスでしたが、Z世代の価値観は「独特な体験・製品」というように変化しています。その背景には、ピアグループ(年齢・社会的立場・境遇などがほぼ同じ人たちで構成されるグループ)内での評価や、コミュニティ内で認められたいという承認欲求の強さが影響しています。

ナショナリズムの高揚

政府方針の成功・自国技術の高度化などにより、前の世代(ミレニアル世代)よりも愛国心が強く、ナショナリズムが高まり、強まっています。

社会課題への意識

社会課題に対する関心は高まっているものの、SDGs対する関心は低い状況です。買い物の選択にはSDGsの視点は入らず、環境に配慮した消費には消極的です。LGBTQの許容に関しても、社会的な目を気にすることから積極的なカミングアウトは低調です。

タイ
タイ

タイのZ世代は、個人主義を持ちつつ伝統的な価値観も持ち合わせていることが特徴です。アジア4カ国の中では、社会課題への意識が最も高く、課題に対してアクションを起こす傾向があります。また、同世代から認められたいという意識を強く持っており、見た目や外見を重視し、他人と比較をする傾向があります。

個人主義と集団主義の間を行き来

前の世代(ミレニアル世代)よりも個人主義的な傾向が強く見られますが、欧米と比較すると、伝統的な価値観やルーツを意識する傾向があります。

表現の自由と権利

政府に対して、表現の自由の制限緩和を望んでいます。人に管理されることを嫌がる一方で、ガイドラインは必要と考えており、年配の人の意見には耳を傾けるべきだという一面も持ち合わせています。

社会課題への意識

アジア4カ国の中では最も社会意識への関心が高く、チャリティイベントを開催するなど、行動を起こす人が多いです。しかし、経済的な不安を持っているため、社会問題よりも経済成長を優先した行動を取る傾向にあります。

ピア・プレッシャー

同世代のピアグループから認められ、受け入れられることを望んでいます。そのため、見た目・外見を重視し、他人と比較する傾向があります。

ベトナム
ベトナム

ベトナムのZ世代の特徴は、個人主義かつ、チャレンジ精神を持っていることです。利益を求める傾向が強く、成功の基準は資金力と考えています。自己顕示欲がモチベーションとなり、「体験」に支出をする傾向があります。また、社会課題への高い意識を持っています。

個人主義・他人との距離感

人から尊重されること、パーソナルスペースを持ちプライベートな情報を秘密にすることを重視しています。また、自分の考えを周囲に遠慮なく伝えるといった一面も持っています。

責任感とチャレンジ精神

試練に立ち向かうことや、新しい物事を学ぶことに、高い意欲を持っています。ハイリスク・ハイリターン志向であり、スタートアップ企業に関心を持っています。

物質主義と実利主義

人間関係に置いても打算的で、利益を求める傾向が見られます。人間関係よりもキャリアやお金を稼ぐことを優先し、成功の基準は資金力と考えています。

「所有」から「体験」へ

「体験」のためにお金を使い、お金は「体験」を集めるための手段に過ぎないという割り切った考えを持っています。SNSで目立ちたいといった自己顕示欲が、支出へのモチベーションとなっています。

社会課題への意識

タイのZ世代と同様に、社会問題への意識が高い傾向にあります。ベトナム政府の政策による環境問題に関する教育や啓蒙が影響しています。また、LGBTQに対しても寛容で、オープンに受け入れています。

インドネシア
インドネシア

インドネシアのZ世代も個人主義で、かつ、実利主義です。他国では宗教離れが進む中、イスラム教に自分たちの新しい感覚を取り入れた、新たな文化を生成しています。社会課題への意識は消極的で、社会的議論は顕在化していません。

個人主義かつ実利主義

インドネシアのZ世代もまた個人主義で、かつ、実利主義の特徴が見られます。インドネシアの伝統的な価値観(社会的連帯感)は希薄化の傾向も見られますが、今も家族を重視する価値観は保たれています。

また、物質主義的な価値観を持っており、モノを所有することがステータスです。モノを所有するために、手っ取り早くお金を稼ぐことも定着しています。

宗教に新感覚を取り入れた新たな文化

宗教に対する姿勢が、他国のZ世代との大きな違いと言えます。インドネシアは、人口の87%がイスラム教徒であるイスラム国家ですが、Z世代はこのイスラム教に対して自分たちの新しい感覚を取り入れ、新たな文化を生成しています(例:ファッション×イスラム教、音楽(ヒップホップ)×イスラム教など)。

社会問題への意識

自国の政治は腐敗していると考えられていることから、社会問題に対して積極的ではないことが大きな特徴です。また伝統的な価値観に沿うため、LGBTQに関する社会的議論は顕在化していません。

5. Z世代の購買行動

ここからは購買行動について見ていきましょう。
アジアZ世代は共通してデジタルネイティブであり、情報収集も買い物もスマートフォン等のモバイルを利用し、有利な買い物のためには個人情報の入力もいとわない傾向があります。アイデンティティや価値観で紹介した「ピアグループに認められたい」という承認欲求は、購買のモチベーションへも影響を与えています。社会問題に関連する購買行動については、タイ・ベトナムと、中国・インドネシアで特徴が分かれます。
国ごとに詳しく特徴を見ていきましょう。

中国
中国

中国の総家計支出に占めるZ世代の支出額は米国とほぼ同等で、高い水準となっています(2019年基準)。ピアグループで認められたいという強い承認欲求がブランドの選択にも影響し、また、自国製品を好んで買い物をします。SDGsは認識しているものの、追加費用を払ってまで購入しようという意識は低い傾向があります。

ブランドの選択基準

ピアグループで認められたいという承認欲求がブランド選択にも影響し、ブランド名よりも、パッケージ、スタイル性・見た目、機能性が優れたブランドを好む傾向があります。また、カスタマイゼーション(大量生産を活かしつつ、個々のニーズに合わせた商品やサービス)できる商品が人気です。ネット上の口コミ・KOL※1のセレブリティを重視する傾向も見られます。

(※1)Key Opinion Leader(キーオピオニオンリーダー)の略。特に中国の消費者に強い影響力を持つインフルエンサー。

ブランドに求めること

  1. Made in China
    製造業のグレードが上がったことや、前段で触れたナショナリズムの高揚も背景にあり、自国社会への貢献とも捉えて国産を好んで買い物をします。また、中国ブランドは、海外ブランドよりも中国の消費者をよく理解していると考えています。
  2. SNSでのプレゼンス(存在感)の高さ
    ピアグループと大衆から一線を画したいという心理から、SNSのさまざまなコミュニティで認められたいと考えています。また、中国はデジタルエコシステム※2が分散しており、Eコマースも多数のアプリが存在しているため、Z世代はさまざまなチャネルに接触し、使いこなしています。それによって企業側もさまざまなタッチポイントでZ世代への接触をカバーする必要があります。
  3. SDGs商品は未だ求めてられていない
    SDGsについては認識していますが、追加費用を払ってまで購買したいとは考えていません。

(※2)企業間の連携によってサービスを発展、新たな価値を生み出す等、連携によってより大きな収益を作る構造。

タイ
タイ

タイのZ世代は、オムニチャネルで買い物をする特徴があります。また、価格とブランドストーリーが合うことや、ピアグループで認められることを重視します。SDGs商品に関心はあるものの、現状は経済性を優先しています。

購買チャネル

デジタル一辺倒ではなく、店舗やECサイト、SNSなど、オンライン・オフライン問わず、あらゆるタッチポイント(オムニチャネル)を活用した買い物をします。オフラインで商品を確認し、ネット上の口コミを確認、信頼する人からのアナログな口コミも参考にするなど、さまざまな情報を収集し、製品の比較と評価を行います。

ブランドの選択基準

  1. 「機能的な価値×価格×ブランドストーリー」のバランス
    有名なブランドや歴史のあるレガシーブランドが絶対ということではなく、機能的な価値が高いことや価格とブランドストーリーのバランスを重視しています。
  2. 同調意識×承認欲求
    ピアグループやインフルエンサーの購入・推奨に基づいて購入したい、購入したものをSNSでピアグループに自慢したい、というモチベーションのもとに買い物をします。商品やサービスを通して、自己のイメージを投影したいと考える傾向があります。しかし、最近は、「インフルエンサーはマーケティングの仕掛け」であると、懐疑的になってきています。

ブランドに求めること

  1. ブランドエンゲージメント
    機能的な価値が高いことや価格とブランドストーリーのバランスを重視していることから、Z世代は何を求めているのか、流行っているのかなど企業側が理解することで、ブランドエンゲージメント(ブランドに対する消費者との深い関係性)を築くことが重要となっています。
  2. SDGs
    タイ首都圏のZ世代は、個人主義的価値観と意識の向上により、社会や環境に対する意識が高いブランドの商品を持つことで、ポジティブな自己イメージを演出しようとする傾向があります。しかし、現状は、サスティナビリティよりも経済性を優先しています。
ベトナム
ベトナム

ベトナムのZ世代は、検索から購買までをワンストップで行えるデジタルの購買チャネルを利用し、良い購買条件を得るためには個人情報の提供もいとわない傾向があります。ブランドよりも機能性を重視し、いかに目立つかを重視します。

購買チャネル

ECサイトでの買い物とeウォレットでの決済がメインです。ECサイト上で個人情報を入力し共有することには抵抗がなく、割引情報や新製品の通知など多くの特典を得るために必要なことであると考えています。

ブランドの選択基準

  1. 有名ブランドよりも「機能性・スタイル性」を重視
    パソコンやスマートフォンなどの情報機器に関しては、有名ブランドよりも最先端の機能を備えているかどうかに高い関心があります。
  2. 有名ブランドよりも「目立つこと」を重視
    ピアグループやセレブが生み出した、最先端の流行やセンスを重視しています。これらには、FOMO意識※3が影響していると考えられます。

(※3)取り残されることへの恐れ。インターネットやSNS上で他人や情報と常につながっていないと、自分だけ取り残されてしまうのではないかと不安を覚える。自分が流行の最先端にないとピアグループから取り残されるかもという不安。

ブランドに求めること

  1. SDGs
    政府による環境問題に関する教育の影響もあり、環境へ配慮する企業ブランドを支持しています。
  2. 顧客対応
    他者から尊敬され、パーソナルスペースを持ち、プライベート情報を秘密にすることを重視しており、ブランドに対して迅速かつ顧客に敬意のある対応を求めています。
  3. 地元ブランドを支持
    食品・消費財・衣服は、地元のブランドを支持しています。
  4. 個性とトレンドへの対応
    「個性的であること」「目立つこと」を重視し、流行の最先端にいたいという意識があります。そのため、ブランド側は、Z世代の間で個性を際立たせるデザインは何か、若者のトレンドは何かを把握し、対応する必要があります
インドネシア
インドネシア

インドネシアのZ世代はオムニチャネルで買い物をする特徴があり、良い購買条件を得るためには個人情報の提供もいとわない傾向があります。レガシーブランドよりも多機能・低価格であることを重視し、自分たちの信念や個性と共鳴するかを選択基準としています。

購買チャネル

オンラインとオフラインを組み合わせたオムニチャネルで買い物をします。電子決済への信頼が薄く、サプライチェーンが確立できていないことから、現金決済を好む傾向があります。

ブランドの選択基準

  1. 有名ブランドより、コスパを重視
    有名ブランドよりも、価格や割引キャンペーンの適用などコスパを重視しています。
  2. 新機能があるか、革新的か、流行の先端か
    テクノロジーもファッションも入れ替わりが早く、ライフサイクルが短いことを理解しており、質には妥協する傾向があります。そのため、最新の機能と価格のバランスがあっていれば支持されます。

ブランドに求めること

  1. ブランドの正当性(本物感)
    透明性と正当性(本物感)があり、ブランドの本質がはっきりと正確に投影されていることを重視します。
  2. 自分の信念や個性と共鳴するか
    有名ブランドかどうかにはこだわりがなく、自分の価値観にマッチしているかが判断材料となっています。

購買決定に影響をあたえるもの・情報ソース

SNSインフルエンサーの影響力が低下しています。インフルエンサーが発信する情報には、企業やブランドがスポンサーとなっていることに気づき始めたためです。実際のユーザーやピアグループのユーザー体験に基づくレビューを重視しており、割引サービスのためなら個人情報を提供することをいとわない傾向があります。

6. まとめ

社会的背景・価値観・購買行動の研究から見えてきたアジア4カ国のZ世代の特徴、いかがでしたでしょうか。他の世代とは異なるZ世代の特徴を捉え、国ごとのターゲットにあわせたアプローチが重要です。

今回は中国・タイ・ベトナム・インドネシアについてご紹介しましたが、調査結果の裏側には必ず社会背景や文化背景があります。これは海外調査を行う上でとても重要なことです。海外で調査を行い、スコアを読み解く際のポイントとして参考にしていただければ幸いです。

北島尚著 セミナーレポート「アジアZ世代の価値観、ライフスタイル、購買行動を理解する」

北島尚
株式会社マクロミル 海外事業開発ディレクター
米国フォーダム大学大学院修士課程修了。LVMHグループにてブランドマネージャー、PwCコンサルティングにて国内外の企業のマーケティング戦略プロジェクトに参画。その後、オグルヴィ&メイザーにて日本企業の海外ブランディングおよびマーケティングを支援するエキスポートプラクティスを起ち上げ、ジェネラルマネージャーとしてチームをけん引。現在は、マクロミルにて日本企業の海外市場における調査と戦略サポートを務める。

お客さまの課題・ニーズを伺ってリサーチの企画・提案を行います。
お気軽にお問い合わせください。

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