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セミナーレポート「アジアZ世代の価値観、ライフスタイル、購買行動を理解する」【前編】

2021年12月7日、中国・タイ・ベトナム・インドネシアのZ世代の価値観や購買行動を理解いただくためのセミナーを開催しました。本レポートでは、講演内容を抜粋してご紹介いたします。

アジアのZ世代の価値観・ライフスタイル・購買行動を理解する

■ 開催日時:2021年12月7日(火)15:00~16:00

■ 告知ページ:https://info.macromill.com/seminar/20211207.html

講師紹介

北島 尚(きたじま・ひさし)

株式会社マクロミル
グローバルリサーチ本部 海外事業開発ディレクター

1. 背景

アジアでは、2025 年にはZ世代が人口の4分の1を占めるようになると予想されています。Z世代が経済活動年齢に達すると購買力も上がり、近い将来に消費トレンドをけん引していく層になるため、多くの企業が注目し、Z世代に関するさまざまな定量調査を実施しています。
しかし、調査結果を目にした際、「なぜこういった傾向がみられるのだろう」といった、スコアへの解釈への悩みに直面されることがあります。その裏には必ず「意識に影響を与える社会背景や文化背景」があり、これは調査を行う上でとても重要なポイントです。

このような中、当社は、中国・タイ・ベトナム・インドネシアの4カ国のZ世代(以下、アジアZ世代)について、各国の有識者の協力のもと研究を行い分析レポートにまとめました。当セミナーではそのうち、アジアZ世代の社会背景、アイデンティティ・価値観、購買行動の3点に焦点を当て、特徴を紐解いていきます。

協力有識者
  • 北京大学 光華経営大学院 マーケティング学教授(中国)
  • モンクット王立工科大学 消費行動学助教授(タイ)
  • ベトナム国家大学・教育科学部長 心理学教授(ベトナム)
  • バンドン工科大学 マネジメント学助教授(インドネシア)ほか、全12名

2. アジアZ世代の定義

本分析において、アジアZ世代は「1996~2010年生まれ」と定義しています。Z世代が経済活動年齢に達すると購買力も上がること、そして、2025年にはアジア人口の4分の1(25%)がZ世代になると言われていることから、消費トレンドの中心軸になっていくため、「Pivotals(中心となる重要な人たち)」とも呼ばれています。
なお、Z世代を世界人口で見ると、その比率はさらに高く、すでに2019年の時点で32%に達しています。

各国におけるZ世代(1996~2010年生まれ)の人口比率
出典:United Nations 2019

3. 価値観に影響を与えた「社会背景」

最初に、アジアZ世代の価値観に影響を与えた「社会背景」について、PEST分析(※1)軸で見ていきたいと思います。

※1:Politics(政治的)、Economy(経済的)、Society(社会的)、Technology(技術的)といった4つの観点からマクロ環境(外部環境)を分析するマーケティングフレームワーク。

中国
中国

中国のZ世代は、急速な経済発展を遂げる中で、物質的に満たされた環境で育ちました。経済改革を含む政策の成功から、政府を肯定的に捉えています。Z世代の価値観として“個人主義的傾向”があることは世界的に観察されていますが、中国でも同様です。「ピアグループ(※2)」と「大衆から一線を画したい」という2つの心理から、SNSを中心としたさまざまなサブコミュニティやサブカルチャーを自律的に形成しています。

※2:年齢・社会的立場・境遇などがほぼ同じ人たちで構成されるグループ。

Politics(政治)

経済改革の点で政府に肯定的、政策の成果を評価
  • 経済改革・市場開放
  • 一人っ子政策緩和
  • 反腐敗・貧困の緩和(共同富裕)
  • 新型コロナへの対応

Economy(経済)

急速な経済発展と大幅な消費拡大の期間に誕生し、物質的に満たされた環境で成長
  • 成長率鈍化 → 経済新常態
  • 対外関係の変化 → 双循環(※3)

Society(社会)

急速な経済成長、技術革新、政府の方針が、中国Z世代の社会的・文化的基盤を形成
  • 個人主義、愛国心、サブカルチャー
  • 父親競争、親からの高い期待

Technology(技術)

  • デジタルネイティブ。インターネット普及後に生まれ、“デジタル”がアイデンティティを形成
  • 2007年がターニングポイント(実際は2011年ごろ:WeChat)
  • 国産テクノロジー企業の進展
  • 分散するエコシステム

中国のZ世代の価値観に影響を与えた社会背景

※3:中国の第14次五カ年計画(2021~2025年)、及び2035年までの長期目標の柱。国内循環を主体とし、国内と国際の2つの循環が相互に促進する新たな発展戦略。

タイ
タイ

タイの経済成長はこの数年間で鈍化し、家計債務と公的債務が増加しています。また新型コロナウイルスの影響から失業者数が増加し、経済的な混乱が起きています。そのため、タイのZ世代は政府に対して批判的な姿勢であり、SNS上で政治批判をするなどの動きがあります。社会的背景としては、都市化、核家族化、経済的な階級格差が、この世代の価値観に影響を与えています。

Politics(政治)

  • 高い失業率と不安定な経済情勢による政治混乱
  • 憲法改正、王室改革抗議デモ
  • SNS上で新しい形の政治コミュニケーション

Economy(経済)

  • 経済成長が鈍化。過去5年間の平均成長率は2.7%
  • 家計債務と公的債務の増加
  • 失業者数の増加。2021年の失業率は、前年比の8倍から12倍(過去20年間で最大)

Society(社会)

  • 個人主義、核家族化
  • 経済的な階級格差
  • 韓国文化コンテンツの影響
  • 厭世観(※4)、海外移住

Technology(技術)

  • 急速なインターネット普及率の伸びアジア発のグローバルアプリ(Lazada、Shopeeなど)で世界の情報にアクセス
  • ネット使用時間がASEANで最長
    オンライン小売市場の売上高は、2020年の総小売売上高の8%
  • デジタル経済
    Eウォレットの普及(ECの23%)

タイのZ世代の価値観に影響を与えた社会背景

※4:(えんせいかん):この世界は悪と苦痛とが優勢を占めているとして、結局、人生は生きるに値しないものだという絶望的な考え方。

ベトナム
ベトナム

ベトナム改革志向の比較的安定した政府があり、社会経済改革に重点を置いています。デジタルやSDGsに重点を置いた若者向けの戦略プログラムの支援など、Z世代は政府に対し好意的です。経済成長の一方で、都市化による都市の物価上昇などの影響もあり、Z世代の多くが一人っ子として育ち、親からのケアも不足していたようです。

Politics(政治)

  • 改革志向の比較的安定した政府
    社会経済改革に重点
  • Z世代向けの戦略的プログラムを提供
    若者のデジタル変革、若者の持続可能な開発を支援
  • Z世代の特徴:自分の意見や考えを示すことに積極的かつオープンだが、政府に対する批判的な行動は見られない

Economy(経済)

  • 安定的な経済成長
  • GDPは、2009年から2019年にかけて平均5.8%で推移土地投機による中産階級の収入増とともに、収入格差が拡大

Society(社会)

  • 都市化と中流階級層の増加
  • 核家族構造
    核家族の一人っ子として成長
    親からのケアは不足、教育投資は大
  • 個人主義

Technology(技術)

  • デジタル技術の急速な普及
    モバイル普及率は世界平均の約2.4倍
  • ソーシャルメディアの急速な普及
    ソーシャルメディア普及率は世界平均の約1.4倍
  • Z世代の1日あたりのインターネット利用時間は平均5~6時間

ベトナムのZ世代の価値観に影響を与えた社会背景

インドネシア
インドネシア

政府の腐敗を認識しているインドネシアのZ世代は、政府に対して懐疑的です。短期的な未来志向であり、長期的な経済、政治の展望を気にかけていません。
また、価値観には、他国のZ世代と同様に個人主義へのシフトが見られますが、他国との大きな違いは宗教観です。宗教に対して否定的ではなく、宗教を現代的なライフスタイルやファッションに融合して取り入れています。

Politics(政治)

  • 政治に対して懐疑的であり、無関心。
    短期的未来志向
    政府に対し否定的だが、積極的なアクションは取らない

Economy(経済)

  • 高度成長期が終わりに近づき、Z世代は初めての景気低迷を経験
  • 人口ボーナス(※5)の恩恵は経済成長次第(労働力vs失業率)。経済成長率7%?

Society(社会)

  • ミレニアル世代に続いて2回目の人口ボーナス(※5)
  • Z世代の人口比率は26%
  • 宗教・信仰を再発見
  • 実用主義+現実主義
  • 個人主義

Technology(技術)

  • 急速なデジタル化
    インターネットの普及率は、10年間で3.5倍以上
  • SNS大国
    SNSアクティブユーザー数は1.5億人
    Z世代の1日あたりのインターネット利用時間は平均8時間。デジタル社会によって、物理的な外の世界とは遮断
  • マルチタスカー

インドネシアのZ世代の価値観に影響を与えた社会背景

※5:生産年齢人口(15~64歳)に対する従属人口(0~14歳の年少人口と65歳以上の老年人口の合計)の比率が低下し、経済成長を促すこと

4カ国の比較

Politics(政治)

中国
政府方針に肯定的
タイ
政治への反動、諦め感
ベトナム
政府方針に批判なし
インドネシア
政治に懐疑的、無関心

Economy(経済)

中国
経済成長から新常態
タイ
経済鈍化、失業率高
ベトナム
安定成長
インドネシア
経済成長期から景気低迷期へ

Society(社会)

中国
個人主義
物質的愛国心
4-2-1家族構成
タイ
個人主義
核家族化
厭世観
ベトナム
個人主義
急激な都市化
核家族化
インドネシア
個人主義
現実主義
新しい形の信仰心

Technology(技術)

中国
デジタルネイティブ
国産アプリ
煩雑なエコシステム
タイ
デジタルネイティブ
アジア発のグローバルアプリ(Lazada、Shopeeなど)で世界の情報にアクセス
ベトナム
デジタルネイティブ
グローバルSNS+ローカル
Eコマース急成長
インドネシア
デジタルネイティブ
マルチタスカー
グローバルSNS
アジア最大ユーザー

セミナーレポート【後編】では、アジアZ世代のアイデンティティ・価値観、購買行動についてご紹介します。

北島尚
株式会社マクロミル 海外事業開発ディレクター
米国フォーダム大学大学院修士課程修了。LVMHグループにてブランドマネージャー、PwCコンサルティングにて国内外の企業のマーケティング戦略プロジェクトに参画。その後、オグルヴィ&メイザーにて日本企業の海外ブランディングおよびマーケティングを支援するエキスポートプラクティスを起ち上げ、ジェネラルマネージャーとしてチームをけん引。現在は、マクロミルにて日本企業の海外市場における調査と戦略サポートを務める。

お客さまの課題・ニーズを伺ってリサーチの企画・提案を行います。
お気軽にお問い合わせください。

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