なぜその色に惹かれるのか?日本・中国・タイの「色彩トレンド」とその背景を読み解く|海外市場開拓のためのカラーマーケティング(第3回)

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マーケターコラム

2025/10/10(金)

日本・中国・タイの消費者が好きな色は何でしょうか?
国によっての違いや特徴、また、その裏側にはどのような背景があるのかを考察します。

1. 「好きな色」日中タイ3カ国比較とその背景

下記は、純粋想起で「あなたが一番好きな色は何ですか?」と自由回答で聞いた結果です。テキストマイニング分析を行っており、「回答数が多いもの」の文字が大きく表示されています。

これを見ますと、日本は「青」や「黒」、中国は「赤」や「青」、タイは「赤」や「空色(つまり水色)」を好む人が多くなっています。

日本人はどうやら青が好きそうですね。青は古くから藍染の伝統色だったり、最近ではサッカー日本代表のサムライブルーの青があったりしますので、日本人が青を好んで使っているのも合点がいきます。

中国人はダントツで赤色好みだろうと想像していたのですが、日本人と同じく青も好きだという結果です。

また、タイの空色は調査以前には想像していなかったので驚きました。さらにタイで興味深い点としては、好きな色の塊が日本・中国よりも多いことです。後述しますが、タイには曜日ごとのラッキーカラーというものがあり、それが色の想起数と関連しているように思われます。

次に色の画像を提示して、どれが好きか改めて聴取した結果がこちらです。
一番好きな色を選んでもらうと、日本はブルー、中国はレッドが最も多くなっています。タイは分散傾向にありますが、一番はレッドでした。ただ日本、中国と比較するとスカイブルーが多いことが特徴的でした。

ここからは3カ国で比較して特に差があったものとして、日本のブルー、中国のレッド、タイのスカイブルーについて、もう少し掘り下げてお伝えしたいと思います。

まず誰がその色を好きか、見てみました。
性年代別に分けてみますと、日本のブルーは男性が顕著に多く、女性は少ないことが分かります。
中国のレッドは男性よりも女性、年代では20代よりも30~40代の少し上の世代に好まれています。
タイのスカイブルーは日本や中国と違い、性別や年代での傾向があまりないように見受けられました。

ちなみに、日本の女性はピンクを好むようです。また、Z世代で注目されるような20代を見てみますと、各国ともブラックを好む傾向にあることも興味深いところです。

次に別の角度として、社会的背景からも好きな色の理由を考察してみました。

中国ではレッドが好きな人が多かったのですが、中国での赤は昔から縁起が良い色というイメージを持たれているようです。古代の太陽信仰から赤には、希望や喜び、魔除けといった意味合いがあり、お祝い事の服装や装飾、あるいは王宮や寺院など主要な建物にも用いられています。このように権威や幸福をもたらす色として、中国人に慣れ親しみがあり、好まれているようです。赤は国旗にも用いられ、中国共産党の象徴としても使われています。

出典:(左)出典:色彩検定 公式テキスト 1 級編 p105 図15 /(右)tenki.jp(https://tenki.jp/suppl/marinahishinuma/2019/02/03/28789.html)

次にタイです。タイでは曜日ごとのラッキーカラーが関連していそうです。タイではインド由来のヒンドゥー教の伝説から曜日ごとの色があり、生まれた曜日によって守護神や幸運色が決まっているそうです。スカイブルーは、金曜日生まれのラッキーカラーです。また他の曜日生まれでも、金運や仕事運にも良い色とされており、好む人が多いようです。
また、タイは皇室へのリスペクトが強い国ですが、人気があったタイの前王妃 シリキット王妃の誕生日8/12が金曜日でした。その日は「母の日」として国を挙げてお祝いし、多くの人々が王妃のラッキーカラーである水色の服を着て、街も水色の装飾が目立ちます。

出典:(左)Dr.Mor Kai Pha Thi Nee作成図(manpowerthailand.com)/(右)Travel Book(https://www.travelbook.co.jp/event/235)

このように色を好む背景には「個人的嗜好」だけでなく、「社会的・文化的な要因」が影響していると考えられます。

2. 国別に異なる色のイメージ

ここからは色のイメージについて各国の違いをご紹介したいと思います。
色のイメージを表す言葉として、下記の20項目を並べて、どのような印象を持っているか回答してもらいました。聴取した色は30色ですが、代表的な14色についてまとめた結果をお伝えします。

各国で差異があった特徴的な色とイメージをいくつか抜粋していますが、例えば男性的、女性的なイメージを見てみますと、レッドは日本では男性的と感じる人と女性的と感じる人が同じくらいなのに対して、中国は女性的が多く、タイでは男性的が多い、というように日中タイで異なる印象を持っていることが分かります。ブルーやブラックはどの国も男性を想起しますが、タイはその差が顕著でした。

次に上品、高級というイメージについて着目してみますと、日本人はダークブラウンに対して上品で高級なイメージを持っている人が多いですが、中国・タイは日本ほどではないようです。
ブラックも日本人は上品・高級な印象を持っていますが、中国・タイでは上品よりも高級なイメージで、特にタイは高級なイメージはありますが上品なイメージは薄いようです。
ピンクは日本では上品なイメージはありますが高級なイメージはあまりありません。
一方で中国・タイでは高級な印象を持つ人も多いようです。

このように日本人の感覚で色のイメージを捉えると、海外では違う捉え方をする可能性が伺えますので、海外展開する際の商品やクリエイティブの配色には注意が必要です。

次回の最終回では、人を価値観でタイプ分けすると色の好みは変わるのかについて、興味深い調査結果をもとにお伝えします。

著者の紹介

岸原文顕

マクロミル事業支援アドバイザー

岸原 文顕

キリンビール株式会社を経て、2020年にマクロミルに入社。キリンビールでは酒類・飲料の国内外における商品開発・マーケティングや、アジア諸国・欧州・北米の事業探索、推進に従事。これらの知見を活かし、マクロミルでは日系企業の海外市場進出や事業展開におけるマーケティング活動を支援。調査領域を超え、事業の観点からマーケティングにおけるアドバイスを行っている。BOONE合同会社代表、ソムリエ、全国通訳案内士。

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